11« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»01

    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    岩上安身のIWJ特報 第85号「『第3次アーミテージレポート』全文翻訳・完全注解(3)」 

    第85号
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                 岩上安身のIWJ特報
          「第3次アーミテージレポート」全文翻訳・完全注解
       ~属国・日本への米国からの命令書を徹底的に読み解く(3)
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    (IWJより転載許可済み)

    (第2弾からの続き)

    ──(仮訳ここから)─────────

    ==================================
    ◆「エネルギー安全保障」~地球規模の石油、ならびにガス共有地/公有地の確保
    ==================================

    当分の間、世界経済は主として化石燃料に依存し、輸送の分野では石油がほとんど独占
    の状態が保たれるだろう。現在世界第三位の大規模石油輸入国である日本と米国(※19)
    は、世界規模の石油取引におけるシフトが世界の地政学を不安定にしたり、中東のエネル
    ギー供給国へのアクセスやそれらの国々からの出荷を脅かさないようにすることに、ます
    ます中核的な戦略上の利害を共有しつつある。

    カナダ、米国、ブラジルの石油産出量の上昇が他地域からの輸入に対する南北アメリカ
    の依存度を減らすかもしれないが、世界の石油市場における次の大きなシフトは、中東の
    生産国からますます豊かになりつつあるアジアの消費国への石油とガスの輸出量が急上昇
    することである可能性が高い(※20)(ただし、中東のエネルギー消費の上昇も輸出量に
    影響するだろう)。

    将来の石油需給に関する現在の予測では、ペルシャ湾は、今後40年間で、世界の石油供
    給において、かつてよりはるかに重要な役割を果たすであろう。ペルシャ湾は、LNGの重
    要な供給元でもあり、カタールのラス・ラファン液化プラントが取引されるLNGの3分の1
    を供給する(※21)。

    ペルシャ湾からのエネルギー供給に対する世界の依存度が高まり、ペルシャ湾からアジア
    へのエネルギー・フローが増大するにつれ、地球上の共有地/公用地に広がる資源を確保す
    ることの重要性が増すであろう。

    日本の艦艇は、2009年にソマリア沖で海賊退治の作戦を開始した(※22)。さらに、3.
    11以降の発電用石油需要の要件の上昇にも関わらず、日本は、2012年の最初の5カ月でイ
    ランからの石油輸入を3分の1に減少させ、米国の制裁と歩調を合わせた(※23)。

    さらに、海賊行為/著作権侵害、ペルシャ湾からの出荷の保護、地域の平和に対する脅
    威(現在のイラン原子力プログラムによる脅威など、※24)を除去するための戦闘を行い、
    シーレーンの確保などにおいては、東京(日本政府)は多国籍軍との協力を強化する必要
    があるだろうし、それは歓迎されるであろう。

    5. Charles Batchelor、「Fire Ice: Gas Source is Little Understood」、Financial
    Times、2012年6月1日
    http://www.ft.com/intl/cms/s/0/506686c4-a4d0-11e1-9a94-00144feabdc0.html#axzz1y968sb2w.

     6. National Energy Technology Laboratory (NETL)、「Energy Resource Potential
    of Methane Hydrate」(ワシントンDC、米国エネルギー省、2011年2月)
    http://www.netl.doe.gov/technologies/oilgas/publications/Hydrates/2011Reports/MH_Primer2011.pdf.


    ──(仮訳ここまで)─────────

    (※19)現在世界第三位の大規模石油輸入国である日本と米国

     米国エネルギー情報局 (EIA) による統計では、1990年代からゆっくりと減少してい
    る日本の原油輸入量は、急速な拡大をみる中国の輸入量と2009年に逆転した。2010年現在、
    石油輸入量が大きな国は、順番に米国、中国、日本、インドである。

    参考:世界の原油輸入額ランキング(出典:IMF - World Economic Outlook Databases、
    2012年10月版)
    http://ecodb.net/ranking/imf_tmgo.html

    参考:EIA, International Energy Statistics - Petroleum - Imports,(米国エネル
    ギー情報局、国際エネルギー統計)
    http://www.eia.gov/cfapps/ipdbproject/iedindex3.cfm?tid=5&pid=57&aid=3&cid=regions&syid=1984&eyid=2010&unit=TBPD


    (※20)世界の石油市場における次の大きなシフトは、中東の生産国からますます豊かに
    なりつつあるアジアの消費国への石油とガスの輸出量が急上昇することである可能性が高
    い。

     国際エネルギー機関 (IEA) が2012年11月に公表した世界エネルギー展望2012年版
    (WEO2012, World Energy Outlook 2012) では、世界全体のエネルギー需要は2035年ま
    でに現在よりさらに3割増大し、そのうちの6割が、中国・インド・中東諸国の生活水準向
    上による需要増との見通しがなされている。供給面では、イラクの石油生産量が急拡大し、
    中国への主たる供給国となると見込まれている。

     ただし一方で、米国内でのシェールオイルなど新しい技術を用いた産出方法により、
    2030年までに北米は石油の輸出国に転じ、米国の中東への石油の依存度は大幅に低下する
    と見られている。

    参考:IEA, World Energy Outlook 2012 国際エネルギー機関『世界エネルギー展望
    2012』エグゼクティブ・サマリー(日本語訳)
    http://www.iea.org/publications/freepublications/publication/Japanese.pdf

    参考:IEA, World Energy Outlook 2012, Presentation To Press, (国際エネルギー機
    関『世界エネルギー展望2012』報道発表資料)
    http://www.worldenergyoutlook.org/media/weowebsite/2012/PresentationtoPress.pdf


    (※21)ペルシャ湾は、LNGの重要な供給元でもあり、カタールのラス・ラファン液化プ
    ラントが取引されるLNGの3分の1を供給する。

     カタール半島北部からペルシャ湾海底に伸びるノースフィールド・ガス田は1971年に発
    見され、豊富な埋蔵量を持つことから、発見後すぐに開発が進められた。その後、半島北
    端近くに巨大な液化施設を持つ工業都市ラス・ラファンが建設され、1996年より操業して
    いる。ラス・ラファンの主たる輸出先は日本であるが、近年はヨーロッパへの輸出も増大
    している。

