11« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»01

    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

    スポンサーサイト 

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    スポンサー広告  /  tb: --  /  cm: --  /  △top

    IWJ特報第124号「自衛隊が米軍の下請けになる日〜山口大学副学長・纐纈厚氏インタビュー(その2)」 

    第124号
    ───────────────────────────────────
                 岩上安身のIWJ特報!
             自衛隊が米軍の「下請け」になる日
          特定秘密保護法と集団的自衛権行使容認の先にあるものとは何か
            山口大学副学長・纐纈厚氏インタビュー(その2)
    ───────────────────────────────────
    (IWJより転載許可済み)

    ===================================
    ◆ 国民保護法と武力攻撃事態対処法◆
    ===================================

    纐纈「そのあとに、国民保護法(※25)ができました。国民の保護をするという法律だから、おそらく多くの方々は・・・」

    岩上「悪くないと思っていますよね」

    纐纈「例えば、有事の際に、自衛隊が『防衛出動』という名前で出動します。それに対して人々が反対運動を起こすとします。そして道路を封鎖しようとするとき、その人たちを保護の名目で、強制移動させることができる法律なのです。これが国民保護法なんです。名前に騙されてはいけません。

     さらに怖いのは、その後にできた武力攻撃事態対処法(※26)です。例えば、北朝鮮がミサイルを格納庫から引っ張りだしたとします。それを宇宙衛星で見ていますね。そのときに、アメリカ政府および日本政府が『これは明らかに日本を狙った準備だ』『これは有事の予兆あり』と判断した場合には、武力攻撃に対する対処をすることができる法律です。つまり、先制攻撃を認めた法律なのです」


    岩上「そうですか。この武力攻撃事態法というのは、『敵基地攻撃論』(※27)にまさに繋がる話ですよね」

    纐纈「はい、先制攻撃論です。先に正確なターゲットを絞り込み、そして正確なPGM誘導兵器等々で相手を確実に破壊することによって、はじめて生き残れるという、『先制確証破壊論』というのがあります。それを踏まえてでき上がったのが、先制攻撃論を可能とする武力攻撃事態対処法なのです。

     つまり、日本は、アメリカとの協力で、いつでも一定の戦争はできる戦争国家、『ウォー・ステート』になってしまっているんですね」


    ------------------------------------------------------------------
    (※25)国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律):2003年に始まった有事法制の一環として、武力攻撃等を受けた際に国民の生命・財産を保護することを目的として、2004年に成立した日本の法律である。

     日本が武力攻撃を受けたときや大規模テロにさらされたとき(これらは武力攻撃事態に準ずる扱いとして緊急対処事態という)国民の生命・財産を守る方法を定めた法律であり、主に国と地方公共団体の役割を規定している。

     武力攻撃事態や緊急対処事態などに際して住民の避難・救援に必要な場合、一定の範囲で私権を制限することを容認し、住民に対する避難指示や救援活動は都道府県中心で行うこととされている。

     国の役割は、国民保護のための方針を定め、警報を発令し、避難措置を指示する。さらに自然災害と有事に対する包括的な法的枠組み整備に向けて2005年の国会において緊急事態基本法の法案審議が開始された。(Wikipediaより【URL】http://bit.ly/1hIcTGv)

    (※26)武力攻撃事態対処法:武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(武力攻撃事態対処関連3法【URL】http://bit.ly/1iV4m7C)

    平成15年(2003年)6月6日に可決、成立した武力攻撃事態対処関連3法は以下のとおり。
    ・安全保障会議設置法の一部を改正する法律
    ・武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保
    に関する法律
    ・自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律

    (※27)石破幹事長は、2013年4月14日のフジテレビの番組内で「北朝鮮からミサイルを撃たれたて日本に落ちて、何万人と死んでから対応するのは遅すぎる」と、北朝鮮ミサイル基地への先制攻撃の必要性を語った。

    (IWJ記事「参院選の喧騒の裏で秘密裏に盛り込まれた『敵基地攻撃論』~参院選2013各争点の総括と今後の見通し」参照【URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/94919)

