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    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    岩上安身のIWJ特報!第61-62号 自民党「圧勝」~有権者1割強の支持で改憲発議すら可能になった総選挙結果の「異様」 

    第61号 第62号
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
               岩上安身のIWJ特報!
            自民党「圧勝」という「新しい現実」
      ~有権者1割強の支持で改憲発議すら可能になった総選挙結果の「異様」
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    2012/12/22
    (IWJ転載許可済み)

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    ◆民意と乖離した「異様な」選挙結果
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     2012年12月16日、衆議院議員総選挙の投開票が行われ、自民党が単独過半数を得て、第一党に返り咲いた。民主党は議席を230から57に大幅に減らし、約3年半におよぶ民主党政権は、その幕を下ろした。大手メディアは、一斉に「自民党圧勝」の報を出し、話題は今後の政策と、閣僚・党役員人事へと移っている。

     しかし、本当に自民党は「圧勝」したのだろうか? 各種データをみてみると、今回の投票結果が、必ずしも民意を反映したものではない「異様」な選挙だったことが浮き彫りになってくる。

     まず第一の「異様」さとして、今回の衆院選は、投票率が小選挙区で59.32%と、前回(2009年)の衆院選より10ポイントも減り、戦後最低であった点があげられる。その理由として、原発、TPP、震災復興、経済政策、消費税など、争点が分散化したこと、政党が過去最多の12党が乱立したことなどが理由として挙げられてはいる。

    【参考画像】http://j.mp/Wprw6R

     しかし、こうした分析は少しおかしい。3.11の東日本大震災以降、初めての総選挙であり、増税法案が可決された直後の選挙であったことを考えると、これは不可解という他はない。原発の維持・推進に賛成か反対か、増税に賛成か反対か、本来は対立軸が鮮明であったはずの選挙なのである。

    有権者の関心が低かったとしたら、むしろそのことのほうが驚きである。新聞とテレビの大メディアが、政策に相違点のほどんどない自民と民主と維新だけを繰り返し取り上げ、明白に脱原発・反増税を訴えている中道リベラル諸政党を黙殺するネグレクト報道を続けなかったら、「どこにも投票するところがない」と言って、シラケ顔で棄権してしまう有権者の数は、これほどまで多くはなかったであろう。

     有権者が好きこのんで棄権したというよりも、民主はもとより、自民にも維新に対しても、積極的に支持する気になれず、やむなく棄権したという側面が大きい。

    前号・前々号の本メルマガで指摘してきた通り、小沢一郎氏に対して「無罪」判決が下された直後の解散であり(無罪判決が出るとの予想が色濃くなって、解散時期を早めた可能性も取り沙汰されている)、「国民の生活が第一」を中心とする「オリーブの木連合」の体制を整える時間が不足したこと、同時にマスコミの横並びの「生活隠し」が徹底して行なわれた結果である。

    10月に都知事を任期途中で辞任した石原慎太郎氏が、橋下徹氏と結びついて日本維新の会を結成し、「第3極」右派で結集したため、第3極中道リベラルもあわせた対立軸の創出に失敗したことも、無関係であるとはいえない。こうしたことが重なりあって、世論は「投票する先なし」へと誘導されてしまった可能性が高い。

     また、全国の投票所4万9000か所のうち、約3割にあたる1万6000か所で、投票終了時間が繰り上げられたことなども、投票率の低下に一役買っている。なぜ今回、かくも多くの投票所で投票時間の終了が繰り上げられることになったのか。明確な理由と説明は、今のところどこにもみあたらない。

    【参考記事URL】
    http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121216/k10014214831000.html


     第2の「異様さ」は、「圧勝」といわれる自民党の獲得した議席数と、実際の得票数や得票率との乖離である。

     得票率をみてみると、今回は小選挙区で43.01%(前回38.68%)、比例区で27.66%(前回26.73%)と、大敗した前回の衆院選から、小選挙区で4%、比例区で1%程度しか伸びていない。全有権者に占める自民党得票率の割合は、小選挙区で24.67%、つまり有権者の4分の1程度であり、さらに比例区ではなんと15.99%にとどまる。つまり、「自民党」と党名を書いた投票者は、全有権者のうち1割強しかいないのである。

