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    原発問題 -The Truth is Out There-

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    岩上安身のIWJ特報 第88号「自民党憲法改正草案についての鼎談・第4弾」(1) 

    第88号
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                 岩上安身のIWJ特報!
               自民党改憲草案は立憲主義を壊す
          ~自民党憲法改正草案についての鼎談・第4弾(1)
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    (IWJより転載許可済み)

     安倍政権はこれまで憲法96条先行改正を訴え続けてきたが、ここにきて微妙にトーンが変わってきている。

     安部総理は、5月1日に外遊先のサウジアラビアで、「憲法改正は自民党立党以来の課題で、昨年の総選挙でも公約だった。その際、まずは96条ということで、当然参院選でも変わりはない」と述べ、96条改正を参院選の争点にする意向を示していた。

     さらに5月5日には、東京ドームで行われた国民栄誉賞授与式に背番号「96」のユニフォームで登場するというパフォーマンスまで行う熱の入れようだった。

     5月10日の時点でも、安部総理はまだまだ強気だった。同日放送のフジテレビ「スーパーニュース」に出演した安部総理は、「自民党として、まず96条から始める」と述べ、96条改正に取り組む強い姿勢を改めて見せていた。

     しかし、5月23日に明らかになった自民党の参院選公約の原案には「衆参それぞれ過半数に緩和」と明記されているものの、「96条改正」という言葉は出てきていない。

     この間に何が起きたのか。橋下徹・大阪市長の発言に端を発し、歴史認識問題と従軍慰安婦問題に改めてスポットライトが当てられたことが影響した可能性はありうる。自民と維新の二大改憲勢力には、橋下市長や石原慎太郎共同代表に代表されるように、人権への配慮を欠いた政治家が多いとの印象は、有権者の間に色濃く刻まれたことだろう。

     自民党と連立を組む公明党は24日、参院選に向けた両党の共通公約作成を見送った。これまでの選挙では、党の公約とは別に自公共通の公約をつくってきたが、憲法改正に慎重な立場をとる公明党と改憲を目指す自民党との立場の違いがはっきりしたかたちとなった。


     自民党内からも慎重論は出ている。24日付の朝日新聞は、23日に行われた自民党岸田派の会合で、山本幸三衆院議員が「96条改正はやめたほうがいい。ゆゆしき問題になりうるので、慎重に考えるべきだ」と発言したことを伝えている。

     産経新聞とFNNが25日と26日に実施した合同世論調査では、96条改正への反対は52%で、賛成の32.3%を大きく上回る結果となった。賛成の数字は、1カ月前の調査に比べて9.8ポイントも下がっている。産経新聞は、「自民参院選公約 96条の先行改正を掲げよ」と題した社説を25日付で掲載しているが、あからさまに96条先行改正を支持している産経の世論調査でも96条反対の声が大きいのは注目に値する。

     安倍総理にとって1番こたえたのは、5月1日に米国議会調査局が発表した報告書だったかもしれない。この報告書は、安倍総理を「強硬な国粋主義者」と指摘した上で、「そ言動は地域の国際関係を混乱させ、米国の国益を損なう懸念を生じさせてきた」と厳しく批判している。

     こうした状況を踏まえて、安部総理は憲法改正を参院選の争点のひとつにはしても、目立たないように戦術を切り替えたのだろう。そもそも前回の衆院選でも、有権者の重視した政策課題は、景気対策が52%だったのに対して、憲法改正はたったの6%(※1)。改憲への姿勢が、有権者にとって、自民党を支持した主要な理由だったとは言い難い。

     しかし、選挙で勝って、与党になると、自分たちの主張のすべてを国民が支持してくれたと言って、自分たちの都合のいいように国民の声を解釈してしまう。これは危険である。有権者は、一票を投じたからといって、全権委任したのではない。

     これまで、メルマガ「IWJ特報!」でお届けした「自民党の憲法改正草案についての鼎談」の第1弾と第2弾を読んでいただいた方は、自民党の目指している憲法がどれほど危険なものか、感じ取っていただけたと思う。

     自民党が、改憲を争点にしようと、しまいと、どちらであっても、夏の参院選で自民党が勝てば、この改憲草案の実現に大きく近づくことは明らかだ。だからこそ、このメルマガを読んでいただいた方には、そこで感じ取ったことを周りの人に伝えていただきたい。現行憲法の重要性と、自民党案の危険性を伝えていっていただきたい。

     今回発行するメルマガでは、憲法21条から29条まで、さらに47条と96条の逐条解説を行なっている。鼎談2本分という大ボリュームの内容となっているが、重要な条項がいくつも含まれている。

     はじめに取り上げているのは、今まさに述べてきた憲法96条だ。澤藤統一郎弁護士は「96条改正で味をしめれば、そのあとの憲法改正に大きなドアが開く、ハードルが下がる」と述べ、絶対に96条を変えてはならないと訴えた。

     そのほかにも、22条「居住、移転及び職業選択等の自由等」や23条「学問の自由」、27条「勤労の権利及び義務等」、そして47条「選挙に関する事項」などをそれぞれ分かりやすい判例と共に解説している。

     昨年の12月から続けてきた鼎談も、来月10日に最終回を迎える。最終回の予習として、是非ご一読いただきたい。

    (※1)2012年12月8日・9日「報道ステーション」世論調査(対象:1000人)
    http://www.tv-asahi.co.jp/hst/poll/201212/index.html


    ===================================
    ◆ 改憲草案の一番の焦点は96条
    ===================================

    【現行憲法】

    第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

    2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


    【自民党憲法改正案】

    第100条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。

    2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。

    ──────────────────────────────────

    岩上安身「96条を改正しようという動きが急になってきました。ざっと言いますと、2月4日に、96条の改正を慎重にするべきだという声が民主党の憲法調査会の中から出ました
    (※2)。

