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    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    チェルノブイリの遺産 Nature 471, 562-565 (2011年3月31日号) 

    Natureによると、チェルノブイリの事故による死者数はわかっていないといいます。

    しかし、疑わしいものを関係ありとしないと、永遠に放射能事故の真実は明かされず、苦しんだ人々の気持ちは

    身体は、永遠に報われる事はないでしょう。

    それはロシアだから日本だからという問題ではありません。

    チェルノブイリの事故を教訓にしてFUKUSHIMAの事故処理、国民の健康保護を行わねばなりません。

    既に我々は放射線を浴び、汚染食物を口にしています!

    レベル7の本当の意味を考えましょう。



    チェルノブイリの遺産

    Nature 471, 562-565 (2011年3月31日号) | doi:10.1038/471562a

    チェルノブイリ原子力発電所の事故から25年。現地では今もなお除染作業が続いているが、健康被害の研究は十分とは言いがたい状況にある。日本はチェルノブイリから何を学ぶことができるだろう?

    Mark Peplow

    スラブティチ発の朝の電車は、トランプをしたり、電子書籍を読んだり、車窓から単調な氾濫原を眺めたりする通勤客で満員になっている。それは、ありふれた通勤風景に見える。しかし、40分の電車通勤を終えた彼らを迎えるのは、地下鉄の回転式ゲートではなく、ずらりと並んだ全身用放射線量モニターだ。こうして、世界最悪の原発事故現場となったチェルノブイリの1日が始まる。

    作業員を乗せた電車がウクライナの荒廃した田舎を走り抜けている今この瞬間に、地球の反対側で、もう1つの危機的な原発事故が進行している。日本の福島第一原子力発電所で部分的な炉心溶融(メルトダウン)が発生してからまだ数日。車内ではときどき福島の事故が話題にのぼる。「深刻な事態になっているようだ」と、1人の通勤者が言う。「でもチェルノブイリほどではないさ」。その口調には、断固たる誇りのような響きが感じられる。

    chernobyl-lg.jpg

    図1:放射性物質の広がり

    1986年4月26日の未明、チェルノブイリ原子力発電所の4号炉が爆発し、それに続いて発生した火災により6.7トンの放射性物質が炉心から大気中に吐き出された。放射性物質は空高く舞い上がり、ヨーロッパ全域の20万km2にわたって拡散した(『放射性物質の広がり』参照)。数十人の緊急作業員が被曝から数か月以内に死亡し、その後、周辺地域の数千人の子どもたちが甲状腺がんになった。原発の周囲は汚染がひどく、当局は、ウクライナとベラルーシの国境にまたがる半径30km圏内を立入禁止区域とした。現在は、約3500人のスタッフが毎日この中に入ってきて、事故現場の監視や除染や警備を行っている。除染作業は最低でもあと50年間は続けられることになっている(『チェルノブイリ原発事故の経過』参照)。

    チェルノブイリ原発事故の経過
    1986年4月26日 安全性試験のミスにより4号炉が爆発し、炉心の破片が広い範囲に飛び散る。
    1986年4月27日 事故翌日、原発から3kmしか離れていないプリピャチ市の約4万4000人の住民が退避。
    1986年5月5日 原子炉内の火災がようやくおさまるが、その間に6.7トンの放射性物質が20万km2にわたってまき散らされる。
    1986年5月6日 原発の周囲30kmが立入禁止区域とされ、住民と家畜が退避。
    1986年8月 事故から4か月の間に、28人の緊急作業員が大量被曝による急性放射線障害で死亡。
    1986年11月 放射性物質がこれ以上まき散らされるのを防ぐため、大きく損傷した原子炉の周囲にコンクリート製の「石棺」を建設する作業が完了。
    1991年 地元の小児の甲状腺がんの発生率が事故前の10倍に上昇。
    2000年 チェルノブイリ原子力発電所の最後の原子炉が運転を停止。
    2005年 国連チェルノブイリフォーラムにて、原子炉からのフォールアウト(死の灰)が原因となって死亡する人は多くても4000人と報告される。
    2011年 25周年記念会議で、除染と健康被害の研究のためのさらなる資金提供を求める働きかけが行われる(予定)。
    2015年 新しい安全な封じ込めシェルターが完成(予定)。
    2020年 冷却池の処理が完了(予定)。
    2065年 チェルノブイリの除染作業が完了(予定)。
    現時点では、福島の原発事故は、ここまで深刻ではない。原発の付近で測定された放射線レベルは、チェルノブイリの爆発事故後に比べればはるかに低い(『さまざまな場面での被曝線量』参照)。福島から漏れた放射性物質の量も、チェルノブイリの周辺地域に降り注いだ量には及ばない。