    ===================================
    ◆キーワードは「日米秘密同盟」~特定秘密保護法は米国のための法律 ◆
    ===================================

    纐纈「そういう意味で、2000年代以降、非常に濃密な軍事協力関係、軍事一体関係、日米共同作戦の一体化という方向に進んでいるわけですね。

     だんだんと日米関係、日米軍事同盟が濃密になればなるほど、当然アメリカから提供される情報、いわゆる秘密情報がどんどん増えてきます。その秘密保護のための法律は、日本にはもちろんありますね」


    岩上「はい、すでにあります」

    纐纈「自衛隊法の中にもあります。国家公務員のなかにも秘密保護の規定があります。つまり、十全に秘密保護がありながら、なおかつ秘密保護法を作れというのは、明らかに、特定の国からくる情報に対してしっかりベールに包みなさいということです。これを、アメリカが要請していることは、もちろん言うまでもないわけです」

    岩上「特定秘密保護法案には、日本が外国に対して秘密情報を提供できると書いてあります。アメリカから来る情報を国民に対して秘密にする、あるいはそれが他国に渡らないようにきちんと管理するという表の話だけではなく、日本の情報をアメリカに献上し、提供するということが、法律に書き込まれているわけですね」

    纐纈「そういうことです。キーワードを申し上げます。日米秘密同盟です。つまり、日米安保同盟という非常にふわっとした言い方ではなくて、国民に知らせたくない秘密を、日米両政府がしっかり抱えこむということを約束した法律、これが特定保護法案なのです。

     だから、特定秘密保護法の非常に重要な問題点は、これが日本のための法律ではない、ということです。アメリカのための法律です。アメリカの要請を受けるかたちで作られた法律だという側面が、非常に強い。日本の国民にとって、まったくよろしくない法律だと思います」


    岩上「これは、国民主権を守りたい人にとってはもちろんよろしくないでしょうけれども、国家主権を重要だと考えている人にとっても、本来は、許せない話ではないですか?」

    纐纈「まったくそのとおりです。つまり、主権者である自分たちの存在も脅かされます。日本は独立国家のはずですね。

     国家そのものの秘密、あるいは国家そのものを成り立たせる非常に重要な情報が、完全にアメリカに筒抜けになってしまう。アメリカの属国化、これを定義づけ規定付ける法律として、特定秘密保護法があるのです。

     これは右も左も関係なく、大変な売国法だと思います。国を売る法律だと思います。そういう認識がどうして生まれないのか、私は不思議でならないのですね」

    ===================================
    ◆アメリカの「雇い兵」国家 ◆
    ===================================

    岩上「2005年には、日米同盟の『2プラス2』があり、『日米同盟~未来のための変革と再編』(※28)が結ばれます。このへんは、ガイドラインとか周辺事態法とか、一連のものとつながっていくのだろうと思うのですが、ここには、例えば、島嶼部の防衛というような話がでてきます。

     これには、尖閣の話が関わってきます。この『日米同盟~未来のための変革と再編』には、島嶼部の防衛に関しは、第一義的に自衛隊がやる、と書いています。要するに、米国は出ないということです。

     私は岡田克也外務大臣の記者会見(※29)で、この点について質問しました。『日米安保と日米同盟は矛盾している。日米安保5条適用と言うけれども、日米同盟では、尖閣に中国軍が攻撃して来たときにどちらが守るんだ』と聞きました。当時の岡田外務大臣は、こう答えました。『もし中国軍が尖閣を取りに来るというような事態のときには、自衛隊が第一義的に行きます』と。

     前原さんに代わってからも、同じ質問をして、前原さんもそうはっきりおっしゃった(※30)。その後、例の漁船衝突事件(※31)が起こりました。こういうのを見ていると、米国は、結局のところは対中正面の防衛については、日本にやらせる気だと思います。『安保5条適用』と言いながら、『お前が自分でやれ、我々は中国と直接衝突しないよ』というふうに、二重構造になっているような気がするんです。


