11« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»01

    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

    スポンサーサイト 

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    スポンサー広告  /  tb: --  /  cm: --  /  △top

    岩上安身のIWJ特報 第80号「信教の自由」と「表現の自由」が保障されなくなる~自民党憲法改正草案ゼミナール・第2弾(後編) 

    第80号
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                 岩上安身のIWJ特報
          「信教の自由」と「表現の自由」が保障されなくなる
    ~自民党憲法改正草案についての逐条ゼミナール・第2弾(後編)
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    (IWJより転載許可済み)


    (前編よりの続き)
    ===================================
    ◆ 表現の自由を根本から否定する自民党改憲案
    ===================================

    【現行憲法】

    第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
    2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。


    【自民党憲法改正案】

    第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
    2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
    3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。

    ──────────────────────────────────

    岩上「第21条は、非常に重要な条文です。自民党案では、第2項が新設されています。『前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした発動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない』と。

    驚くべきことに、言論の自由、そして集会、出版の自由というものが認められないと。『公益及び公の秩序を害することを目的とした』場合は認められない。これは驚くべきことです」

    梓澤「これはすごいですね」

    岩上「これは、本当に民主主義国家ではないです。『私たちはファシズム国家である』と宣言したに等しい。先ほど紹介したロサンゼルス・タイムズ紙も、この条文について大変厳しく、危険だと述べていました」

    梓澤「元来、表現の自由がなぜ大事か。さっきありましたように、個人の至高の価値である自己実現──人格の自立的発展という価値。それから自己統治、すなわち民主主義です。人民こそが、国の統治形態を決めていくということ。この2つの価値からいって、表現の自由が侵すべからざる基本的人権である、と考えられています。

     特に大事なことは、ある時代における多数者というのは、そのときの政治権力を取っているわけですから、こんなことをわざわざ言う必要はないのです。ではこれが誰のための人権かといえば、少数者が、多数者が取っている権力に対して物申す権利、人権なのです。

     それで、自民党憲法案は、『公益及び公の秩序を害することを目的とした』表現の自由は認められないと言うのですけれども、表現の自由というのは、さっき言ったように、多数者が取った権力を批判する自由です。これを公の秩序に反するから認めないと言ってしまったら、第1項は保障すると言いながら、その表現の自由を第2項で根本から否定しているわけです。これはすごい」

    岩上「いま梓澤先生は、多数者に対して物申すと言いましたが、それはまた同時に権力に対して物申すと……」

    梓澤「そういうことです。多数者というのは、多数者が取った権力のことです。今でいえば、前回の選挙で多数になった自民・公明の政権に対して物を言うということですね」

    澤藤「もう少しいうと、多数者あるいは社会の多数派に、表現の自由に関する権利を付与する必要はないわけです。だから、いつもこの権利を行使しなければならない立場にあるのは少数者、もしくは弱者です。たった一人ということもあります。

     その人たちは、少数であるがゆえに、ときの権力や社会の大多数から憎まれ、疎まれ、あるいはいじめられ、退け者にされている。そのたった一人の権利にこそ、基本的人権としての表現の自由というのは輝かなければならない。そういうものだと私は思っています」

    梓澤「そうです」

    岩上「この話題は前回も出ました。多数少数に関わらず、個々人の権利が重要なんだと。そのとき私が、一人でも自分がその権利を主張しなければならないと思ったら、ひるむことなく主張できることが前提として重要だと申し上げた。

     すると梓澤先生が、形式的にはまったくその通りだけれども、現実面、実際面では、本当に物申す時に大変な目に遭うのは少数者だから、少数者の権利がより強調されなければならないとおっしゃっていました」

    梓澤「今ここで思い出すのですが、イラク戦争が開戦するときに、米国議会でたった一人の女性議員が反対の票を投じましたよね(※23)。

     今、その反対票の輝きというのはすごいですよ。あのときは、誰から見ても、イラクに大量破壊兵器があるから攻撃するという流れだった。そのときに、たった一人で反対したという意味は、ものすごく輝くわけですよ。

     そんな同調圧力が働くときでも、『私はこのことに反対する』と主張すること。例えば、同調圧力が働く原発の立地自治体においても、少数の町であっても反対する。その人権というのは、ものすごく大事です。

