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    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    岩上安身のIWJ特報!第52-53号「原発・TPP・日米同盟を結ぶ線 ~冤罪に加担するメディア」 

    岩上安身のIWJ特報!第52-53号「原発・TPP・日米同盟を結ぶ線 ~冤罪に加担するメディア」

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    岩上安身のIWJ特報!
    「原発・TPP・日米同盟を結ぶ線 ~冤罪に加担するメディア」
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    (IWJ転載許可済み)

    【◆2012年度春季研究協議会講演(2012.6.27)
    原発・TPP・日米同盟を結ぶ線】

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    ■報道・メディアの問題
    ~小堀隆恒枚方副市長の「冤罪」事件から
    ===================================

     岩上安身「皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました岩上です。

     今回のテーマですが、最初にお話をいただいたときは『原発と報道』でした。原発事故以降、報道がおかしいのではないかということで、『原発報道』ということが言われたりもします。ここには、3・11に限って非常に特異な報道がなされたという前提があるんですが、これは違います。はっきり申し上げますが、『原発報道』などというものはありません。報道が歪んでいる、あるいは原発に関する行政・政府や東電の発表、情報開示のあり方がおかしいというのは、たしかにその通りですが、たまたま原発がきっかけでその歪みに気づいただけのことです。

     たとえば、我々のようなIWJやニコニコ動画は、東電関連の会見や保安院の会見を24時間流し続けてきたわけですが、そういうことによって行政、政府、東電の言っていること、あるいはマスコミの言っていることがおかしいと気がついたというだけの話であって、彼らは急におかしくなったわけではありません。政府も東電も前からそうでしたし、マスコミもずっとそんなシステムでした。

     福島原発事故があれほどの惨事であったにもかかわらず、何も変わろうとしていない。変えようとする動きを、逆にねじ伏せつつあるというのが現状だと思います。これだけはわかっていただきたい、『原発報道』というジャンルはないということです。そういうジャンルをつくりあげることによって──結構、新聞記者などにはそうした主張をする人がいるようですが──そうした人たちは『我々は原発の報道で、あのとき何が足りなかったのか』と反省する素振りをするんです。
    でも、いつも事後です。事後に「あの時」はこうだったと振り返る。──NHKが得意な手です。いまここで倒れている人のことは助けない。それについては、報じない。そして通り過ぎてから、振り返り、『なぜ、あのとき私たちが間違ったのか』とEテレやNHKスペシャルなどの特集番組を制作する。特集番組が悪いなどとは言いませんが、反省するなら、日々の報道のあり方を改めるべきです。目の前でいま困っている人のことを報じ、助けるべきです。

     『報道って何だ?』『報道がおかしいのではないか?』ということを探っていくと、原発だけでなく、この2年間の政治テーマであるTPP、消費税増税、陸山会事件や、その背後に見える日米関係というテーマが浮かび上がってきます。これらは関連しているのですが、その話を全部していたら半日はかかってしまうので、大急ぎでやります。

     報道がどういうもので、どのように歪んでいるか。たとえば陸山会事件のような巨大な事件において、検察が捜査報告書を捏造し、検察審査会を誘導して、強制起訴を行わせたことは明らかになっています。検察がマスコミにずっとリークをし続け、いわゆる『風』を起こして、世論誘導し、小沢一郎氏があたかも大犯罪者であったかのように見せ続けてきた3年間でした。
    そもそも陸山会事件の前におこった西松建設事件は、訴因変更され、裁判そのものがなくなってしまった。さんざん騒がれた、ゼネコンから怪しい金をもらったという話はもうどこにもない。ところが、小沢一郎という存在感の大きな政治家に対して、徹底的に刷り込まれたマイナス・イメージは払拭されない。テレビ・新聞しか読まず、真に受けている一般の人は、『しかしそうはいっても…』という話になってしまう。

     陸山会事件は巨大な事件であり、例外的な政治裁判なのではないか、と思う方もいるかもしれない。では、どういう風にニュースがつくられているか。ごくごく典型的な事件報道の記事のつくり方について、一例をあげたいと思います。

     大阪のある事件をとりあげます。これは朝日新聞大阪版の記事ですが、日々目にしている典型的な事件報道の新聞記事です。新聞社にはさまざまな部署がありますが、社会部の存在は重要です。新聞が読まれ、テレビが見られるのは、多くの場合、事件報道があるからです。新聞記者は、入社したら必ずサツ回りに配属させられます。社会部には司法記者クラブがあり、検察、警察、裁判所に張り付いて、そこから情報をもらい記事をつくっていきます。
    平成19年(2007年)6月1日付の朝日新聞朝刊。31日夜、枚方市の小堀隆恒副市長が競売入札談合の疑いで逮捕されたというだけではなく、『容疑を認めている』と書いてあります。そして、事件で誰がどう動き、お金がどう動いたのか、どんな犯罪が行われたのかが図解されています。すでに全部のストーリーがわかっているのです。これらは、小堀さんが供述したからこそわかったということになっています。

     次に読売新聞です。『逮捕された小堀副市長が、大手ゼネコン大林組側に伝わると知りながら、府警捜査2課警部補・平原幸史郎容疑者に詳細な入札情報を提供し、平畑容疑者に入札の実務を取り仕切る重点プロジェクト推進部長を紹介していたことも判明。特捜部は、市ナンバー2の小堀容疑者による談合への積極的な関与を裏付ける事実と見ている』と報じ、自分たちの取材によって大変詳細に判明したとなっています。

     また毎日新聞。『調べに対し、容疑を認めている』とあります。産経新聞は、彼の言葉を引用した形で「『4000万円の裏金を捻出し、受注謝礼にあてた』と供述していることも新たに判明した」とあります。そして日経新聞。見出しが『容疑認める』です。

     ご覧のとおり、大手紙すべてが『供述した』、『自白した』と報じている。ところが、これらの記事が真っ赤な嘘でした。そもそもこの時点で、小堀さんは供述などしていなかった。彼は無実でした。そして彼は自分の無罪潔白を貫き通し、調書にサインせず、証拠ももちろん無く、判決は無罪で確定しました。真っ白でした。もちろん、逮捕時点で供述などしていません。つまり全紙の記事が、見出しからリードから記事まで、検察のデマ情報のリークにもとづく、真っ赤な嘘だったわけです。皆さん、見抜けますか? 

     基本的に新聞は、このようなものです。言い換えると、このようなことが日常的に行われているのです。警察や検察に逮捕され、その取調べの段階から容疑者についての情報がマスコミに流れ出します。本当は法廷に出るまで情報は出ないはずですが、司法記者クラブの記者たちへのリークによって、どんどん記事になっていく。これは特異なことではありません。記者クラブメディアの記者は基本的に、行政側から情報の提供があるのが当たり前だと思っている。
    記事もニュース番組も、横書きのものを縦書きにするだけで、さも自分たちの取材であるかのようにして、行政などから言われたことをそのまま報じていることが多いのです。ところが、検察は嘘を平気で言います。嘘の情報もリークするのです。検察は公式には発表していない。だから、責任は問われない。
    そもそも取調室で、一対一で向き合っている密室の情報が、どうやって漏れるのでしょうか。取調室に新聞記者が近づくことはできません。つまり、検察からのリーク以外ありえません。リークでは責任を問われないのをいいことに、検察はしゃあしゃあと嘘を言うのです。これが検察と司法記者クラブの記者たちとの間で繰り広げられている日常です。

     小堀さんは、どれほど強靭な意思で圧力をはねかえしてきたのか。私は小堀さんに大阪まで会いに行って、取材しました。そこで、いたく感心しまして、2010年8月7日に私がコーディネートした検察問題に関するシンポジウムにお呼びしました(「検察問題と裁判員制度を考える」)。私がコーディネーター兼司会で、郷原信郎さんと佐藤栄佐久さんもお呼びしました。
    小堀さんは、政治家ではありません。市の職員あがりのナンバー2で、公務員を40年近く勤めてきた副市長です。そういう方がどんな目にあったか。シンポジウムで読み上げられた資料を紹介させていただきます。