     天然ガスの産出量全体でカタールは米国・ロシアなどに大きく及ばないものの、液化天
    然ガス (LNG) の輸出量としては、2006年にインドネシア・マレーシア・アルジェリア
    を抜いて世界最大となっている。

    参考:Qatar Petroleum, Ras Laffan Industorial City
    http://www.raslaffan.qp.qa

    参考:EIA, Country Analysis Qatar
    http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=QA

    参考:英エコノミスト誌「LNG: A liquid market」、2012年7月14日
    "Qatar, a tiny country with enormous gasfields, now leads the way. Its first
    LNG cargo left port in 1997. By 2006 it had become the world’s largest exporter,
    overtaking Indonesia, Malaysia and Algeria. It now accounts for a quarter of the
    world’s LNG exports."

    (巨大なガス田を擁する小国カタールは、1997年に初めてLNGを輸出して以来、2006年に
    はインドネシア、マレーシア、アルジェリアを抜いて世界最大の輸出国となり、現在世界
    のLNG輸出の25%を占めている)


    (※22)日本の艦艇は、2009年にソマリア沖で海賊退治の作戦を開始した。

     2009年から続いている海賊対策法に基づくソマリア沖への海賊対策護衛艦派遣では、
    2012年8月末までに、通算2600隻余りに対する護衛活動を行なっており、現在も継続中で
    ある。またP-3C哨戒機による哨戒行動も継続的に行われており、2011年6月にはソマリア
    に隣接するジブチの空港内に宿舎や格納庫、駐機場を有する「活動拠点」が開設された。
    ジブチの「拠点」は自衛隊が海外に設けた初の恒久的施設となっている。

    参考:外務省「ソマリア沖・アデン湾の海賊問題の現状と取り組み」、2012年10月
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pirate/africa.html

    参考:防衛省「ソマリア沖・アデン湾における海賊対処」
    http://www.mod.go.jp/j/approach/defense/somaria/index.html

    参考:衆議院「自衛隊のソマリア沖海賊対処『新活動拠点』に関する質問主意書」、2010
    年10月、赤嶺政賢議員質問主意書および回答
    http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b176089.html


    (※23)日本は、2012年の最初の5か月でイランからの石油輸入を3分の1に減少させ、米
    国の制裁と歩調を合わせた。

     米国は、2011年末に成立した国防権限法の中で、イランの原油輸出を制限するため、イ
    ラン中央銀行と石油取引の関係にある国外金融機関の米国内での活動を制限することを定
    めた。この国防権限法の適用除外を受けるために、EU(欧州連合)はイランからの原油輸
    入を禁止し、日本も15%~22%の輸入削減を行った。中国は同調せず、イランからの原油
    輸入を続けた。

     2011年上半期のイランの原油輸出国の上位は中国、日本、インドの順で、日本はイラン
    の原油輸出の14%、欧州・韓国を合わせると42%を占めていた。

     イランに対する米国の強硬な敵対政策のために、日本がとばっちりを受けて国益を損ね
    るはめになったのはこれだけではない。2000年、イランのハタミ大統領が訪日した際に、
    日本はアザデガン油田の開発権を得ることになった。アザデガン油田は推定石油埋蔵量が
    約260億バーレルという、中東でも最大級の油田である。エネルギー資源のない日本にと
    っては、なんとしても開発を成功させたい油田だった。

     しかし、米国はイランへの投資に強く反対し、日本に圧力をかけてきた。日本政府が出
    資する国際石油開発帝石(INPEX)は、当初アザデガン油田の75%の権益を取得していた
    が、それを10%に縮小させられた。さらに2010年10月には、その残り10%の権利も放棄す
    ることとなった。2011年4月24日付の産経新聞によると、「スタインバーグ国務副長官は
    藤崎一郎駐米大使にINPEXの撤退を数回にわたり強く要請、撤退しなければ制裁対象にす
    ると圧力をかけていた」という。

     米国の圧力によって日本が権益を放棄し、その代わりにイランでの権益を得たのは中国
    なのである。これほど日本の国益を失わせ、窮地に追い込んだ米国の政治的圧力について、
    日本政府もメディアも正当な反論を行っていないのはなぜなのか、首を傾げざるを得ない。

    参考:財務省「平成24年上半期分貿易統計(確報)」、p2
    http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2012/2012_316.pdf

    参考:日経新聞「イラン追加制裁 米、日本など11カ国適用除外へ ~ 原油輸入削減を評
    価」2012年3月21日
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGN21006_R20C12A3000000/

    参考:産経新聞「米、イラン制裁に二重基準 アザデガン油田 日本に撤退圧力/中国の
    活動容認」2011年4月24日 東京朝刊


    (※24)現在のイラン原子力プログラムによる脅威など

     参議院調査室が議員向けに発行している調査情報誌『立法と調査 2007.3』によると、
    イランは、1957年に米国と原子力協定を結び、64年にIAEA加盟、70年にはNPT(核拡散防
    止条約)の批准、74年には加圧水型軽水炉の建設に着手するなど、本格的な核開発を進め
    ていたという。しかし、1979年のイラン革命後に指導者となったホメイニ師の意向によっ
    て、建設中の原発施設の工事が中断となり、さらにこの施設がイラン・イラク戦争のとき
    に破壊されてしまった。

     いったんは止まってしまった核開発だが、イラクやイスラエルからの攻撃、また米軍の
    中東への軍事的関与などの状況を踏まえ、イランは新たな抑止力のために核開発を再開す
    る。1985年には遠心分離器によるウラン濃縮計画に着手し、90年以降は中国・ロシアと連
    携して核開発を行っていった。

     2002年8月、イランが秘密裡に核関連施設を建設していた事実が暴露され、IAEAの調査
    により18年間のウラン濃縮実験の事実が明らかになった。米国はイランを強く非難し、
    IAEAもイランに対する非難決議を採択する一方で、イギリス・フランス・ドイツの3カ国
    は独自交渉を行い、2003年に「テヘラン合意」、2004年には「パリ合意」を結び、イラン
    はウラン濃縮・転換作業を停止した。