     それがやがて、多数者をも救うことになるわけですよ。原発にしたって同じです。そういう意味で、表現の自由というのは、いまでき上がっている、まさに公の秩序、あるいは公益に対して抵抗する、必死で身を張って闘うということ。田中正造(※24)を思い出していただきたいと思う。

     そこを保障することが表現の自由なのに、それが『公の秩序に反することを言ったから許されない』となると、大変なことになる。これは、単に憲法でこう決まるだけではなくて、この21条2項が入ることによって、今度はそれに基づく法律ができてくるわけです。

     分かりやすい例として、戦前の新聞紙条例というのがあります。新聞紙条例の13条では、『政府を変壊し、国家を転覆するの論を載せ、騒乱を煽起する者は、禁獄1年以上3年に至るまでを科す。その実犯に至る者は首犯と同じく論ず』と述べられている。

     要するに、政府に抵抗する者、今の政府を変えろという者、こんなことやってちゃ駄目だと言う者は、それ自体が刑事犯罪だということです。

     自民党改憲案の21条第2項は、まずは表現の自由に対する制約ですけども、これは先ほどのように、今後表現の自由に関する表現法のようなものや、あるいは新聞テレビ法みたいなものができて、『ある論を載せた者を処罰する』ということに結びついていきます」


    (※23)2001年9月14日、米国連邦議会は、テロに対する武力行使の全権限をブッシュ大統領に与える決議を採択した。その際、民主党下院議員のバーバラ・リー氏が、上下院合わせてただ一人、反対票を投じた。

    (※24)田中正造(たなかしょうぞう):1841年~1913年。政治家。栃木出身。明治23(1890)年、衆議院議員に当選。同年、栃木県足尾銅山から流れ出した鉱毒によって、渡良瀬川流域で稲が枯れ、魚が死ぬという現象が起きた。

     明治24年12月24日、第2回帝国議会本会議で、根腐れした稲と育たない芋、鯉鮒の死骸などを壇上に並べ、鉱毒被害に対して何の対策も打たない政府に対して、激しい追及を行った。その後も、政府の姿勢を徹底的に糾弾し続け、政治生命をかけてこの問題に取り組んだ。

     鉱毒被害者に対して、「私の要求が政府に通じぬ時は、みずから先頭に立って死を決する覚悟である」とまで約束していた田中は、議員を辞職し、ある決断をする。明治34年12月10日、帝国議会の開院式からの帰路に就いていた天皇の馬車に対して、直訴状を握りしめ、直訴を行ったのだ。途中で警官に取り押さえられ、直訴状を天皇に渡すことはかなわなかったが、このことは広く知れ渡り、足尾銅山の鉱毒救済運動がより広まることとなった。晩年は治水事業に尽力した。

     また、田中正造は、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏が最も尊敬している人物であり、小出氏の研究室には、田中正造の写真が掲げられている。


    ===================================
    ◆ 自民党改憲案は治安維持法を思い起こさせる
    ===================================

    梓澤「さらに、法文の後半にも問題があります。『並びにそれを目的として結社をすること』、すなわち『公益及び公の秩序を害することを目的として結社をする』。これすなわち何かというと、現行秩序である資本主義体制や、民主主義体制に対して、これに反対することを掲げて結社をすることを言っている。例えば、現行憲法に反対する日本維新の会などはこれに当たると思います」

    岩上「石原慎太郎前東京都知事は、まず逮捕されなければいけない、ということになります」

    梓澤「そういうことになりますね。だから、ここにある自民党憲法改正草案についても、これをHPにアップして、拡散することも弾圧される対象になるわけです」

    岩上「すると、石原前東京都知事や橋下徹大阪市長らが、過激なことをおっしゃったり、結社をして維新をつくったり、そして選挙を通り多数を結成し、自民党の改憲草案のようなものをつくるということは、今の憲法体制下だから許されているのであって、もし今そういう厳しい取り締まりが可能な体制下であれば、彼らは存在していないし、活動もできないということになりますね。