     さらに、自民党の得票数を見てみると、驚くことに前回より小選挙区で166万票減少、比例区では219万票も減少している。自民党を支持して投票した人の数は、自民党が大敗して政権与党の座から転落した前回の2009年の総選挙の数よりも、さらに減っているのだ。

     得票率は微増、得票数は大幅減、にもかかわらず、自民党の獲得した議席数は294議席で単独過半数を占めた。小選挙区で79%の議席、比例区で31.67%の議席を獲得した計算になる。有権者に積極的に支持されていない政党が「圧勝」してしまう。当選は1位のみで、それを少しでも下回れば落選という、小選挙区制の特質が如実に表れたかたちだ。今回の選挙結果の方が、より極端に小選挙区制の弊害があらわれた、というのは言い過ぎではあるまい。

     小選挙区で政権交代が起きたのは、これが初めてではない、前回の選挙で民主党が大勝した時も同じメカニズムが働いたはずだ、自民の大勝にばかりケチをつけるな、と言う向きもあるだろう。しかし前回、民主党は全有権者のうち、小選挙区で32%、比例区で29%得票している。小選挙区で24.67%、比例区で15.99%だった今回の自民党より、民主党は得票率ともに上回っていたのである。

     第3の「異様さ」は、文字通り民意との乖離である。12月17日付の東京新聞によると、世論調査で「原発ゼロ」を支持する人は59.8%、約6割にのぼったのに対し、今回の選挙の結果、「原発ゼロ」に賛同する議員は、28.8%、約3割しか当選していない。

    同様に、「増税反対」支持は55.6%と、6割近かったのに対し、議員の当選は12.0%、わずか1割で、9割は増税賛成である。そして「改憲」についても同紙の世論調査では41.4%が「改憲反対」と4割にのぼったのに対し、改憲に反対する議員の当選は16.0%となっている。東京だけをとってみても、明らかに民意と投票結果に隔たりがあるのだ。

     最後に、今回の選挙の第4の「異様さ」として、議員1人当たりの有権者数が、選挙区ごとに異なる「一票の格差問題」にも言及する必要があるだろう。前回の衆院選は最大2,30倍の格差で、最高裁は「違憲状態」と判断した。しかし、今回は小選挙区の区割りが同じ状態のまま行われた。むしろ格差は2.43倍に拡大し、「違憲状態」はさらに悪化しているのだ。

     こうした一連の「異様さ」に、あえてもう一点つけ加えるとすると、「無効票」の「異様な」多さがあげられる。驚くべきことに、小選挙区では、白票や候補者以外の名前が書かれた「無効票」が約204万票に上り、「過去最高」であったことが、朝日新聞の集計で判明した。

    【朝日新聞記事URL】http://digital.asahi.com/articles/TKY201212170931.html

    なぜこのような現象が起きたのか、この事実が何を意味するのか、現時点では確かなことはわからない。謎という他はない。


    ===================================
    ◆自民党「圧勝」ではじまる「新しい現実」
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     いずれにせよ、我々はこの結果を冷静に見据えなければならない。自民党が「圧勝」したというのは「新しい現実」なのである。

     原発、TPP、消費税、被災地復興、改憲など、懸案事項が山積するなか、自民党政権がどのような舵取りをしていくのか、注視していく必要がある。なかでも、衆院選の争点の一つであった改憲が、選挙後、本格的な動きを見せていることは見逃せない。開票作業が続く16日夜の記者会見で、安倍晋三総裁は早くも改憲に言及した。17日には、改憲の国会発議に衆参両院の3分の2を必要とする「第96条」の改正を目指す考えを表明、「維新、みんなの党とは基本的に一致できる」と発言した。

     憲法「第96条」によると、改憲には、まず衆議院・参議院で3分の2以上の賛成を受け、「国会の発議」を行い、国民投票で過半数の賛成を得る必要がある。

    単独で294議席を保持する自民党は、衆議院の3分の2以上(320議席以上)を、同じく改憲派の維新の会(54議席)と組むことで348議席となり、容易に達成できる。さらに、同じく改憲を唱えているみんなの党(18議席)との連携も視野に動いており、改憲に慎重な姿勢を示す公明党(31議席)も、過去の自民党政権の時と同じように、最終的には自民党と足並みを揃える可能性が高い。