    『3年前の平成19年5月末に、突然、大阪地検特捜部に逮捕をされてしまいました。枚方市の職員一筋40年近く働いて参りまして、副市長二期目を拝命した直後の出来事でございました。その後の2年間は、拘置所での苛烈な取り調べや裁判所での長期に及ぶ審議等々、すべてが初めて経験することばかりでしたが、昨年(2009年)の4月下旬、無罪判決を勝ち取ることができました』

     取調室の話をしましょう。『「なぜ私が逮捕されるのか、まったく理解できない」「なぜ逮捕なんですか?」「何の容疑ですか?」。何度も繰り返し訊ねました。検事は、「警部補にべらべらしゃべったことが、談合の共謀だ」の一点張りでした。「H警部補が全部ゲロしてる。枚方市主導の官製談合だ。お前は事業のトップ、市長に指示されたんだろう。真実を言って一日も早く出ることが自分のためだぞ」。怒鳴り脅しながら、早く認めるようにと強要いたしました。
    夜10時過ぎに生まれて初めて、当然のことですが、手錠と腰縄をかけられまして打たれまして、大阪拘置所に送致をされました。それより21日間に及ぶ過酷な取り調べのスタートでした』

    『大阪拘置所の取り調べは休むことなく続きます。短い日で2時間から3時間、長い日では8時間9時間、夜中の11時12時をこえることもあります。皆様には、人権侵害そのものといえる取り調べ検事の言動の一部を紹介させていただくことで、過酷な取り調べの実態をご想像頂ければと思います。
    私が否認を続けていますことから、担当の検事が三人交替をいたしました。その三人目の検事がほんとにすごかった。声は特別大きいですし、体つきも頑丈そのものです。取調室には、普通の机ではなしに、床から生えたコンクリートの机があるのですが、そこに自分の椅子を蹴って打ち当て、轟音をたてる。椅子のキャスターが壊れて、使い物にならなくなりました。
    さらに入り口のドアを激しく開閉して、すさまじい音をたてました。恐怖感を煽る演出としか、思えませんでした。拘置所の近隣住民から、塀のすぐ外が住宅になっているのですが、「うるさくて眠れない」という苦情がくるほどです。取り調べの最中に刑務官が検事に、「苦情が来ていますので、少し穏便に願えませんか」と伝えてきました。塀の外まで轟音が届いているのかと、あらためて驚きました。そして最後まで検事は、罵声、罵詈雑言、恫喝の繰り返しでした。
    「クズ野郎」「ゴミ野郎」「バカ野郎」。終始怒鳴っていました。「小堀さん」と呼ばれたことは少なかったように記憶しております。「車を買い換えた金はどこから出た」「かみさんが宝石好きらしいが、宝石どうやって買った」「お前も金を受け取っていると刑事も言ってるやないか」。何をバカなことを、と思いましたけれど、最初の3日間は、間違いなく私に金が渡っていると決めつけた取り調べでした。「かみさんも同じ目にあうのがわかっているのか」「息子や娘もいまの会社におれるかどうかわからんぞ」「兄弟、親戚も徹底的に調べてやる」』。

     一番ひどいのが、介護施設に入っている義理の母親を出したことですが、この方は義理のお母さんで、90歳をこえている。10年前から下半身不随で介護施設に入っているのですが、家族ぐるみでやっているから、その母親も取り調べるというんです。市の談合の話ですよ。
    仮に小堀さんがやっていたとしても、10年前から下半身不随で介護施設に入っているお年寄りが談合に関与できますか? こういう方を引きずり出して、痛めつけてやろうという脅しをするわけです。人権も何もあったものではありません。

     『二度と枚方に住めないようにしてやる』『一生かけて反省させてやる、覚悟しておけ』『否認しているのはお前だけだ』『ひとり頑張っても、全部お前にかぶせられる』『ここから出られなくなるぞ、わかっているのかバカ野郎』と延々と痛めつけられました。

     実は小堀さん、腎臓をひとつ摘出しています。具合が悪くて、もうすぐ手術を受けなくてはならない状態のなかでのあまりの過酷な取り調べに、さらに具合が悪くなります。しかも、腎臓を摘出しているので、水を飲まなければならないのですが、取調室で水を一度も水を飲めせてもらえない。トイレにいったときに、トイレの水をすするしかないのです。
    さらに、前立腺肥大症で排尿障害の投薬治療を受けているのに、薬も飲ませてもらえなかった。病人が薬を取り上げられて、薬を飲めないのです。その状態で熱を出しながら取調べを受けた。排尿障害ですから、尿がたまって大変な状態になってしまう。そこで、拘置所の医務官に排尿用のカテーテルを挿入されたのですが、すごく乱暴におこなわれたため、大変な激痛だったそうで、血尿が出るようになります。
    下半身から血を流すなかでの取調べという、事実上の拷問が、保釈するまで続き、精神状態は最悪になりました。それでも終始潔白を主張し、警察のでっち上げたシナリオと闘いました。彼はついに調書へのサインをしませんでした。そして無罪を勝ち取ることができたのです。
    しかし、各紙に書かれた虚偽報道は、その後、一切訂正されていません。謝罪もありません。

     再度取材に来て個人的に謝る記者は、一人もいません。彼は市のナンバー2として働いていましたから、当然市政記者クラブの記者とも年中付き合っていました。それこそ、小堀さんは役人として情報提供をする側にいました。してもいない供述について書きたてて、何の訂正もないメディアに対し、小堀さんは諦めの様子でした。これが権威ある大手メディアの正体です。これは典型的なケース、日常的なケースであり、特異なケースではありません。


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    ◆記者クラブの問題
    ~編集局長会議で高級官僚による「洗脳」が行われる
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     次は記者クラブについてです。全国の官庁に記者室が800カ所くらいあります。記者室は一般のオフィスと同じように、全紙の記者が机を並べています。県庁でも中央の官庁でも、必ず記者室というスペースがあり、記者クラブの記者が机を構えています。
    たとえば外務省では霞クラブという記者クラブがあって、大きな部屋を占有していて、そこにNHK、朝日、読売などの記者が机を並べて座っています。お互い競い合っているといいますが、何をするのでも一緒、飲み会をするのも一緒で、横並びです。日本のメディアはひとつの会社みたいなものです。ただ、それがアウトプットするとき違う新聞社から出るだけです。こんな記者クラブ制度の仕組みのために、なぜ国民の税金から金を出さなくてはいけないのか。しかも極端に排他的で、新聞・テレビ・ラジオ以外は排除します。
    ずっと排除されてきたのは、出版ジャーナリズムです。出版ジャーナリズムのゲリラ性は、以前はそれなりに有効だったろうと思いますが、最近は非常に凋落しています。ネットの台頭が非常に大きい。ネットの台頭によって情報は無料になり、わざわざ雑誌を買う必要がなくなりました。

     日本新聞協会には、132の媒体、日本の大手メディアから地方紙、スポーツ紙、NHKをはじめとするテレビ、ラジオの全部が例外なく入ります。これが横並びで、情報の談合をやっています。大手日刊紙、大手テレビ局等、全国に日々情報を出している各メディアで、一番権限をもっているのは各媒体の編集局長です。編集権の独立などといいますが、その編集権の独立を担う一番のトップです。日本新聞協会加入メディアのなかから、50数人の編集局長が集まって、月に1回編集局長会議を開きます。このなかのメンバーの一人が、私に教えてくれました。

     『岩上さん、ここで日本の言論は全部決められているのですよ』。編集局長会議の後には飲み会もあります。ここに高級官僚がやってきて、たとえば『消費税増税はこういう理屈で必要なので、ひとつよろしく』などといわゆる『ご説明』をします。つまり洗脳です。編集局長は、自分たちで勉強しているわけではなく、言われることを聞くだけです。
    消費税もTPPも原発にかかわる諸々のことも、そのときそのときの担当官庁の官僚の話がある。もちろん、編集局長より下の、政治部長や経済部長のレベルの会合もあるし、各記者クラブレベルでもブリーフィング、ご説明があって、洗脳が行われます。飲み会も、年がら年中やっています。
    記者懇といいますが、これに入っていない独立系のメディアが『中身を話してくださいよ』と聞いてもそう簡単には話してくれません。自分が話したことがバレたら記者クラブから排除され、大変だというのです。記者クラブという制度から降りたら社はおしまいになってしまうから、できない。これが日本の報道の現実です。では、こんな情報統制はいつからか──ずっと前から続いています。そして、最近これが、ひどくなってきた。