     実際に大日本帝国憲法下にあっても、それ以上のウルトラファッショが出てくるときには、やっぱり弾圧されましたから。左翼も弾圧されましたけど、ウルトラ右翼のような集団も弾圧されました。だから、そういうことが起きかねない。右であっても、左であっても、とりあえず言い分を聞くことが許される現在のような状態ではなくなってしまうということです」

    梓澤「その結社に関する有名な、誰でも知っている法律が『治安維持法(※25)』です。治安維持法の第1条には、『国体を変革することを目的として結社を組織したる者、又は結社の役員その他指導者たる任務に従事したる者は……』この次、すごいですよ。『……死刑又は無期若しくは七年以上の懲役に処し』と書かれている。

     これが、要するに何かというと、国体というのはその時の天皇制、絶対主義的天皇制です。絶対主義的天皇制を民主主義にしようとする。これが、死刑または無期。さらに、社会主義革命を主張する者もこれに当たる。

     自民党改憲案では、そういうところを全然隠さずに、『公の秩序を害することを目的とした活動』の結社を禁止するとしている。これはすごい」

    (※25)治安維持法(ちあんいじほう):国体の変革と私有財産制度の否認を目的とする結社や行動を処罰するために定められた法律。大正14年(1925)制定、昭和16年(1941)全面的に改正。共産主義活動を抑圧するなど、思想弾圧の手段として濫用された。同20年廃止。(『大辞泉』より)


    岩上「我々は、公の秩序を害することをやっているとは思いませんが、私は民権論者ですから、国民一人ひとりが主権者だと思っています。ですから現行の憲法に則って、人数が少なくても多くても関係なく、例えばデモや請願の様子を映し、中継もしています。

    もし、自民党の憲法草案が通って、我々が政府側にとって不都合なものを映し出して、それを助長するようなことがあったら、彼らは『それは許さない』『結社は認められない』と言い出し、IWJという結社が認められないことになるかもしれない。そうなると、私はとんでもない扇動行為を行なったということで、治安維持法違反でしょっぴかれる……」

    澤藤「首魁は死刑までありますから」

    岩上「死刑ですか……。新しい憲法ができて、治安維持法ができたとしたら、私も捕まるかもしれない。そのときは先生、弁護をひとつよろしくお願いします(笑)」

    澤藤「それもできないかもしれない。いま話が出ましたけれども、自民党案の21条第2項を読んだ人は、誰でも治安維持法を思い浮かべると思います。

     治安維持法は、1925年(大正14年)に施行されました。同じときに、普通選挙法も誕生しました。これによって、職工や水呑百姓までが選挙権を握ることになるわけですから、普通選挙を行ったら明日にでも政権がひっくり返ってしまうのではないか、と天皇制政府は恐れ、治安維持法をつくったのです。

     これがどういう目的で作られたのかというと、国体を否定することと、私有財産制を否定することという2つだったわけです。

     そして、最初は死刑なんか入っていなかった。しかしだんだんと厳しくなるわけです。治安維持法は、昭和16年の法律で完成体になるわけですけれども、そこでは、もちろん首魁は死刑。それから、目的遂行罪というものがあります。岩上さん、いま『弁護してください』とおっしゃいましたが、1933年に大変有名な労農党弁護士団事件が起こります。

     弁護士らが治安維持法でしょっぴかれて、全員有罪になります。起訴されたうちのたったひとりは、共産党に加盟をしたからということで実刑判決になっています。それ以外は、共産党員──つまり治安維持法違反の被告──を弁護したことで、目的遂行寄与罪というものに問われました。

     これは、国体を変革する、私有財産制を否定するなどといった目的の遂行に寄与する行為をしたということです。その中に、弁護活動も明確に入れられたわけです。めちゃくちゃな話です」

    岩上「もう法治国家じゃないですね」

    澤藤「法律でやられたんですよ」

    岩上「ですが、裁判では被告人がいて、その弁護をする権利も認められていて、両者から自分の言い分を主張し、法廷は公開され、そして裁判官が裁く。こういうことになっています。今の澤藤先生の話は、近代法治主義の崩壊じゃないですか」