    自民、維新、みんな、公明が連携すると、議席は397議席となり、衆議院定数(480議席)の8割弱を占めることになる。少なくとも改憲の「国会の発議」に必要な第一ステップは、すでに楽々クリアしているのだ。前述したように、「自民党」と党名を記した有権者は、全有権者中の1割強程度であるにもかかわらず。

     「改憲」と聞くと、一般的には「9条改正」を思い浮かべる人が大半だろう。しかし、自民党が用意した憲法改正案には、基本的人権の制限や表現の自由の制約、緊急事態における内閣の大権と国会の軽視などに、様々な問題が含まれている。

     我々IWJでは、選挙期間中からこの自民党新憲法案を分析し、取材を行なってきた。その取材をもとに、この自民党新憲法案の内容と、今後どのような手続きで改憲が行なわれるのかを、紹介することにしたい。自民党がこれから何をしようとしているのか、今後何が起こるのか、見定める上で重要な判断材料となるであろう。比例で「自民党」と書いて投票した「1割強の有権者」ですらも、こうした危険な内容を含む改憲案であることを、十二分に理解していたとは考えにくい。


    ===================================
    ◆来年7月の参院選の結果次第で、改憲へ大きく舵を切る可能性
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     前号で論じたように、私たちの眼前には、「異様」な、しかし動かしがたい「新しい現実」が突きつけられている。

     比例で「自民党」と投票したのは全有権者の1割強にすぎないのに、単独過半数を優に超える294議席を獲得し、「圧勝」した自民党。改憲を公約に掲げる日本維新の会の議席数54と合計すると348議席。衆議院定数480議席の3分の2(320議席)を超える。

     自民党と、維新、みんな、公明が連携すると、議席は397議席となり、衆議院定数の、なんと8割弱を占めることになる。改憲のための「国会の発議」に必要な第一ステップは、すでにクリアしている。戦後初めて、改憲が現実味を帯びて我々に迫ってきているのである。

     では、改憲に至るまでに、自民党は今後どのようなステップを踏んでいくのか。自民党新憲法案の内容を紹介する前に、その手続きにふれておくことにしたい。

     そもそも、憲法改正には、大きく3つの手続きを踏む必要がある。「第96条」の規定により、まず衆議院・参議院で3分の2以上の賛成を受け、「国会の発議」となる。その後、国民投票による多数決で承認されると「国民の承認」となり、「天皇の公布」が行なわれて初めて「憲法改正」となる。

     「衆参両院の3分の2以上」とは、衆議院・参議院それぞれの3分の2以上が必要ということである。前述したように、衆議院における3分の2以上は、すでにクリアしている。

     次のステップとして、参議院の3分の2以上(約160議席以上)の賛成が必要となる。現在自民党は参議院では83議席であり、参議院(242議席)の半数にも満たない。ここに維新の会(3議席)、公明党(19議席)、みんなの党(11議席)が加わっても、現状では116議席であり、参議院の3分の2以上の賛成を得ることはできない。

     国会での首班指名は26日の予定だが、自民党の安倍晋三総裁が内閣総理大臣に就任することは確実である。そこで、改憲を悲願とする安倍政権は、来年7月の参議院選挙で多数派勢力を形成すべく力を尽くそうとするだろう。もちろん今後、安倍政権に批判が集まれば、大きな揺り戻しが起こるかも知れない。

    しかし、そこは自民党も心得ており、7月に行なわれる予定の参院選後までは、国民の反発を煽るような政策は控え、「安全運転」で政権運営を進めるだろう、とみられている。逆に、積極財政によって、有権者への一時的に景気を上げ、印象を良くしていくことも予想される。現に自民、公明両党は、景気対策として10兆円規模の大型補正予算を編成する方針だ。

     自民党と連立を組んできた公明党は、改憲、とりわけ9条の改正には反対の立場である。今回の総選挙での自民党の勝利も、小選挙区においては、創価学会票を持つ公明党のバックアップによるところが大きい。
    来る参院選でも、公明党の協力は不可欠である。自民党は、改憲反対の公明党に配慮し、少なくとも参院選まではおおっぴらに改憲に踏み込んだ発言は控えるのではないか、という憶測がもっぱらである。