     今、かろうじて期待できるのは市民メディア、ネット、SNS、Twitter、UStreamなどの台頭です。こうした新しい情報の回路によって、統制されない情報を出せるようになってきた。これは、非常に大きな変化だと思います。


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    ◆原発に関する嘘
    ~炉心溶融の可能性に言及し交代となった中村審議官は交代、隠されたSPEEDI情報、「原発を再稼働しないと電力が不足する」
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     3・11以降の原発の話をします。もちろん政府は嘘をいいます。メディアだけではありません。政府はメルトダウンを知っていました。3・11の後、すでに午後2時ごろ、「炉心の燃料は溶け出しているとみていい」と、保安院の中村幸一郎審議官は言っています。ところが、中村さんは更迭されます。その後、西山英彦審議官にバトンタッチする。

     地震直後の翌3月12日に、我々IWJは何をしていたかというと、経産省前での抗議行動を取材していました。これが3・11以降、もっとも早く起きた抗議行動です。既存メディアは伝えませんが、我々は当初から、伝え続けてきました。よく『日本人は声をあげない』といいますが、あれは大嘘です。日本人は声をあげない、行動しないのではなく、報道しない、情報を知らせないのです。

     実際には、日本中、各地でいろいろな声があがっているのですが、その事実をメディアが知らせなければ、誰も知らないことになる。既存メディアを通じて情報を得ることが当たり前になっているため、メディアがとりあげないと、「日本人は声をあげない民族だ」となってしまう。自画像が歪むのです。

     3・11後も、3月12日の時点で声をあげている人たちがいました。私はこの日の17時に、原子力資料情報室の後藤政志さんに緊急インタビューをしていて、このとき後藤さんは、炉心溶融が起きている可能性が高いと言っています。しかし、炉心溶融について、政府、東電、マスコミは一切伝えていません。『冷静に』『落ち着いて』というばかりで、迫りくる危機からどう逃れたらいいのか、ということは、積極的には伝えようとしなかったのです。

     こういうシビア・アクシデントがおきたときに、『いま、大変危険な状態である』という事実を知り得るかどうかは、死活的な問題です。特に現地に近ければ近いほど、この情報を得られたかどうかは死活的です。いま症状が出なくても、数年後にはガンになるかもしれない、そういうことを考えたら大きな差です。政府はわかっていたはずなのに、とぼけていたわけです。

     保安院の中村さんは『炉心が溶けている』といっていた。溶けているとの情報は政府の中枢にあがっていたのです。ところが次の西山さんは、炉心が溶けていることを否定しました。他方で枝野さんは『炉心の一部が若干変形した可能性は否定できない。一般的にメルトダウンといわれる長時間にわたって水没していた状況が続いていたわけではない。万が一爆発しても、住民の皆さんの健康に影響を及ぼすような状況は生じない』と言った。まだ爆発前ですが、すでに官邸には爆発する可能性が伝えられていました。完全な嘘をいっているわけです。

     1ヶ月以上も経過した4月18日の段階で、保安院は『燃料棒の溶融』という表現で炉心の溶融を認めました。そして2ヶ月後の5月12日、東電は、3月12日の午前6時には燃料棒が完全に溶融してメルトダウンしていたことを発表しましたが、まるであとになってわかったかのように発表して、あの時点ではわからなかったかのように振る舞っています。しかし、後々出された情報を見ると、3月12日の時点でメルトダウンが判明していたことが明らかになります。

     5月20日の枝野さんの会見、これは私が質問しました。『3号機がメルトダウンしていた件について、政府はどのように情報を把握していたのか。12日に中村審議官が炉心溶融している可能性があると発言していたのに、その後更迭されてしまったが、彼はどこへ行ったのか。政府はメルトダウンの情報を得ていたのではないか』、と尋ねました。

     枝野さんは、『私は中村さんがどの方か知りません。私が更迭の指示を出したことはない。その時点では把握できる状況ではなく、溶けていないとの報告を受けていた』と答えた。真っ赤な嘘です。

     実は枝野さん、ここで中村審議官の顔も名前も知らないと言っていますが、私が記者会見で問いつめた4日前に記者クラブである記者が質問したときに、『あーあの人ね』と答えていますし、その記録も残っています。把握できる状況になかったというのも、真っ赤な嘘です。把握していました。

     メルトダウンの可能性について政府が知っていたという事実については、2012年の3月になってより詳細にわかるようになりました。大震災がおきた3月11日の午後7時の会議で、メルトダウンになる可能性があるという報告が原子力災害本部からあり、12日昼の対策会議で原子力担当大臣は、メルトダウンの可能性があると言及しています。

     さらにSPEEDIですが、そのデータは当初公開されませんでした。公開されないということは、避難住民が適切な方向に避難するためにそのデータを有効活用できないということです。読売は、3月15日の時点で、『地震の影響で福島、宮城からデータが届かず、予測できない状況だった』と誤報を流しています。政府をかばっている。この読売の誤報に対し、原子力安全技術センターは、『読売の記事は誤りであり、SPEEDIは運用されていた』ということをHPで発表しました。

     役所は、自分たちのせいにされてはたまらないと考えて、出したのでしょう。3月22日の朝日は、『SPEEDIの情報が隠されている』ということを、まともな形で初めて言及しました。そして3月23日に、原子力安全委員会が、SPEEDIを使った試算を、事故後初めて公開しました。

     私たちは震災直後の3月12日から中継を続けていました。14日から東電の会見が始まりましたが、いつどうなるかわからないので、私たちは24時間中継をやっていました。3月23日になって、3月12日午前6時から24日午前0時までの間に、飯舘村、南相馬市など原発から半径30キロ圏外でも放射性ヨウ素による内部被曝線量が100ミリシーベルトに達する可能性があると発表された。こんなに時間がたってからの発表です。
    双葉町、大熊町など原発に近いところから飯舘村に逃げた人たちがいたわけで、子どもたちもいました。何のためにそこに行ったのか。避難した方々は、実は、平均して4回以上避難を繰り返しているそうです。その理由は、適切な情報がないため、大丈夫だろうと思って避難したところが、実は放射性降下物が降り注いで危険な場所なのだと知らされる。再び逃げて、さらに逃げて、逃げ惑ってきた。

     原発の危険性について、原発事故以前に周知されていたと答えている人は、10%を切っています。政府やマスコミの情報をそのままうのみにして信じるということは、どれほどリスクがあることか、ということです。

     SPEEDIについては、別の問題もありました。SPPEDIは文科省の管轄ですが、3月14日には、そのデータを外務省を通じて米軍に提供していました。国民には隠していながら、米軍には出していたのです。このことが明らかになったのが今年の1月16日で、平野文科大臣に記者会見で質問しました。
    すると、外務省の方から、米軍が支援のために部隊を展開するのでデータを提供してくれと言われたので、外務省に提供したと答えました。そこで、『なぜ国民に情報を提供せず、米軍に出すのか。この国の主権者は誰なのか』と質問しました。当然「主権者は国民です」とお答えになったのですが、その言葉は空々しく聞こえます。

