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    原発問題 -The Truth is Out There-

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    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    IWJ特報117号「接近する米中と"鉄砲玉"にされる日本」(中編) 

    第117号
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
               岩上安身のIWJ特報!
           接近する米中と「鉄砲玉」にされる日本
    ~特定秘密保護法の強行採決と防空識別圏騒動から、「原発×戦争」リスクまで
                  (中編)
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    (IWJより転載許可済み)


    (前編の続き)

    ==================================
    ◆「クリングナー論文」が描くシナリオ◆
    ===================================

     ここで、注目しなくてはならないのは、日中関係悪化のきっかけを作った石原発言が飛び出したのが、日本ではなく、米国、それもワシントンの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」での講演であった、という事実です。

     そのヘリテージ財団が、今から約一年前の2012年11月14日、すなわち、野田佳彦前総理と安倍晋三自民党総裁が芝居がかった党首討論を行い、衆議院の解散が决まったまさにその日、「米国は日本の政治的変化を利用して同盟を深化させるべきである」と題するレポートを発表しました。

     執筆したのは、ブルース・クリングナー。ヘリテージ財団の上席研究員で、CIAの朝鮮半島分析官を務めた経歴を持つ人物です。

     彼はこのレポートの冒頭でまず「安倍晋三元首相が日本の次期首相に選ばれることになりそうだ」と予測。そのうえで、「安倍氏の外交姿勢が保守的であり、日本国民のあいだに中国への懸念が広がりつつあるという状況は、米国政府にとって、日米同盟の健全性維持のために死活的に重要な数項目の政策目標を達成する絶好の機会である」と指摘したのです。


    ----------------------------------------------------------------------

    ヘリテージ財団レポート
    ("BACKGROUNDER" 第2743号(2012年11月14日発行))
    「米国は日本の政治的変化を利用して同盟を深化させるべきである」
    ブルース・クリングナー(ヘリテージ財団アジア研究所北東アジア上席研究員)

    【レポート原文はこちら(英文)】http://herit.ag/QGxuSz

    ●要約

    保守系の自民党が次期総選挙で第一党になり、党首の安倍晋三元首相が日本の次期首相に選ばれることになりそうだ。安倍氏の外交姿勢が保守的であり、日本国民のあいだに中国への懸念が広がりつつあるという状況は、米国政府にとって、日米同盟の健全性維持のために死活的に重要な数項目の政策目標を達成する絶好の機会である。

    Polls indicate that the conservative LDP will gain a plurality and choose LDP President and former Prime Minister Shinzo Abe as Japan’s next prime minister. Abe’s conservative foreign policy views and the Japanese public’s growing concern over China provide an excellent opportunity for Washington to achieve several policy objectives critical to the health of the U.S.Japan alliance.

    ---------------------------------------------------------------------

     石原氏に「尖閣購入発言」の舞台を提供し、中国と日本の両国で憎悪と悪性のナショナリズムの炎が燃え広がる「悲劇」を見届けながら、右傾化する日本の政治状況をにらみすえて、この状況を米国の政治的目的達成のために利用しよう、とこのレポートはあからさまに述べるのです。

     さらに、クリングナー論文は以下のように続きます。

    ---------------------------------------------------------------------

    米国政府は長きにわたって、日本が自国の防衛により大きな役割を担うこと、さらに海外の安全保障についてもその軍事力・経済力に見合う責任を負担することを求めてきた。日本が防衛費支出を増大させ、集団的自衛権行使を可能にし、海外平和維持活動への部隊派遣に関する法規を緩和し、沖縄における米海兵隊航空基地代替施設の建設を推進することになるとすれば、米国にとって有益なことである。

    Washington has long pressed Japan to assume a greater role in its own defense while adopting overseas security responsibilities commensurate with its military and economic strength. It would be beneficial for the United States if Japan were to increase its defense spending, enable collective self-defense, adopt less restrictive rules of engagement for forces involved in overseas peacekeeping operations, and press forward on building a replacement U.S. Marine Corps airbase on Okinawa.