     しかし、独立行政法人日本原子力研究開発機構の資料(出典は下記参照)によると、
    2005年、保守強硬派のアフマディネジャド大統領が誕生し、イランは核開発を再開したよ
    うである。2006年以降、制裁を含む度重なる国連安保理決議が行われているものの、ウラ
    ン濃縮は継続しており、2010年には、低濃縮ウランに加え、ウラン235が20%までの濃縮ウ
    ランの製造を開始した。一方で、AFPの記事によると、兵器用プルトニウムの生産に適し
    た重水炉の開発も進められ、重水製造施設も稼働状態とみられている。

     2012年12月の時点で、国際原子力機関(IAEA)は、濃度20%の濃縮ウラン232キログラ
    ムをイラン政府が既に保有していると指摘している。また2013年4月9日、アフマディネジ
    ャド大統領は濃縮ウランの原料となるウラン精鉱(イエローケーキ)の製造工場を新たに
    稼働させたことを明らかにするとともに、核燃料サイクルの自給自足体制を「完全に確立
    した」と述べ、国内外に核開発の進展をアピールした。

     2013年3月21日付のCNNの記事によると、3月20日に米国のオバマ大統領がイスラエルを
    訪問し、ネタニヤフ首相とともにイランの核武装を阻止する方向で意見を一致させた。オ
    バマ大統領は、イランの核開発を阻止するために交渉や制裁を含めた外交努力を続けると
    述べ、「あらゆる選択肢」を排除しないと強調した。

     イスラエルは、これまで核兵器を持っていると正式に発表したことはないが、核を保有
    していることは間違いないとされている。2013年3月20日付のイランラジオの記事による
    と、イスラエルは、少なくとも300発の核弾頭を保有しているという。

     また、2009 年 9 月に行われたIAEA総会では、イスラエルのNPTへの加盟、及びイスラ
    エルにあるすべての核施設をIAEAの保障措置下に置くよう求める決議が採択されている。

     イスラム革命から続く「イラン対イスラエル・米国」という構図に核開発の問題が絡ま
    ることで、イスラエル軍あるいは米軍が、イランにある核施設を軍事攻撃するのではない
    か、という話は何年も前から議論されてきた。

     その理由の1つは、イランとイスラエルが互いに挑発行為を繰り返していることだ。イ
    ランのアフマディネジャド大統領は「イスラエルを世界地図から消し去らなければならな
    い」と何度も述べてきており、対するイスラエルのネタニヤフ首相も「イランの核施設に
    対する攻撃は今も、選択肢の1つである」と核施設への攻撃という選択肢を残してきた
    (下記、NHKとイランラジオの記事参照)。

     イスラエルによる軍事攻撃の可能性に説得力をもたせているのは、先に述べた1981年の
    イスラエルによるイラン・オシラク原子炉への空爆と2007年のシリアへの空爆である。防
    衛大学校・教授の立山良司氏は、この2つの空爆について、「中東で他国が兵器化の疑い
    を伴う核開発を行うことを断固阻止するとのイスラエルの強い意志を示すものであり、イ
    ランにも同様の対応をとるのではないかとの見方にいっそうの現実味を与えている」と述
    べている(出典は下記参照)。

     米国は、イランの核保有に対しては厳しい経済制裁を行う一方で、軍事攻撃を示唆して
    いるイスラエルに対しては核の保有や開発を黙認し、軍事的・財政的な支援を行ってきた。
    米国の姿勢が著しく公正さを欠いていることは間違いない。

     米国は、「イラクが大量破壊兵器を持っている」という虚偽の「大義」を掲げ、2003年
    にイラク戦争を開始した。実際には、イラクは大量破壊兵器を保有していなかったが、米
    国はひとつの国を丸ごと破壊し、何万人もの死傷者を出しながら、公式に謝罪も償いも行
    っていない。

     あれから10年。米国は「正当な大義なき侵略」であるイラク戦争から何も学びとらず、
    次はイランを戦場にしようとしているのではないか。米国は、お得意のダブルスタンダー
    ドをまた繰り返そうとしているのではないか、そうした懸念の声が広がっている。


    参考:外交防衛委員会調査室 中村直貴「イランの核開発問題 ~米国の中東政策との関わ
    りを中心に~」、「立法と調査 2007.3 No.265」
    http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2007pdf/20070302045.pdf

    参考:日本原子力開発機構(JAEA)核物質管理科学技術推進部「核不拡散動向」2012年7
    月27日版
    http://www.jaea.go.jp/04/np/archive/nptrend/

    参考:AFP「イランの重水製造施設稼働から蒸気、プルトニウム製造の懸念 英紙」、2013
    年2月27日
    http://www.afpbb.com/article/politics/2931378/10360072

    参考:日本経済新聞「ウラン精鉱の製造工場稼働 イラン、核開発進展を強調」2013年4
    月9日
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0907U_Z00C13A4FF1000/

    参考:CNN.co.jp「米大統領、イスラエル首相と会談 イラン核開発阻止で合意」、2013
    年3月21日
    http://www.cnn.co.jp/usa/35029756.html

    参考:イランラジオ日本語「イスラエルの核問題のはぐらかし」、2013年3月20日
    http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/35973-%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9
    %E3%82%A8%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%
    90%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%97


    参考:NHK「時論公論『イスラエル先制攻撃はあるのか?』」、2012年2月9日
    http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/108831.html

    参考:イランラジオ日本語「アメリカとイスラエルのイランに対する挑発行為」、2013年
    4月8日
    http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/36319-%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA
    %E3%82%AB%E3%81%A8%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%81%AE%E3%82%
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    %8C%E7%82%BA


    引用元:防衛大学校教授・立山良司「イスラエルのイラン核開発問題への対応─『実存的
    脅威』と曖昧政策の矛盾」
    http://www2.jiia.or.jp/pdf/resarch/h21_iran/07_Chapter6.pdf