     枝野さんの『直ちに健康に影響はない』という発言について、話したいと思います。私が枝野さんに質問したのは5月20日です。すると、枝野さんは『私は、直ちに健康に影響はないとは言っていません』と答えるのです。国民の中で、聞いたことのない人はいないはずです。何回も言っていました。官房長官、政府のナンバー2の言葉です。
    言った、言わないですむ話ではない。政府の現状認識を伝えるものとして、繰り返し発言していたことは、あらゆる記録に残っている。彼は、このことについて、のちに国会で追及されました(2011年11月8日)。3月11日から1週間で39回の記者会見をして、『直ちに人体あるいは健康に影響はないという発言は、全部で7回です』と認めた。
    私に答えた回答とは、また違うことを彼は言っているのです。政府要人の嘘、政府の情報隠蔽、そして国民を蔑ろにして、どこよりも早く放射性物質の拡散についてのデータを米軍には伝えていたことなどが、一連の動きの中で見てとれます。これは、急に起きたことではない。日頃からこんな政府だからこそ、大事がおきたときも同じだったのだろうと思います。

     いくつもの嘘が、今も続いています。そのひとつが、原発を再稼働しないと電力が不足するという嘘。去年の夏、大規模停電が起きずに過ぎた時点でこんな議論をしてもしようがないと思いますが、マスコミはその議論を延々とやり続けているわけです。冬も足りなくなる、今年の夏も足りなくなると、政府とマスコミが一緒になって議論している。今年が何年か前の猛暑と同じだったら、どうなるのかと。

     大飯原発をかかえている関西電力は、ピーク時に15.7%の供給不足になると言っている。全国9社で3%足りなくなるという。この数字は当初もっと大きかったのが、少し減った。それでも、関電は足りなくなると言っている。
    実は、菅政権のもと、昨年8月に国家戦略室の首相補佐チームが試算して出したのは、2012年夏の全国の電力は、原発なしでも2.8%~6%のプラスになるというものです。ですから、再稼働は全く必要ない。しかし、政府の試算でありながら、これは公表されていません。こんな試算が存在するのに出さない。悪質な情報操作です。

     もう一つ。電力が不足するということと、原発は経済的にコストが安いということ、この2つが推進派の論拠ですが、この論拠もデタラメです。総合資源エネルギー調査会という原発の窓口になっている機関ですが、ここが原発のコストは5.3円/kwで非常に安いという数字を出しています。
    一方で、私がインタビューした大島堅一さんという立命館大学の教授は、有価証券報告書の実績値からとったデータにもとづいて計算しています。この先生だけが実績値で、ほかの数値は、全部理論値です。ですから、実際の数値は大島さんのデータからでしかわからない。

     大島さんのデータによれば、原発のコストは10.68円/kwで、すべての数値より高い。原発が安いというのは嘘です。しかも、この数値の中に事故後の処理費用は入っていない。賠償コストも入っていない。さらには、原発には一般会計からも特別会計からも、税金が投入されているわけですが、このお金も入っていない。
    我々は電気料金だけでなく、税金からも原発のためにお金を取られているわけですが、これらすべてを入れると、桁違いに大きくなります。事故後の処理コストはとてつもなく大きいものですが、賠償コストだけを少し見てみましょう。原子力資料情報室の試算ですが、福島第一原発の処理で20兆円、周辺地域の除染で28兆円、あわせて48兆円になると推定されています。原発の事故は、他の火力発電等の事故と違い、途方もなく広域に、途方もない長期にわたって汚染が継続してしまう。ここがまったく違うところです。

     バックエンド費用、つまり後始末のコストについてみてみましょう。処理費用ですが、18兆~19兆円のお金をかけて核燃サイクルをやってきましたが、ここから取り出せたエネルギーはたった9千億円です。つまり、核燃サイクルは、やればやるだけお金が無駄になるのです。この夢の核燃サイクルが実現しなければ、原子力というのは全く意味がない。
    元々、日本は資源小国だから、枯渇する資源に頼っていては危険だ、外国の意向に左右されてしまう、石炭石油ではダメだ、ウランからプルトニウムを取り出して夢の永久エネルギーをつくろう、ということでスタートした。ところが、やればやるほど金がかかり、貧乏になっていくというとんでもない代物だと明らかになってきました。その上、大変危険なものです。

     危険という論理に、推進派はのってきません。推進派は推進派なりに真剣で、日本は資源小国だから、生き残りをかけてエネルギー問題に取り組むのだと考えています。しかし、それは全く意味がない。核燃サイクルというのは経済的に破綻しているのです。また、ウランは希少資源です。石油より早く枯渇すると言われています。ウランに頼っているのは、むしろ危険です。ウランの価格もこの数年間で倍以上になりました。 

     まだあります。政府は、昨年12月16日、福島原発は冷温停止状態になったとして、事故収束宣言を出しました。しかし、現在も毎時1千万ベクレルの放射性物質が放射され続けています。昨年6月までの積算で、セシウム137の放出は広島の原爆の168倍。4号機の使用済み核燃料プールには1300本以上の核燃料が保管されていて、原爆の4千発分以上のセシウムがある。

    ===================================
    ■核・原発と情報統制
    ~戦後の原発推進の真相
    ===================================

     岩上安身「ここまでで、おかしいなと思った方もいらっしゃると思いますが、電力不足というのは嘘です。まず火力ですが、ガスコンバインドサイクルを使えば熱効率は倍になるのですが、やらない。原発の経済性、コストが安いというのも嘘です。『命か、経済か』とよく言われますが、原発は命も脅かすし、経済性もまったくない。そうすると一体なんのために真剣に原発推進をやっているのかというと、答えはひとつしかありません。核武装のためです。

     では、核・原子力についてどのような導入の経緯があったのか。核爆弾が投下された後、この国はどのような情報の検閲がおこなわれるようになったのかを振り返りたいと思います。

     核・原発をめぐる報道の検閲についてですが、実は広島、長崎に原爆が投下された時点から、残留放射線の危険性は過小評価されてきました。3・11以降、福島を中心に広域に及んだ残留放射線による低線量被曝、内部被曝を危険視する側と、それは大したことない、安全だという側との対立があります。もともと危険性についての過小評価は、実は、広島・長崎に原爆が投下された1945年の時点ではじまっています。
    GHQのナンバー2のトーマス・ファレル准将は、1945年9月12日の時点で記者会見をして、広島の残留放射線はないと宣言しているのです。そしてウォーレンという科学者は、「広島、長崎の原爆は空中高くで爆発したため、1分以内の初期放射線は認めるが、その後の残留放射線はなくなった」というロジックを使って声明を出しています。

     その後9月14日に、鳩山一郎‐鳩山由紀夫さんの祖父‐が、朝日新聞紙上で米国の原爆投下を批判するコメントを発表します。「正義は力なりを標榜する米国が使用した原爆による国民殺傷は、毒ガス使用以上の国際法違反の戦争犯罪である」。つまり、原爆投下はジェノサイドで、国際法違反だと当たり前のことを言ったのです。そうしたら朝日新聞は48時間の新聞発行停止を命じられました。ここから先、プレスコード、検閲が始まります。7年間におよぶ占領期間中ずっと続きました。

     原爆が投下され、どのような惨状だったか、どんなに被爆者が苦しんだかについて、占領期が終わるまで情報は開示されなかったし、報道もされず、研究もできませんでした。その状態の一部は、ある意味で、今も継続し続けています。占領軍・米国は、治療は施しませんが、被爆者の検査などの医学情報の収集集積には熱心でした。いまもこの系譜は続いています。
    この核・原発をめぐる報道の検閲は、日本の医学界に対する支配的影響をもたらすというだけでなく、実は世界の医学界、その一番上にあるのがWHOになるわけですが、このWHOに対するIAEAの支配的な影響をもたらすことになります。

     WHOは、IAEAの許可無く放射線の影響に関する医学研究論文の発表を出せません。研究のために必要なデータであっても、IAEAの承認のないものは出せないのです。日本国内だけでなく、世界的規模です。WHOは独立していない。国際的原子力マーケットの支配下にあるのです。