    ---------------------------------------------------------------------

     すなわち、日本が防衛支出を増やすことも、集団的自衛権行使容認という日本の憲法解釈にかかわる重大な問題も、普天間飛行場の辺野古への移転も、一見、日本の安全保障のために、日本政府自らが主体となって進めているかのように装いながら、実のところ、米国の利益のため、「米国にとって死活的に重要な政治的目的を達成するため」に進めている政策である、ということです。


     現代の「軍機保護法」である「特定秘密保護法」が強行採決されたのは、まさにそのためなのです。


     ちなみに、尖閣諸島の国有化を巡る野田前総理と石原前都知事の「攻防」を詳述したノンフィクション、春原剛著『暗闘 尖閣国有化』(新潮社、2013.07)によれば、ヘリテージ財団での石原氏の講演を設定したのは、アジア研究センターのウォルター・ローマン所長と、他ならぬクリングナーであったとされます。

     「クリングナーによれば、演説の舞台設定をしたとはいえ、ローマンもクリングナーも当初、石原が何の目的で、どのような内容のことを話すのかといったことまでは『事前には一切、聞かされていなかった』とクリングナーは断言する。

     ただ、東京でローマンが石原と面会した際、『今後、ワシントンで講演したいのでよろしく頼む』程度のことを言われたに過ぎなかった、とクリングナーは振り返る。後に米国をも巻き込む騒動となる石原の爆弾発言に一番驚いたのは、実はその場に居合わせたローマン、クリングナーの二人だった」[64ページ]

    ・春原剛著『暗闘 尖閣国有化』(新潮社、2013.07)(写真URL:http://bit.ly/1bREwLd

     本書の記述が事実の通りだとすると、確かにクリングナーは、石原氏が2012年4月16日の講演で、東京都による尖閣諸島の購入を宣言するということを、事前に知らなかった、ということになります。その点について、この記述だけだと、クリングナー氏本人に春原氏自身が取材し、確認したのかどうか判然としません。

     春原氏の記述をその文面通りに受け取れば、講演会での石原氏の突然の発表を聞いて、クリングナー氏は驚きつつも、「我が意を得たり」と思い、その半年後に「クリングナー論文」にまとめた、という可能性もありえなくはないでしょう。

     しかし、奇妙なことにこの『暗闘 尖閣国有化』には、「クリングナー論文」は登場しません。春原氏は、元日本経済新聞ワシントン支局特派員で、日本経済新聞社と太いパイプを持つワシントンの保守系シンクタンク「CSIS(戦略国際問題研究所)」国際安全保障部客員研究員を務めた経歴を持つ、日本随一の「ジャパン・ハンドラー」通として知られる人物です。

     その春原氏が、クリングナー氏の存在に言及し、同氏と面識があることまで明らかにしているのに、そのクリングナー論文にまったく触れないのは、いかにも不自然です。あえて避けて通ったと見るのは、うがちすぎでしょうか。


     尖閣諸島を巡る日中間の緊張の高まりと、米国の意図を理解するためには、この「クリングナー論文」を抜きに語ることはできません。

    ===================================
    ◆尖閣諸島の「領有権」争い、米国の立場は「中立」
    ===================================

     ここまで順番に見てきたように、自民党を中心とする日本の保守系政治家は、「台頭する中国の脅威」と、それに対抗する「不朽の日米同盟」という構図をことさら強調します。特定秘密保護法と日本版NSCの創設、さらには解釈改憲による集団的自衛権行使容認を政府が強引に進めるのは、このような構図が前提となっています。

     しかし、近年における東アジアの軍事的な「緊張」を作りだしているのは、中国政府の責任ばかりではなく、日本政府とその背後に控える米国政府の責任も軽くはありません。しかもそれは、CSISが発表した「第3次アーミテージレポート」や、上記の「クリングナー論文」が描いたシナリオ通りに進行しているのです。


     日本と中国、そして米国にとって「躓きの石」として存在しているのが、尖閣諸島です。現在のように、日中関係が戦後最悪と言われるまでこじれた原因を理解するためには、尖閣諸島の領有権を巡る、日本、中国、そして本来は第三者であるはずの米国の外交戦略について、歴史的にふり返っておく必要があります。

     尖閣諸島に対する日本政府の公式見解は、「尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」というものです(外務省ホームページ【URL】http://bit.ly/1j1XoxB)。

