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    原発問題 -The Truth is Out There-

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    岩上安身のIWJ特報 第90号「自民党憲法改正草案についての鼎談・第4弾」(3) 

    第90号
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                 岩上安身のIWJ特報!
           本当に憲法に入れるべき条項とは一体何か?
          ~自民党憲法改正草案についての鼎談・第4弾(3)
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    (IWJより転載許可済み)

    【(2)の続き】

     最後に紹介するのは、第25条の「生存権」。おそらく、ほとんどの日本人が1度はその中身を耳にしたことがある条項であり、澤藤弁護士がおっしゃっているように、憲法を象徴する条項だ。

     自民党改憲案では、25条にはほとんど手をつけていない。では問題ないのか、と言えば実はそうではない。ほかの条項と合わせて見ることで気がつくことがある。自民党が何を考えているのか? 是非続きをご覧ください。


    ===================================
    ◆ 自民党改憲案は在日外国人の生存権すら認めない
    ===================================

    【現行憲法】

    第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

    2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。


    【自民党憲法改正案】

    第25条 全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

    2 国は、国民生活のあらゆる側面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

    ──────────────────────────────────

    澤藤「生存権は、憲法が何のためにあるのかということを象徴する条項だと思います。つまり、憲法は、国民の自由を制約しないための原則というだけでなくて、国民生活の福利向上のために存在するのだということ。

     生活に不安を持っている人には積極的な援助をする。十分に働けるような教育や、あるいは助産事業をすべきであって、1人1人が社会で生きがいを持って働けるだけの環境を作る。それがどうしてもできない人には、直接支援の手を差し伸べる。

     国家は国民の福祉を増進するためにある。私は、福祉国家という理想が当たり前のことだと思っていたわけですが、新自由主義的な考え方はそうではない」

    岩上「そこは徹底的な対立軸になるというか、新自由主義者は福祉国家を常に激しく否定しますよね」

    澤藤「さすがに、自民党案では25条を否定することまではしていない。しかし、例えば24条の家族、婚姻等に関する基本原則とセットにして読んでみます。24条は家族に関する条項ですけれども、自助努力が非常に強調されています。

     24条の自民党改憲案には、『家族は、互いに助け合わなければならない』という文言が追加されています。つまり、家族の助けをまずやれ、国が出ていくのはそのあとだ、ということがかなり露骨に出ている。

     そういう意味で、25条は非常に大切。25条だけを見るとあまり変わっていないようだけれども、22条の居住、移転及び職業選択等の自由等や24条、29条の財産権やそのほかの条項を見て、この生存権──つまり福祉国家という理想──を本当に堅持するものなのかどうかを吟味しなければならないと考えます」

    梓澤「25条の2項についてですが、現行憲法の『国は、すべての生活部面において』となっているところが、改正案では『国は、国民生活のあらゆる側面において』と国民に限っている。これは何かというと、実は、在日朝鮮人の生存権保障の裁判というのがいくつかあるのです。

     有名な裁判に塩見訴訟(※33)というのがあって、この塩見さんという方は、国民年金法(※34)が施行された時だけ、日本国籍を持っていなかった。その前は日本国民だったのに、サンフランシスコ講和条約を締結した時に、在日朝鮮人は一斉に国籍を奪われました。

     そのため、ちょうど国民年金法が施行された時は日本国民ではなく、それによって、障害者年金を受けることができなかった。これはおかしいということで塩見さんは裁判を起こして、かなりいいところまで行ったのですが、最高裁で敗れました。

     それを今度の自民党改憲案では、裁判を起こすまでもなく、日本の国籍を持たない外国人には、仮に日本人と同じ生活をし、同じように税金を収めていても、生存権は保障しないということを謳っているのです。この外国人の扱いについて、今度の自民党改正草案の中では、ずっと一貫した思想が貫かれている。

     先ほどの22条第2項では、『何人も、外国に移住』する自由があると言っている現行憲法を、自民党案では『全て国民は』というふうに対象を絞った。この条項に関しては、憲法判例上有名な、森川キャサリーン事件(※35)というものがあります。