     終戦直前の核投下の後、ビキニの問題、第五福竜丸の問題が起きます。1954年でした。第五福竜丸がビキニ環礁で被爆します。そして杉並の女性たちがはじめた原水爆禁止を求める署名運動によって、なんと3千万人を超える署名が集まった。このとき、反核と同時に、まだ当時戦争の生々しい記憶がありましたので、アメリカに対する怒りが潜在的にあり、反米の訴えが起きました。そんなときに読売新聞は、社主である正力松太郎が原子力推進の一大キャンペーンを打ち出しました。
    正力さんは自分が首相になりたかったのです。元内務官僚で特高の元締め、戦犯容疑者として巣鴨プリズンに収監されていたのに、なぜか助けられて、娑婆に戻り、読売新聞の社主として、日本テレビの創設者として、大成功をおさめます。その一方で、彼はCIAからPODAMというコードネームを与えられてアメリカの協力者として動きます。日本がサンフランシスコ平和条約を締結した後、形式上独立国家になった後もアメリカの日本に対する実質的、支配的影響はずっと続きます。
    一番ベースにあるのは日米安保ですが、それ以外にも各界さまざまな階層に協力者をつくり、いろいろな形でアメリカに従うようにとの世論の形成を行います。その点で、新聞の中でも、読売は突出していました。

     そういう人物が、中曽根さんと組んで原発を導入し、初代の科学技術庁長官になり、初代の原子力委員会の委員長になります。その読売が原発推進、再稼動賛成、TPP参加賛成、消費税増税賛成の論陣を押し出しているのは非常に示唆的です。すべて米国が望んでいることだからです。
    この国を支配・搾取し続けている米国の意向はどこにあるのか、そしてそれに隷従してすり寄って恩恵を得ようとしている売国奴の腹積もりはどこにあるのかは、読売を読んでいれば一目瞭然にわかります。

     新聞・テレビの原発の広告費は、確認できる範囲で電事連、電力会社から広告宣伝費883億円です。東電の広告宣伝費は116億円です。編集局長会議に参加している知り合いの編集局長は、「いいなりになるしかないんだよ」とハッキリ言いました。この方、ある全国日刊紙の編集局長です。3・11前は、電事連、東電から新聞社・テレビ局に多額の広告費が入っていました。
    しかし、3・11以降、それが格段に減ってしまった。新聞やテレビは、それまでも経団連マネーに依存し頼りにしていましたが、よりトヨタやキャノンなどの輸出企業中心の経団連に依存するようになりました。特に民放のテレビは、スポンサーがあって成り立っている。言いなりです。
    新聞は、購読者の購読料に支えられていて、一見、独立しているように見えますが、実は収益の7割は広告に依存しています。したがって、新聞は企業のちらしでしかなく、そして官報でしかないのです。情報がなければ、紙面はつくれず、その情報のソースは官僚に依存し、お金は財界に出してもらっているわけです。


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    ■TPPとアメリカ
    ~日本の富を奪う恐るべき「毒素条項」
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     読売の主張に注目してみましょう。震災直後の3月13日、「復興にはTPPを」という論説を掲載しています。政府は、税と社会保障の一体改革といいながら、社会保障の改革はなく、ただ増税ありきです。実は、消費税増税と一体になっているのは、法人税の減税です。消費税はいつも、巨大企業の法人税減税と富裕者への課税を緩和する減税とセットです。
    つまり、金持ちに対する優遇と、法人、それも中小ではなく巨大企業に対する優遇です。読売の社説では、「税と社会保障の一体化改革とTPPに参加する必要性はこれまで以上に増していて、負担の先送りをして業界のエゴを優先しているようでは、未曾有の国難を克服できない、国民全員が厳しい現実を直視すべきだ」などと主張しています。

     消費税増税については、アメリカからものすごい圧力があります。小沢一郎さんの陸山会事件の一審判決が出されたちょうど同じ日、東京都心の外国人記者クラブではジェラルド・カーティスというコロンビア大学の教授の記者会見があらかじめセットされていました。
    カーティスという人は歴代総理の指南役と呼ばれる人物で、小泉純一郎元総理を最も評価していて、小泉元総理の息子である小泉進次郎氏の先生でもある人です。ところがこの方は、CIAの協力者として知られる人物でもあります。

     どこの国に、首都のど真ん中で他国のスパイが演説をするのか。なんてことが許されているのか。日本だけでしょう、そんな間抜けな国は。このカーティスという人物を自民党は中枢に招き入れ、あろうことか民主党も中枢に招き入れ、BBL(ブラウン・バッグ・ランチ)という昼食会の講演でありがたくご高説を承ったりしている。
    カーティスは会見のなかで、「TPPを導入しろ」「消費税をあげろ」と主張し、小沢さんについては絶対おかしいと非難します。たかが大学の一先生が、よその国でそんな政治的に偏向した発言をするのは、おかしくないですか?

     アメリカから消費税をあげろといわれるなか、多くの新聞は延々と『消費税をあげるべき』と言ってきました。つまり日本経済、日本国民を人質に出しているようなものです。一方で、日本新聞協会は消費税増税について、『自分たちマスコミ業界に対する消費税の税率は軽減してほしい』旨の声明を出しています。これが新聞・テレビの正体です。ずっと分析していると、げんなりすることが毎日続きます。
    『業界のエゴを優先しているようでは、未曾有の国難を克服できない』と主張しておきながら、真っ先に自分たちマスコミ業界のエゴは主張する。とんでもない話です。

     特に被災地は、大変ピンチに差し掛かっています。その弱みにつけこんで、たとえばこれまで拒否してきた大規模集約の農業、漁業について、企業営利型の経営を認める、土地の独占を認める、外資の参入を認めるという政策がすすめられようとしているわけです。

     TPPの話を続けたいと思います。TPPの中身については本当に情報がありません。大体こんなものだという報道があるだけです。TPPへの交渉参加の協議開始は、菅政権が成立した2010年の10月に突如浮上してきました。だから菅さんが思いついて言い出したかのように見えますが、全く違います。
    確認される限りでは、2008年ごろから外務省、農水省、経産省といった担当官庁の局長クラスが、アメリカと交渉をはじめています。官僚は、国民と議会とは関係なくアメリカと交渉する。アメリカにやれといわれればやっちゃうわけですから、国民も国会議員も関係ないのです。

     TPPは、現在9ヶ国が参加を表明していて(※2012年10月8日にメキシコ、9日にカナダも参加を表明)、関税の撤廃、自由な貿易の協定といわれていますが、実は21分野もの領域にまたがるということはご存知だと思います。TPPのもっとも危険な点を申し上げたいと思います。TPPの先行モデルはNAFTA(北米自由貿易協定)で、アメリカはメキシコ・カナダと締結しました。そして、その次に登場したのが米韓FTAです。FTAは二国間とは言っていますが、実態はTPPとそう変わりません。

     TPPは9カ国プラス日本といっていますが、この中で日本とアメリカが占める貿易が9割です。したがって、実質的には日米FTAです。つまり多国間をよそおいながら、アメリカとのFTAを結ばされるようなものです。FTA、EPAといった自由貿易協定自体をすべて否定するつもりはありませんが、しかし今日のアメリカと結ぶことがどういうことかを考えなくてはなりません。

     この動きの問題点を指摘してきた議員たちもいて、自民党のなかにも議連があり、民主党にも『慎重会』(「TPPを慎重に考える会」(会長・山田正彦元農水相))というのがあります。2010年10月に菅さんが発表してから3ヵ月後の11年1月には、勉強会をスタートさせています。
    最初から私たちIWJは、勉強会のすべてを生中継で報じ続けてきました。びっくりすることに、勉強会は議員会館で行われているのですが、スタート時には、取材に来ている記者はゼロで、議員しかいませんでした。非常に重要な内容が話され、ときには官僚を呼んでなんとか情報を引き出そうとするやりとりが延々と続いているのですが、IWJ以外のメディアはこれをまったく報じようとしない。本当にひどい話です。

     慎重会の会長をやっているのが元農水大臣の山田正彦さんです。今年の1月に訪米しています。アメリカの政府の担当部局USTR(米国通商代表部)の要人と交渉しています。『TPPの中身が何なのかわからないから教えてくれ、将来どうなるのか開示せよ』と尋ねると、向こうは『米韓FTAをみろ。TPPはあれのバージョンアップされたものだから、勉強してくれ』と返事が返ってきた。では米韓FTAとはどんなものなのか。