     18日に行なわれた自民党安倍総裁と、公明党の山口那津男代表との党首会談でも、安倍総裁は改憲には触れず、公明党に対して一定の配慮を示した。
    その後の両党政調会長会談でも、自民党は衆参両院の憲法審査会の活性化を提案するにとどめ、憲法問題で抑制的な姿勢に努めている。しかし、来年7月の参院選で自民党や維新などが勝利し、改憲派だけで3分の2以上の議席を得た場合、この公明党のストッパーは効かなくなる可能性がある。


    【関連記事】
    http://mainichi.jp/select/news/20121219ddm005010139000c.html


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    ◆来る安倍政権が改定を急ぐ「憲法96条」とは
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     衆院選後、自民党は真っ先にこの「衆参3分の2以上の賛成」という「憲法第96条」を「衆参の過半数の賛成」に改正しようと、維新の会、みんなの党に協力を求めている。
    安倍総裁は17日の記者会見でも、「憲法第96条」の改正に言及し、「3分の1をちょっと超える国会議員が反対すれば、国民が指一本触れることができないというのはあまりにもハードルが高すぎる。変えるべきだ」と述べている。もし、「憲法第96条」が自民党案のように改正されると、単独過半数を保有する党が、一党のみで容易に「国会の発議」を行なえるようになる。


     参議院で改憲派が勝利し、「国会の発議」が行なわれると、次は国民投票で国民の過半数の賛成を得る必要がある。ここで注意しなけれはならないのは、この「過半数の賛成」とは、全有権者の過半数ではないということだ。総務省に確認したところ「国民投票は『投票総数の過半数』によって決まる」という回答を得た。
    「投票数の過半数」で決まる、ということは、即ち、投票率によって結果が左右される余地があるということだ。投票率が低ければ低いほど、大きな組織力を保有する政党の改憲案が通る可能性が高くなる。戦後最低の投票率となった今回の衆院選の結果をふまえると、この規定の持つ意味が重要になってくる。

     改憲問題には、様々な問題がある。改憲イコール9条2項の「交戦権」と「戦力保持」の否定を改めること、と思っている人々が圧倒的に多い。、毎日新聞が9月に行なった世論調査では、回答者の65%が憲法改正に賛成している、という。「時代にそぐわない」というのが主な理由である。尖閣の領有を巡る中国との緊張の高まりも、9条改正へ世論が傾くテコとして作用しているだろう。

     しかし、実は自民党が4月にまとめた新憲法案は、9条2項の改正だけを求めるものではない。改正点は多岐にわたり、その中には、基本的人権や表現の自由を制約する可能性のある様々な条文が含まれている。ところが、前出の毎日の世論調査を含め、改憲について問う、各大手メディアの調査には、こうした9条2項以外の改憲項目についてどう考えるのか、という設問が含まれていない。

     そもそも国民の大半は、自民党の新憲法案をよく知らないのが現状だろう。これらの条文について十分な情報が行き渡らず、国民的な議論がなされることもなく、「なんとなく時代にそぐわない」という空気が醸成され、高揚するナショナリズムに煽られて「9条」のみに焦点が狭まっていくと、改憲に賛成票を投じる人が多数を占める可能性が高まる。


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    ◆「自民党新憲法案」の大きな5つの問題点
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     では、この様々な問題が指摘されている自民党新憲法案とは、どのようなものなのか。2012年4月27日に決定されたこの改憲案は、自民党のHPに掲載されており、誰でもダウンロードできるので、一度手に取って読んでみて欲しい。

    【自民党新憲法案URL】
    http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf


     また、昨年11月から審議入りした「憲法審査会」(※)では、この自民党新憲法案を含めた憲法改正の論議が行なわれている。自民党と公明党が12月19日に連立に大筋合意した文書でも、「憲法審査会の議論を促進する」という項目が盛り込まれており、こちらも注目していく必要がある。これまでの憲法審査会の議事録も、参議院HPより読むことができる。