    ──(仮訳ここから)─────────

    ==================================
    ◆ 「エネルギー安全保障」~経済と貿易
    ==================================

    2011年11月、野田首相は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加入のための事前協議に
    日本が参加することを発表した。TPPは、完全に実現すると、世界貿易の40パーセントを
    占め、大西洋から太平洋をまたいで少なくとも11か国が加入する。さらに、他の地域的な
    FTAとは異なり、TPPは、包括的かつハイレベルな、法的拘束力をもつ自由貿易協定として
    際立っている。

    昨年の発表以来、日本のTPP加入への歩みは遅い。争点の幅広さや交渉関係者の数のため、
    時間がかかり、細部への配慮も必要となる。しかし、交渉への参加を遅らせないことが、
    日本の経済安全保障上の利益になる(※25)。また、日本が最も重要な同盟国とFTAを締
    結していないことは不条理であり、日本が交渉に参加することを我々は強く奨励する(※
    26)。米国側としては、交渉プロセスと協定案にもっと光を当て、透明性を増すべきであ
    る。

    ──(仮訳ここまで)─────────

    (※25)交渉への参加を遅らせないことが、日本の経済安全保障上の利益になる

     アーミテージレポートのこの文言は見逃せない。これはどういう意味なのだろうか? 
    言い換えると、交渉参加が遅れたり、参加しなかったりすると、安全保障上のリスクに見
    舞われるぞ、日本は危ない目にあうだろう、という脅しなのだろうか。

     2012年8月3日付の日経新聞社説「TPP参加で経済の安全保障を高めよ」には、以下のよ
    うな分析が載っている。

    「米国内では、政治力が強い自動車業界が日本のTPP参加に反対の立場だ。オバマ政権は
    米国内の自動車業界の意向を気にしながらも、本音では日本のTPP参加を強く期待してい
    る。経済大国となった中国が、投資や貿易の相手国に対して政治的にも強大な影響力をふ
    るう状況を懸念しているからだ」

     この記事からは、「中国の脅威」を煽り、それを封じ込めるためにTPPが効果的である、
    と宣伝する意図がみてとれる。このように、彼らがテコにするのは「安全保障」という呪
    文なのだ。

     甘利明TPP担当大臣も、3月17日のNHKの番組で、「(TPPは)安全保障の役割も果たし、
    東アジアの不安定要因を取り除く新しいルールづくりになる」と述べている。さらに安倍
    総理も、4月12日の閣僚会議で、「安全保障上の大きな意義がある」と強調した。

     ところが、4月23日から25日までの間にワシントンを訪問し、TPPに関する現地調査を行
    った調査団は、TPPと安全保障がリンケージしないことを断言した。

     この調査団は、26日に記者会見を開き、そこで私が、TPPと安全保障の関係について質
    問をした。すると、調査団の1人である首藤信彦・前衆議院議員は「先方に何度も水を向
    けたんですが、そういったことは一切出ませんでした」と答え、同じく、みどりの風の舟
    山康江議員も「(アメリカが)経済連携と安全保障を一緒にすることはあり得ない」とは
    っきりと述べた。

     TPPと安全保障はまったくの無関係なのである。

     また、以下の論文も紹介しておきたい。レスリー・ゲルブ米外交問題評議会名誉会長が、
    フォーリン・アフェアーズの2011年1月号に寄稿したものである。タイトルは「地政学の
    中枢は軍事から経済へ ─経済の時代の新安全保障戦略を」。

    「アメリカも『いまや地政学の中枢が(軍事ではなく)経済であること』を認識したアプ
    ローチへと移行する必要がある。この意味で、アメリカは、利益と価値を共有するヨーロ
    ッパや日本と 21世紀型の連帯を組織し、この連帯に他の多くの諸国を参加させていく必
    要がある」


    引用元:日本経済新聞「甘利担当相、TPP『東アジアの安保の役割も』」、2013年3月17日
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS17001_X10C13A3PE8000/

    引用元:しんぶん赤旗「TPP事前協議 米国要求“丸のみ”」、2013年4月13日
    http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-13/2013041301_01_1.html

    参考:IWJ「米国におけるTPPに関する実情調査団 帰国会見」2013年4月26日
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/76131


    (※26)日本が交渉に参加することを我々は強く奨励する

     なぜ、米国政府はこれほどまで日本のTPP参加を強く求めるのだろうか。

     2012年5月9日付の朝日新聞の記事「日本郵政、がん保険参入凍結 TPPで米国の懸念に
    配慮」は、日本郵政の斎藤次郎社長が、がん保険への参入を当面は凍結する考えを示した
    ことについて、米国保険会社の懸念への配慮があったことを報じた。米国の保険業界の
    「政府の後ろ盾がある『かんぽ生命』が民間会社と競争するのは不平等だ」という主張も
    紹介している。

     実は、この朝日新聞の記事が出る2日前の2012年5月7日、米通商代表部(USTR)のカト
    ラー代表補が、内閣官房郵政改革推進室や総務省の担当者と会談をしていたことが明らか
    になっている。これを報じているのは日本農業新聞のみで、同記事によると、総務省の担
    当者は米国からの具体的な要求はなかったと話している。

     また、米国議会調査局が2012年9月5日にまとめた「The Trans-Pacific Partnership
    Negotiations and Issues for Congress(TPP交渉と議会に取っての問題点)」には、米
    国の自動車業界と保険業界の懸念がまとめられている。

     これは、「日本とのTPP交渉はこれまで難しい状況が続いている」という一文から始ま
    り、日米2国間の貿易には、いくつかの解決困難な壁があると指摘する。その例として、
    日本の自動車に対する安全基準やかんぽ生命などを挙げ、それらに加えて農協からの批判
    や野田内閣の脆弱性が問題をより複雑にしていると述べている。