     米韓FTAでは、関税がなくなります。牛肉はどうなるでしょう。韓国人にとって肉は非常に重要です。日本人にとっての魚のようなものです。牛肉の関税はいま40%ですが、これを15年で撤廃、豚肉の関税はいま25%ですが、これを10年で撤廃することになっている。日本は松阪牛のようなブランド牛がありますが、韓国には「韓牛」という一種類しかないから、太刀打ちできない。これでは、韓国の畜産はなくなります。

     日本は現在、食物自給率40%で、とんでもなく低いといわれていますが、韓国はすでに自給率26%です。そして、これが0になっても仕方ないということです。韓国は日本より、ある意味、新自由主義化が進んでいて、三大財閥がGDPをにぎっている大変な寡占状態です。しかもその三大財閥の株主の多くは、すでに外資によって占められています。
    韓国人は独占資本による工業のために農業を捨てた状態です。食べ物を握られるということは、その国の安全保障の一番の根幹のところを握られてしまうことです。これは序の口の話です。

     実は、米韓FTAは、なんでもかんでも非関税障壁として国内を保護する諸制度をひっくりかえしてしまうものです。以前、こんなことが話題になりました。昨年のAPECの前に首相がほんの半日だけ国会に出たとき、自民党の佐藤ゆかり議員が質問をしました。ISD(Investor State Dispute)条項についてです。すると、野田さんは「知らない」と答えました。

     ISD条項というのは、企業が自由な活動を制限されたと、進出先の相手国を訴えることができるもので、「毒素条項」ともよばれます。普通の裁判所ではなく、世界銀行の下の仲裁センターで審議されます。これは一審制で、かつ中身は公開されません。秘密です。そして出た仲裁勧告には絶対従わないといけません。

     米韓FTAでいえば、たとえば、あるアメリカの企業がやってきて韓国政府を訴え、いくら払わなければならないという決定が出たら、韓国政府は支払わなければならなくなる。ISD条項は、アメリカが介在していない他の条約にも含まれています。しかし、アメリカが入ると非常に一方的なものになる。すでにNAFTA(北米自由貿易協定)が先行しています。

     NAFTAをみると、カナダ、メキシコの相手にアメリカの企業が起こした訴えに対してカナダ、メキシコ政府は何件も敗訴してお金を支払っています。それに対してカナダ、メキシコの企業がアメリカ政府を訴えたもので、アメリカ政府が負けて金を払ったケースは1件もありません。アメリカに有利にできています。これが毒素条項です。

     つぎに、ラチェット(Ratchet)条項、逆進性防止条項です。何か問題が起きて関税などを元に戻す必要が生じても、韓国側は元に戻れないという条項です。非関税障壁で検疫なども撤廃させられる。仮にアメリカの牛に狂牛病が発生したとしても輸入をストップすることができない。国民の健康を守ることが、韓国はできません。

     それに対し、セットで入っているのがスナップバック(Snap-back)条項です。アメリカにとって何か不都合なことがあったら、いつでも元に戻せますという条項です。韓国はラチェット、アメリカはスナップバック。これはたとえば、韓国の自動車メーカーが優秀な自動車をつくり、アメリカの市場で評判を得たとしましょう。アメリカの自動車産業に不都合であるとなったとき、いま関税が2.5%でこれを一回0にはするけれど、アメリカにとって都合が悪くなったら元に戻すということなのです。非常に不平等な条約です。

     もっとひどい条項もあります。NVC(Non-Violation Complaint)条項。これは非違反提訴、つまりルール違反していなくても提訴できるという条項です。韓国側がこんな不平等な条件下において、一生懸命努力して自動車や電化製品などいい製品をつくって、アメリカでたくさん売れたとしましょう。韓国企業は、ルールに違反せずに競争に勝ったわけです。

     しかし、そのことでアメリカのメーカーが利益を得られなかった場合、米国政府が米国企業の代わりに韓国政府を提訴できるのです。国対国で問答無用の提訴をして、賠償金をとれる。自由な経済競争によって勝利したら、その代償は賠償金をとられるというわけです。これは自由経済の原理の否定です。米韓FTAが自由経済貿易、自由競争であるというのは、嘘っぱちです。完全な帝国主義、植民地です。こんなことが条約に組み込まれている。このようなことは、まったく報じられません。

     まだあります。サービスの非設立権の認定です。主に弁護士などのサービス業です。あらゆる業種の事業所が韓国内で自由に活動できるようになります。日本でも、アメリカの弁護士は日本の司法試験を通らず、事務所を日本に開設することができ、弁護士が活躍することができます。映画に出てくるような何百人のもの弁護士を抱えた巨大な事務所を開設することができる。
    対して日本の弁護士は、アメリカに行って活躍することはできません。完全な不平等条約です。日弁連の会長や事務総長の前で『おかしいではないか、いい加減にやめたらどうですか』といったことがありますが、すっとぼけられました。

     江田五月さんが法務大臣になったときに質問しました。逆切れされました。『何を言っているんだ。グローバル時代にそんなことを言っているからダメなんだ』と。これが現状です。危険性の自覚が法曹関係者に全然ない。アメリカから弁護士がきて、現実に事務所を構えて営利活動を行います。

     ところが事業所として届けなくていい、設けたことにしなくていいのです。韓国国内に事業所がないことになっているわけですから、何が起こるか。違法行為をアメリカの業者が行っても罪に問われません。そして何かあってもアメリカ国内に帰ってしまえば罪に問うことができません。
    米国企業の治外法権化です。基地の地位協定と同じだといえます。経済面の地位協定です。こんな条項が韓米FTAに含まれていることに、韓国の多くの人々は気づきませんでした。批准のギリギリのときまで中身が開示されなかったからです。


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    ■TPPの本質
    ~戦後アメリカによって潰されてきた自主独立派
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     では、なぜ韓国はこの条約を批准するはめになったのか。イ・ミョンバク大統領は韓国の国会議員たちに手紙を書いたそうです。理由は韓国の安全保障のため、米国との軍事的な一体化を進めなければいけないということ。中国、ロシア、北朝鮮、そして日本も脅威として入っていますが、こうした軍事強国に囲まれ、米国との軍事的な一体化を進めなければならないからだというのです。つまりFTA、TPPの本質は軍事ブロックなのです。
    米軍が安全保障を担っている、という話を持ち出されると思考停止になってしまう。韓国の状況は日本の状況とまったく同じです。「守ってやるから、いうことをきけ」ということです。

     是非、孫崎享さんの『戦後史の正体』をお読み頂くだけではなく、テキストとしてお使いいただけたらと思っています。高校生に向けての戦後史の本ですから、易しい文章で書かれています。原発のこと、TPPのことなどを見てきましたが、日本がどれだけアメリカの隷従化にあるのか、そしてそれがいかに巧妙に隠されているか。日本の財界、メディアといった支配体制が、どれだけアメリカに隷従しているのか。

     日本にも、自立派はいました。しかし、いつもつぶされてきた。自立派の官僚も政治家もいた。しかし、たとえば、米軍の『常時駐留』ではなく『有事駐留』を唱えた芦田均元総理は昭和電工疑獄事件でつぶされた。総理経験者として戦後初めて逮捕されましたが、のち無罪となりました。
    重光葵、鳩山一郎、石橋湛山、田中角栄、いずれもつぶされてきた。鳩山由紀夫も小沢一郎も、そういう目にあいました。米国にとって不都合なものは、日本自らの手で排除させるように、仕向けられていく。戦後史というのは、右左の対立なんかではなく,こうした自立派に対する追従派の駆逐の歴史といってもいい。

    さて、時間もありますので、いったん話を切り上げて、ご質問をお受けしたい。有り難うございました。


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    ■質疑応答
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    Q 民主主義の基礎を確かなものにするには、メディアの力が大きい。どのようなメディアをつくりあげていけば、民主主義の基礎となるような情報環境をつくっていけるとお考えか、教えて頂きたい。