     これは、一連の流れの中で、一体どういう仕組みで、どういう思惑でデザインされているのですか?」

    纐纈「アメリカの戦略は今、同盟国分担態勢というシステムです。現在のアメリカの軍事同盟国は、日本と韓国だけになりました。ドイツ、イギリスからは、アメリカの駐留軍はほとんど引き揚げていて、もはや軍事施設の管理責任者ぐらいしかいません。一方で、韓国には3万5千から4万の兵力が展開し、日本には約7万前後の兵力が展開しています。

     アメリカとしては、経済的にかなり弱ってきたので、平時においては、韓国、そして日本という同盟国に分担させています。いわゆる同盟国分担態勢というのが、アメリカの基本的な基軸です。それはアメリカのアーミテージ報告(※32)などでも言っています」


    岩上「『リバランシング』なんていうことで、肩代わりを言っていますよね」

    纐纈「ええ。ですから、特に特定秘密保護法ができてしまって以降、日本は、おそらく、いつかはアメリカのために戦うという話になります。そういうステージに入ってきていると思います。

     特にいま、ガイドラインの再改定が進んでいます。来年の2014年の末頃までには、再改訂されたニューバージョンのガイドラインができます。そこに盛り込まれる内容は、いまほぼ掴めていますよね。

     日米共同文書(※33)がもうでき上がっていますから、それがおそらくガイドラインの中に反映されていくと思います。その内容は、多岐に渡るのですけれども、ひとことで言えば、対中国海洋戦略です。つまり、中国を正面に見据えた戦略を取るんだということです。

     いま、アメリカと日本の位置関係は、楯と鉾なのです。日本が楯で、鉾はアメリカです。その関係が、ガイドラインの改定によって、逆転するんです。つまり、日本が鉾になり、アメリカが楯になるという。これまでの役割分担が逆になっていく。

     要するに、日本が鉄砲玉になっていく、ということです。日本の自衛隊が最前線に最初に投入される部隊になっていくという将来構想が、既にでき上がっています。ガイドラインの中にそのことがどこまで明記されるか分かりませんが、読めば分かるようになっているはずです。つまり、日本はこのままだと、アメリカの雇い兵化していく、ということです」

    岩上「それは日本の国益のためではないのですね」

    纐纈「もちろん。アメリカの国益のためです。そしてアメリカは、アジアにおける覇権を十全に行使する能力も経済力も意図もだんだん後退してきました。その代わりに、場合によっては、やはり韓国人、日本人を鉄砲玉にしたい。これがアメリカの非常に深い思惑です。

     実はアメリカは中国ともよしみを通じて、米中経済同盟のようなものをどんどん進める一方で、日本とは日米軍事同盟を進めることによって、日本を鉄砲玉にします。

     アメリカは直接手を下しませんので、もし中国とこじれた場合でも、日本が勝手にやったというシナリオも用意しています。そこを日本人は怒らなければいけないと思うんですよね。対米従属によって、確かにこれまでは高度経済成長というのを手にしたかもしれませんけれども、その一方では、いつの間にか気づいてみたら、アメリカの雇い兵化されていた。

     アメリカの雇い兵国家になる危険性を察知されたのが小沢さん、鳩山さんでした。もちろん彼らだけではありません。そういう議論を説く人たちは多くの論者にもいますし、それから実は自民党のなかにもいます。リベラルの人もいます」

    岩上「今でもですか?」

    纐纈「今でも。少なくなったと思いますけれども」

    岩上「少なくとも、かつてはいた」

    纐纈「かつてはいました。みんな引退されましたけれども」

    岩上「そうですよね」

    纐纈「後藤田さんをはじめ、みなさん引退されました。そしていま、非常にゼロに近い状態になっているかもしれません。

     日本の国益にはなりません。少なくとも、国民益にはなりません。国家益になったとしても、国民益にはなりません。そこに拍車をかけようとするのが、今回の特定秘密保護法なわけですから、そういう全体的な内容のなかで、この問題を取り上げなければいけないと思うんですね」