     この事件は、日本人と結婚したアメリカ人である森川キャサリーンという方が、当時(1982年)在日朝鮮人が指紋押捺を強制されることに心を痛めて、自分自身は在日朝鮮人ではなかったけれども、再入国申請をする際に、指紋押捺を拒否したのです。

     そのため、再入国許可が認められなかった。森川さんは、これは憲法違反ではないか、移住の自由に反しておかしいではないかと言って、不許可処分の取り消しを求めたのですが、最高裁に蹴られました。

     こうしたことに対して、自民党改憲草案では、そんな訴訟なんか起こすことはできないと謳っている。もう在日外国人はこういう人権の範囲ではないと謳って、それがずっと貫かれている。

     先日、ある著名な人に神保町の交差点で偶然出会って、『今度の改憲草案がね』と話したら、パッと顔色を変えて、『大変ですよ』と言っていました。だから、今度の改憲草案はいろんなところに影響を及ぼしていくと思います」

    (※33)塩見訴訟:原告である塩見日出氏は、在日朝鮮人の両親の下、1934年の大阪で生まれた。当然、日本国籍を有していたが、52年のサンフランシスコ講和条約の発効によって、在日朝鮮人と在日台湾人は日本国籍を失うことになった。

     塩見氏は、麻疹が原因で2歳のときに失明しており、国民年金法が定める1級の廃疾(障害)の状態にあった。しかし、1959年に制定された国民年金法では、その受給資格に国籍要件を課していたため、在日外国人は老齢・死亡・障害に対する年金すべてにおいて社会保障の対象外とされた。

     塩見氏は日本人男性と結婚したことで、1970年に帰化し日本国籍を取得。障害福祉年金の受給を大阪府に請求したが、廃疾認定日(=国民年金法が成立した1959年11月1日)に日本国民でなかったことを理由に棄却され、訴えを起こした。

     1989年3月2日の最高裁判決では、「限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許されるべき」などの理由から、「国籍条項及び昭和34年11月1日より後に帰化によつて日本国籍を取得した者に対し法81条1項の障害福祉年金の支給をしないことは、憲法25条の規定に違反するものではない」とした。

    (※34)国民年金法:国民年金制度について定めている法律で、1959年成立。これにより、国民皆年金に移行した。

    (※35)森川キャサリーン事件:日本人と結婚し、日本に居住していた米国人女性森川キャサリーン・クノルド氏が指紋押捺を拒否したことから、再入国許可の申請が却下された事件。

     森川氏は、日本への入国時以後、外国人登録法による指紋押捺を3度行っていたが、この制度が人間の「品位を傷つける」という立場から、1982年9月に指紋押捺を拒否。のちに罰金1万円の判決を受けた。森川氏は、同年11月に韓国へ旅行するために再入国許可の申請を行ったが、法務大臣は、森川氏が指紋押捺を拒否したことを理由にこれを不許可とした。

     このため、森川氏は不許可処分の取り消しと国家賠償を請求したが、1992年11月16日、最高裁は被告人の上告を棄却した。判決では、「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものでない」、つまり、外国人の再入国の自由は憲法22条によっては保障されないとして、原判決を支持した。
    (参考:有斐閣「別冊ジュリスト 186号 憲法判例百選1[第5版]」、2007年)


    岩上「在日の人たちには、直接的な影響が出るということですね。憲法上の権利が保障されなくなるということは、それぞれの法律上の権利も保障されなくなるでしょうから、大変大きな影響が出てくる。

     今、生活保護の問題が非常に話題になっています。生活保護の給付削減を思い切ってやった(※36)。他方で、何兆円という公共事業を積み上げていくのですけれども、生活保護の方は切り捨てる。25条はこういうことに関係あるのかなと思っていましたが、今言われた外国人、そういう人たちの権利に影響を与えるわけですね。