    A さきほど日本のマスコミのことを批判しましたが、世界中のマスコミはスポンサーの圧力に弱い、権力に弱いという共通の弱点を抱えています。けれども、日本の記者クラブ制度のような、排他的で、特権的で、横ならびの情報談合カルテルが張り巡らされている国はそうそうない。
    どこの国のマスコミでも、日本のマスコミよりはずっと多様性があります。そもそもマスコミは近代の産物で、歴史は浅い。情報の送受信という歴史で考えてみたら、非常に歴史が浅い。マスコミが情報のすべてではないはずです。

     また、他の国の国民はマスコミを日本人ほど信じてないですよ。こんなに純朴に新聞やテレビのいうことを信じている国民はいないと思います。

     マスコミは一定程度役に立つことはあるが、まるまる信じるようなものではない。全面否定する必要はないけれど。しかし、部分的に嘘を並べたり、あるいは隠したりすることもある油断ならない代物なのだと教えてほしい。それはネットで補わないといけない。ネットも玉石混淆です。
    ネットは誰の目にも明らかなことですが、決して優等生ではない。その中から真実の情報を見つけ出していくこと、メディア・リテラシーが大事です。他方、マスコミは、優等生の顔をして嘘をつくこともある、そういう油断ならない相手であるということを教えてあげて下さい。

     もうひとつ大事なことは、アナログのコミュニケーションです。集いと語らい、これは人類の誕生にさかのぼれるほど古くて、今も有効なコミュニケーションです。これ以上のものはありません。マスコミには相互性がありません。顔を突きあわせての語らいには、相互性があるんですよ。ネットにも相互性がありますよね。相互性のあるコミュニケーション、これこそが重要です。

     ところが、マスコミは一方通行です。情報の一方的な送り手です。そして、これは情報の特権的な中心点から放射されている。ネットは特権的な中心点がないので、ネットはどこをどう信じたらよいか分からないという人がいます。これはおかしい。本来、世界に特権的な中心点などない。世界中のあらゆる局所、局所が情報の発信の中心点のはずです。特権的な中心点がないから、信じることができないなんていうことは愚かな事です。
    そもそも、情報に対して盲目的に『信じる』なんていう間違った態度はやめて下さい。

     マスコミはまるまるうのみにできるほど、信用できるような代物ではありません。だからといって、マスコミを全否定しているわけではありません。マスコミには、うさんくさいところがあり、一部のことは伝えて、一部のことは伝えないというバイアスが必ず入るのだということを申し上げているのです。大方は本当のことを言っているけれど、一部は嘘が入り混じる、油断ならない連中である。そういうつきあい方をして下さい。信じるという態度自体が大間違いです。
    信じるのではなくて、交渉するということです。嘘の記事書いたら、いい加減にしろという抗議電話をかけて下さい。抗議のファックスを送って下さい。抗議のメールを送って下さい。よい記事を書いたら褒めて下さい。ダメな新聞は買わないで下さい。ダメなテレビは見ないで下さい。ダメなものは批判して否定して下さい。素晴らしい番組は讃えて下さい。相互作用というのは大事なことです。そして、発信しないで受信だけしようとする態度はやめて下さい。

     特権的な中心点はありません。世界の中心はありとあらゆる所にあって、多極的なものです。中心という言葉を使わなくてもいい、ありとあらゆる所に立ってそれぞれの所から発信すればよいわけです。それは各地域ということでもあるし、各階層ということでもあります。ある階層の人たちしか発信できなかった世界は終わりにして、どの階層の人たちでも、中心を通らないで、それぞれローカルとローカルが結び合うということが、もの凄く重要です。
    当然の事ながら全部信じられるわけじゃないですよ。嘘つきもいっぱいいますからね。

     でも、嘘つきやデマや罵詈雑言をはく人間がいるのが社会じゃないですか。よい子ばっかりいるのは、社会ではないです。社会というのはやくざものや、ごろつきや、詐欺師や、ペテン師や、ちんぴらがいっぱいいる。それとつきあう手法を身につける、あるいはまともにつきあわないで身をかわす方法を習得する、というのも、社会を学ぶということだと思いますね。情報に関してはそういうことです。

     そして、受信も大事ですが、発信をすることです。SNSをどう使いこなしたらいいかという話がありますが、これはひたすら投げることです。SNSというのは相手がいないと面白くない。でもまず、自分のメッセージを発信しようということです。
    たとえていうと、キャッチボールで向こうが暗闇で見えないが、そこに向かって球を投げる。玉は向こう側にいって見えなくなる。でも、投げ続ける。そのうちぽーんと玉が返ってくる。そのうち面白い情報が入る。みんな受け取ることばかり考えているのですが、受け取る前に与えろと言いたいですね。与えよ、贈与せよ、というのは凄く重要なことだと思います。

     情報はこれまで、売買可能なものだと思われてきました。しかしいま、ネットの広がりの中で、情報の売買は原理的にはできないのではないか、という時代に入っています。ネットという市場の中で、すべての情報が無料になり、情報を切り売りすることができなくなった。発信された情報は、一瞬にしてコピーペーストされ、拡散されてしまうわけですから。
    せっかく1000円で情報を売ろうと思っても、別のところで無料で流されてしまう。誰もおカネを払ってまで、情報を買おうとはしなくなっている。すべての情報が瞬時にコピーペーストされてしまう世界とは、情報を自分だけでかかえ込むことができなくなった世界でもあります。情報は占有したり、自分だけで独占的に私的所有したりする対象ではなくなってしまった。
    ネット上の情報は、カネで買って独占するものではなく、シェアするもの、共有するものに性格を変えつつあるのだ、と思われます。価値はあれど、価値のつかないものになったと。

     そういう世界でのコミュニケーションは、情報を贈与するつもりでスタートする。対価は期待しない。しかし、ときとして頑張って続けてくれ、という御支援のカンパや寄付がある。たとえば、我々IWJは出発時点から寄付やカンパで支えられてきました。最近では、定額の会員制度を始めましたが、これは定期的に御支援し続けていただく制度です。
    つまり、誰かが金銭的に支えてくれていても、それは我々の姿勢に対する共感なのであって、個別の情報の売買とはいえない。共感による支持です。貨幣価値で換算するのとは違う世界、違う関係性があるということです。

     損得だけで言ったら、SNSをやるのは時間の無駄です。損得とは別の次元、さまざまな共感や生の充実のための情報のやりとりがSNSの中心です。市場で売買されるモノとカネの関係とは別の新しい関係性が求められているのだと思います。まだ、やり始めたばかりで、実験中です。こういう動きは、過去にもあったが、そのたびにつぶされてきたのかもしれない。かりにそうであっても、いいのではないでしょうか。抵抗するというのは、そういうことではないかと思います。


    Q.ふたつ質問があります。アメリカの目的はなんでしょうか。もうひとつは、読売新聞の海外特派員だった松尾邦之助に興味を持っているのですが、彼について伺いたい。

    A.すみません。私、読売の松尾さんという方は知りません。名記者なのかもしれないが、存じ上げてないし、読んでもいないので何とも言えません。

     もちろん読売には、黒田清さんのような気骨ある記者もいました。しかし、個々の記者がいくら訴えても、編集局長や主筆などに記事をつぶされてしまうことがざらにあるわけです。ますます、サラリーマン化が進んでいる。気骨ある記者には、何としても頑張ってもらいたいし、外へ飛び出して発信してもらいたいです。数は少ないけれども、そういう人は今後も現れるだろうと思っています。

     アメリカの質問については、テーマが大きすぎてここで答えられるような話ではありませんが、こういう見方はできるでしょう。アメリカの戦略を、一般の米国民が理解しているわけではありません。戦略を考えているのは、一部の人たちです。対日戦略については、非常に効率的な支配をしていて、ワシントンにいる何人か、官僚や知識人や財界人やジャパン・ハンドラーといわれる人たちが、決めているといわれる。