     しかし米国は、尖閣諸島の施政権が日本に存在することは認めているものの、領有権については一貫して「中立」の立場を取っており、「当事者間で解決すべき問題だ」としています。つまり米国は、日本政府の公式見解とは異なり、尖閣諸島について日中間に領有権争いが存在していることを認めているのです。

     このことは、今年1月18日に行われた岸田文雄外務大臣とクリントン国務長官(当時)の共同会見、そして4月14日に行われた岸田外相とケリー国務長官の共同会見において、両長官が”The United States, as everybody knows, does not take a position on the ultimate sovereignty of the islands.”(アメリカは、みなさんご存知のように、それらの島の最終的な主権についてはいかなる立場も取りません)と述べていたことからも明らかです。


    ・岸田文雄外務大臣(写真URL:http://bit.ly/JENYYM

    ※Remarks With Japanese Foreign Minister Fumio Kishida After Their
    Meeting(アメリカ国務省ホームページ 1月18日【URL】http://1.usa.gov/1hQnS3z

    ※Joint Press Availability With Japanese Foreign Minister Kishida
    After Their Meeting(アメリカ国務省ホームページ 4月14日 【URL】http://1.usa.gov/JlcYon

     日本の既存大手メディアが横並びで両長官によるこの発言を削除し、あたかも米国が一方的に日本に肩入れしているかのように報じたことは、「IWJ特報」第83号「国民を”愚民”化する日本のメディア~尖閣問題をめぐる米国首脳の発言を読み解く」ですでに指摘しました。

    ※「岩上安身のIWJ特報!」第83号「国民を”愚民”化する日本のメディア~尖閣問題をめぐる米国首脳の発言を読み解く」
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/76832

    ===================================
    ◆尖閣諸島の「領有権」は日本に返還されていない!
    ===================================

     では、なぜ米国は、尖閣諸島の領有権について、「最終的な主権についていかなる立場も取らない」という戦略をあえて取っているのでしょうか。そのことを理解するためには、1971年6月17日に調印された、沖縄返還協定にまでさかのぼる必要があります。

     日本と米国が沖縄返還協定の締結に向けて交渉を進めていた1970年代初頭、米国は、日本、韓国、台湾と「繊維交渉」を行っていました。「繊維交渉」とは、東アジア諸国からの安価な繊維輸出を脅威に感じた米国が、日本、韓国、台湾に対して輸出の自主規制を要求した、というものです。

     1972年に大統領選挙を控えていた当時のニクソン大統領は、国内の産業界の支持を取りつけるため、この「繊維交渉」で成果をあげることを目指していました。

     尖閣諸島の領有権を巡る問題は、この「繊維交渉」における、米国と台湾の駆け引きに起源が存在するのです。

     1971年4月12日、台湾の周書楷(シュウ・ショカイ)駐米大使がニクソン大統領のもとを訪れ、尖閣諸島の問題を提起します。それは、「繊維交渉」での譲歩と引き換えに、第2次世界大戦における日本の敗戦によって帰属先が曖昧になっていた尖閣諸島の領有権を、台湾側が主張する、というものでした。

     この台湾側の要求を聞いたニクソン大統領は、おおいに慌てます。というのも、当時、米国はこの「繊維交渉」と並行して、日本と沖縄返還交渉を進めていたからです。

     1951年9月8日に調印されたサンフランシスコ平和条約では、尖閣諸島は沖縄県の一部であるとされていました。従って、沖縄だけを尖閣諸島と切り離して日本に返還し、尖閣諸島の領有権を台湾に与えるということには、日本側からの強い反発が予想されました。

     かといって、米国は台湾の要求を無視するわけにはいきませんでした。当時は、1971年4月の「ピンポン外交」に象徴されるように、米中接近の真最中でした。米国からしてみれば、台湾(中華民国)が大陸(中華人民共和国)に呑み込まれた後のことも想定し、日本、台湾、中国、いずれの顔も立てる必要に迫られていたのです。