    【参議院憲法審査会HP】
    http://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/


     この憲法審査会や、多くの識者らが指摘する自民党新憲法案の問題点を、ひとまず以下の5点に絞って紹介したい。

    ・9条改正(集団的自衛権の行使)
    ・基本的人権を制約
    ・思想・表現の自由の制約
    ・文民統制(シビリアンコントロール)の排除
    ・緊急事態時に内閣に大権

     選挙期間中の12月12日、IWJは、NPJ代表の梓澤和幸弁護士と、憲法問題に詳しい澤藤統一郎弁護士とともに、この自民党新憲法案について鼎談を行なった。前述の憲法審査会での議論や、この鼎談のなかで出された指摘もふまえて、個別にみていくことにしたい。

    【2012/12/12 自民党の憲法改正案についての鼎談 動画記事URL】
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/44511


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    ◆「憲法第9条」の改正と集団的自衛権の行使で、「国防軍」が米軍の下請け化
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     まずは、平和憲法で知られる「憲法第9条」の改正である。自民党新憲法案と現行憲法を以下に抜粋する。


    【現行憲法】
    第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

    2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


     【自民党改正案】
    (平和主義)
    第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。

    2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。



     両者を見比べてみると、自民党新憲法案では、現行憲法の9条2項の「戦力の保持」と「交戦権」の条文がまるまる削除され、「自衛権」の発効を明記している。急迫不正の侵害に対してはどんな国家であれ自衛権の発動が許されることは、国連憲章でも明記されており、日本も「自衛権」を憲法に書き込むことは自然であるように思われる。

     問題は「日米同盟の深化」と、「応分の負担(バードンシェアリング)」が米国から強く求められている文脈では、この「自衛権」の明記には、米国との「集団的自衛権」(※)の行使可能が含意されてしまうことだ。ここが9条改正の最大のポイントである。

    「集団的自衛権の行使」といえばもっともらしいが、結局のところ、米国の国際戦略に従い、自衛隊(もしくは「国防軍」)を日本の国防とは直接関係のない、遠く離れた戦地にまで派兵させられ、血を流すようにすることを意味している。

     自民党は、「米国の占領軍(GHQ)の押しつけ憲法から脱却し、自主憲法を制定すべし」と強く訴えているが、しび一方で、同じく占領下で米国から押しつけられてきた在日米軍基地の退去は求めず、さらに現在の米国が再三にわたって日本に要求してきている「集団的自衛権の行使」はすんなり受け入れるというのだから、矛盾していると言わざるを得ない。

    米国は過去に憲法を「押しつけた」かもしれないが、現在、9条を変更し、集団的自衛権を行使できるようにせよと「押しつけ」てきているのは米国なのである。過去の「押しつけ」を現在の「押しつけ」に更新するだけなら、どこが「自主独立」なのか、何が「自主憲法」なのか。米国の言われるがままではないか。

     4ヶ月前、今年8月15日に発表された「第3次アーメテージ報告書」の中でも、米国は「集団的自衛権の行使」と「(日本が)ホルムズ海峡へ掃海艇を出す」ことを要求している。本メルマガ第48号で報じた通り、8月21日に来日講演を行なったこの報告書の作成メンバーであるシュライバー氏も、「9条の見直し」と「集団的自衛権の行使」を要求している。

     また、石原慎太郎氏の尖閣購入発言の舞台を提供した、保守系シンクタンク・ヘリテージ財団が、11月14日に発表した論文でも、「同盟国(米国)の安全保障上の必要に見合うよう、防衛費支出の増大を促す」「集団的自衛権で柔軟な解釈をするようにすべき」「日本は海外の軍事展開で同盟国(米国)の資源を消耗させるのではなく、効果的貢献を行うべき」「安倍新政権は韓国に対して歴史問題で譲歩すべき」などという要請がなされている。
    これらは「提言」の体裁をとってはいるが、ソフトな「押しつけ」ではないだろうか。

     未曾有の財政危機にあえぐ米国は、にもかかわらず、地球規模で米軍を展開し、先制攻撃を含めて武力行使も辞さないという超軍国主義的戦略を改めようとはしていない。米国の軍事費は約60兆円、全世界の軍事費(140兆円)の4割強を占め、ダントツの1位であり、2位の中国の5倍におよぶ。そんな軍事費を財政赤字の米国が維持し続けることは、不可能と思われるのだが、米国は過剰な戦費の負担を、日本に肩代わりさせようともくろんでいる。