    岩上「ここもすごく重要なところで、本当に根本的なテーマだと思います。日本は属国化してしまっている」

    ------------------------------------------------------------------
    (※28)『日米同盟~未来のための変革と再編』:2005年10月、町村信孝外務大臣・大野功統防衛庁長官、ライス国務長官・ラムズフェルド国防長官による「2プラス2」で新たに結ばれた日米同盟。島嶼部の防衛について、「日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する」と記載されている。(外務省HP:http://bit.ly/1dJj8WF)

    (※29)2010年5月11日 岡田克也外務大臣(当時)記者会見【URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/15918

    (※30)2010年10月1日 前原誠司外務大臣(当時)記者会見【URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/9712

    (※31)漁船衝突事件:2010年9月7日午前、尖閣諸島付近で操業中だった中国漁船と、これを違法操業として取り締まりを実施した日本の海上保安庁との間で発生した事件のこと。海上保安庁は中国漁船の船長を公務執行妨害で逮捕し、
    石垣島へ連行して事情聴取を行った。その後、中国側の抗議を受け、日本政府は中国人船長を処分保留で釈放し、中国へ送還した。衝突した際の映像は、2010年11月4日、ハンドルネーム「sengoku38」こと一色正春氏により、YouTube上に流出した。(Wikipedia【URL】http://bit.ly/1dKKivU)

    (※32)アーミテージ報告
    2013/02/03 【IWJブログ】「第3次アーミテージレポート」全文翻訳掲載http://iwj.co.jp/wj/open/archives/56226
    2013/02/03 IWJ特報 75号 ─ 『第3次アーミテージレポート』全文翻訳・完全注解~米国からの命令書を読み解く(1)http://iwj.co.jp/wj/open/archives/59054
    2013/04/30 IWJ特報 84号・85号 ─ 「第3次アーミテージレポート」全文翻訳・完全注解 ~属国・日本への米国からの命令書を徹底的に読み解く(2)(3)http://iwj.co.jp/wj/open/archives/76918

    (※33)日米共同文書:2013年10月3日に行われた日米安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した日米共同文書は、次のように、中国を名指しで批判する内容となっている。「中国に対し、地域の安定及び繁栄において責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守し、急速に拡大する軍事面での資源の投入を伴う軍事上の近代化に関する開放性及び透明性を向上させるよう引き続き促していく」(日米安全保障協議委員会共同発表~より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて【URL】http://bit.ly/1bnapaQ)

    ===================================
    ◆ 軍機保護法が作られるとき◆
    ===================================

    岩上「特定秘密保護法についておうかがいしたいと思います。いま、大変多くの人達がこの秘密保護法への反対の声をあげています。知識人もたくさん声をあげています。学者の会が立ち上がって、署名が2000人を超えています。

     識者と言われる方々は、治安維持法の焼き直しだという言い方をしていますが、私は治安維持法と言うよりも、戦前戦中の軍機保護法(※34)という法律に近いのではないかと思っています。纐纈先生はそうおっしゃっていますね」

    纐纈「はい。1904年から日露戦争が始まります。その戦争に備える意味で、1899年に軍機保護法ができます。これは第一次というか、開戦前の軍機保護法です。戦争に備えるための法律です。秘密保護法として、軍機保護法ができたのです」

    岩上「これは、やはり、戦争に関わる情報は外に漏らしてはいけないという理由でしょうか」

    纐纈「そのための法律です。そして、1931年、ちょうど日中全面戦争が始まる直前に、軍機保護法が改正されます。したがって、秘密保護法制の持っている基本的な役割は、軍事に関わる情報を完全に国民から遮断をしてしまい、戦争行為、戦争政策を十全に行うことです。それが円滑に行えるための法整備なのです。そういう点で見ておかなければいけません。

     それからもう一つ。国防保安法(※35)が、1940年、日英米戦争の前年に作られました。41年2月8日に対英米開戦が始まりますから、その前年に国防保安法ができたのです。つまり、秘密保護法というものは、戦争に備える法律であるということです」