     当時の状況を、よりマクロな視点で見てみましょう。1970年代初頭は、「冷戦前期」から「冷戦後期」への転換期にあたる時代でした。1969年3月、ウスリー江のダマンスキー島(中国名:珍宝島)で中ソ国境紛争が勃発し、ソ連と中国という東側陣営の両巨頭の間に亀裂が生じました。

     そこで、当時、ベトナム戦争が泥沼化していた米国は、撤退への道筋をつけるために、ソ連と関係が悪化していた中国との和解を試みます。北ベトナムの背後にあって、ベトナムの支援を続けていた中国と折り合わない限り、この戦争の「出口」は見つからない、という判断が働いたのでした。

     1971年、ニクソン政権で外交・安全保障を担当していたヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官が2度にわたり中国を極秘に訪問。そして1972年2月21日、ニクソン大統領が北京を電撃的に訪問して、毛沢東主席と会談、全世界を驚かせたのです。

     そして、このような米中接近のもと、国連における「中国代表権」が、それまでの台湾(中華民国)から大陸(中華人民共和国)に移ることになりました。

     1970年代初頭の「繊維交渉」と沖縄返還協定交渉は、このような冷戦構造のダイナミックな変化において理解する必要があるのです。

     「繊維交渉」において、台湾から譲歩を引き出すこと。沖縄返還協定交渉において、日本との関係を悪化させないこと。さらに、近く実現するであろう中国との関係改善を見越し、中国側の面子をつぶさないようにすること。

     これらの条件を両立させるための方策として、「繊維交渉」特使として各国の窓口となっていたデーヴィッド・ケネディ前財務長官が考えだしたのが、尖閣諸島については「施政権」のみを日本に返還し、「領有権」に関して米国は
    中立の立場を取る、という、現在にまで引き継がれている「あいまい戦略」だったのです。

     このケネディ特使の提案を受け、1971年6月7日、ニクソン大統領と、ヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官、さらには経済分野を担当していたピーター・ピーターソン大統領補佐官の三人がキャンプデービッドで会談し、尖閣諸島の領有権に対する米国の立場が正式に決定されました。

     『チャイメリカ』『尖閣問題の核心』『尖閣衝突は沖縄返還に始まる』などの著作があり、日米中関係に詳しい横浜市立大学名誉教授の矢吹晋(すすむ)氏は、私が12月10日にインタビューした際、そのキャンプ・デービッドでの合意の模様を、次のように説明しました。

     「尖閣諸島を含めて日本政府に返すという方針は変えない。これが一つです。ただし、これは施政権であって、領有権ではない、と。

     領有権については、日本と中華民国(台湾)との間で争いがあるから、当事国同士で解決してくれ、というものでした。日本の味方もしない、中華民国の味方もしない、ということです」


    ・岩上安身のインタビューに応じる横浜市立大学名誉教授の矢吹晋氏
    (写真URL:http://bit.ly/1kX1QJJ

    ※2013/12/10 岩上安身による矢吹晋氏インタビュー
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/115882

     この事実は、米国側の記録としてはっきりと残っています。2001年11月、米国議会調査局が上下両院議員の法案審議用資料として作成した報告書「中国の海洋領有権主張=米国の利害への意味」には、次のような記述があります。

    “the Nixon Administration removed the Senkakus from its inclusion in the concept of Japanese residual sovereignty. The Nixon Administration asserted that the United States took no position on the issue of competing Japanese and Chinese claims to sovereignty.”

    「ニクソン政権は、尖閣諸島を日本の領有権の概念に含めることから除外した。ニクソン政権は、米国政府が日本と中国の領有権争いの問題に対していかなる立場を取らないと断言した」

    ※China’s Maritime Territorial Claims: Implications for U.S.
    Interests【URL】http://www.hsdl.org/?view&did=446508

     以上のように、尖閣諸島の領有権に関して「いかなる立場も取らない」という米国の基本姿勢は、1970年代の沖縄返還協定と「繊維交渉」という、日本、米国、台湾、中国による外交戦の中で米国が選択した、極めて戦略的なもので
    した。

     しかし日本政府と日本のメディアは、尖閣諸島に関して米国は日本の味方であり、ともに手を携えて「台頭する中国」を迎え撃つという「物語」を喧伝しています。「ヘリテージ財団」で尖閣諸島の購入を宣言した石原慎太郎前東京都知事が、その典型例であると言えるでしょう。