    これまでは現行9条の2項により、集団的自衛権の行使にも歯止めがかかっていた。ところが、これを削除してしまうと、米国の「押しつけ」に対して「拒否できる理由」が消滅してしまう。米軍の代わりに戦地へ派兵させられるだけでなく、すでに世界第5位の規模の防衛費も青天井となり、英国製の兵器を買わされ続けることになりかねない。それは、ただでさえ厳しい日本の財政を逼迫させることになるだろう。

    (*)集団的自衛権:他の国家が武力攻撃を受けた場合に、直接に攻撃を受けていない第三国がこれを援助し、攻撃に対して共同で防衛を行う国際法上の権利。集団的自衛権の本質は、自衛権を行使している他国を援助して、これと共同で武力攻撃に対処するというところにある。
    (Wikipediaより)


    ===================================
    ◆基本的人権を定めた「第97条」を全文削除
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     第2に、戦後生まれの日本国民であれば、誰しもが当たり前のように享受している、「基本的人権」についての改正案である。現行憲法では、第11条と第97条に重複して明記されている。それほど国民の基本的人権とは、侵す事のできない永久の権利とされてきたのである。しかし、自民党新憲法案には、この権利を制約する改正が行なわれている。まず、第11条の改正を以下に抜粋する。


    【現行憲法】
    第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。


    【自民党改正案】
     (基本的人権の享有)
    第十一条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。



     両者を見比べると、自民党新憲法案では、現行憲法の「現在及び将来の国民に与へられる」という文言が削除されている。さらに、第97条に施された改正を紹介したい。以下に現行憲法を抜粋する。


    【現行憲法】
    第十章 最高法規
    第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。


     驚くべきことに、自民党新憲法案では、この「第97条」は丸々全文削除されてしまっているのだ。現行憲法に比べて、国民の基本的人権、個人の尊厳の尊重に対する軽視が明らかに見て取れる。


    ===================================
    ◆「思想・表現の自由」を制約し、デモやネット言論などあらゆるものが規制対象に
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     第3に指摘すべき問題点は、今日のインターネット上での言論や、デモや抗議行動など、国民の行動に密接に関わる「思想・表現の自由」についての改正点である。自民党新憲法案では、現行憲法において「思想・表現の自由」に関わる「第19条」と「第21条」を改正し、制限を加えようとしている。まずは第19条を抜粋する。


    【現行憲法】
    第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。


    【自民党改正案】
    (思想及び良心の自由)
    第十九条 思想及び良心の自由は、保障する。


     自民党新憲法案では、「これを侵してはならない」を「保障する」という言葉に変え、保障はするが不可侵ではない、と解釈できる余地を入れている。何よりも「保障する」のは、誰が、誰に対してなのか、という問題が浮上する。
    「政府」が、「国民」に対して「保障する」のであれば、「思想・表現の自由」は政府の許可のもとの限定的な自由しかないことになっていまう。また、それは近代の立憲主義そのものの否定にまでつながる怖れがある。

     「表現の自由」に関する「第21条」についての改正点を、以下に抜粋する。


    【現行憲法】
    第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。


    【自民党改正案】
    第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。

    2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。


     自民党新憲法案では、新たに「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動は認めない」という条文が加えられた。この条文により、「脱原発」や、「戦争反対」、「増税反対」といった主張に対し、政府が「公益及び公の秩序を害する」と判断しさえすれば、デモ、抗議行動、インターネット上の言論など、あらゆる表現を規制することが可能となる。

    ファシズム、スターリニズムなど、極左・極右の全体主義国家と同様の、おそるべき思想・言論の統制が可能となってしまうのである。


    ===================================
    ◆文民統制(シビリアンコントロール)を排除し、元軍人が総理大臣に就任できるようになる
    ===================================

     第4に指摘しなくてはならない問題点は、文民統制(シビリアンコントロール)(※)に関する改正である。戦争は、国民の生命や自由に直結する、最も重要な問題であり、であるからこそ、近代民主主義国においては、主権者である国民が国民の代表を通じて、これを決定する必要がある。これが、文民統制の基本理念である。
    つまり、軍人が国の最高権力者となり、軍の最高指揮官となることを禁じているのだ。しかし、自民党新憲法案では、そこに改正が加えられている。以下、「第65条」と「第66条」を抜粋する。