    澤藤「だからそれは、近代の法治主義の話であって、明治憲法は、天賦人権論ではないわけです」

    岩上「天賦人権論であったら、こういう手続きになると」

    澤藤「そういうことです。そうではなくて、やっぱり日本の天皇制というのは、日本独自の歴史・伝統・文化に基づいてできているわけです。

     先ほどの話では、『あなた方のやっていることは、弁護士としての業務行為であって、一見違法性を阻却されるように思うかもしれない。けれどもそれは形式にすぎず、その実質においては、共産党の宣伝のために弁護活動をやっているのだ』などと、きちんと判決に書いてあるのです。そういう世の中だったのです。

     その歴史を今、きちんと確認する必要があると思います。つまり、自民党改憲案の21条2項が実現すれば、そういう世の中に戻りかねない。そう私は考えています」


    ===================================
    ◆ 弾圧が始まったとき、あなたはいつ声を上げるのか
    ===================================

    澤藤「もうちょっと言えば、政府・国家権力が暴走したときに歯止めをかけるものとして、1つはやっぱりジャーナリズムです。ジャーナリズムは徹底してやられます。それから、弁護権もそうだと思います。弁護士も反権力です」

    岩上「困りましたね。じゃあ弾圧されたとき、先生は私を弁護できないではないですか」

    澤藤「たぶん駄目です。治安維持法では、政府がつくったリストの中からしか、弁護人が選任されなかったのです。だから、ブラックリストに載らないような弁護士とコネをつくることも大切ですよ(笑)」

    岩上「そうですか、なるほど。澤藤先生や梓澤先生は駄目ですか」

    澤藤「ブラックリストでしょうね。IWJに出ているんじゃ、もうブラックリストですよね(笑)」

    梓澤「こういうとき、いつも思うのですが、今の状況をみると、新聞やテレビはまだこの問題を取り上げていないですよね。けれども、世の中が危険な方向に走っていくときって、誰かがそれを言うわけです。

     その誰かというのは、本当は記者やジャーナリスト──記者とは、人民の斥候兵(※26)であるという言葉があります──であるはず。つまり、稜線の向こうから危ないものがやってくるぞ、と知らせるのが記者ですよね。残念ながら、マスメディアが今その役割を果たしていないと思うのです」


    (※26)斥候(せっこう):敵の状況や地形などを探ること。また、そのために部隊から派遣する少数の兵士。(『大辞泉』より)


    岩上「彼らは権力側の斥候兵ですから。資本の斥候兵でもあり、資本の暴力装置の本体ですよね」

    梓澤「なるほど。しかし、その斥候兵を本能的に果たす人っていうのは、世の中に必ずいるわけです。何回も出しますけど、最近、駅の看板にも出ている『組曲虐殺』っていう本がありますよね。これは、井上ひさしさんが小林多喜二(※27)のことを書いたのだけど、井上ひさしさんは、小林多喜二の生きた時代を思い起こしながら、胸が高鳴る思いでこの組曲を作ったと言っています。

     前にも言いましたけども、小林多喜二というのは、『蟹工船』という本の1行目に有名な言葉を書いています。これから蟹工船に労働者が乗り込もうというときに、こう言っています。『おい、地獄さ行ぐんだで!』

     誰もが平等に弾圧を受けるわけじゃない。一番最初に先頭に立って、『危ないぞー!』って言った人が集中的にやられるわけです。その結果が、あの虐殺です。ノーマ・フィールドの著作『小林多喜二─21世紀にどう読むか』の中にも残酷な写真が出てきます。そういうふうにして、これから斥候兵の役割を果たす人が最初にやられます。

     だけど、マルティン・ニーメラー(※28)という人が有名な言葉を残しているけれども、最初は共産主義者がやられて、他人のことだと思っていたと。その次は、労働組合の幹部がやられたが、これも他人のことだと思っていた。その次は、キリスト教徒がやられた。これも、他人のことだと思っていた。しかし、最後にはあなたがやられると。

     そういうふうに、最初は斥候兵のところに来ますよ。でも、最後の最後、他人のことだと思っているあなたのところに、憲法21条2項はやってくるということを、本当に届くような声で言いたいです」