     『じゃあ、在日は日本国籍を取ればいいじゃないか』と言ってくる人が必ずいます。『サンフランシスコ講和条約が発効されたときに、韓国や朝鮮の方にいくのではなくて、日本人になればよかったじゃないか』と。あるいは、今日においても、『日本国民になればいいじゃないか』『帰化したらどうだ』と言う人がいます。この点についてはどうなのでしょうか?」

    (※36)安倍晋三総理は、生活保護について、3年間で計850億円削減する方針を1月24日に固めた。そのうち、食費や光熱費などの生活扶助を670億円減らす方針だが、これに対して、専門家らから批判の声もある。貧困問題に詳しい法律家や学者らでつくる「生活保護問題対策全国会議」は4月9日に記者会見を開き、「引き下げ幅の根拠とされた指数は、受給者の生活実態を反映していない」と批判した。

    (一部引用:朝日新聞「生活保護削減に異論 支援者ら、算出法「実態映さず」、2013年4月10日)
    http://digital.asahi.com/articles/TKY201304090670.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201304090670


    梓澤「人がある民族として生きる権利というのは、その人のアイデンティティですよね。自分のアイデンティティを譲りたくないというのは、人間の尊厳の中でも、全く重要なことだと思います。

     例えば、『梓澤和幸』として生きてきた人が、ある日突然、『唐沢十兵衛』でいいじゃないかと言われても、それはとても納得できないですよ。それはつまり、その人が生まれてからずっと続いてきた、伝承されてきた自分を守るという、尊厳に基づく権利ですから」

    岩上「なるほど。創氏改名(※37)ではそういうこともあったでしょう。また、やむを得ず生きるために、自分の名前を変えて日本に同化しなきゃいけなかったという事情もあるかもしれません。

     そういう特殊な事情があるときに、なるべくならば本人の民族的アイデンティティを維持したまま生きる権利が認められることが望ましい。しかし、自民党改憲草案では、そうした希望がほぼ否定されているに等しい。

     侵略と併合の歴史的事実を認め、二度と繰り返さない、という決意が戦後の現行憲法の原点です。しかし、侵略の歴史的事実すら認めないという改憲勢力は、併合の結果、日本国民にされ、戦後は日本国籍を奪われた在日韓国・朝鮮人の境遇に対して、冷淡になるわけですね」

    (※37)創氏改名(そうしかいめい) :日本が植民地朝鮮支配の末期、朝鮮民族古来の姓名制を廃止し、日本式の氏名制にかえさせた皇民化政策。1939年(昭和14)11月朝鮮総督府は朝鮮民事令「改正」で創氏改名の条文を公布し、翌年2月に施行した。その内容は、朝鮮の家族制度の根幹であった男系の血族を表す姓制度を全面的に否定して、日本式の家を中心とする氏制の創設を義務づけ、日本式氏名を名のる道を開く(任意的)というものであった。(小学館「日本大百科全書」より)


    ===================================
    ◆ 憲法に入れるべき条項と入れる必要のない条項
    ===================================

    【現行憲法】

    なし[今回の自民党案で新設]


    【自民党憲法改正案】

    第25条の2 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。

    第25条の3 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。

    第25条の4 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。
    ──────────────────────────────────

    岩上「では次に、先ほど言いかけていた25条の2(環境保全の責務)と3(在外国民の保護)、そして4(犯罪被害者等への配慮)について、ここはどうお考えですか?」

    澤藤「一見、これは国民の利益になるのではないかというような条項が、ところどころにある。しかし、それは本当に憲法に入れなければならないものであるのか。あるいは、入れてどれだけ役に立つのか、入れなければ目的を達することができないのか。そうしたことをよく考えた方がいいと思います。

     『環境保全の責務』というのが、25条の2にあります。これは悪いことではありません。しかし、ここは『環境権』という権利にはなっていない。人権条項ではないのです。これは、あえて人権条項にしなかったと自民党自身が言っています(※38)。