     民主党の憲法調査会は、2004年に、改憲ではなくて創憲という言葉を使った中間報告を取りまとめました。そこで96条改正について触れていたのですけれども、翌2005年の憲法提言では明記してきませんでした。

     今回の民主党執行部では、(96条改正は)慎重であるべきだという話が出ました。しかし、民主党全員がそのように思っているわけではなくて、まず2月14日に、日本維新の会とみんなの党が96条改正で協力し合おうという話が出ました。そして24日、維新の会の橋下徹共同代表が、賛成をする民主党員らと一緒に動こうと呼び掛けを行いました(※3)。


     3月2日には、民主党の渡辺周元防衛大臣、日本維新の会の松野頼久氏、みんなの党の浅尾慶一郎氏の3者で、3党有志の96条研究会を作ろうという声が上がりました(※4)。

     先ほど言いましたが、2月4日に、民主党の憲法調査会では、(96条改正を)慎重にするべきという声が上がったにもかかわらず、渡辺周さんは96条改正を目指そうとしているということです。

     そして3月5日には、超党派の『憲法96条改正を目指す議員連盟』というものが声を上げました。ここには自民、民主、維新、みんなが加わっています。さらに、『創生日本』という超党派の別の議連があり、会長は安倍晋三総理です。

     この超党派の議連と96条議連については、一緒になるかという話もあったのですが、2系統で、同時依存してやっていったほうがいいということになり、3月5日、安倍総理はこの創生日本の会の会長を続投することになりました。

     96条議連は一昨年の6月にできたのですが、昨年12月の衆議院選の時に勢いを増して、参加議員は100名を超えるそうです。安部総理は施政方針演説の中でも、(96条の改正に)触れました。

     他方、公明党の山口那津男代表は慎重姿勢を示し、また生活の党の小沢一郎代表も牽制をするという状況です。一部で96条改正は慎重にすべきだという反対の声も上がっています。

     ですので、これまでは憲法を逐条ごとに順番に議論してきましたが、本日は、今までの順番を飛ばして、96条の話からさせていただきたいと思います。

     96条について知っている人は結構多いと思います。『3分の2』の発議が『過半数』に変わったということで、ちょっと数字を変えただけではないかという意見もあるようですが、澤藤先生と梓澤先生は、論じるだけの重要な内容があるとおっしゃっております。そこをまず教えていただけますか」

    (※2)「民主党憲法調査会(大畠章宏会長)は4日の役員会で、憲法改正要件を定めた96条について『改正は不要』との方針を確認した。(中略)民主党は平成16年に発表した『創憲に向けて、中間提言』で96条改正を打ち出していたが、17年の『憲法提言』では明記していなかった」(2013年2月4日 産経ニュース
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130204/stt13020420410006-n1.htm

     民主党は4月10日にも憲法調査会を開いたが、96条改正ついては意見が割れた。枝野幸男元官房長官は「改憲は広範な国会での合意形成を前提にすべき。どんな政党が政権を担っても、このルールでやろうというのが憲法だと述べ、改正に反対の立場を主張。これに対して、長島昭久元首相補佐官は「96条を改正することで改憲論議が深まる。憲法を評価しつつ発展させる改正はあり得る」と強調し、96条改正に前向きな姿勢を示した。
    (2013年4月10日 朝日新聞
    http://www.asahi.com/politics/update/0410/TKY201304100324.html

    (※3)「橋下氏は、(読売新聞の単独インタビューの中で)『民主党が今の憲法を変えていこうという意識になっていないのであれば、一緒に政治行動を取るのは無理だ』と強調した。同時に、『民主党の中にも、同じ憲法観の人たちがたくさんいらっしゃる。そういう人たちと一緒にまとまっていくべきじゃないかと思っている』とも述べた」(2013年2月25日 読売新聞)

    (※4)3月7日に、民主党、日本維新の会、みんなの党の有志議員が正式に「96条研究会」の立ち上げを決定。同月15日に初会合を開き、21議員が出席した。この会合で、松野氏は「96条改正の原案を出すには衆院で100議員が必要。この3党で発議ができるようにたい」と挨拶した。

     しかし5月13日、橋下氏が「慰安婦制度は必要なのは誰だって分かる」などと発言し、国内外から激しい批判を浴びた。こうした状況を受けて、5月21日、みんなの党は、参院選と東京都議選での日本維新の会との選挙協力を正式に解消した。「96条研究会」における協力体制の解消は発表されていないが、維新とみんなの党との関係に亀裂が入ったことは確か。


    澤藤統一郎弁護士(以下、敬称略)「やはりこれは論ずるに相応しいテーマといいますか、論じておかなければならないテーマであるということを確認しておきたいと思います。れは今、憲法論争としてというよりは、政治的な意味において、重要なテーマ、焦点になっている。

     自民党の改憲草案ですけれども、これはまあ、一見してみると大変な復古調で、それに新自由主義的な側面が非常に大きい。こんなものが全部通るとは、おそらく自民党自身、これを提案した人も思っていない。しかし、改憲草案のどこかの部分は必ず通さなきゃならんと考えている。その一番の焦点が96条だと思うのです。

     これは本気になって、向こうの言葉で言えば、勝ち取るべきところだと。一度、96条正で味をしめれば、このあとの憲法改正に大きなドアが開く、ハードルが下がる。こういう位置付けだと思います。

     そこで、96条改正によってハードルを下げることの重要性を最初に確認しておきたいと思います。私がよく言うことなのですが、城を攻めるときに、最初に本丸には行かない。外堀を埋め、内堀を埋めて、堀を埋めたあとに火をかける。

     そういう意味では、外堀はもうすでに埋まっているのです。外堀を埋めたというのは、改憲手続き法とか国民投票法と言われる手続法(※5)ができたということ。

     現行憲法の96条の中に『特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において』という文言があります。この手続きをどうするかということについて、今まで法律がなかった。それを2007年に作ったわけです。ですから今、国民投票が可能になった。