    さまざまな場面での被曝線量
    被曝線量 (mSv) 放射線源/影響 (Source/implication)
    ~5,000 爆発直後のチェルノブイリの炉心への1分間の曝露
    1,000 吐き気や白血球の減少などの一時的な放射線障害(放射線宿酔(しゅくすい))を引き起こす
    250 福島で活動する緊急作業員の年間被曝線量の上限
    120 チェルノブイリの事故処理作業員の総被曝線量の平均値(1986~90年)
    30 チェルノブイリ原発と周辺地域から退避した人々の外部被曝線量の総量の平均値
    20 原子力産業に従事する労働者の年間被曝線量の上限の平均値
    9 旧ソ連の汚染地域(>37 kBq m-2)に住む600万人の住民の総被曝線量
    9 1回のCTスキャンでの被曝線量
    9 ニューヨーク-東京間フライトに定期的に従事する航空機乗務員の年間被曝線量
    3 1回のマンモグラフィーでの被曝線量
    2.4 世界の年間自然被曝線量の平均値
    0.3 チェルノブイリ原発事故から20年間のヨーロッパ人の総被曝線量
    Source: UNSCEAR/ World Nuclear Assoc.
    チェルノブイリの事故直後に現場に駆けつけた緊急作業員の多くが致死量の被曝をした。しかし、それ以外の人々は、汚染地域の住民でさえ、医療行為による被曝と同程度の被曝しかしていない。
    このような違いはあるものの、チェルノブイリの原発事故から四半世紀にわたって続けられてきた作業は、福島の原発事故が人々の健康や環境に及ぼす影響の評価に着手することになる日本にとって、重要な教訓を与えるはずだ。チェルノブイリの事故に続いて発生した問題の数々は、正確な情報がどんなに重要であるかを痛感させる。当局はただちに、最も危険な最初の被曝を避ける方法を国民に教えなければならない。けれども長期的には、科学者と政府は、低線量被曝に対する不必要な不安と戦わなければならない。そうした不安は、しばしば放射線そのものよりも多くの悪影響を及ぼすからだ。

    再び注目されるチェルノブイリ
    いくつかの意味で、2つの事故の関連は、チェルノブイリに大きな利益をもたらす可能性がある。ほんの短い時間かもしれないが、これまでほとんど顧みられることのなかったチェルノブイリの現状に、世界の目が向けられたからである。新たに関心が集まったことで、事故現場の除染作業を完了させ、調整不足と資金不足により長らく棚上げされてきた健康被害の調査に必要な資金が、世界の国々から提供されるかもしれない。ポーツマス大学(イギリス)の放射線生態学者で、チェルノブイリの事故の影響を20年にわたって調査してきたJim Smithは、「チェルノブイリは、近年、資金提供機関から無視されていただけでなく、科学コミュニティーからも無視されているようなところがありました」と言う。「けれども、原子力発電所の解体や放射線の影響について、チェルノブイリから学べることはまだまだたくさんあるのです」。

    彼は今、ほかの研究者たちと一緒に原発事故の現場視察をしているところだ。セキュリティーチェックを受けた研究者たちは、バスに乗り込み、打ち捨てられた建物の横を通り過ぎて、老朽化した原発の心臓部へと向かった。バスは穴だらけの道路をガタガタと進み、アーチ型のパイプの下をくぐっていく。ここのパイプが空中に架設されているのは、事故で汚染された土を動かさないためだ。

    バスは、チェルノブイリ原発事故の象徴ともいえる所で停まった。爆発でめちゃめちゃに破壊された原子炉を覆うコンクリート製の「石棺」だ。放射性物質を封じ込めるために1986年11月にあわただしく建設された「石棺」は、いまは崩れつつあり、腐食して外に縞模様ができている。Smithはリュックサックからすばやく線量計を取り出し、石棺の前でポーズして写真を撮った。線量計は5μSvh-1を示していた。このレベルの放射線に10分間さらされると、腕1本のX線写真を撮影したときと同じ被曝線量になる。