     つまり、1人1人に環境権があり、その環境権に基づいた何か具体的な請求権があって、国に対して裁判を求めることができる権利としては規定されていない。

     国の責務。しかも『国民と協力をして』となっている。これは、いかに自民党が環境権に及び腰であるかということを物語っている。あるいは、形だけは環境権を認めざるをえないからポーズだけは取っているけれども、財界に対しては、これだけの配慮をしていますよ、ということなのかもしれない。

     こんなものはなくても、現行で私たちの権利を守ることができるし、これがあったとしても、特に利益になるようなことは、ほとんど考えられない」

    (※38)自由民主党『日本国憲法改正草案Q & A』p.15には、『まだ個人の法律上の権利として主張するには熟していないことから、まず国の側の責務として規定することとしました』と書かれている。


    岩上「なるほど。しかし他方で、公害の問題もそうですし、それ以上に、福島第一原発の事故によって被災した人たち、特に放射能の被害を被った人たちに、これから晩発性の障害が出てきたりするかもしれない。

     こういった環境を著しく傷つけた上、人にも被害を及ぼしたような事件について、国の責任を問われうるというのは、このような形で厳格にもっと認めてもらわないと困る、という声もあるのではないでしょうか?」

    澤藤「困ることはないと思います。それは、あるに越したことはない。しかし、それがなくても、公害基本法やその他法案、あるいは原子力規制法以下の諸法律を活用して補償もできるし、廃炉を求める裁判も現状やっています。憲法に根拠規定があるに越したことはないけれども、なければ困るということはない」

    岩上「不十分だと思っている人は多いと思います。現在の原賠法(原子力損害の賠償に関する法律)も原子力規制法もざるで、決して国民サイドに立っていないのではないかと」


    澤藤「ええ。仮にそうであれば、そういう憲法を作る努力をしなければならないですね。自民党がそうした人の側に立って、そういう人が使えるような憲法条文を作るとはちょっと考えにくい。むしろ、現行の法体系の中で、ざるにならないような法律をどう作るのか、という努力が本当に求められていると思います。

     だから、今の小選挙区制のような国会の構成では、被害者の役に立つようなちゃんとした法律を作ることがなかなか難しい。個々を本当になんとかしようとする努力、本当に使える法律をどう作るのかということが一番大切。それから、裁判所をどう変えるかということ。

     現行の憲法と法律を、被害者の側に立って最大限使ってくれる裁判所をどう作るのか、ということが多分一番大切です。こういうなんとなく使えそうな条文があるから、この憲法改正草案も捨てたもんじゃない、いいんじゃないか、と言うことは大変危険だと思います」

    梓澤「私も環境問題の事件を今やっておりまして、岩上さんにもご協力いただいている築地市場移転問題(※39)などの中でも、憲法13条の人格権を盾にして、かなり裁判所と東京都側を追い詰めるところまでいきました。

     例えば、大阪空港の差止め事件(※40)でも、人格権に基づいて、人々の健康・生命が危うくされる蓋然性(※41)があるときは差止めができるんだ、ということが裁判所の判決の中でも出ております。

     環境権という概念も、この憲法13条の中から引き出せるのではないか、という憲法学上の理論もあります。確かに、もし憲法に『環境権 何人も環境の悪化に対して、これを差し止めする権利を有する』などと書き込めば、これは裁判上の権利として、非常に強力な力になると思います。けれども、今、環境権に惹かれて、憲法改正にのめり込んでいくことには、やはり私も反対です。

     それと、ここに書いてあることをよく読みますと、環境に対する国の配慮を言っているだけであって、人々が裁判上使えるような、裁判規範にのるような権利として謳ったものでは全然ありません。

     これが憲法に入ったところで、裁判では背景事情で言えるぐらいで、裁判上、私の権利が侵されたからこの原発を差し止めろ、というふうには使えません」

    (※39)現在、東京都中央区築地にある築地市場を、江東区豊洲の元東京ガス工場跡地に移転する計画で、2014年末に開場予定。土壌汚染や、液状化の問題などが指摘されており、反対運動が行われている。IWJもこの問題は追い続けており、以下その一部を紹介する。

    ■小坂和輝先生・梓澤和幸弁護士を交えた「築地を守る朝食会」(2012年12月10日)
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/44159