    ===================================
    ◆「黄尾嶼射爆場」「赤尾嶼射爆場」の起源
    ===================================

     ところで、野田内閣のもとで断行された尖閣諸島国有化の対象が、5つの島嶼のうち、魚釣島、北小島、南小島の3島に限定されていたことは、ほとんど報じられませんでした。もとより国有地であった大正島はともかく、他の3島と同じく個人所有である久場島が国有化の対象から除外されていたことは、ほとんど知られていないと思われます。

     大正島、そして久場島は、1972年5月15日の日米合同委員会において、米軍が射爆撃場として利用することで日米が合意しました。以降、この2島は、米軍の許可なしには日本人が立ち入ることができない、排他的管理区域として設定されています。


    ・尖閣諸島周辺の地図(矢吹晋著『尖閣衝突は沖縄返還に始まる』より転載)
    (図像URL:http://bit.ly/1c2Pu1s

     石原前都知事は、2012年9月7日に東京都庁で行われた定例会見で、久場島の購入について記者から聞かれ、「米国も今まで爆撃演習に使っていたみたいでね、そのままでいいんじゃないですか」「これは私たちが口を出せる問題じゃない」と語り、購入の意図を否定しました。この発言から、石原前都知事が、久場島がアメリカの射爆場であることを理由に、購入の対象とすることを見送っていたことは明らかです。

    ※2012年9月7日 石原慎太郎東京都知事 定例会見
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/29396

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    ◆久場島と大正島に台湾が打ち込んだ「楔(くさび)」
    ===================================

     奇妙なことに、海上保安庁第11管区海上保安本部のホームページには、久場島が「黄尾嶼(こうびしょ)射爆撃場」、大正島が「赤尾嶼(せきびしょ)射爆撃場」と記載されています(海上保安庁HP【URL】http://bit.ly/aivhqX)。

     「黄尾嶼」「赤尾嶼」とは、中国側が尖閣諸島の領有権を主張する際に根拠に上げる文献『使琉球録』(1535年)の中に登場する名前です。なぜ、一貫して「尖閣諸島に関して日中間に領土問題は存在しない」という立場を取り続ける日本政府が、この呼称をなぜ訂正しないのか、実に不可解です。


     IWJは、5月10日、安倍政権で領土問題を担当する山本一太内閣府特命担当大臣に対し、久場島と大正島が米軍の射爆撃場として提供され、日本人の立ち入りが禁止されていること、そして海上保安庁のホームページに、両島がそれぞれ「黄尾嶼射爆撃場」「赤尾嶼射爆撃場」と記載されていることについて質問していました。

     しかし、山本一太特命担当大臣の答えは、次のような、実に歯切れの悪いものでした。

     「いや、今の話は、色々と外交上の話、安全保障上の話、防衛省の立場等々もあるので、これはちょっと私のほうからコメントする話ではないと思います」

    ・山本一太内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、科学技術政策、宇宙政
    策)
    (写真URL:http://bit.ly/JK88Bg

    ※2013/05/10 山本一太内閣府特命担当大臣 定例会見
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/78069

     山本大臣は「外交上の話、安全保障上の話、防衛省の立場等々もある」とだけ述べ、言葉を濁しました。しかし、それも無理なからぬ話しなのかもしれません。

     というのも、「黄尾嶼射爆撃場」と「赤尾嶼射爆撃場」の設置は、この「繊維交渉」における米国と台湾による激烈な交渉の中で、日本の頭越しに決められたことなのですから。米国の事実上の「保護国」の「大臣」が口をはさむことではない、ということなのかもしれません。

     先述したように、1971年6月7日、キャンプデービッドでのニクソン、キッシンジャー、ピーターソンによる三者会談により、尖閣諸島について「施政権のみを日本に返還し、領有権に関しては中立の立場を取る」という米国の基本方針が決まります。すると、その報を聞いた台湾の蒋経国(しょう・けいこく)が、その案を受け入れる代わりとして、一つの要求を米国側に出します。それが、黄尾嶼(久場島)と赤尾嶼(大正島)に、米軍の射爆場を残す、というものでした。