    (※27)小林多喜二(こばやしたきじ):1903年~1933年。小説家。プロレタリア作家として、国家権力に抵抗する労働者・農民の姿を描いた。官憲に逮捕され、拷問により虐殺された。著作として、「蟹工船」「党生活者」「不在地主」など。(『大辞泉』より)

    (※28)マルティン・ニーメラー:1892年~1984年。梓澤弁護士が読み上げた「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」という詩で有名なドイツの神学者。以下、その詩のIWJによる独自訳を掲載する。

    「ナチスが共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。なぜなら、私は共産主義者ではなかったから。次に、社会民主主義者が牢獄に入れられたが、私は声をあげなかった。なぜなら、私は社会民主主義者ではなかったから。次に、労働組合員たちが攻撃されたときも、私は声をあげなかった。なぜなら、私は労働組合員ではなかったから。次に、ユダヤ人が連れて行かれた。しかし、私は声をあげなかった。なぜなら、私はユダヤ人ではなかったから。そして、ナチスが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった」


    ===================================
    ◆ 憲法は、良い項目なら何でも入れていいわけではない
    ===================================

    【現行憲法】

    なし

    【自民党憲法改正案】

    第21条の2 国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。

    ──────────────────────────────────

    岩上「次に行きます。今論じていた第21条の表現の自由。自民党憲法案ではこの次に、第21条の2というのが新しくできています。これは現行憲法にはありません。『国が国政上の行為につき国民に説明する義務を負う』とありますが、これは結構なことじゃないかなと思っていたりするのですけれども、いかがですか」

    澤藤「はい。基本的に同じ考えですが、ひとつだけ申し上げたい。立憲主義という基本の中で、憲法にはどうしても書かなければならない事項があります。それは、人権を擁護することと、国権、公権力の行使にきちんとした制約をかけることです。

     そのほかに、国のかたちとして、平和主義やその他いろいろな項目を作ることがある。その際、あまりにも色んなことを、これは良いことだ、あれも良いことだ、それも良いことだ、というように載せるのは、骨格としての憲法の形を『歪める』とまでは言いませんけれども、『浮かびあがらせない』ことになってしまう。だから、何でも入れればいいということではない。知財の権利(※29)なんか典型だと思います。

     あって使えるものであれば、私自身は歓迎をします。しかし良いことであれば、なんでもかんでも、『良いよね。だから憲法改正が必要だね』という論理に持っていかれることには警戒を要します。だから、全体として改正と言われると、それには抵抗があります」

    (※29)知的財産権(ちてきざいさんけん):知的な創作活動による利益に認められる権利。特許権・実用新案権・商標権・意匠権・著作権など。(『大辞泉』より)


    岩上「新しいニュースがあります。連合の古賀伸明会長は、昨日(1月24日)、これまで述べてきた『憲法改正を俎上に載せることは時期尚早』という表現を、政治方針の素案から削除することを明らかにしました。憲法論議に踏み出すということです。

    そして古賀会長は、変えるものの中には、いま澤藤弁護士がおっしゃったような良い権利もあるからなどと言って、環境権や知る権利なども書き込んだらどうか、という話が出ているようです(※30)。環境権などのちょっと耳に響きのいい言葉を入れ、しかし肝心要の基本的人権、そして国権の制約としての人権の尊重という話は出てこないのです」

    (※30)「連合が憲法問題を含めた『政治方針』を見直すことが1月24日、分かった。憲法改正について従来掲げていた『改正の俎上(そじょう)に乗せることは、時期尚早』の文言を削除する方向だ。『環境権』や『知る権利』の確立など国民的な議論に対応するため、方針転換した。組織内の議論を経て、10月の大会で正式決定する。(2013年1月26日 「連合通信・隔日版」より)


    澤藤「連合がものを言うのであれば、もう28条ですよね」

    岩上「そうです、28条。勤労者の団結権です」


    ===================================
    ◆ 「第28条 勤労者の団結権」も後退する
    ===================================

    【現行憲法】

    第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する


    【自民党憲法改正案】

    第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。

    2 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。

    ──────────────────────────────────

    岩上「自民党案では、新たに2項をくっつけてきています。『公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる』と、制限できてしまうのです。続いて『この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない』となっている」