     しかし、12月に政権交代が行われると、TPP交渉参加問題は大きく動き出す。

     就任直後の安倍晋三総理はTPPに関する具体的な発言を避けていたものの、2月23日にオ
    バマ大統領と首脳会談を行って以来、3月15日にはTPP交渉参加を正式表明し、4月12日に
    は日米間の合意文書を発表、同月20日にはTPP参加11カ国からの承認を得るなど、就任4カ
    月でTPP交渉参加をほぼ決定的にした。あとは、米議会の承認手続きを残すのみとなって
    いる。

     では、米国が懸念していた自動車と保険の問題はどうなったか。日米事前協議の中身は、
    ひどいもので、日本側の圧倒的な譲歩が見て取れる。

     自動車分野では、日本から米国への輸出車にかかる関税が、「TPP交渉における最も長
    い段階的な引下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、こ
    の扱いは米韓FTAにおいて自動車に係る米国の関税について規定されている扱いを実質的
    に上回るものとなること」で合意された。

     保健分野については、日米間の合意文書が発表された日と同じ4月12日の会見で、麻生
    太郎金融担当大臣が、かんぽ生命のがん保険などの申請を当面認可しないことを表明した。


     安部総理は、3月15日にTPPの交渉参加を表明した記者会見の中で、「いったん交渉に参
    加すれば、必ず重要なプレーヤーとして新たなルールづくりをリードしていくことができ
    る」と断言した。事前協議の段階で交渉能力ゼロの政府が、本交渉で一体何をリードしよ
    うというのか。

    参考:日本農業新聞 e農ネット「郵政民営化法を説明 USTR代表補に総務省」、2012年5月25日
    http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=14442

    参考:朝日新聞「日本郵政、がん保険参入凍結 TPPで米国の懸念に配慮」、2012年5月9日
    http://digital.asahi.com/articles/TKY201205080818.html

    引用:米国議会調査局(Congressional Research Service: CRS)報告書「The Trans-
    Pacific Partnership Negotiations and Issues for Congress(TPP交渉と議会に取って
    の問題点)」、p44、2012年9月5日
    http://fpc.state.gov/documents/organization/198069.pdf

    参考:内閣官房「日米間の協議結果の確認に関する往復書簡(仮訳)」、2013年4月12日
    http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130412_syokan.pdf


    ──(仮訳ここから)─────────

    ==================================
    ◆ 「エネルギー安全保障」~日米経済関係の活性化と確保
    ==================================

    TPPの審議に加えて、我々は、大胆で革新的な多国間自由貿易協定を提案する。日本は、
    メキシコとFTAを締結しており(※27)、カナダとのFTAを検討中である(※28)。これら
    2か国は、米国の最も重要な取引相手であり、世界最大のFTAである北米自由貿易協定
    (NAFTA)の参加国である。米国、日本、カナダ、メキシコが包括的経済・エネルギー・
    安全保障協定(CEESA)に参加すれば、経済、安全保障、戦略的エネルギーにおける日米
    関係を大幅に拡大し、深めることだろう(※29)。

    日本には、重大なエネルギー安全保障上のニーズがあり、投資する資本に事欠かない。日
    本は、内部の経済および人口統計上の課題を相殺するため、対外投資の財務収益を増加さ
    せる必要がある(※30)。一方、米国(大きな構図では北米)は、天然ガスの開発機会に
    溢れているが、インフラ投資の資本が不足している。

    ──(仮訳ここまで)─────────


     米国の狙いは明白である。

     財政赤字に悩まされる米国は、その資本不足を日本の資本によって補おうとしている。
    本来なら、日本の資本は、日本と日本国民のために投資され、使われるべきだが、米国は、
    日本国内で日本の富が環流することを歓迎せず、日本の資本が米国へと向かうように誘導
    しようという狙いがあけすけに語られている。日本の超低金利、円高、デフレ、公共事業
    の削減、緊縮財政は、米国にとって歓迎すべき事態なのである。


    ──(仮訳ここから)─────────

    CEESAには、次の3つの柱がある。

     1. 日本は、メキシコとの既存FTAに加えて、カナダおよび米国とFTAを交渉し、NAFTAと
    のパートナーシップ確立を目指す。各NAFTAメンバーとのFTA調印国として、日本は、北米
    のエネルギーに自由なアクセスを許可され、北米のインフラと戦略的エネルギーへの投資
    機会を利用するための確固とした地位を築くだろう。

     2. 米国は、日米安全保障同盟の一環として、日本への輸出に関して、LNGなどの形によ
    る「戦略的エネルギー」の流れを守ることを誓う。

     3. 日本は、北米に1000億ドルから2000億ドル投資して、次の10年間における天然ガス、
    石油、石炭、風力、太陽エネルギー、原子力などのエネルギー・オプションの開発を促進
    する(※31)。

    CEESAは現在の貿易政策の進化と一致するものであり、その政策からの逸脱ではないと
    我々は確信する。日本は、すでにメキシコとFTAを締結し、カナダとFTAを交渉する意図を
    発表した。したがって、次のステップは、日本の最も重要な同盟相手であり、最大の取引
    および投資のパートナーである米国との交渉に向け邁進することである(※32)。

    カナダ、メキシコ、そして米国とのFTAは、日本の経済、エネルギー、および金融の安全
    保障(※33)において、我々が思いつける他のどの手段より役立つだろう。これら3つの
    FTAは、日本のエネルギー供給を保護するだけでなく、米国、カナダ、およびメキシコの
    農業製品への自由貿易アクセスも日本に付与し、結果として安定した食物供給を確保する
    ことになる。

    日本の農業人口は急速に減少しており、日本の人口は老齢化し、農民の平均年齢は66歳を
    超えた。このような展望では、日本は農業貿易政策の調整を延期する余裕がない(※34)。
    すべての関係者が、持続不能な防衛的貿易戦略ではなく、真の経済と食物の安全保障とい
    う観点で考察すれば、FTAを妨害する残りの農業障壁は容易に克服できる(※35)。大韓
    民国(ROK)が米国とのFTA交渉で成功できるなら、日本もできる。 CEESAに調印すれば、
    日本は、高度な工業化社会の急速に成長する部分と根本的に統合され、TPPによって具体
    化される先進経済と新興経済の架橋を支援し、世界最大の自由貿易圏を構築することで世
    界的な経済成長を促進することになる。