    岩上「直近に作られたのですね。日露戦争のとき軍機保護法が作られ、日中戦争開始の直前に改正軍機保護法が作られる。そして対英米戦のときに国防保安法。国防保安法とこの軍機保護法の違いは、どういうものなんですか?」

    纐纈「国防保安法の方が、取り締まり対象が広範になり、一般国民も対象となりました。『監視社会の未来』にたくさんの具体的な事例を書きましたが、軍機保護法でも、非常に瑣末な例でもしょっぴかれるケースがたくさん出てきます。

     例えば、横須賀にデートに行き、ツーショットの写真を撮ってもらった。その写真を誰かに見せる。写真の後ろには軍事施設や軍艦が写っている。そうすると、軍事施設を盗撮した者ということで、検挙されたのです」


    岩上「現実にあった話ですか?」

    纐纈「もちろん。たくさんあります」

    岩上「今の横須賀にも軍艦が停泊していますけれど、軍艦は人目にさらされているわけじゃないですか。ゲートに覆われた中で、人に見せないような状態にあるものを、ゲートをよじ登って撮ったというならともかく、人の目に触れるようなオープンな状態の施設です。それをバックに写真を撮っても・・・」

    纐纈「戦前はそうだったのです。戦後はそこまではやらないと思いますね。もうちょっとアクセスしたような場合かもしれませんね」

    岩上「戦後というのは、今回のこの特定秘密保護法の場合ですね」

    纐纈「はい。今回の場合、何を秘密にするかということについての議論がほとんどなされていません。ところが、軍機保護法のとき、当時の帝国議会の貴族院本会議の場や、衆議院本会議の場で、非常に濃密かつ具体的で非常にレベルの高い議論がなされているんですね。今回のこの審議の内容とは雲泥の差です。

     軍国の時代と言われた戦前のほうが、レベルの高い議論をしてるんですね。非常に驚くべきことです。むしろ、今回の国会でのやり取りを聞いて、当時の凄さを認識しましたね」

    岩上「これは本当びっくりですよね。私たちのように、戦後生まれ、戦後育ちの人間からすると、戦前戦中というのは民主主義が未発展で、ファシズムや軍国主義が横行し、軍が威張り散らし、議会はそれほど大きな力を果たしてなかったと思っていました。でも、実際はそんなことはないのですね。国会議員がものすごく鋭い質問をしたり、議論をしたりしていたということですね」

    纐纈「はい。腹切り問答(※36)という有名なエピソードがあります。ときの陸軍大臣に対して、濱田国松議員が、猛烈な反軍演説をぶつんですね。それで、除名されてしまいました。そういう事例もいくつかあります」

    岩上「これは、『私が侮辱したと言うのなら、どこか指摘してみろ。もし侮辱していたら、俺は腹を切る。そうでなかったら、君が腹を切れ』と、軍人である陸軍大臣に向かって言ったエピソードですね」

    纐纈「そうです。それを堂々とやりました。今、日本の国会議員で、そこまで言える度胸のある人がいますか? よほど自信があって、またそういう質問をせざるを得ないという責任や自覚というものをたっぷり持っていたから、そういうことができたのでしょうね」

    岩上「また、その時代であっても、国会での発言は罪に問われないということが守り通されていたのですね」

    纐纈「もちろんそうです。罷免するということもあったりしましたが」

    ------------------------------------------------------------------
    (※34)軍機保護法:軍事上の秘密を保護することを目的として1899年7月15日に公布された法律。軍事上の秘密を保護するために、すでに、刑法、陸海軍刑法、新聞紙条例、出版法、軍用電信法中の諸規定などが存在していたが、より包括的な法規として軍機保護法が制定された。「軍事上秘密の事項、または図書物件」を探知収集・漏洩、軍事施設の「測量模写撮影」などが取り締まられた。1937年に「広義国防」の観点から大改正が行われ、取り締まりが強化された。また、軍事上の機密の範囲・種類が陸海軍大臣の命令によって定めることができるようになった。1945年に廃止。(世界大百科事典第2版、デジタル大辞泉より【URL】http://bit.ly/L6Q9EP)