    澤藤「今ですら、制限をされているわけです。『制限があってはおかしい』という議論はもちろん、そういう運動も続いているわけです。自民党案では、完全に後退しています。これを労働組合の代表が認めちゃいけないし、こういうことについて、まず真っ先に発言しなければならんと思います。ですが、今は21条をやっていますから……」

    岩上「そうですね。戻りましょう」

    ===================================
    ◆ 経済活動の自由を緩めて、新自由主義の流れを加速
    ===================================

    【現行憲法】

    第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

    2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない


    【自民党憲法改正案】

    第22条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

    2 全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有す。

    ──────────────────────────────────

    【現行憲法】

    第23条 学問の自由は、これを保障する


    【自民党憲法改正案】

    第23条 学問の自由は、保障する。

    ──────────────────────────────────

    岩上「第22条の1項は、『公共の福祉に反しない限り』が削除され、そして2項は『侵されない』から『有する』に替わりました。

     続いて、学問の自由、第23条です。ここでは、大きな変更はないように思います。ただ、『学問の自由を保障する』というのは、すごく重要なことで、特に近代の歴史を考えてみると、真理や自然科学に相当するようなことを全部教会が握っていました。そこを、世俗社会が分離するために抵抗してきた歴史があって、その上で科学が発展してきたという側面があるわけです。

     これは、極めて重要なことです。学問の真理は、そのときどきの常識や、政治の定めるところとも関係なく、学者というものは、真理を探求するにあたって自由であらねばならない。政治権力におもねる必要もない。これが保障されないと、社会全体に進歩がなくなる」

    澤藤「この『学問の自由』の主体として、研究者や大学の自治の条文とも読むわけですけれども、いま実務的にはそういう問題よりも、小学校や中学校の教職員……」

    岩上「なるほど。学問というか、教育の問題になっているということですね」

    澤藤「そうなのです。研究者らの専門家としての研究と自由は、判例上一定の範囲ですけれども認められている。しかし実務的には、その人たちが、公権力の命令から逃れて、自由に教育をすることができる権利、という根拠規定として読んでいるのです」

    岩上「学校教育基本法の改正が論じられているようなときに、『ちょっと待って、自由があるだろう』と。23条に、教員の自由というのがあるだろうと……」

    澤藤「これを論じるには、今日は時間がありません。それから、22条『居住、移転及び職業選択の自由を有する』ですけれども、これは実は、経営の自由や企業を展開する自由、いわば『資本主義経済の経済活動の自由』と読まれるのです。ですから、ここは手をつけないわけです」

    岩上「手をつけないどころか、緩めたのですよね。現行の『何人も、公共の福祉に反しない限り』というのが緩められて、『何人も』だけになっている。この『何人』というのは、日本国民を指しているのですか。外国人も含むのでしょうか」

    澤藤「おそらくそうでしょう」

    梓澤「ちょっとそこで22条の2項を見てください。自民党案では、『全て国民は』という主語になっています。『全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する』と書いてある。しかし、現行憲法は『何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない』。

     これは何かというと、再入国許可(※31)というものがあります。崔善愛(チェ・ソンエ )(※32)さんという、いま活躍している在日韓国人のピアニストがいますけども、彼女は留学するときに指紋押捺を拒否したため、再入国許可を得られないまま米国に7、8年行ったのです。

     ついに再入国許可は出ませんでしたが、いろんな運動の盛り上がりの中で、日本に帰ってくることになりました。彼女が、根拠にして戦ったのが22条の2項です。自民党案では『国民』ですから、『あなたは相手じゃないよ』ということになって、在日外国人が外されるわけです。その点、『全て国民は』という部分は大きな意味を持ってくると思います」

    (※31)再入国許可(さいにゅうこくきょか):出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、日本からの一時出国を希望する国内在留中の外国人が、それまでと同じ在留資格で再入国することを認める制度。許可を得られれば再び入国する際、改めて現地で査証を受ける必要はなくなる。(『1998.04.11毎日新聞』より)