    ──(仮訳ここまで)─────────

    (※27)日本は、メキシコとFTAを締結 日本は、2004年にメキシコとの間でFTAを締結
    し、2005年4月に発効した。日本側の農産物の市場開放について、農業関係から大きな反
    発があったが、小泉首相(当時)が「農業鎖国は続けられない」として、官邸のトップダ
    ウンで交渉が進められた。

     この結果、豚肉、オレンジジュース、牛肉、鶏肉、オレンジ生果などに低関税枠が設け
    られた。反面、日本側は交渉の結果、鉱工業品分野において、電子、家庭用電気製品、資
    本財、自動車の4分野において関税の即時撤廃、その他の鉄鋼分野の10年以内の関税撤廃、
    自動車分野の無税枠(7年目から完全自由化)などを得た。

     この協定はさらに、「投資」や「労働力移動」、「知的財産権」などの規制も撤廃する
    ものであった。「投資」については、互いの国の投資家に内国民待遇及び最恵国待遇を与
    えるものであり、日本企業は、メキシコがFTAを結んでいるアメリカ、カナダ、その他の
    国の企業と同等のレベルの待遇を享受できることが担保されることとなった。

     また、政府調達に関しても、それまでは日本企業がメキシコの政府調達から排除される
    事例があったが、この協定によりメキシコは政府機関、政府系企業のサービス、建設サー
    ビスや財の調達を日本企業にも開放。日本の企業は、メキシコ・EU間のFTA締結時のEUと
    同等の条件で、かつ、NAFTA締結時のアメリカ及び カナダより有利な条件で、メキシコの
    政府及び政府系企業の調達市場に参加できることになった。

    参考:外務省ホームページ 「日メキシコ経済連携協定に関する大筋合意について」平成
    16年3月12日
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mexico/keizai_goui.html

    参考:農産物5品目の取扱いについて
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mexico/keizai_noukou.html

    参考:外務省ホームページ 「日・メキシコ経済連携協定改正議定書」平成24年4月1日
    効力発生
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/179/shomei_179_06.html

    参考:外務省ホームページ プレスリリース「日・メキシコ経済連携協定改正議定書の署名」
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/9/0923_01.html


    (※28)カナダとのFTAを検討中

     日本とカナダのFTAについては、2007年10月に両国が発表した「日加経済枠組み共同研
    究報告書」から検討が進められている。2010年11月、日加両国の首相(日本側は菅直人首
    相)は同年 の横浜でのAPEC首脳会議で会談を行い、日加間の経済連携促進につき前向き
    に検討して いくことで一致した。2011年2月に実施された日加次官級経済協議において、
    日加両国は、 「日本とカナダの経済連携協定(EPA)の可能性に関する共同研究」を開始
    することで一致した。

     そして2012年11月26日~30日には、両国間EPA締結に向けた第1回交渉会合が開かれた。
    都内で開かれたこの会合では、カナダのシェールガスなどの豊富なエネルギー資源獲得の
    ための議論が行なわれ、関税撤廃や投資やサービス分野での交渉も行なわれた。次回の交
    渉会合は2013年4月にオタワで予定されている。


    (※29)米国、日本、カナダ、メキシコが包括的経済・エネルギー・安全保障協定
    (CEESA)に参加すれば、経済、安全保障、戦略的エネルギーにおける日米関係を大幅に
    拡大し、深めることだろう

     このCEESAという聞き慣れない協定は、これまで公式に提唱されたことはなく、本レ
    ポート初出のものである。ただし、日本以外の3国はNAFTA(北米自由貿易協定)を結んで
    おり、そこに日本が加わるだけなのであれば、交渉の下地はすでに整っていると思われる。
    日本が単にNAFTAに取り込まれ、北米地域からの安い農産物が大量に日本国内に流入し、
    国内の農業を圧迫する懸念は拭えないだろう。


    (※30)日本は、内部の経済および人口統計上の課題を相殺するため、対外投資の財務収
    益を増加させる必要がある。一方、米国(大きな構図では北米)は、天然ガスの開発機会
    に溢れているが、インフラ投資の資本が不足している

     日本の内部の経済課題とはデフレであり、人口上の問題とは若年人口の減少である。こ
    れを両方とも解決するためには、国内に投資を回し、家計に金を回して、子育て支援をす
    ることに尽きる。経済と人口のダブル・デフレスパイラルについては、90年代後半から、
    私はずっと警鐘を鳴らしてきた。ところが本レポートは「その逆をやれ」と要求している。
    「対内投資ではなく、対外投資を」と要求しているのだ。しかし、カネが国外に流れてい
    くのを指をくわえて見過ごせば、日本国内の問題はますます深刻化するのは、火を見るよ
    り明らかではないだろうか。

     このレポートの主張は、富士通総研が2012年2月17日に発表した「日本は経常赤字国に
    なるのか~経常黒字を維持するための条件~」という記事と同様である。以下にその一部
    を抜粋する。

    「日本の貿易黒字が縮小傾向にあることは明らかである。一方で、海外投資から得る利
    子・配当などの所得収支の黒字は増加傾向にある」

    「高齢化に伴い貯蓄率が低下していくことは、(貯蓄-投 資)を縮小させ、結果として、
    これと等しくなる経常収支を減らすこととなる。ただ、ここで国内における投資も同時に
    減れば(貯蓄-投資)は必ずしも縮小し ない。これについては、一見、日本経済が縮小均
    衡に陥るように見える。しかし、この背後で、国内投資に代わって海外投資が増え対外純
    資産が増加しているとすれば、対外純資産の増減が経常収支に等しいという、もう一つの
    恒等式(対外純資産の増減=経常収支)から、対外純資産の増加が経常収支の維持につな
    がっている」

    「国内投資を減らし海外投資を増やすことで対外純資産を増やせば、結果として、貯蓄が
    減っても(貯蓄-投資)は減らず、対外純資産の増加によって経常収支が増えることで、
    経常収支の水準が維持されることになる」