    原発の明るいメインオフィスは、「石棺」と際立った対照をなしている。窓のステンドグラスには、原子力を利用する人間の姿が輝かしい社会主義リアリズム様式で描かれている。しかし、この原発は、最後の原子炉が運転を停止した2000年以降、発電はしていない(訳注:チェルノブイリ原発は4号炉が事故を起こした後も運転を続け、2号炉は1991年に、1号炉は1996年に、3号炉は2000年に運転を停止した)。チェルノブイリ原子力発電所のValeriy Seyda副所長によると、現在の最優先課題は、「石棺」が不安定になる前に4号炉を封じ込める新しいシェルターを建設することだという。新しい覆いが完成する前に「石棺」が崩壊すると、塵が舞い上がり放射性粒子が外部に放出してしまうおそれがある。

    課題はシェルター建設と貯水池の後処理
    計画では、4号炉の隣接地で巨大なかまぼこ型の構造物を建造し、走路(溝)をスライドさせて、「石棺」を外から覆うことになっている。この構造物は鋼鉄製で、高さ105m、幅257mもあり、設計者によれば、世界最大の可動性構造物になる。シェルターは2015年までに完成し、100年間はもつはずだという。シェルターの内部でロボットクレーンを使って「石棺」と原子炉本体を解体することになる。長期計画では、2065年までにチェルノブイリ原発の除染作業を終えることになっている。

    コンクリート製の溝の一部はすでにできている。しかし、総額140億ドル(約1兆2000億円)のこの事業を支援する国際チェルノブイリシェルター基金には、必要な金額の約半分しか集まっていない。そして、2001年にシェルター計画が基本合意に達してから今日までの間に、完成予定時期は10年近く延期されている。4月20日から22日までキエフで開催される会議『チェルノブイリ事故から25年:安全な未来のために』の主要目的の1つは、各国からいっそうの寄付を集めることにある。チェルノブイリでは、4号炉から出る大量の廃材を長期にわたって貯蔵できる施設の建設も計画している。また、その他の原子炉内にある2万個以上の使用済み燃料容器を収容する施設を建設するには、さらに約3億ユーロ(約360億円)が必要だ。

    チェルノブイリの原子炉はすべて運転を停止しているものの、発電所からはいまだに大量の放射性廃棄物が出ている。例えば、一部の廃棄物貯蔵庫と4号炉のタービン建屋ホールで浸水が続いているのだ。放射能を帯びた水を、少なくとも毎月300トン汲み出して、構内に貯蔵しなければならない。

    浸水の主因は、チェルノブイリの冷却池がいっぱいになって、この地域の地下水の水位が上がってしまっていることにある。冷却池の処理を担当しているAlexander Antropovは、アイスブルーの瞳と、それによく合うクールな雰囲気をもつ人物で、チェルノブイリで長年働いている。「冷却池」という言葉は、通常、使用済み燃料棒の放射能が十分に減衰し、長期貯蔵施設に収められるようになるまで置いておく容器(冷却プール)を意味する。けれども、チェルノブイリの冷却池は本物の貯水池で、その面積は22km2もあり、原子炉冷却装置から出た水が捨てられている。

    この冷却池には、爆発事故後に降り注いだセシウム137やストロンチウム90などの半減期の長い放射性物質も含まれている。冷却池の水位が高くなると、原発への浸水を引き起こすだけでなく、その東側に沿って築かれた弱い堤防が決壊して、汚染された水がプリピャチ川に入ってしまうおそれが高まる。汚染された水は川に入ると急速に薄まるため、下流の人々の被曝線量を大幅に増やすようなことはないが、地域住民の間でパニックが起こる可能性がある。

    しかし、Antropovは、冷却池の水位を単純に下げるわけにはいかないと言う。冷却池の水位が下がり、堆積していた微小な放射性粒子が露出したときに、どのような影響が出るかわからないからだ。処理チームは今、年間数十万ユーロ(数千万円)の費用をかけてプリピャチ川の水をポンプで汲み上げ、これを冷却池に足すことにより、現状の水位を維持している。しかし、長期的には、冷却池の水位を7m下げて10~20個の小さい池に分割し、そこに危険な堆積物を封じ込める計画になっている。Antropovによると、このプロジェクトには300万~400万ユーロ(約3億6000万~4億8000万円)の費用が必要だという。彼はすでに規制当局との話し合いを終えており、プロジェクトの実行可能性の調査と環境に及ぼす影響の評価もやり遂げられるだろうと考えている。