     台湾(中華民国)にしてみれば、大陸(中華人民共和国)からの侵攻に備えるための防波堤を築いておきたいという思惑がありました。

     矢吹氏は、以下のように説明します。

     「なぜ蒋経国がこのような要求をしたかというと、そこ(黄尾嶼と赤尾嶼)から米軍がいなくなった途端、中国の人民解放軍がそこを占拠する恐れがあったからです。

    この二つは、大陸から一番近い島、ということになります。大陸が台湾を征服する時には、黄尾嶼と赤尾嶼を経由して、島伝いに来る可能性があるのです」

     尖閣諸島に現在も残る「黄尾嶼射爆場」と「赤尾嶼射爆場」は、「繊維交渉」の過程において、台湾が防衛のために深く打ち込んでいた楔(くさび)だったのです。

    ===================================
    ◆裏でしっかりと手を握る「ヘリテージ財団」と中国
    ===================================

     さて、安倍氏や石原氏といった日本の保守政治家を巧みに操り、日本のナショナリズムを高揚させて対中関係の悪化を作り出したヘリテージ財団が、実は日本を飛び越えて、中国との間に太いパイプを築いているという、驚くべき証言
    があります。


     国際ジャーナリストで早稲田大学大学院客員教授の春名幹男氏は、私のインタビューに応じ、ヘリテージ財団と中国とのコネクションについて次のように語りました。

     「最近、ヘリテージ財団の友人と話していたら、中国本土からお金が入るようになった、と言っていました。エレーン・チャオという、ブッシュ政権で労働長官にまでなった人物が、ヘリテージ財団の上級研究員になっているのです。

     このエレーン・チャオの父親であるジェームズ・チャオは、上海交通大学で江沢民元国家主席と同級生だった人物であり、中国の政界と強いパイプを持っています。さらに、海運業で財をなした大富豪でもあります。

     エレーン・チャオは、父親のコネクションを使って、中国本土で集金活動を行いました。このコネクションを介して、ヘリテージ財団をはじめとする米国の保守層に、かなりのチャイナマネーが流れていることは間違いないでしょう」


    ・岩上安身のインタビューに応じる春名幹男氏
    (写真URL:http://bit.ly/1do4qWf

    ※2013/02/05 岩上安身による国際ジャーナリスト・春名幹男氏インタビュー
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/56406

     台湾出身のエレーン・チャオ(趙小蘭)は、8歳の時に一家で渡米し、ハーバード大学経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得したエリートです。1984年から86年の2年間、ハンク・オブ・アメリカで副社長を務めた後、1989年に発足した父ブッシュ政権では運輸副長官を、そして2001年に発足した子ブッシュ政権では労働長官を務めました。夫は共和党の大物、ミッチ・マコーネル上院議員で、夫婦ともども共和党に大きな影響力を保持しています。

     春名氏によれば、このエレーン・チャオの父親であるジェームズ・チャオは、あの「反日愛国主義政策」で知られた江沢民とも深いつながりのある大富豪であるといいます。このエレーン・チャオを介して、莫大なチャイナマネーが、ヘリテージ財団、ひいては共和党に流れている、というのです。

     伝統的に民主党は中国びいき、共和党は反共色が強く、中国より日本びいき、などと言われてきましたが、それはせいぜい10年前までの話にすぎません。人脈的にも、金脈的にも、中国は米国で大きな政治的影響力を持つようになっているのです。


     日本におきかえて、想像してみてください。

     両親とともに8歳で移住してきた外国人の子供が、日本で成長し、日本国籍をとり、高学歴エリートになって、出自を隠すことなく、本国との政治的・経済的なパイプも維持しつつ、政治家になり、移民一世にして大臣にまでなる。想像できるでしょうか? ほとんどありえない話です。

     これは、エレーン・チャオという一人の移民一世のサクセスストーリーであるばかりでなく、米国社会が、中国人を受け入れ、しかも支配階級への参入も認め、さらにその母国・中国との結びつきの深まりをも「歓迎」している、ということに他ならないでしょう。