     ただ、これはたしか12か14の付帯決議があって、たくさん宿題が残されている。特に3つの大きな宿題と言われているものがあります(※6)。これもちょっと論じるときりがないのですけれども、例えば、投票権を持つ年齢を(20歳から)18歳に引き下げるという原則を立てて、他の公職選挙法の選挙権も18歳にすべきだという問題。これは、3年を目処に解決されるはずだったのですが、全くできていません。

     それから、公職選挙法では、公務員の地位利用による選挙運動が禁止されているわけですけれども、憲法改正における国民投票は、普通の選挙とは違って、国民1人1人が主権者として、基本法である憲法をどうするかという選挙です。

     こういう時に、当然公務員も国民の1人、主権者の一員であるわけですが、こういう人たち(=公務員の方々)にどういう選挙運動を認めるのか。あるいは、どこまでなら制限できるのかという問題もまったく手が付けられていない。そのほかにも色々ありますが、一応手続法ができています。

     そして外堀が埋められたあと、96条にある『3分の2』を『過半数』にすることによって内堀が埋められる、と思っています。外堀を埋め、内堀を埋め、本当に憲法が落城する日が迫っているという危機感をひしひしと感じるわけですけれども、この96条の問題は、そういった問題だと捉えていただきたい」

    (※5)国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律):2007年5月に可決され、2010年に施行された国民投票の手続きを定めた法律。1947年に施行された日本国憲法は、改正手続きとして国民投票の義務を定めているが、2007年まで具体的な法整備は行われていなかった。2007年4月、自民・公明からなる与党と野党民主党がそれぞれ法案を作成し、衆院本会議に提出。その結果、与党案が賛成多数で可決された。

    (※6)国民投票法には、成立時に18の付帯決議が付けられており、澤藤弁護士が指摘す
    る3つの宿題とは以下の通り。

    1. 投票権年齢18歳に伴う公職選挙法、民法等の改正

     憲法改正国民投票の投票権年齢は、18歳以上と定められているが、公職選挙法の選挙権年齢や、民法における成年年齢は、いずれも20歳以上と定められている。そこで、これらの年齢も18歳に引き下げることが義務付けられている。

    2. 国民投票運動における公務員の運動制限について

     憲法改正国民投票においては、公務員もできるだけ自由に賛否の勧誘その他の意見表明が行えることが望ましい。しかし一方で、公務員の政治的中立性を確保する必要もある。そこで、公務員に対する許容と制限の基準について、検討が求められている。

    3. 国民投票制度の拡大の是非

     憲法改正国民投票法は国民投票の対象を「憲法改正」に限定しているが、それ以外にも、「(憲法改正に至る前の)憲法改正を要する問題」や「憲法改正の対象となりうる問題」などについても、対象とするかどうか、検討の必要がある。
    (「夜明けの日本 憲法を国民の手にプロジェクトHP」より
    http://www.yoakenonippon.com/index.html


    岩上「なるほど。長い射程で準備をしてきて、1つずつ手を打ってきたということです
    ね」

    澤藤「ですから内堀を埋められますと、次は、例えば憲法9条がどうなる、人権条項がどうなる、といった話がこれからたくさん出てくるわけです」


    ===================================
    ◆ なぜ「3分の2」でないといけないのか?
    ===================================

    梓澤和幸弁護士(以下、敬称略)「96条で特に大きく出てくると思うのですが、私が国民投票法で非常に気になっているのは、一体憲法とは何なのか、ということです。なぜ3分の2なんだと。そこをわかろうとするときに、憲法学者の存在、その説くところというのは非常に大きいんです。

     ところが、国民投票法には、学校の教員がその地位を利用して、憲法改正に賛成または反対の運動をしてはならないという罰則付きの禁止条項がある。この3分の2についての議論を、もし今バンザイしてみていると、誰のきちんとした解説も得ないまま、ドッと改正発議がされて、ドッと国民投票になだれ込んでいくということになりかねない。

     憲法の研究者の方や、大学の先生方というのは、なんとなくこういう時に発言しないものだという空気があるんですけれども、私はそれを取っ払って、大学の先生は町の中へ、それから普通の市民は大学の中へ入っていって、憲法とは何か、ということについて、大いに論ずべきだと思います」

    岩上「先日、古関彰一教授という獨協大学の先生にお話をうかがったのですが(※7)、確かに発言する人が少ないような気もしますし、我々メディアも発言を求めに行っていないのかもしれません。こんなことをしつこくやり続けているのはIWJぐらいじゃないでしょうか。

     今のお話では、国民投票法の中に、『大学の教員』がその地位を利用して……」

    (※7)2013年2月12日 岩上安身による古関彰一獨協大学教授インタビュー(イントロ公開)。本編は単一アーカイブ購読で視聴するか、サポート会員となってご覧下さい。
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/57231


    梓澤「『学校の教員』です」

    岩上「学校の教員ということは、中学も高校も含まれるし、大学も含まれるということですね。その学校の教員が発言できないと。手が縛られ、口も塞がれるわけですね。しかしもっと前の段階、国民投票にかかる前の段階だったら、その規制はされない。だから、今のうちきちんと論じて、国民的な議論の浸透や広がりが必要だということですね。そういう意味でも、本当に大事です」

    梓澤「今は、民主主義イコール多数決という考え方に慣れてきていますよね。憲法も、(制定から)時間がたって、そろそろ再検討をしようじゃないかという空気みたいなものがある。

     その時に、じゃあ変えてもいいんじゃないの? という動きになって、普通の学級討論なんかでは2分の1でやるから、なんとなくそれでいいじゃないかと。つまり、多数決イコール民主主義という考え方の問題。結局のところ、そこだと思います」

    岩上「非常に俗耳に入り易いわけですね。3分の2ではなくて、2分の1にするのに何が悪いのかと。過半数なんだから、民主的な手続きは守られるじゃないかと。では、逆にお聞きしますけれども、なぜ3分の2でなければならないのでしょうか。なぜ2分の1ではいけないのか」