    「日本の場合、少子高齢化で国内投資の収益率が下がって国内投資が減っていくことは自
    然なことであるが、他方、近隣には世界経済の成長センターであるアジアが存在し、高収
    益が期待されるアジアに直接投資を行うことが容易である」

    「収益性の高い直接投資を維持してくことが、少子高齢化で貯蓄率が低下していく中でも、
    日本が経常黒字を維持していくための条件になる」

    出典:富士通総研「日本は経常赤字国になるのか~経常黒字を維持するための条件~」、
    2012年2月17日
    http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/201202/2012-2-5.html


     本レポートと、この記事のロジックである「海外投資により経常収支が増加し、経常収
    支の水準を維持できる」というのは、確かにその通りではある。だからこそ日本企業は高
    収益を求めて、「アジア諸国」で積極的にM&Aを展開している。問題は、「アメリカ」に
    そのような高収益な市場機会があるのかということである。また、TPPによって成長を続
    けている中国市場から切り離される怖れもある。

     問題なのは、上記の富士通総研の引用文の「少子高齢化で国内投資の収益率が下がって
    国内投資が減っていくことは自然なこと」というくだりである。これは「少子高齢化の傾
    向がこのまま続けば」と曖昧さを排除して明確に書くべきであろうし、「少子高齢化が続
    くようなことがあってはならない」と断りを入れるべきなのである。

     そう書かれていないからこそ、あたかも「少子高齢化が自然なこと」のように読めてし
    まう。これは人口と経済を論じる文章で至るところに見られる錯誤である。日本という国
    が国民国家として存続することを諦めてしまい、日本内部に蓄えられてきた資本の投資効
    率だけが重要なのだというような「資本至上主義」で構わないならば別だが。


    (※31)日本は、北米に1000億ドルから2000億ドル投資して、次の10年間における天然ガ
    ス、石油、石炭、風力、太陽エネルギー、原子力などのエネルギー・オプションの開発を
    促進する

     日本の大手商社はすでに北米に乗り込み、独自にシェールガスの採掘権取得の交渉を行
    なっている。2012年6月22日には、大阪ガスが、米テキサス州でシェールガスの権益を約
    200億円で取得したと発表した。日本のシェールガス取得の動きの活発化に伴い、日本政
    府は2016年からの(米国からの)輸入を目指し、米政府とシェールガス輸入に向け本格交
    渉に入る予定である。

     本レポートは、こうした動きを見据え、その仲介手数料にありつこうとする、アーミ
    テージら「利権屋」の意図が色濃く反映されている、との指摘もある。つまり、「我々を
    通さず勝手に話を進めるな」ということである。

     そしてこのCEESAは、1000億ドルから2000億ドルという莫大な投資を要求している。し
    かし、日本大手商社の海外投資額は全体で3兆円程度である。北米へのエネルギー投資だ
    けで1000億ドルから2000億ドルというのは、金額的にもリスク分散的にも民間ベースでは
    難しく、やるのであれば国主導にならざるを得ないであろう。


    (※32)次のステップは、日本の最も重要な同盟相手であり、最大の取引および投資の
    パートナーである米国との交渉に向け邁進することである

     なぜ米国は、これほどまでFTAを求めるのか。そして、米国との経済自由協定は、自国
    にとって不利になると分かっているのに、なぜ締結してしまうのか。米韓FTAは、TPPの先
    行モデルといわれるが、なぜ韓国はこのような不平等条約を結んでしまったのか。

    2010年12月9日付の米ビジネスウィーク紙の記事に、米韓FTAに関して、アメリカが韓国
    をどのように説得(というよりも脅し)したかの経緯が詳しく書かかれている。その中で、
    特に注目すべき記載を邦訳し、以下に抽出した。アメリカ産業界の利益のために、北朝鮮
    との軍事的緊張を交渉に利用したアメリカの戦略が透けて見える。 【以下、邦訳掲載】

    「フォードのCEOアラン・ムラリー氏は、アメリカの自動車業界を代表して、交渉のほぼ
    すべての段階でオバマ氏の相談に乗っていた。また自動車労組の理事長であるボブ・キン
    グ氏、下院歳入委員会の民主党と共和党それぞれのトップも同様に支援した。

     (2010年)12月1日夜10時半、オバマ大統領が李明博大統領に電話を掛け、5年(で関税
    撤廃)の文言を含めた合意案の概要を説明した。(2010年)11月23日の延坪島砲撃事件
    (大延坪島近海で起きた朝鮮人民軍と韓国軍による砲撃戦。4人の韓国人が死亡した)以
    後2度目となる電話会談の中で、両国間戦略的同盟において米韓FTAがいかに重要化につい
    て強調した。

     翌日12月2日朝、交渉が再び膠着状態に陥るや否や、マイケル・フローマン氏(ホワイ
    トハウス国家安保会議副補佐官)が、外でタバコを吸っていたキム・ジョンフン通商交渉
    本部長と近くの池を散策しながら、「協商が失敗した場合、韓国政府がアメリカとの同盟
    関係を強化する機会を失うことになりかねない」と警告した。

     結論:オバマ氏は韓国との貿易協定が(彼自身と)アメリカの産業界との関係性を強化
    し、他国との協定にも道筋をつけることになると望んでいる」

    出典:Bloomberg Businessweek 「How the U.S. Unfroze a Trade Deal with South
    Korea」、2010年9月12月
    http://www.businessweek.com/magazine/content/10_51/b4208031737438.html

     要するに、韓国が米韓FTAに応じないならば、米国は韓国を防衛しないぞ、と脅したの
    である。あからさまな脅しである。米韓FTAとは、米韓相互防衛条約と引き換えに、韓国
    経済を差し出せ、というものなのである。

     しかし、秘かな脅しにおびえて、こうした「非公式の取引」に応じたからといって、米
    国が自ら血を流してまで、韓国や日本を「守る」のかどうか、疑わしい。それは、先述し
    たTPP調査団の報告からも明らかである。米国内では、TPPと安全保障はリンケージしてい
    るとは理解されていないのである。