    (※32)崔善愛:1980年に大阪市で生まれ、北九州市で育った在日韓国人3世。9歳のときに協定永住資格を取得したが、81年と86年に指紋押捺を拒否したため、86年5月、米国に留学する際に申請した再入国許可が認められなかった。88年に帰国した際は新規入国者扱いとなり、在留資格を更新しながら裁判を争っていた。

     1998年4月10日、崔氏が国を相手に不許可処分取り消しと永住資格の確認などを求めた裁判で、最高裁判所は訴えを全面的に棄却、崔氏の敗訴が確定した。しかしその2年後の2000年4月、外国人登録法が改正され、崔氏の永住資格が14年ぶりに回復した。

     指紋押捺制度は、52年施行の外国人登録法で設けられた制度だが、80年代から同制度に対する反対運動が広がり、1993年、法務省は協定永住者らに対する押捺制度を廃止した。


    澤藤「22条と29条(財産権)の2つだけ、具体的な権利の中に『公共の福祉』という言葉があります。これは両方とも、持てる者の権利です。財産を持っているほうは29条ですし、財産を運営するほうは22条。その両方とも『公共の福祉に反しない限り』の範囲となっており、この『公共の福祉』というのは、非常に幅広く考えることができます。

     つまり、経営の自由というのは、基本的人権としての精神的な自由や表現の自由とは違うのだと。もっと国家が、福祉国家的な観点から規制が可能で、典型的には独占禁止法のような法律で規制をしてもいいんだということ。それに対して、自民党案はやっぱり『公共の福祉に反しない限り』という文言を消している。ほかの基本的人権についてだったら、私は諸手を挙げて賛成なんだけれど……」

    岩上「つまりこれは、経済的な活動に関しての制約をできるだけ取り払うという、現実にいま動きつつある新自由主義的な傾向、そしてグローバリズムの動きに合わせている。

     自由な資本の流入や人の流入なども妨げないようにしようとしている。そうすると、この法文が世界の資本家に対して、色目を使って書かれているような気もします。『公共の福祉に反しない限り』という文言が取られているということは、日本国民だけではなくて、外国の国民や資本家も日本で自由に活動することができる、という下地を作っているように見えます」

    澤藤「そうですね。もちろん包括的にはどうせかかることですけれども、やはり今までは、経済的な自由というのは、ほかの精神的な自由とは違うと。二重の基準なんだということが普通に言われてきたわけです」

    岩上「二重の基準というのは、要するに、精神的な権利というものは、より尊重されなければいけない。一方、財産権というのは、もう少し制約がある、制約が可能だということですよね。

     つまり、ときには人が持っている財産といっても、神聖不可侵ではなくて、その財産によってあまりにも分配の不平等が起きているときには、再分配を行なうこともできると。公的権力が介入することが可能だと、経済政策で可能なんだよという余地がどこか残されているという」

    澤藤「資本の活動に、非常に親和的なアプローチです。『私たちはあなたの味方ですよ』と言っている。そうしたニュアンスが感じられます」

    岩上「非常に重要ですね。いろいろな新自由主義のイデオローグ(※33)がいますけど、『アナーキー・国家・ユートピア』という本を書いたロバート・ノージック(※34)という人がいます。

     彼は、ジョン・ロック(※35)が言った権利の中でも、とりわけ財産権を強調していて、『財産権は絶対神聖不可侵なんだ』ということを言っています。国家というのは最小国家に向かうべき、つまり余計な干渉をするなと。ある意味ではアナーキーだけど、完全になくせということではなくて、国境もほとんどなくしてしまって、自由に経済主体が動けると。その自由に経済主体が動ける財産、その財産権は本当に神聖不可侵だから、絶対侵してはならないと。

     彼らが、なによりも嫌っていることは、再分配のために徴税されて、貧しき者に施せということです。自分から慈善で行くのだったらいいけれど、政府がお金を取って回すことは絶対に嫌だと。これが新自由主義なんです」

    (※33)イデオローグ(idelogue):あるイデオロギーの創始者・代表者。また、歴史的、階級的立場を代表する理論的指導者・唱導者。(『大辞泉』より)