    【現行憲法】
    第六十五条 行政権は、内閣に属する。

    第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。

    2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。


    【自民党改正案】
    (内閣と行政権)
    第六十五条 行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。

    (内閣の構成及び国会に対する責任)
    第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長である内閣総理大臣及びその他の国務大臣で構成する。
    2 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない。

    3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。


     自民党新憲法案では、現行憲法の「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」が、「現役の軍人であってはならない 」に変更されている。
    つまり、田母神俊雄氏のような自衛隊幹部OBであっても、「現役」でさえなければ、軍人が総理大臣や国務大臣に就任できるようになると考えられる。これによって文民統制という理念は雲散する。事実上の軍事政権の樹立が可能となるのである。軍国主義の悪夢再び、との懸念は、決して杞憂ではない。


    ===================================
    ◆緊急事態時に内閣に大権が与えられ、すべての国民がその管理下におかれる
    ===================================

     こうして「基本的人権」「思想・表現の自由」など、国民の権利と自由を制約する自民党新憲法案は、新たに加えられた「第98条」と「第99条」によって、その本質をあらわにする。東日本大震災や福島第一原発事故、尖閣における日中の衝突のような緊急事態が起こった際に、内閣に全権が委任される条文が創設されているのだ。これは現行憲法にはなかった条項である。以下、抜粋する。


    【自民党改正案】
    第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。 (略)


    第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。(略)

    3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。


     自民党新憲法案では、何らかの自然災害・争乱が起こった時に、内閣が「緊急事態宣言」を発することができる。そして、この緊急事態宣言が発令されると、内閣は「法律と同一の効力を有する政令を制定」と「地方自治体の長に対して必要な指示」することが可能になり、国民は「国その他公の機関の指示に従わなければならない」のである。

     これは、まさに「戒厳令」である。ひとたび「戒厳令」が発せられると、国民は内閣の強い規制・管理下におかれる。前述の「第66条」によって、元軍人が軍事色の強い独裁政権を敷く未来も否定できないのだ。

     この「第98条」と「第99条」については、憲法審査会でも異論が相次いでいる。5月16日に参考人として招致された上智大学法科大学院の高見勝利教授は、この条文について以下のように問題点を指摘した。以下、議事録より抜粋する。

    (議事録より)
    「緊急事態宣言の下における、『法律に代わる政令』の狙いが、平常時では加えることのできない、憲法上の基本的人権の制限にあることは、国家緊急権の定義からして明らかであります。
    とりわけ自民案の場合、既に『公共の福祉』というこれまで憲法が用いてきた人権制限の限界を画する概念を破棄しておりますので、新たに導入された『公益及び公の秩序』という概念が、どの程度国民の権利、自由の制限の限界を指示する概念として機能するかは、判例の集積を待って判断するほかありません」

    「民刑事上の公序、公益の概念が、そのまま憲法上の人権制約の根拠に抜てきされたことで、人権保障のハードルが顕著に低下するであろうということであります。したがって、(自民案では)平常時において既にその保障のハードルの低下している人権について、更に緊急事態宣言によって人権条項を停止し、政令によって無限の制限を加えるというのでありますから、ここではもはや評すべき言葉はありません」

    【議事録URL】
    http://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/keika/img/pdf/180-240516.pdf


     自民党新憲法案は、平常時の「基本的人権」「思想・表現の自由」を制限し、さらに緊急事態発令下で内閣が出す政令によって、それらに無限の制限を加えるものであることを指摘した高見教授は、「もはや評すべき言葉はありません」と最上級の表現で厳しく批判している。

     さらに、5月30日の憲法審査会では、社民党の福島みずほ議員がこの高見教授の発言を引用し、「極めて甚大な人権侵害が起こりうる」と警鐘を鳴らしている。以下、議事録から抜粋する。