    ただ、このプロジェクトが動き出すまでには長い時間がかかっている。冷却池の処理計画は10年以上前に策定されたもので、2005年にSmithが率いる欧州委員会の調査により支持された。ここでもまた、作業を遅延させたのが費用だった。チェルノブイリ廃炉計画の主要な部分は国際基金が費用を負担することになっているが、冷却池の処理プロジェクトはそこに入っていないからである。当然、規制当局の承認を得るために必要な調査費用も対象外だ。「われわれの活動費用の大半はウクライナの国家予算から出ていますが、ウクライナは裕福な国ではないのです」とSeydaは言う。

    冷却池を後にした研究者たち一行は、次に、プリピャチ市に立ち寄った。原発からわずか3kmのところにあるこの街は、現在は廃墟となっている。事故当時ここで暮らしていた約4万4000人の住民は、事故の翌日にあわただしく退避させられたため、崩れかけた建物には、家財道具の多くが散乱したまま残されている。Antropovも、かつてはここに住んでいた。原発事故が発生したとき、彼の娘は生後数か月の乳児だった。プリピャチ共産党支部の副支部長だった彼は、街から住民を退避させる責任者だった。彼は原発の上級技師として働いていたため、事故の影響が今後数十年は続くことを知っていた。「自分がプリピャチで暮らせる日が二度とこないことはわかっていました」と、彼は弱々しい声で語った。「私は、まだ喪失感を抱いています」。

    事故の短期的影響
    プリピャチから脱出した人々は、原発事故の発生から避難までの間の被曝について、今も恐怖を感じている。周辺地域に住む数百万の人々と同様、彼らは、健康に問題が生じると、すべて事故のせいにすることが多い。しかし、チェルノブイリ原発事故が公衆衛生に及ぼした本当の影響を特定するのは非常に難しいことが判明している。

    損傷した原子炉を制御下に置くための作業に携わった人々がたどった悲惨な運命については、専門家の見方はほぼ一致している。急性放射線障害と診断された134人の緊急作業員のうち、28人が被曝から4か月以内に死亡した。さらに19人がさまざまな原因ですでに死亡しており、生存している作業員の多くに白内障と皮膚損傷がみられる。

    事故当時にまだ子どもで、旧ソ連の汚染地域に居住していた人々のうち、5000人以上が甲状腺がんになっている(成人はほとんど甲状腺がんにならなかった)。これは、甲状腺がんの発生率がふつうの10倍以上になったことを意味する。その大半が、放射性ヨウ素で汚染された牛乳を飲んだことが原因だった。甲状腺がんになった5000人のうち、死亡したのは20人足らずだが、患者数が非常に多く、事故から5年以内に急激に発病したことは、多くの疫学者を驚かせた。

    これをきっかけに、山のような甲状腺研究が行われるようになった。なかでも有名なのは、1986年当時に子どもだったウクライナとベラルーシの2万5000人を対象とした長期にわたるコホート研究、つまり共有因子を持った集団の比較統計研究で、米国国立衛生研究所(NIH)の国立がん研究所(NCI、メリーランド州ベセズダ)が実施したものである。この比較統計の最新の結果によれば、ウクライナ地域では、甲状腺がんの発生率が被曝線量に比例しており、若年者と、食生活の貧しさのためにヨウ素の摂取量が不足していた人々のリスクが特に高い、という従来の知見を裏づけるものとなった1。この研究は日本に直接的な影響を及ぼしており、今回、被曝のおそれがある人々には、甲状腺への放射性ヨウ素の取り込みを予防するためにヨウ化カリウムの錠剤が配布されている。

    NCIは、原発の事故処理作業員を対象とした第2の比較統計調査も行っている。彼らは、原発事故の当初の緊急事態がひと段落した後に、立入禁止区域に入って除染や監視などの作業をした人々で、人数は50万人以上にのぼる。事故処理作業員は、白内障になるリスクがわずかに高く、ひょっとすると白血病のリスクもわずかに高いかもしれない2。

    低線量被曝の長期的影響
    事故現場からもっと遠い地域に住む人々は、どんな影響を受けたのだろうか? チェルノブイリの原発事故が最終的にヨーロッパ全域でどれだけの死者を出すのか推定するためにさまざまな研究が行われてきたが、その推定には数千人から数十万人まで幅がある3。現在、ヨーロッパ全体では、がんは死因の約1/4を占めているため、疫学者たちは、チェルノブイリ原発事故の広範にわたる影響を見つけ出すのはおそらく不可能だろうとみている。その上、そうしたつかみにくい数字にばかり注目していると、この事故が社会に与えたはるかに幅広い影響を見落としてしまうおそれがある。1991年のソ連崩壊で大きな打撃を受けたウクライナとベラルーシでは、被曝への恐怖が長らくあとを引いていることが、人々に絶望感を抱かせる一因となっていると考えられている。絶望感は、アルコール依存症の発症率や喫煙率の高さと関連しており、これらは低線量被曝よりはるかに大きな健康被害をもたらす。