    (※34)ロバート・ノージック(Robert Nozick):1938年~2002年。アメリカの哲学者で、ハーバード大学の教授。1947年に公刊した代表的な著作である『アナーキー・国家・ユートピア』は非常に有名で、リバタリアニズム(自由至上主義)の古典とされる。ノージックは、同書の中で「暴力・盗み・詐欺からの保護、契約の執行などに機能を限定した最小国家」が、道徳的に正当な国家であると述べ、この機能を超える国家は不当であることを示している。

     これを踏まえて、ノージックは国家による財の再分配を否定し、所有物の正義について「権限理論」を唱える。つまり、ノージックが考える所有物の正統な取得プロセスは以下の3つのみである。

    1. 獲得の正義(それまで誰のものでもないものを保有する)
    2. 移転の正義(ある人から別の人へ保有物が移転・譲与される)
    3. 匡正(きょうせい)の正義(上の2つにおいて、過去不正な方法が用いられた場合に、それが時効となる)

     この考え方では、ノージックが言うような私的所有権の不可侵性を強調すればするほど、獲得の正義にしたがって、所有の始原にさかのぼる必要がある。しかし、そうなるとアメリカ先住民族から暴力的に奪い取った土地を返還したり、奴隷となった黒人の子孫にその補償を行わざるをえなくなる。アメリカの富裕な資産家たちは、不正義な方法で獲得したその富を放棄しなくてはならないことになる。

     そのジレンマを解決するために、第3の匡正の正義という原理である。不正義な方法で奪った富も、時間が経過したら時効が認められる、というのだ。かくて過去の侵略や略奪、植民地支配によって獲得した富の所有権が正当化されてしまうのである。リバタリアリズムの限界である。


    (※35)ジョン・ロック(John Locke):1632年~1704年。英国の哲学者・政治思想家。イギリス経験論の代表者で、その著「人間悟性論」は近代認識論の基礎となった。政治思想では人民主権を説き、名誉革命を代弁し、アメリカの独立やフランス革命に大きな影響を及ぼした。(『大辞泉』より)


    澤藤「おっしゃる通りです」

    岩上「今日も本当に重要なところだったので、あまり先に進めませんでした。今日は21条、22条ぐらいで止まってしまいましたけれども、是非また続けたいと思います。

     ということで、澤藤弁護士、そして梓澤弁護士のおふたりに、また今日も先生として来ていただきました。今度は第3回目ということでやらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

     ちょっと映す時間がなかったのですけど、日隅一雄さんの遺影がいつも我々の鼎談の場所に同席してくれているんです。日隅さんと梓澤さんは、生前すごく親しくて、一緒にNPJをお作りになり、日隅さんが編集長、梓澤さんが代表として、二人三脚でやってこられました。日隅さんだったら、『この自民党の改憲案はやっぱりおかしい』と、多分先陣切ってもの申していただろうと思います」

    梓澤「特に彼が言いたいのは、人々が知った上での選択ができるように、ということなんです。だから、この自民党改憲草案をちゃんと知った上で、『これでいいのか?』と考えて、議論する。経済政策のアベノミクスばかりに気を取られていないで、是非日隅精神で、頑張っていきたいと思います」

    岩上「そうですね。これを徹底して知らせたいと思いますし、しかも余すところなくやりたいですね。条文を全部徹底的に検証するといいますか。でもやっぱり、調べてみると、おや?というところが出てきますね」

    澤藤「そうですね。私も気付かなかったことが出てきますね」

    岩上「逐条でやると面白いものですね。彼らの粗みたいなものも出てくると思いますし、徹底的に研究し尽くしたいと思います。先生、どうもありがとうございました。また、今年もよろしくお願いいたします」

    澤藤・梓澤「よろしくお願いします」

    (後編・了)
    (文責・岩上安身/協力・テキストスッタフ長尾、大西雅明)

    原発 放射能 水道 食品汚染 TPP
    関連記事

    テーマ: 許されない出来事

    ジャンル: ニュース

    真実の追求  /  tb: 0  /  cm: --  /  △top

    トラックバック

    トラックバックURL
    →http://george743.blog39.fc2.com/tb.php/1686-d0a960bd
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    △top

    原発 放射能 食品汚染 by freeseo1
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。