    (議事録より)
    「大日本帝国憲法下において、緊急勅令、戒厳大権、非常大権、財政緊急勅令という四つの国家緊急権が認められておりました。大津事件でもこの緊急勅令がされ、表現の自由が制限されております。また、大きいことは、関東大震災において戒厳令がしかれました。そのことについては、例えば戒厳令適用手続の違法性、朝鮮人大量殺害事件及び社会主義者殺害の誘発など、戒厳令の適用にも学者も批判を強めております。

    結局、人権規定を停止、制限することで、このことによる極めて甚大な人権侵害が起きるということがあります」

    【議事録URL】
    http://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/keika/img/pdf/180-240530.pdf


     この問題については、前述の梓澤和幸弁護士、澤藤統一郎弁護士との鼎談の場でも、危険性が指摘されている。以下、そのくだりを抜粋したい。


    (以下、抜粋)
    梓澤氏「これ(第98条・99条)を分かりやすく言うと、法律的に完全に正確かどうか分からないけど、例え的に言うと、戒厳令ですよ。つまり、軍隊や警察が中心になって、裁判権も行政権も把握していくことを可能にしていく。

     前のほうの改憲の条文のところに、軍のことをやる裁判所を作るという条文があります。そういうことを考えると、例えば、福島原発のようなことがあったときに、例えば原発反対のビラ撒きは禁止。それから、原発の情報を外に流すことは禁止。そういう特別に人権を極端に制限させる機関を作るわけですよ。

     今、例えば逮捕・勾留を23日しか出来ないという規定を、無期限にする。そういう、秩序自体に反対する者を無期限に制約していく。アメリカの愛国者法(※)を、オバマ大統領が恒久化したと、昨日の会合(12/12 弁護士会館で開かれたシンポジウム)で堤未果さんが言ってたけれども、長期に活動家を逮捕したり、原発反対の活動家を逮捕したり、ぶち込んでおくというような法律まで、この条文によって可能にしていく。これはたいへんなことだと思います」

    (※)愛国者法:テロリズムの阻止と回避のために必要な適切な手段を提供することによりアメリカを統合し強化する2001年の法。2001年10月26日に米国大統領ジョージ・W・ブッシュが署名して発効したアメリカ合衆国の法律。
    (wikipediaより)

    IWJ平山記者「例えば、この憲法が日本国憲法にとって代わった場合、3.11のような原発事故があったとして、緊急事態というものが発令されて、政府から情報がまず下りてこない。政府に対して、デモをしたり、抗議をしたり、原発反対の運動をしたり、こういうものが一切禁止?」

    梓澤氏「一切というか、一応の理屈をとってバランスのとれたふうにしながら、ちゃんとそういう集会の自由や、デモ行進の自由を制限していくようなやり方をとるでしょう」

    澤藤氏「関東大震災があったとき、日本の軍隊と内務省が何をやったのか、というのを考えてみれば、非常によく分かることだと思います。

     あのなかで、朝鮮の方が当時2万人いたうち、9千人が殺されたのではないか。6千人殺害という説もありますけれども、そういうことが本当に行なわれる可能性がある。そういう事態を作りだそうと思えば、国家はできるわけですね。それが、戒厳令というのもそうですけれども、なにかの事態のときに、全面的に人権は停止、国家権力が好きなことができるという、こういう条項は、本当に危険なことだと私は思います」
    (抜粋終わり)


     事態は深刻であり、かつ緊急を要する。このメルマガの冒頭に述べた通りに、これは悪夢ではなく、「新しい現実」なのである。自然災害や他国との衝突を理由として、言論の自由が著しい制約を受け、軍事政権が樹ち立てられ、事実上の「戒厳令」が敷かれる。そしてそれが非常時だけでなく、常態化してしまう。全体主義国家への転落の道筋である。そんなことが現実化すれば、近代民主主義国家としての終わり、先進諸国の隊列からの脱落を意味する。中国や北朝鮮のことを、日本は非難できなくなる。

     私やIWJの報道・言論活動もまた、制約を受けるだろう。活動も存続もできなくなるかもしれない。であるからこそ、我々は今、警鐘を鳴らし続けなければいけないと思う。下記のお知らせの通り、12月23日に開催する「饗宴3」では、急遽「改憲問題」をテーマのひとつに追加した。一人でも多くの方々に御参加いただき、この危機感を共有してもらいたいと心から願う。

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