    ■3.2築地移転問題集会のアピール行動(2013年2月28日)
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/62220

    ■どうなる食の安全? ~築地市場移転を考える~(2013年3月2日)
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/62711


    (※40)大阪空港公害訴訟:大阪国際空港(伊丹空港)の離着陸コース直下に居住する住民らが、航空機騒音等によって精神的被害などを受けたとして起こした訴訟。国に対して以下の3つを求めた。

    1. 午後9時から翌朝7時までの空港の使用差し止め
    2. 過去の損害賠償
    3. 将来の損害賠償

     1975年の2審判決は原告全面勝訴の画期的な判決であったが、最高裁は、上記の2を認めたものの、1と3については原告の請求を却下した。
    (参考:有斐閣「別冊ジュリスト 186号 憲法判例百選1[第5版]」、2007年)


    (※41)蓋然性(がいぜんせい):事象が実現されるか否か、またはその知識の確実性の度合。確からしさ。数学的に定式化されたものを確率と呼ぶ。(三省堂「大辞林」)


    澤藤「25条の2も3も4も、人権としての規定にはなっていないわけです」

    岩上「人権としての規定とは、どういうことでしょう?」

    澤藤「つまり、権利を考えるときには、誰の誰に対する権利であるかということが重要です。つまり、それは他方から見ると義務になるわけです。具体的に、裁判で使えるような請求権の根拠になっていれば、それは人権として十全の内容を持っていることになります。


     しかし、ここではそうなっていないので、国が何かを配慮しなければならないとか、せいぜいできるだけ法律を作るとか、行政で気をつけるとかいうことはあるけれども、国民1人1人の権利として認めているわけではありません。

     25条については、有名なプログラム規定説(※42)というのがあります。つまり、具体的に生活に困っている人、最低限度の文化的な生活に至っていない人が、その差額分について補償を要求するというような具体的な裁判規範としての権利にはなっていない。これが、25条の判例の取る立場なわけです」

    (※42)プログラム規定説:憲法の特定の人権規定に関して、形式的に人権として法文においては規定されていても、実質的には国の努力目標や政策的方針を規定したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではないとする考え方。(引用:「弁護士ドットコム 法律用語大辞典」 http://www.bengo4.com/dictionary/7094/


    梓澤「言い換えると、日本国憲法の下では、社会福祉国家を目指すという理想がずっと描かれているわけです。それは、人々の形式的な平等だけではなくて、貧困な人も富裕者も同じように幸せに生きる権利があるという、ひとつの理想を描いているわけです。

     憲法25条の『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』というのが、そのまま裁判で使える規範なのかどうか。これに反したら、国は違法であると直ちに言える権利なのか、ということが問いになるわけです。

     その問いに対して、『いや、それは駄目です』と。『裁判で使えるためには、具体的な法律がなければ駄目です』という話になる。その具体的な法律として、生活保護法があります。生活保護法の、1カ月10万円とか11万円とかの給付、そういう生活保護基準が、『健康で文化的な最低限度の生活』になっているかどうか。法律が出てきて、その法律が具体的になって初めて、この憲法の精神が起き上がってくるのです」

    澤藤「そこでようやく、裁判ができることになる。もし生活保護法がなくて、憲法25条を直接根拠にしても裁判はできない」

    梓澤「それを、明治時代の五日市憲法草案じゃないですけど、本当に人々の人権を守る、人々の幸せを守るために、憲法を書き込むという精神でやるならば、この25条こそ具体的にするべきです。

     この条文を使って、『今、私たちは人間的な生活ができない』ということを裁判所に訴え出たら、それを変えてくれる。そういう規定にしたらどうですか? と私は言いたい」


    岩上「五日市憲法草案とは何でしょうか?」

    澤藤「自由民権運動が世の中を席巻した明治時代、千葉卓三郎(※43)という人がいました。民撰議院設立建白書(※44)というのが提出され、議会開設の契機となります。議会開設の前に、アジアでは初めての近代的な憲法を作ることになった。