    (※33)金融の安全保障

     「financial security」とは国家的な安全保障というよりも「(日本国民にとっての)
    経済的な安定」という程度の意味合いだと思われる。 参考:英辞郎 on the WEB http:/
    /eow.alc.co.jp/search?q=financial+security&ref=sa



    (※34)日本農業の課題

     アーミテージが、レポートの中で『農業貿易政策の調整を延期する余裕がない』と述べ
    る一方、JA(全国農業協同組合連合会)は、2011年3月に作成した提言案の中で、日本農
    業の課題として、「農業所得の増大」「食料自給率目標50%の実現」「急激な高齢化社会
    への対応」の3点を挙げ、目指すべき農業は、規模拡大や価格競争力のみを追求すること
    ではなく、各地域の集落や農地の実態に応じて、資源を最大限に活用する形態の農業を持
    続的に発展させていくことだと述べている。

     また、農業経営体の育成のために、経営体が策定した営農計画等を審査・認定し、税制
    上のメリットや、農機等の費用軽減策などを支援する必要性、さらに新規就農希望者の研
    修中の所得を確保するため、研修手当および研修経費等の支援、青年就農者に対する経済
    的支援の必要性を訴えており、国が一方的に「産業としての農業」を進めることを否定し
    ている。 参考:全国農業協同組合中央会「農業復権に向けたJAグループの提言案」、
    2011年3月
    http://www.zenchu-ja.or.jp/pubcome/pdf/110513_teigenan.pdf


    (※35)すべての関係者が、持続不能な防衛的貿易戦略ではなく、真の経済と食物の安全
    保障という観点で考察すれば、FTAを妨害する残りの農業障壁は容易に克服できる

     この記載は最も問題である。この報告書は日本の弱点を分析し、その弱点の正面からの
    克服ではなく、弱点につけこみ、米国の利益になるように売りこみ、それを押しつけるこ
    とばかり書きつらねている。

     農家の老齢化を問題視したうえで、「いっそ日本人による農業の継続、農家の継承、食
    物の自給はあきらめ、北米(主として米国)から、食糧を全面的に受け入れてしまえ」と
    いう理屈である。軍の依存に次いで、エネルギーも米国に依存せよ、と説いていることは
    すでに見てきた通りだが、さらに加えて、食糧も全面的に米国等に依存せよ、というので
    ある。独立国家としての日本の食糧安全保障の根幹が大きく揺らぐ。米国に何もかも依存
    することになる日本は、正真正銘の属国となってしまう。

     ヒトの輸入(移民)も同じ理屈で語られている。実際に、移民問題に関して、米国の国
    益にほぼ沿った形で主張する経団連は、低賃金の外国人労働者の受け入れ容認にとどまら
    ず、大規模な移民の解禁まで公に唱え始めた。

     経団連は、2008年10月に『人口減少に対応した経済社会のあり方』を発表し、その中で
    「総合的な『日本型移民政策』を本格的に検討していくことが求められる」と述べている。
    さらに、経団連の米倉弘晶会長は、2011年1月21日に行った会見で、「将来は外国からの
    移民を受け入れるべきだ」と主張した。

     さらに、経済同友会の長谷川閑史代表幹事も、2013年3月26日の記者会見で、「日本は
    『経済移民(Economic Immigrants)』を受け入れ、外国からの投資額を増やし、そのた
    めのいかなる規制緩和や法人税率の削減が必要だ」と能力の高い外国人を受け入れるべき
    だと訴えた。

     日本の生産年齢人口(15~64歳)のピークは1995年だ。もしその水準まで移民でカバー
    しようとしたら、どれだけ必要になるか。

     なんとその規模は1800万人にもなる。

     少子高齢化と人口減少は「自然現象」などではない。きわめて政策的に誘導され、引き
    起こされている事態である。

     日本の社会保障費は老人に手厚く、子育て家庭にきわめて冷たい。GDP(国内総生産)
    に占める児童関係費の割合は約1%。世界で最も早く近代化を果たし、それだけに最も早
    く人口転換(多産多死から少産少死へ)が起きて、少子化に直面したフランスは、自民族
    存続の危機を痛感し、人口奨励策をとってきた。

     GDPに対する少子化対策費の割合は、日本が約1%であるのに対し、フランスは3%以上
    だ(2011年8月5日佐賀新聞)。日本も、民族の再生産と国民国家としての持続性を真剣に
    願うなら、フランス並みに、より多くの予算を少子化対策に割り当てるべきである。

     そしてこの記載のもう一つの問題点は、米国が言う「真の経済と食物の安全保障」にと
    って、日本の農家やJAの存在を「FTAを妨害する農業障壁」として批判していることであ
    る。農林水産省によると、関税の撤廃を原則とするTPP交渉に参加すれば、日本の農林水
    産物は大きな影響を受け、その多くが外国産に置き換わると試算されており、その結果、
    日本の食料自給率は、現在の40%から13%に激減すると考えられている。 「食物の安全
    保障」を考えた時に、農家やJAがTPPやFTAに反対するのは、当然ではないか。

    参考:佐賀新聞、2011年8月5日
    http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2015976.article.html

    参考:農林水産省「包括的経済連携に関する資料」
    http://www.maff.go.jp/j/kokusai/renkei/fta_kanren/pdf/nou_rinsui.pdf

    引用元:日本経済団体連合会「人口減少に対応した経済社会のあり方」、2008年10月14日
    http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/073.pdf

    引用元:産経新聞「『将来は外国からの移民を受け入れるべきだ』~“初めて公的に言及
    ”米倉経団連会長が表明」、2011年1月21日

    (第4弾に続く)


    (文責/岩上安身、協力/野村佳男・佐々木隼也・大西雅昭・安斎さや香)
    (和訳/斎藤みどる・佐野円・伊藤勉・原田尚子、和訳監修/山崎淑子)


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    原発 放射能 食品汚染 by freeseo1
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