    澤藤「まず、制度を正確にご理解いただきたい。発議というのは、こういう内容で改正案を作ります、という案の内容を決めることです。それを国会が国民に提案し、そして、国民がそれを承諾するかどうか。これは過半数の賛成で決まります。原案を作るときの決定が、3分の2(以上の賛成)になっているわけです。

     国民は予備的な国民投票をするべき、などという議論もありますけれども、(今の)制度としては、国民は国会が提出した案にイエスかノーを言うしかない。国会が、どういう案をつくるかをまとめるわけです」

    岩上「もう一度確認しておきます。『第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し』。つまり、原案をつくって国会にかけるところで、3分の2以上の賛成が必要だということです。

     そして国民に提案をし、承認を得なければならない。その承認には『特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする』。発議には3分の2以上の賛成が必要で、国民投票では過半数の賛成が必要だということですね」


    澤藤「普通の法律は、御存知の通り、国会議員の過半数の賛成があれば成立します。しかし、憲法と法律は全く違うわけです。立場というか、位が違うのです。

     また、立憲主義についての話をこれまで何度も繰り返してきました。つまり、なぜ憲法ができているのかというそもそもの原則からいって、憲法というのは大変位の高い法の形式であって、普通の法律とは違う。

     これを同じ要件にしていれば、憲法を定めた意味がないわけです。国会も、国会議員も、あるいは選挙の手続きも、憲法に従って行われている。そうした法律よりも上位にある憲法が、国会議員の過半数の賛成で変えることができるというのは、論理的には普通ありえないと考えられている。

     つまり、憲法は法律よりも硬い。硬性憲法(※8)という言葉を使いますが、憲法が憲法である所以は、普通の法律とは違うということからなのであり、法律の上位にある憲法の改正には、法律の改正手続きや制定手続きとは違う厳格な要件が必要なのです。

     ここは、一番の基礎部分としてご理解をいただきたいと思います。過半数で改正発議が通ってしまっては憲法が憲法であるということにならない。もっと厳格でなくてはならない。それは、憲法の性質からいって当然だということが理屈としてあります」

    (※8)硬性憲法:憲法を改正する際に、通常の法律改正よりも厳格な手続きを必要とする憲法のこと。硬性憲法とは逆に、法律改正と同じ手続きで改正が可能な憲法を軟性憲法という。


    梓澤「私たち弁護士は、ロースクールでの勉強や司法試験のためのを勉強をするにあたって、法律の専門家であるが故に、『憲法とはなんぞや』ということを繰り返し議論しながら、今紹介されたような考え方に立っている。

     しかし、例えば中学3年生、あるいは80歳のご年配の方々にとって、今言った理屈や理論をどうやったら、分かりやすく伝えることができるか。そのために私は、これから自分の表現力をもっともっと鍛えていかなきゃいけないと思っているのですが、ひとつ言えるのは、憲法によって、国と個人の関係を決めているわけです。

     国が何を持っているかというと、例えば警察がいますよね。それから裁判所があって、その結論次第では、裁判所は命さえ奪うことができるわけです。必要があれば、裁判の前に拘置所にぶち込む力も持っている。

     さらには軍隊もある。例えば、1960年の安保闘争のときには、自衛隊が出てきて、デモを蹴散らすかどうかが本格的に検討されたわけです。そういうものすごい力を持ったのが国である。その国とたった1人の個人とを考えた場合に、僕は象と蟻のような関係だと思うんです。

     その象がちゃんと縄に繋がれて、蟻が通る道に勝手にきて踏んづけたりしないように、象と蟻の関係をルール付ける。だから、ある種不平等なんです。不平等というのは、そのルールが国にとって、その象にとって、極めて窮屈なルールだからです」

    岩上「蟻を勝手に踏み潰しちゃ駄目だよと。蟻が通っているときには、その蟻を踏みつぶさない。それには1つ1つ基本的人権があるんだと、尊重せざるを得ない制約を課す。象が乱暴な歩き方をしてはいけないという制約を課す。それが憲法なんだということですね」


    梓澤「分かりやすい例で言うと、江戸時代に岡っ引き(※9)という人たちがいました。その岡っ引きと今の警察官との違いは、岡っ引きは、あいつ怪しいなと思ったら『おう、ちょっと来いや』ってできるわけです。ところが今、警察官が、あいつ怪しいなと思っても、『交番まで来いや』と言って、すぐに手錠をかけて連れて行くわけにはいかない。

     そういう約束事をいっぱい、色んな分野にわたって、きちんと憲法で決めてあるんです。今のは刑事手続きという分野での約束事であり、あるときは財産という分野、またあるときは職業の分野というふうに、人権に関して、国にとっては極めて窮屈なものを決めています。

     じゃあ窮屈だからということで、そのルールを象がもう少し自由なようにしてほしい、そのルールを変えてほしい、といったときに、確かに一定の多数が必要だというのは誰でも分かります。では、それが2分の1でいいのか。

     2分の1、つまり多数派は誰かという問題です。この前の衆議院選挙でも、多数派(の政党)がかわり、政権交代が行われました。その多数派の象にとって、蟻を踏み潰してもいいというルールに変えるには、私は、『国会議員というのは何か』ということを考えなければいけないと思います。

     国会議員とは何かというと、昔、憲法が必要だと考えた人たちの間では、『国会に選ばれてくる人たちは合理的にものを考える人たち』とされていた。その人たちは、とりあえず合理的な意思を考える。

     その合理的な意思は、私だけがいいと言っているものではない。『なるほど、これだけ多数の人たちが考えて提案してくるんじゃやむを得ない』というラインを4分の3とか、3分の2とか──4分の3と決めている立法例もあると思いますけど──日本国憲法の場合には、3分の2で決めたわけです(※10)。