    環境疫学研究センター(スペイン、バルセロナ)の放射線疫学者Elisabeth Cardisは、「こうした人々が受ける影響については、驚くほどわかっていないのです」と言う。「被曝のせいで死の宣告を受けていると思っている人もいます」。今後の研究で、チェルノブイリからの放射性物質が、比較的遠い地域に住む人々にはあまり影響を及ぼさなかったことを示す説得力ある証拠が得られるかもしれない。しかし、「調べてみないとわかりません」と、ストレンジウェイズ研究所(イギリス、ケンブリッジ)のがん研究者Dillwyn Williamsは言う。

    チェルノブイリ事故による健康被害調査はいくつか行われていて、乳がんと心血管疾患の発生率がわずかに上昇していることがわかっている。しかし、これらの調査では、栄養、アルコール摂取、喫煙習慣などの交絡因子が適切に考慮されていない。また、チェルノブイリ事故後に被曝した両親から生まれた子どもに突然変異が増えていると主張する研究者もいるが4、平均するとはるかに被曝線量が多い日本の原爆被爆者の子どもたちでさえ、そのような遺伝的影響の存在を裏づける証拠はない。

    つまり、チェルノブイリ事故が健康に及ぼす影響の全貌を理解するには、まだ大きな隔たりがある、とWilliamsは言う。これまでの研究が断片的であったことは、問題を悪化させている。「研究について、ヨーロッパレベルの調整ができていないのです」と彼は言う。

    Williamsは、今こそ、チェルノブイリ健康被害研究所を設立する機会だと考えている。それには、原爆が引き起こす長期的な健康被害をモニターして大きな成果をあげている日本の放射線影響研究所(広島、長崎)が模範となるだろう。この2つの取り組みを合わせることで、原爆による1回だけの短期間の外部被曝と、チェルノブイリの事故後の長期にわたる低線量被曝との違いを明らかにすることができるだろう。かつては、長期にわたる低線量被曝による危険は、近距離での被曝による危険に比べてはるかに小さいと考えられていた。しかし、両者の危険にあまり差がない可能性を示唆する証拠が集まりはじめている5。このことが裏づけられれば、日常的に低線量放射線にさらされている人々は、これまで考えられていた以上に、健康に問題を生じる可能性が高いことになる。

    チェルノブイリ健康研究計画
    欧州委員会は、Williams、Cardis、およびその他の科学者からなるコアグループに資金を提供して、チェルノブイリ健康研究アジェンダ(ARCH)というプロジェクトを立ち上げた。ARCHの目的は、既存の比較統計調査を利用して、乳がんや心血管疾患などの広範な疾患について研究し、長期にわたる低線量被曝の影響に関する問題に取り組むための研究計画を立てることにある。例えば、事故処理作業員の統計対象者は、日本の原爆被爆生存者のケースの6倍もいて、被曝線量の幅もはるかに広い。したがって、被曝線量によってリスクがどのように変わってくるかを示したり、低線量被曝でまれに発生する問題を明らかにしたりすることができるかもしれない。原発労働者に白内障などの健康問題が生じるのを防ぐため、被曝線量の上限を再評価するのにも役立つだろう。

    ARCHはまた、事故処理作業員の子孫や被曝線量の多い避難民など新しい調査対象集団をつくることや、組織バンクを設立することについて、それぞれ実行可能かどうか検証することも提案している。組織バンクは、人々の遺伝子構成が放射線への感受性に影響するかどうかを明らかにできるかもしれない。これは、X線スキャンや放射線治療などの医療行為による被曝に対して、個々の患者がどのように反応する可能性があるかを見きわめるカギとなる情報だ。

    とはいえ、ARCHを始動させるには、いくつかの障害を乗り越えなければならない。プロジェクトにはNCIからの支援が必要だが、予算上の制約のため、NCIは2008年に甲状腺研究対象集団に対する能動的臨床モニタリングのための資金提供を停止している。また、ARCHの提案を実現するためには、ウクライナの人々の医療記録をもっと利用しやすくしたり、参加者の生活習慣因子についてより詳細な情報を得たりする必要があるが、どちらも一筋縄ではいかないかもしれない。