    (※35)国防保安法:1941年公布。日中戦争中の長期化に伴って、戦時体制強化のために、政治上の機密事項の漏洩を取り締まることを目的として制定された。ほかに、軍事上の機密保護に関しては、軍機保護法と軍用資源秘密保護法があり、また、軍事以外の機密保護については、出版法・新聞紙法・国家総動員法のなかに規定があった。(世界大百科事典より【URL】http://bit.ly/1b1O5Io)

    (※36)腹切り問答:1937年1月、帝国議会で、衆議院議員の濱田国松が軍部の政治干渉を批判する演説を行った。この演説の前置きは以下のとおりである。「・・・軍部は近年自ら誇称して我が国政治の推進力は我らにあり、乃公出でずんば蒼生を如何せん(だいこういでずんばそうせいをいかんせん)の慨がある。五・一五事件然り、二・二六事件然り、軍部の一角より時々放送される独裁政治意見然り(中略)要するに独裁強化の政治的イデオロギーは滔々(とうとう)として軍の底を流れ、時に文武恪循(かくじゅん)の堤防を破壊せんとする危険あることは国民の等しく顰蹙(ひんしゅく)する所である」。(【URL】http://bit.ly/1neJlo3)

    ===================================
    ◆ 戦後の「国体」の正体◆
    ===================================

    纐纈「それからもう一つ。先ほどの治安維持法との違いで言うと、治安維持法というのは、例えば社会運動取締法(※37)というのが明治の時代にありました。治安維持法は1925年、そして28年に改正されて、最高刑が死刑になりました。治安維持法の対象は、天皇制国家支配体制、いわゆる国体に対して異議を唱えた人たちです。つまり、天皇の悪口を言った人ですね。思想犯です。これが対象なのです。

     だから、『考え方が非常に社会主義に傾いている』、『マルクスを読んでいる』、『マルクスを称揚するような話をした』、『ソ連を賞賛するような話をした』、こういう人たちに対する監視、抑制というのが、治安維持法です」

    岩上「国体護持ということですね」

    纐纈「国体と聞くと、戦前の人はやはりみんなそれなりにビビッとするわけですよね。だけれども、戦後も国体があります」

    岩上「戦後国体ですよね。『日米同盟国体』のことではないかと、僕は思いますけど」

    纐纈「そのとおりです。僕は、日米安保体制は戦後の国体だと思っています。だから、戦後の日米安保体制は、金科玉条のごとく絶対的なるものということで、戦後の日本の政治や、あるいは経済をも律してきた側面が非常に強いのだと思います。

     だから、戦後は確かに天皇が象徴化することによって、戦前バージョンの国体は鈍化し希薄化したかもしれないけれども、その代わり、戦後は日米安保が国体になっていきました。

     若い人たちに国体と言うと、『はい? 国民体育大会ですか?』と言われますが、天皇制国家支配体制のことを国体と言います。戦後はやはり、日米安保体制が国体になったと思います」

    岩上「日米安保は絶対で、神聖にして侵すべからずという思い込みが、根深く国民のあいだにも、支配層にもあります。それから、軍人と言い切ってしましますが、自衛隊の人たちや防衛省の人たちにも、かなりこの思い込みがあるのではないかと思います」

    纐纈「非常に強いですね」

    岩上「その思い込みが、もしかすると、自分たちが属国でありながら、そのことに義憤も抱かず、何の反発もせず、ひたすら追随を続けていくということの一つの根っこになってしまっているのかもしれません」

    纐纈「安倍さんをはじめ、憲法改正を主張する人たちは、なぜ改正するのかと問うと、『押し付け憲法だから』と言います。それに対して、私はこう答えたい。『安保は押し付けではないのですか? あなたがたが押し付け憲法と言うのなら、それ以上に押し付け安保をあなた達は背負って、それを担保にして保守政治を展開してきただけではないのですか?』