     つまり、象と蟻の関係というのは、それぐらいピシッとしたルールでやらないといけない。暴走する力を持った者は必ず暴走する、と言います。歴史の中でそういう知恵を重ねて、『こういうふうにやってみないと、みんなが平和に、幸せに生きる世の中ってできないよな』という約束事に、ものすごく長い道程の末にたどり着いた。苦しみに苦しんで、こういう憲法という考え方を出してきた。

     立憲主義という言葉は、普通の人はあまり使いません。でも、立憲君主という言葉になると分かりやすい。つまり、王様がうんと威張っているけれども、それをグッと一回縛ろうじゃないかというのが立憲君主制です。

     同様に、強大な力を持ったものをこっちが縛っていく。そのルールを変えるときは、慎重に慎重であるべきです」

    (※9)岡っ引き(おかっぴき):江戸時代、町奉行に属した、侍の身分の与力・同心らの下で、町人の身分で犯罪の捜査や犯人の逮捕に当たった者のこと。

    (※10)1787年9月17日に制定されたアメリカ合衆国憲法は、1945年以降に6回修正されている。憲法改正には、「連邦議会の両院の3分の2の賛成による修正の発議」と「全州の4分の3の州議会の賛成」が必要。

     ドイツでは、現在「ドイツ連邦共和国基本法」が憲法の役割を果たしており、西ドイツ時代も含めて合計57回もの改正を行っている。基本法の改正には、「連邦議会の3分の2以上の同意」かつ「連邦参議院の3分の2以上の同意」が必要。

     オーストラリア憲法は、2010年までに3回改正されている。オーストラリア憲法の改正要件は厳しく、「総督による提案」と「憲法改正国民投票(レファレンダム)での可決」が必要とされる。この内、後者の国民投票における可決要件は、「連邦全体の総投票数の過半数」という一般的な過半数の要件を満たすだけではなく、「過半数の州における過半数の賛成」という要件も同時に求められており、いわば「二重の過半数」が要求されている。

     その他諸外国の憲法改正回数は、カナダが18回(1867年憲法と1982年憲法)、フランスが27回、イタリアが15回、中国が9回、韓国が9回などである。(参考:国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 687/2010.8.3)『諸外国における戦後の憲法改正【第3版】』
    http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/pdf/0687.pdf


    ===================================
    ◆ 「3分の2」だから冷静な熟慮ができる
    ===================================

    岩上「今、合理的意思という話がありました。しかしはっきり言って、多くの現代の国民は、今選出されている国会議員が合理的意思の持ち主たちだと思っていないと思います。思っていないし、事実、そんな聡明な議員たちばかりではない。

     逆を言うと、それが事実であるからこそ、蟻と象の関係のたとえが重要になると思います。国家というのは、象のように強大です。だから、国家にとって都合のいい憲法に変えたいという誘惑が常にあり得る。

     そうであれば、選ばれてくる国会議員の質を低下させ、国民の代表として合理的意思を持っているとはいえない人たちを選出させるように仕向け、自分に都合の悪い制約を簡単に取り外したいと願うのは、無理からぬことではないでしょうか。そう疑っても仕方のないことではないか。

     だから、合理的意思を持った人たちが選ばれにくいからこそ、これは厳しく歯止めがかかっているのではないかなと思いました」

    梓澤「1つ言いたいのは、3分の2の発議のあと国民投票があります。今の96条では、『特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数……』とあり、『その』というのは、『国民の』ということです。『国民の過半数の賛成(が必要)』というのが、今の96条です。

     ところが、自民党の改憲案では、『有効投票の過半数』になっている。だから例えば、この前の第46回衆議院議員総選挙の投票率が59%くらいですから、全国民の20数%程度の賛成で改正が決まりかねない」

    岩上「すいません。現行憲法の96条は、国民の過半数と言っているのですか。それとも有権者の過半数ですか」

    澤藤「両説あります。憲法ではなく、国民投票法では、有効投票となっています」

    梓澤「しかし、それは憲法との関係でいかがなものか」

    澤藤「そういう問題は、まだ残ることになる。結局、民意というものをどう考えるか、ということです。つまり、国会の中の過半数も、あるいは国民の投票総数の過半数も、どちらも民意ではないかと。しかし、必ずしもそうではないというのが憲法の考え方だと私は思うのです。

     つまり、国民もあるいは国民の代表者である国会議員も、必ずしも理性にしたがって、合理的な考え方、あるいは合意形成をするとは限らない。むしろある状況の下では、非常に激情に走って短絡的に判断をする、あるいは国民が煽動され、あとでよく考えてみると非常に間違った選択をしていた、ということもあり得る。

     そういう時、やっぱり冷静に物事を決めなければならないというのが、人類がこれまで失敗を重ねて到達してきた知恵です。民意、あるいは民主主義的な合理性というものが、その時その時における一時的な過半数によって示され、それが正しい選択であるとは考えない。

     もう少し熟慮をして、熟慮の末に到達したものを理性に基づく民主的な決定だというふうに取り扱うようにしよう。これが憲法の考え方だと思うのですね。

     さっきお話がありましたように、時の政権というのは、自分の都合の良いような制度を作りたい。こういうふうに憲法を改正すれば楽だ、という内的衝動は常にあるわけです。


     戦前には天皇という大変素晴らしい便利な杖があったわけです。これは魔法の杖みたいなもので、『天皇の思し召し』と言えば、難題であってもみんな黙ってしまう。政府は、こういう便利なものを今だって使いたいわけですが、今はそういうものを使ってはならないという民意がありますね。

     ナショナリズムの高揚などによって、みんながワッと、『中国けしからん』『韓国けしからん』という思いになって憲法改正をする、ということはあり得ないではない。だからこそ、そうならないように、現行憲法を改正するためには慎重な手続きが必要だという認識。これは、憲法学の理念から出ているというより、やはり人類の到達した知恵だと思うのです。