     米国において、中国人移民は一時滞在の「ゲスト」扱いされているわけではないのです。


    ==================================
    ◆再接近する米中
    ===================================

     もちろん、中国との関係を深めているのは、ヘリテージ財団のような、米国の共和党を中心とする保守派だけではありません。

     2009年、中国の輸出総額は2020億ドルに達し、世界第一位に踊り出ます。そして、まさに「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げた中国の最大の貿易相手国は、米国なのです。2000年と2010年を比較すると、日米間の貿易額(輸出入計)が2080億ドルから1783億ドルに減少する一方、米中間の貿易額は、683億ドルから3753億ドルに急増しています。

     このように、米国にとって太平洋における主要な貿易相手国は、日本ではなく中国なのです。


    ※中国の台頭で変貌する世界貿易(独立行政法人 経済産業研究所 2011年11月30日【URL】http://bit.ly/tCqHlw

     早稲田大学現代中国研究所所長の天児慧氏は、オバマ政権は、日本を抜き、世界第2位の経済大国になった中国に対し、いかにして対立の構図を作らないようか戦略を練っている、と指摘します。

     「現在の中国の指導者は、非常に慎重に戦略を練っています。それは、かつての米ソ対立のような構図を作らないようにする、ということです。


     習近平政権が発足した時、中国国務院のシンクタンクとIMF(国際通貨基金)が、合同の研究プロジェクトを作り、『2030年の中国』というレポートを作成しました。IMFの実体は、実質的には米国政府です。

     このレポートの内容は、驚くべきことに、いかに中国市場の自由化を徹底させるか、というものでした。中国の国営企業は、これまで手厚い優遇を受けていて、それが今の中国経済の飛躍に貢献してきました。しかし、習近平は、国営企業を既得権だと見なして、2030年までには徹底した自由主義社会を作ろうとしています。

     このように、どうすれば米中対立を避けることができるかということを、米中の要人は一生懸命考えています。これは、米ソ対立の二の舞いを避けようというものです」

    ・岩上安身のインタビューに応じる天児慧氏
    (写真URL:http://bit.ly/J6QXsj

    ※2013/09/11岩上安身による天児慧氏インタビュー
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/101096

     米中の接近を象徴する例がもう一つあります。元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、米国人学生の留学先として、日本ではなく中国が選ばれている現状を説明しました。

     「現在、米国から日本に留学する学生は約3000人だと言われています。一方、中国に行く米国の学生は、なんと13万人です。そして、中国から米国に行く留学生は、26万人にものぼります。

     こういう人的交流を見れば、日米より米中のほうが、関係が太いに决まっているでしょう」


    ・岩上安身のインタビューに応じる孫崎享氏
    (写真URL:http://bit.ly/1cBR86T

    ※岩上安身による孫崎享氏インタビュー
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/112741

     天児氏や孫崎氏が指摘するように、米中は対立するどころか、互いにさらなる接近の道を模索しているのです。

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    ◆「防空識別圏」騒動、日本ははしごを外された
    ===================================

     ここで、「防空識別圏騒動」に対する、日米の対応の違いについて改めて確認しておきましょう。

     中国による防空識別圏の設定を受け、日本政府はすぐさま、日本の民間航空会社に対し、中国の求める飛行計画書を提出しないよう呼びかけました。その一方で、米国務省は11月29日、米民間飛行機会社に、「中国側の要求に従うべきだ」との見解を発表しました。ユナイテッド航空、アメリカン航空、デルタ航空の米航空会社大手3社が、中国当局に飛行計画を提出したと発表したのです。


    ※「米民間機は中国の要求に従って」、防空圏問題で米国務省 (11月30日、AFP【URL】http://bit.ly/IlT1x1)。

    ※米民間航空3社、中国に防空圏飛行計画を提出
    (12月2日、ロイター【URL】http://bit.ly/1cU0s7t

     ケリー国務長官が緊急の声明を発表し、さらに戦略爆撃機B-52を飛行させるなど、政治的・軍事的なレベルでは、米国は中国をしっかりと牽制するかのような装いを見せ、日本側を安堵させました。しかし、いざ経済上の実利が絡むと、このように米中はしっかりと落とし所を作るのです。

    (後編に続く)

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