     対日戦略については、またの機会におくとして、アメリカの政治の実情を知るためには、この本を是非読んで頂きたい。『イスラエル・ロビー』(ジョン・J・ミアシャイマー&スティーヴン・M・ウォルト)、それからノーマン・フィンケルスタインの『ホロコースト産業』『イスラエル擁護論批判』。

     アメリカの戦略は、強力なイスラエル・ロビーによって歪められていて、国策はイスラエル寄りになっている。この点が、一般の日本人にはわかりにくいところです。日本人は、中東のことはさっぱりわかりません。パレスチナ問題も、イスラエルの存続の問題も、遠い話で、それが自分たちに影響するということもピンとこない。しかし、それがわからないとアメリカの政策の優先順位は理解できません。

     パレスチナ問題、イスラエルとパレスチナの平和的共存について、ある意味1970年代に国際的合意が形成されたと言っていいわけですが、イスラエルのタカ派と言われる人たちは決して認めない。そういうことがわからないと、なぜイラク戦争が起きているかもわからないし、なぜ中東がいつも火の海であるかということも理解できない。

     先ほど、孫崎さんの話をしましたが、孫崎さんは外務省の国際情報局で分析官と課長と局長を歴任した唯一の人です。
    国際情報局は、CIAに相当する情報機関ですが、最初は冷戦時代のソ連に行き、イラクの大使も勤め、大変な修羅場を体験してきた外交官です。その孫崎さんが、アメリカは、日本をどのようにアメリカにとって使い勝手のいい国にしてきたか、どのように日本を経済的に吸い上げてきたかについて、発言しています。よろしければ、IWJ制作の『Deep Night』1~3(DVD)をご覧頂きたい。


    Q.消費税増税について、日本の国債の格付けは下げられる、イギリスでは野田首相は勇気ある指導者だと報道される、先ほどのジェラルド・カーティスが消費税を上げるべきだと主張している話など、何かアメリカやヨーロッパは日本を不景気にしたいと考えているのではないかと思ってしまうのですが、どうか。

     もうひとつ、大飯原発の再稼働について、関西広域連合はずっと反対していたにもかかわらず、ある時期から急に変わったのはどうしてか。

    A.消費税増税は、法人税減税と一体です。1989年からスタートした消費税によって、これまで220兆円くらい国民の財布から吸い上げてきたといわれています。同時に1989年から法人税はどんどん減税されて、減税されなければ国庫に入るはずの法人税は大体207兆円くらいになります。ほぼ同じです。
    法人税の減税分を消費税が穴埋めしてきた計算になります。冷戦体制が終わってから以降、グローバル企業が優先される傾向が強まりました。大企業、大資本は、金融ビッグバンを含めてグローバル化を進めてきて、これは、いいことのように言われてきました。では、消費税が国に入って、法人税が減税されて、お金の流れはどういうふうになったか。

     1990年代、経済的強者を優遇する新自由主義経済の説明をするときに、『トリクル・ダウン』(trickle down)という理屈が使われてきました。上の利益があがれば、それが溢れて下に滴り落ちる、大企業の収益があがれば、その利益が滴り落ち、中小企業も儲かっていくという説明ですが、実際にはそうはならなかった。

     大企業の内部留保が空前の規模になったとき、結局どこにそのお金が流れていくかというと株主だった。日本の主要な大企業の株主を見ていくと、30~40%は外資です。韓国の場合は、過半数をこえています。韓国は90年代末のIMF管理後、経済的に乗っ取られたといえるかも知れない。

     何のことはない、消費税とは大企業のストローを通じて日本国民一人一人の富が吸い取られる仕組みではないですか。これでは消費不況が続き、デフレが進むのも当然です。
    アメリカは、円高ドル安にしておいて、アメリカの製造業を立て直そうとしているわけで、ドル高になればそうした構造が崩れてしまう。そういう大きな仕組みのなかに消費税増税はあるのであって、日本人にとってプラスになることはほとんどない。痛みつけられるのは家計、中小資本と地域です。地方のローカル資本は大資本にとってかわられ、グローバル資本が入ってくる。

     そして、一番の問題は国民の再生産ができなくなることです。少子化が進んでいるからです。家計が厳しくなれば、子育てが難しく、希望する子供数をあきらめ、少子化は改善されない。少子化が進むということは、高齢化も進む。そこで経団連がもくろんでいるのが、外国人移民の導入です。これはひたすら安い労働力を入れてコストを下げたい、ということでしかない。いまの国民に払っている賃金をもっとおさえる。これは無茶な話です。
    デフレはもっともっと進みますし、失業も増えます。ヨーロッパで深刻化しているような、移民との文化摩擦も起こるでしょう。偏狭で国枠的な排外主義、ショービニズムも台頭すると思われます。
    同時にそれは、移民の送り出し母国、主にアジアの近隣諸国とのあつれきを増やすでしょう。
    国民経済は結局、単に金だけの話ではなくて、経済を再生産していくと同時に、国民を再生産するということがなければ維持できないわけですが、そういう認識が決定的に欠落している。国民経済を犠牲にして、グローバル資本を肥え太らせている。非常に残念な話ですが、少子化対策に本気になるのであれば、国民への再分配の強化、そして公共投資を行う必要がある。
    国外に流出している富を国内に還流させる必要があります。デフレを止めるには、金融と財政出動の両方が必要です。国内に投資しなくてはいけない。公共投資をして、民間投資の呼び水にしなくてはいけない。そしてコンクリートだけではなく、人に投資しなくてはいけない。人がいないでコンクリートができても、空箱になるだけです。両方必要です。

     民主党が10年以上前から議論してつくったマニフェストは、再分配の強化、少子化に歯止めを、という点で、一定の意味があったと思います。しかし、それも一部の人間の利益のためにつぶされてきました。そういうことも考える必要があると思います。

     大飯原発の再稼働を関西広域連合が認めたという話ですが、これはひよったのでしょう。財界の圧力もあるでしょうし、リーダーシップをとっている橋下さんの変節の影響も大きいと思います。民主党も自民党もダメで、橋下さんの国政での期待も高まり、マスコミがとりあげる。その橋下さんは、脱原発を掲げたが、結局再稼働を認めた。ここらが潮時だという政治的計算が働いたのではないか。もともと、脱原発などする気もなく、一時的なポーズだった可能性もあります。

     6月15日に、大規模な官邸前抗議行動があった。ずっと大飯原発再稼働についての官邸前抗議行動が続いています。主催者はいろいろで、組織された動員ではありません。6月15日に1万2千人が集まった。メディアはこれを一切報じませんでした。これを契機にどんどん減っていくかと思ったのですが、6月22日の官邸前行動では、なんと4万5千人が来ました。

     私たちは、ずっとこの官邸前行動を中継し続けました。6月22日は凄かった。60年安保、70年安保以来ではないかと思います。そして、整然とした平和的で自発的な抗議行動でした。警視庁の発表は1万1千人でしたが、いずれにしても万単位です。さすがにこれは報じられました。
    報道ステーションは大きくとりあげ、多くのメディアが報じ、産経も報じました。一切報じなかったのがNHKと日経です。全く報じませんでした。これはひどい話です。今週末もたくさん来ると思いますが、さすがに今度は報じると思います。

     NHKは、いま起きていることは伝えません。原発事故の時、落ち着いて行動して下さいとしか言わない。その結果、むざむざと被曝してしまう。我々IWJは震災の翌日、3月12日には、経産省前の脱原発抗議行動を中継し、その日の夕方には初めて顔と実名を明らかにした東芝の原子力技術者・後藤政志氏へのインタビューを私が行い、中継配信しました。
    その中で炉心溶融、メルトダウンの可能性についても言及しました。『不安を煽るな』とさんざん批判されましたが、実際にはどちらが正しかったか。政府も東電もメルトダウンが起きている事実を12日の時点でつかんでいながら、国民には明らかにせず、マスコミは政府発表をたれ流す官報に徹しました。我々が報じることができたのは、独立したメディアだからです。
    このような事実は、ぜひ生徒に伝えて下さい。政府と大企業のコントロール下にあるマスメディアをまるまるそのまま信じていてはダメなんだということです」

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