     過半数を占めて政権を獲得した者が、自分たちの過半数によって憲法改正を発議し、そして国民を煽動して、『今なら改正ができる』『そらチャンス』というようなことになってはならない。3分の2というのは、それに対する歯止めです。

     それからもちろん、国民は、発議をしてから自由に、また存分にその案の討議を行う十分な期間を経て国民投票に臨む。これは、公職選挙法に定められている選挙運動という言葉に対して、国民投票運動という言葉を法が使っています(※11)。

     これは(=国民投票運動では)、徹底して自由に議論が行われなければならない。まさに国民が、主権者として自分たちの憲法を選びとる。明示的にどういう憲法を作るか、と決めるわけですが、本当に自由に行き届いた討論をして国民投票をやる。

     この手続きの中では、冷静に、まさに熟慮の末の行動ができるようにしなければならない。3分の2条項というのはそのためのものであり、国民投票も、そういう徹底した議論ができるように保証される必要があると思っています」

    (※11)国民投票法では、「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」を「国民投票運動」と定めており(第101条)、投票事務関係者や中央選挙管理会の委員などによる国民投票運動を禁止している(第102条、103条)。


    岩上「なるほど。今、『中国けしからん』『韓国けしからん』というような、一時の激情というもので憲法が変わることがあってはならないというお話がありました。昨年、尖閣諸島問題でナショナリズムが大変高揚するという一局面があったわけです。未だにそれが尾を引いていますけれども、あのときに石原慎太郎東京都知事(当時)は、東京都が尖閣を購入すると言った。それに対して募金が殺到したわけです(※12)。

     今日になってみますと、少し落ち着いてきたのか、寄付をした人たちが、そのお金を返せと言ってきています(※13)。都知事が交代して石原さんから猪瀬さんになりましたけど、猪瀬さんは、何か必要なことに使うから返しません、などと言っている。

     だから、一時の高揚した気分の人も、気持ちが変わってしまうこともあるわけです。石原前都知事の発言は、ある一定の時間、激情にかられた人々が多数を占める状況を作り出しました。そうした人々も気持ちや考えが変わりうる。一時の感情で憲法が書きかえられてはならない、改正には慎重な手続きが必要なわけですね」

    (※12)東京都は、2012年4月27日に「東京都尖閣諸島寄附金口座」を開設し、2013年1月
    31日の時点で、約14億8千万円が集まっている(「東京都尖閣諸島ホームページ」
    http://www.chijihon.metro.tokyo.jp/senkaku/kifu-jyokyo.html)。

    (※13)尖閣諸島寄付金の返還問題について、以下、2013年3月8日付の日本経済新聞の記事を引用する。「都によると、同諸島の国有化以降、寄付金の返還を求める声が約170件寄せられた。猪瀬直樹都知事は8日の記者会見で、寄付件数が約10万件に達したことに触れ、『いろんな意見が出てくることはある。大きな目的のためにこの基金が使われる時が来る』と話し、返還には応じない意向を示した」


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    ◆ 「自民党改憲草案」の危険性を伝えないマスコミ
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    岩上「それともうひとつ、今96条を改正しろという議員たちの動きが非常に活発です。それに対して、『それは違う』という論陣を張っている政治家が非常に少ない。少なくとも目立たない。仮に胸の内にあっても、その政治家には発言の機会が足りないのかもしれません。あるいはメディアが伝えていないのかもしれません。

     そんな中で、生活の党の小沢一郎さんが反対だと言った(※14)。だいたいどこで聞かれても小沢さんは改憲について同じようなことを言っているのですけれど、『憲法が永遠に改正されない憲法であっていいとは思わない、基本的には憲法は変えうるものだ』と言っている。

     どこまでも戦後直後に作られた現行憲法で行くべきだという、いわゆる護憲派の主張と自分は違うということを必ず冒頭で断りを入れた上で、96条の改正は駄目だと主張している。なぜならそれは、憲法が変わりやすくなってしまうからです。今のような、政権交代が可能な小選挙区制で選挙を行った結果、ころころと政権が変わる可能性があるわけです。


     そうなると、政権交代のたびごとに、憲法を変えることになってしまう。憲法は、そんなに落ち着きのないものでいいわけではないし、憲法が変わるということは、その下位の法律を変えなきゃいけなくなることも多々あるわけですね。

     だから、憲法改正は頻繁にあっていいことではない、ということを論拠にしています。澤藤先生、この点はいかがでしょう。何か、この憲法96条改正について、賛成反対にせよ、それなりの論拠がないと話が進まないと思うのですが」


    (※14) 2013年3月5日に行われた「小沢一郎政治塾」の中で、小沢代表は「(96条改正で憲法改正要件が緩和されれば)政権が代わるたびに憲法を変えることになる。日本のようにまだまだ民主主義の意識が希薄で、定着していない国家では、ますます混乱するのではないか」と述べた。一方で、「(憲法)改正に反対と言っているわけではない」とも語った。(2013年3月5日 読売新聞)

     さらに、3月7日の「第14回総合政策会議」では、96条そのものについて、「どうして96条が硬性憲法として制定されたかという問題。その根底に、国民主権から発する色々な基本原理を安易に変えることを認めない、という日本国憲法の趣旨が含まれているのではないかと思う」と述べた。また、96条改正の動きに対しては、「中身の議論をしないで、手続きの方だけ改正すればいいのだという議論がまかり通っているので、非常に奇異に感じ
    ている」と批判した(http://iwj.co.jp/wj/open/archives/64418)。


    澤藤「先ほど申し上げましたように、96条改正は次の本格的な内容改正への第一歩であるわけですから、今、安倍さんをはじめとする改憲勢力が、どんな改憲を本当に望んでいるのか、国と国民との関係や、平和主義、人権、そういうものに対して、どういう考えを持っているのか。私は、ここを十分に見極めることが一番大切だと思うのです。