     そうすると、日本中の自由民権運動のグループが、それぞれ私的な憲法草案を作り始めます。そうしたものが、いっぱいあるんですけれども、千葉卓三郎さんという人が中心になって作った憲法が、色川大吉さん(※45)の調査で発見されました。

     この憲法は、みんなで学習会を積み重ねて、地域の人たちが作った憲法です。その中に、抵抗権が書き込んである。政府も公邸も役に立たないときには取り替えるという精神で、自分たちの国民の権利がずっと積み重ねられて、きちんと整理されて書かれている。

     明治憲法は確かに欽定憲法(※46)でありますけれども、民衆運動がたくさんある中、つまりそういう人達の声もある程度聞かざるをえない状況の中で、ああいうものができてきたというのが、民衆史の中における憲法制定運動の歴史です。その象徴として、非常に重要な資料だと言われているのが、五日市憲法草案です」

    (※43)千葉卓三郎(ちばたくさぶろう):1852年~1883年。戊辰戦争白河口の戦いに参戦し、その敗北後はさまざまな学問や宗教を学ぶ。1879年ごろから教職に従事し、1880年4月から東京都あきる野市五日市にある五日市勧能学校に勤務。1881年に五日市憲法草案を起草し、その後83年に死去。(参考HP:「あきる野市デジタルアーカイブ 千葉卓三郎の学習遍歴」http://archives.library.akiruno.tokyo.jp/about/chiba.html

    (※44)民撰議院設立建白書(みんせんぎいんせつりつけんぱくしょ):1874年1月17日、板垣退助や後藤象二郎ら8名が当時の左院に提出した建白書。政府に対して初めて国会開設を要望した。政府や明六社は時期尚早だとして反対したが、これを機運に自由民権運動が盛り上がった。

    (※45)色川大吉(いろかわだいきち):1925年千葉県生まれの歴史家で、東京大学文学部国史科卒業。東京経済大学の名誉教授。明治期の民衆思想史研究に関しての草分けで、旧・武蔵国多摩郡深沢村(現・あきる野市)の土蔵から五日市憲法草案を発見したことでも有名。主な著作に「明治精神史」、「ある昭和史─自分史の試み」、「明治の文化」などがある。

    (※46)欽定憲法(きんていけんぽう):君主によって制定された憲法。制定の主体によって区別される成文憲法の一種で、民定憲法に対する。君主主権の原理に基づいて、君主の一方的意思により恩恵として国民に与えられる。1814年のフランス憲法(ルイ18世)、1850年のプロイセン憲法、1889年(明治22)の大日本帝国憲法など、絶対君主制のもとで、民意の高揚を抑えるため、反動期に生まれた憲法がこれに属する。(小学館「日本大百科
    全書」より)


    梓澤「今、自由民主党の改憲草案が出たこの時にあたり、私たちがもう一度、五日市憲法草案をぶちあげた人たちのように、憲法とは何か、人権とは何か、国と私たちの関係とは何か、ということについて深く深く問い、そして自分たちの生き方やこの国をどうやって作っていくのかというひとつの理想と、その理想から見てこの自民党改憲草案はどうなんだ、ということを語っていく時にしたいと私は思います」

    岩上「我々は、現行憲法の意味もぼんやり生きていると知らないわけですから、今自民党の改憲草案を読み込んで、一体これは何なのかということを、先生方にお聞きしながら理解しよう、という趣旨でこの逐条ゼミナールを始めたのですが、憲法が下から作るものであるのなら、それぞれが草案を作ればいいんじゃないかという気もしますね。

     ということで、今日は21条、22条、そして29条と25条、27条、28条をやりました。また改めて、粘り強く続けたいと思いますので、是非よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました」

    澤藤・梓澤「ありがとうございました」

    ■リンク:澤藤統一郎の憲法日記 http://www.jdla.jp/cgi-bin04/column/sawafuji/

    【了】
    【文字起こし:長尾理、校正:徳永なおみ・大西雅明、文責:岩上安身】

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