     それから、『国や国民を主眼に置いた発想ではなくて、そこに全然矛盾は感じませんか?』と問いたいですよね」


    ------------------------------------------------------------------
    (※37)社会運動取締法:治安維持法の前身。1921年に「治安維持に関する件」の法案が提出されたが、緊急性に欠けるとして、1922年に「過激社会運動取締法」案が出された。「無政府主義共産主義その他」の結社や宣伝・勧誘を禁止しようとするもの。しかし、廃案となり成立はしていない。その後、1925年に共産主義革命の激化が懸念されて、治安維持法が公布された。(世界大百科事典第2版【URL】http://bit.ly/1i8nxat、Wikipedia【URL】http://bit.ly/1er5KqB)

    ===================================
    ◆ライバル国の設定◆
    ===================================

    岩上「そこで出てくるのは、『いまだに共産主義を奉じている中国や北朝鮮とは価値観が違う。だから冷戦は続いている。東アジアでは冷戦は続いている』という論理です。『この残存した冷戦構造の中では、日米の同盟強化が必要。価値観が同じ者同士が手を組み合って、中国や北朝鮮に対して、対立していくというのは全然おかしくない、時代錯誤ではない』という理屈だてがされてきました。日米安保の存続、同盟の存続、延命の正当化のために、そうした理屈付けがなされてきたわけです。

     中国は、?小平時代から、実質的に資本主義を裏口から密輸して、事実上、国家資本主義国みたいな形になっていて、かつ、アメリカとの経済依存が非常に深まっています。まだ冷戦体制があるかのように見える一方で、実は米中は固く手を握りあって、『チャイメリカ』(※38)と言われているような関係を築いているという指摘があります」


    纐纈「よく戦後の国際社会、あるいはアジア地域の状況を説明するときに、新アジア冷戦構造的な物言いで、『対立が非常に鮮明になっている』『非常に緊張関係にある』と言われますが、これは、『ためにする議論』(※39)ですね。

     アメリカと中国の貿易関係、経済関係は非常に太いものがあるし、それから日本の最大の貿易相手国は中国です。人的な交流も非常に分厚い。尖閣の問題が起きて、確かに観光客レベルでは減少し、留学生も多少減少したかもしれないけれども、それは非常に部分的なことであって、全体状況をマクロ的な見地からすると、太くなっているわけです。

     いま、中国でも、アメリカや日本と濃密な経済関係を作らなければ、13億の民を食わして行くことはできません。日本の資本、日本の技術、日本との貿易、日本との人的交流、技術交流、こういうものがなければ、中国はやっていけません。

     そういう意味で、中国は、政治体制としては確かに社会主義、共産主義かもしれません。約6千万の共産党員の人たちが12億以上の中国人民を統治していく。この実態は間違いで、私に言わせれば、冷戦状態なんてものではないと思います。

     本当の冷戦だったら、人事交流も技術交流も今のように濃密ということはありえません。だから、その論理は、日米安保を正当化するための道具として使われているのです

     もちろん戦前でも、いつもライバルを設定して軍事大国化してきましたよね。中国を眠れる獅子と言って恐れて軍備拡張する。それが終わったら、今度はロシアを北極の大熊と言って恐れる。戦後の場合もそれと同じですよね。最初は対中国脅威論でした。70年に国交正常化すると、今度はソ連をライバル視をして、北方脅威論を言い出します。ソ連が崩壊すると、今度は、北朝鮮脅威論が出てきます。

     そういう意味で、常に日本の場合には、あるいは他の国もそういうところはあるかもしれませんけれども、必ずライバル国を設定して、仮想敵国を作っておいて、軍拡の正当性、あるいは権力政治の正当性というものを得てきた歴史があります。

     それに対して、我々市民が読み解いて、市民主体の国家を作っていこうとしなければ、いつまでも国家のペースに巻き込まれてしまって、市民が主体性を取り戻せないという問題があると思います」