     いい改正というのも、あり得なくはないと思います。私は、憲法には進歩の方向があると思うのです。例えば、戦争から平和へ、とか。人権については、国権から民権へ、とか。あるいは、形式的な平等から実質的な平等へ、とか。そういう憲法全体の流れとして、進歩の方向はあると思っています。

     それに逆行しようというのが、今の安倍さんたちがやろうとしている改憲の流れであることは間違いない。こういうことを許していいのかどうかが、私は見極めの一番のポイントだと思います。

     ですから、96条というのは、決して無色のものではない。ここでハードルを下げる、扉を開ける、道を広くすることによって、次に何が来るのかを見極めて、賛成か反対かを言わなければならない。私はそう思います。

    それから、さきほどから申し上げているように、憲法が憲法であるためには、硬性でなくてはならない。普通の法律と同じ手続で改正できるというものではない」

    岩上「他の国には軟性の憲法もあります。変えやすい憲法、実際によく変えられている憲法もあります。米国の合衆国憲法も度々修正が加えられている。こういった憲法のように、『修正していけばいいじゃないか』という声もあります。

     そもそも立場として、現在の日本国憲法は素晴らしいものだから守ろうという立場と、押し付け憲法だから変えなくてはいけないんだという2つの立場があります。変えたい側からすれば、変えやすくするのは当然だろうという話になる。これは、交じり合わない議論になりそうな気がします。片一方が、もう一方を説得できないような議論になりかねな
    い。

     こうした、米国からの押しつけ憲法なのだから、変えやすくして何が悪いという考え、それから、世の中には変えている国がもうあるじゃないか、という意見に対しては、どのようにお話になりますか?」

    梓澤「ちょっとその前に言いたいことがあるのですけども、自民党憲法改正草案については、今度の参議院選挙を睨みながら現在、国会の中で議論が進んでいると思うんです。しかし、この間の衆議院選挙もそうですが、この自民党の改憲草案自体を知り、十分に理解した上で自民党に投票した方ばかりではないと思うのです。おそらく、ほとんど知らないのではないか。

     例えば、21条表現の自由の第2項で、公益及び公の秩序に反する表現の自由と結社の自由はこれを許さない、というような条項を聞いて、『え?』とびっくりするような人が、弁護士の中にも結構います」

    岩上「弁護士さんでも気づいていない?」

    梓澤「はい。それどころか、新聞記者の中にだって……」

    岩上「新聞記者は論外ですよ。全然驚くことじゃないですよ」

    梓澤「ええ?」

    岩上「新聞記者は基本的に不勉強ですから」

    梓澤「そうですか(笑)。というわけで、3分の2を2分の1にすべきだと言った時に、何を目指してそう言っているのかが大事なのですが、憲法をどうしようとしているかを、ほとんどの人が知らないというのが、1点目としてあります。

     それから2点目として、今、盛んにアベノミクスだといって、景気が結構良くなってきたのではないか、という雰囲気があります。実際は、そんなに懐が豊かになったわけでもないのですが、その雰囲気の中で投票してしまう。なんとなくの雰囲気で、今度の政権は結構やっているじゃないかと思ってしまう。一方では、原発の再稼働も行われているのに。


     もしマスメディアの記者の人で、この動画を見ている人が1人でもいれば、ぜひ活目して欲しい、目を見開いて欲しいのですけれども、今度の参議院選挙の前に、自民党の改憲草案を、一度でもいいから新聞とテレビにべったりと貼り付けてもらいたい。『これでいいのですか?』と問いかけてほしい」

    岩上「それは本当に無理だと思います。だって、大手メディアは社の方針として、この96条改正をやるつもりですから」

    梓澤「メディアが?」

    岩上「もちろんです。そっちへ本気で誘導しようと思ってやっているのですから。意思を持ってやっているのです。それは、記者個々人がちょっと不勉強で、知識が足りないとか、そんな現場の記者の不勉強さの話ではなく、経営の意思ですから。大手の主要メディア各社は、そのほとんどが、もっとはるか上位の意思で、96条改正にまで持っていくつもりでいると思います」

    梓澤「なるほど」

    岩上「例えば、弁護士を知らない人が『弁護士さんはみんな正義の人たちで、全部弱者の味方になってくれる』と言っていたら、弁護士についてよく知っている人が『いやいや、サラ金の側につく弁護士だっているよ。橋下徹さんみたいに(※15)』と言うでしょう。弁護士と新聞記者の例えはちょっと違うけれども、今のマスメディアのほとんどは96条改正に向けて本気で世論をもっていく気なんですよ。

     もちろん、こんなことを現場の記者に向かって言っても、大半は素知らぬ顔でしょうし、耳が痛いと感じる記者は『私はちょっと不勉強で』と言いますけど。そうやって逃げていくんです。

     要するに、ある職業が全部正義の味方だと思っている人がいたとしたら、それはナイーブじゃないか、ということです。それと同じように、新聞記者というか、マスコミが全部国民の側に立っているというのは、これは完全に空想です。ないと思います。すみません、ちょっと話がずれてしまいました。本題に戻りましょう」

    (※15)1997年に弁護士となった橋下徹氏は、翌98年に自身の法律事務所を構える。橋本氏は、99年から消費者金融「アイフル」グループの商工ローン会社「シティズ」の顧問弁護士を務めており、利息制限法の上限を超え「みなし弁済」の規定をめぐって債務者が起こす利息返還訴訟では、週に1,2回のペースで法廷に立っていた。(参考:2008年10月29日 産経ニュース
    http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/110928/waf11092815160035-n1.htm


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    ◆ 日本国憲法にある5つの重要な要素
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    澤藤「憲法をしばしば変えている国として、よく例に出されるのはドイツです。これまで、西ドイツ時代から含めて57回の改正をしている。年中行事みたいにやっている。ドイツ基本法の改正の条件は、かなり厳しいことは厳しいんです。連邦議会の3分の2以上、かつ連邦参議院の3分の2以上の賛成が必要となる。