    ARCHの計画は4月の25周年記念会議で発表されることになっている。Cardisは、ここで好意的に受け入れられれば欧州委員会は支援を拡大するだろうと考えているが、その関心を長期にわたって引きつけるのは困難かもしれない。ARCHの準備には約300万ユーロ(約3億6000万円)の資金が必要だが、今後チェルノブイリの除染に数十億ユーロ(数千億円)が費やされることを考えれば、たいした金額ではないとWilliamsは言う。

    ARCHの研究者らは、必要な資金を確保するだけでなく、対象者に比較統計研究に協力してもらわねばならないが、これも難しいかもしれない。ウクライナ水文気象学研究所(キエフ)の水文学者Gennady Laptevは、事故処理作業員として3年間チェルノブイリで働いたことがあるが、10年ほど前からメディカルチェックの受診をやめてしまった。「大きな健康問題が見つかることなど一度もなかったのに」時間がかかりすぎるから、というのがその理由だ。

    Laptevの当時の仕事は、1週間に2回ヘリコプターでキエフからチェルノブイリに飛び、放射線量の測定値を記録し、分析用の土壌と水のサンプルを採取してくることだった。「私はこの仕事を強制されたわけではありません。興味があったからやったのです。実際、楽しい仕事でした」と彼は言う。しかし、仕事を始めてから3年後に、原発の近くで働く危険性が心配になったので、地元の水系に放射性同位体がどのように広がっているかを調べる仕事に移ったという。

    この地域の住民は、被曝への不安に怯え続けている。ARCHの研究は、彼らが本当に必要としている答え、すなわち、チェルノブイリの事故が彼らの健康に及ぼしている影響を明らかにすることができるはずだ。「私は、スラブティチに近い汚染地域の村に家を持っています」とAntropovは言う。「近所に住んでいる人のうち、2人ががんで死にました。おそらく被曝のせいでしょう」。

    チェルノブイリの教訓
    チェルノブイリの健康被害の研究が、福島の原発事故の影響を受けている人々にどのように役に立つかを語るには、今は時期尚早だ。けれどもチェルノブイリは世界に1つの永久不変の教訓を与えている。それは、原発事故が進行している間はもちろん、その後もずっと、明確な言葉で情報を伝え続けることの重要性だ。

    チェルノブイリの周辺地域に住む人々には、予防のためのヨウ化カリウムの組織的配布は行われなかった。そして、プリピャチの子どもたちは、事故の翌日、原子炉が燃え続けている間も、屋外で遊ぶことを制限されていなかった。「チェルノブイリでは、被曝の危険を人々に迅速に伝えなかったことにより、必要以上に多くの被曝をさせてしまったのです」とSmithは言う。

    日本政府は、原発事故について市民に十分な情報を提供していないと激しく非難されている。しかし、彼らの行動はソビエト当局より早く、原発事故の発生を知ってから数時間以内に周辺住民に避難指示を出し、その翌日には避難指示区域を半径20km圏内まで拡大した。さらに、住民にヨウ化カリウムを配布するとともに、損傷した原発の周辺地域で生産された食品と牛乳の出荷停止を指示した。マンチェスター大学(イギリス)ドルトン原子核研究所のAndrew Sherry所長は、「日本人はきわめて的確に対応しました」と言う。

    最後に、チェルノブイリが福島に教える最も重要な教訓は、原子炉の冷却に成功したあとも、原発事故はずっとその地域を苦しめ続けるということだ、とSmithは言う。福島第一原子力発電所の周辺地域が、半減期30年の放射性セシウム137でひどく汚染された場合には、日本政府は数十年にわたって立入禁止区域にしなければならないかもしれない。原子炉を廃炉にするにも、炉心の損傷の程度によっては数十年かかる可能性がある。さらに、健康にどのような危険があるのか予想できないという現実は、放射線による物理的被害よりはるかに大きな心理的被害を与えるおそれがある、とSmithは言う。

    1日の仕事を終え、無頓着な様子でスラブティチ行きの電車に乗り込むチェルノブイリの作業員の多くは、こうした教訓について、あまりにもよく理解している。彼らは明日も発電所の後始末をするために戻ってくる。あさっても、これから何十年も先までずっと。

    Mark Peplowは、Natureのニュース編集者

    (翻訳:三枝小夜子)

    この記事は、Nature ダイジェスト 2011年6月号(5月25日発売)に掲載されます。

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