     国民投票がないドイツで、今まで57回の改正が行われた。その中身を見ますと、内乱罪を廃止したということから始まって、男女平等を確認するとか、動物愛護を確認するとか、たくさんあります(※16)。これらは、先ほど私が言った国民の人権を伸長するほう、つまり、憲法に生成発展、進歩があるとすれば、その進歩の方向でだいたい改正がなされている。

     日本のように、戦前の天皇制の復活と見紛うような退歩をしているのではない。それともうひとつは、非常に固有の、憲法事項ではない瑣末なことで憲法改正をしている。瑣末と言うと語弊があるかもしれませんけれども、例えば、動物保護の問題などです。

     動物保護をどうしても憲法原則にしなければならないか、と言われると、そんなことは多分ないわけです。あるいは郵政事業の民営化や、連邦鉄道の民営化なども憲法改正手続きとして行なっている。だから、それぞれの国にそれぞれの憲法事情がありますので、ドイツが57回で日本が一回も無しなのも、ちっともおかしいことではない。

     これは、日本の国民が現行憲法を大切にしてきた証です。これを変える必要がなかった。保守政権も、結局はここに手をつければ自分たちの立場が危うくなる。国民の意向を恐れて、今まで発議をしてこなかったのだと私は思います。

     そういう意味では、国民が現行の日本国憲法を選びとってきて、自分のものにしてきた。そういう歴史が積み重なっているのだと理解しています。今、安倍内閣は、強引に96条から憲法改正に手をつける。これは、場合によっては虎の尾を踏むことになるわけですから、今後おそらく慎重に運ぶと思いますし、簡単にできることだとも思ってはいません」

    (※16)ドイツ連邦共和国基本法の改正は、1951年に「内乱罪」を削除したのが最初。東西統一後は、マーストリヒト条約批准のための改正(92年)や連邦鉄道、郵政事業の民営化についての改正(93年、94年)、男女同権の促進規定の追加(94年)や環境保護規定の追加(94年)、動物保護規定の追加(02年)などがある(参考:国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 687/2010.8.3)『諸外国における戦後の憲法改正【第3版】』
    http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/pdf/0687.pdf)。


    岩上「なるほど。確認しますけども、まずドイツ憲法は硬性憲法だという話。しょっちゅう変えられてきたドイツでも、議会の3分の2以上の賛成がなければ改正はできないんだということですね。だから、憲法を変えるにあたっては、それだけの同意がなければできなかった。過半数程度ではなかったという点が、1点。

     そして、国の形を大きく左右する基本的人権──先進諸国では普遍的な価値と言われ、広く共有されている価値──を制約してしまう自民党案のような、この時代にファシズム再来かというような驚くべき内容を含んだ憲法改正が、ドイツで行われてきたわけではない、ということですね。

     この2点については、憲法は海外の国でよく改正されますよと言われていても、確認しておかなければいけない点です。平和主義、基本的人権、そして立憲主義、自民党案ではこうしたものをひっくり返そうというわけですから、大変な内容を含んでいるということですよね」

    澤藤「そうなんです。全くおっしゃる通りです。私たち弁護士は、憲法というのは3本の柱があると教えられてきました。ひとつは国民主権であり、もうひとつは人権の擁護、別のひとつは平和主義。この3つの柱を支える土台として、立憲主義がある。

     この土台に支えられて三本の柱があって、ではその三本の柱の上に何があるのかというと、それはやっぱり国民の福利です。つまり、国民、とりわけ弱い立場の国民が、安心して暮らせる条件が花開いている。

     土台があって、三本の柱があって、その上に国民の幸せが乗っかっている。つまり、合計5つの要素があるわけですけれども、自民党改憲案は、この5つの要素全てに対して攻撃を行っている。立憲主義をなし崩しにしようとしている。

     立憲主義というのは、当然、人権擁護のためですから、人権がないがしろにされようとしている、ということは立憲主義が脅かされているということです。国防軍をつくって、自衛のための戦力から、外で戦争のできる国づくりをしようとしている。さらに、天皇を戴く国にしようとしていることで、国民主権の原理が危うい。

     それから、新自由主義の思想による原理の中で、弱肉強食、自助努力の強調がされ、国民の福利が危うくなっている。つまり、土台と柱、そしてその上の成果物、この5つに攻撃が加えられている内容なのです。

     しかし、この5つの攻撃をいっぺんにやることはできない。そこで、とりあえず96条改正で手続きを容易にすることから始めよう。私は、これが全体像だと考えています。だから、96条改正というのは、そのあとに国民主権、人権擁護、平和主義、国民の福利の改正が控えていることをきちんと理解し、覚悟をしなければならないと思います。

     おそらく、改憲をすることで利益を得る人がいるんですよ。だから、こういうことが推進されるわけです。しかし、多くの国民にとって、とりわけ弱い立場にある人にとって、ちっともいいことではない。むしろ、大変危険なところに足を踏み入れることになる。その第一歩が96条の改正だとお考えいただきたい」

    岩上「自民党改憲案では、新自由主義の考え方を柱にする。新自由主義というのは、一時の流行的な主張や、その時々の政策の考え方の1つといったものも憲法化してしまう。新自由主義が、国の土台になってしまうかもしれない。新自由主義が今、恐るべきところに差しかかっているという気がしますね」

    梓澤「新自由主義というのを普通の言葉に言い直すと、弱肉強食だと思います。例えば、いじめられる側の人、それから原発の避難によって毎日苦しさを味わっている人、また原発再稼働反対のために、金曜日に官邸前抗議行動に出かけている人。

     今、澤藤弁護士がまとめてくれたように、そういう人々にとって、憲法改正、96条改正が何を意味しているのかということが非常に大事です。理屈だけで丁々発止やり合うのではなくて、どしっと根を下ろした憲法論を語るというのは、すごく大切なことだと思います」

    【(2)へ続く】

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