    ------------------------------------------------------------------
    (※38)『チャイメリカ~米中結託と日本の進路』(花伝社、2012.05)の著者である横浜市立大学名誉教授の矢吹晋氏は、岩上安身のインタビューに応じ、「チャイメリカ」について次のように説明した。「リーマン・ショックの時、中国からの資金洪水が、サブプライムローンで建てた住宅を押し流す、などということがエコノミスト間で言われました。中国は一生懸命に働くアリで、米国は浪費家のキリギリスです。米国が赤字の垂れ流しができるのは、中国が貸してくれるからです。現在の米国債保有国の第一位は中国です。一位はずっと日本だったのですが。中国の外貨準備高が非常に上昇しています。ひとつは労働賃金が安いこと。もうひとつはダンピング。やたらドルを貯める政策をやっています。2006年にロバート・ゼーリックが中国にステークホルダーになってほしいと言いました。私は今、iPadを使っていますけど、作っている会社は台湾で、工場は中国大陸にあります。まさに"女工哀史"で、劣悪な労働環境で働いています。グローバル企業が中国から搾取しているのです」。(2013/12/10 外務省が削除した日中「棚上げ」合意の記録 尖閣諸島問題の核心について、岩上安身が矢吹晋氏にインタビュー【URL】http://bit.ly/1bGtTJ0)

    (※39)ためにする議論:議論において、その結果としての結論を出すことを目的とせず、まず結論があって、議論をしたという体裁を整えるために行うもの(Weblio辞書より【URL】http://bit.ly/1cqZfYn)

    ================================
    ◆安倍総理はいずれはアメリカから核武装独立をしたいと思っている?◆
    ================================

    岩上「先ほどの話になりますが、90年代の冒頭に多極化のほうに揺れながら、実はそうでない人たちもいて、もう一回それが崩壊させられて、対米従属のほうがいいんだということになっていきました。

     彼らは、独立した思考をしているのでしょうか? それとも対米追随でいくしかないと信じきってしまって、もう現実が見えなくなっているのでしょうか?」

    纐纈「私は、戦前も戦後も、非常に単純化していえば、いつも二つの相対する潮流があったと思います。戦前は、例えば、親英米派、つまり資本と技術にまさるイギリスやアメリカにやっぱり追随していったり連携したりすることによって、日本の資本主義を発展させていきたいという動きが一方であります。

     それに対して、アジア・モンロー派というのがありました。モンローというのは、アメリカの大統領モンローのことです。これは、ヨーロッパからの干渉を拒否して、南北アメリカはアメリカに任せろという議論です」

    岩上「グローバリズムに一定の距離を置くということですよね」

    纐纈「そういうことですよね。それと同じように、戦前、アジアのことは日本に任せろ、アメリカやイギリスやフランスはもう口を出すなと主張する人たちがいて、彼らをアジア・モンロー派といいました。その筆頭が、東条英機であり、岸信介でした。

     1941年10月に、東条内閣ができます。その副将格・商工大臣として、岸信介が入閣します。そして、東条英機と阿吽(あうん)の関係になります。日本は満州国を事実上ハンドリングするのですが、岸信介は、満州国を中心にしながらそれを中国に全土化して、中国を基盤にして総力戦国家を作る、あるいは自給自足国家を作って英米と対抗するという議論をします。

     つまり、彼は、ある意味では、対米自立論者でもあるわけです。いま安倍晋三さんが尊敬してやまない政治家は、おじいさんである岸信介さんですね。どこをそんなに尊敬しているのかというと、岸さんは、自主憲法制定促進国民会議の長を、長くやられましたね。安倍さんは、満州国をベースに自立国家を作ろうとしたことを大変尊敬しているわけですね。

     だから、安倍さん自身も、もう一つの本音としては、やはりいずれはアメリカから自立をしたいのではないでしょうか。アメリカへの従属関係をいつまでも続けるのではなく、対等な関係にしたいという思いもどこかにある。

     彼は官房副長官時代に、『日本は小型の核爆弾でも持てますね』と非常にショッキングな話をしました。その話は、おそらく神戸で開かれた田原総一朗さんが司会されていた大隈塾という非公開の場で言われまして、田原さんがうまく挑発的な質問をしたんでしょうね。

    『日本は核武装はできますか?』という質問に、『持てると思います』とはっきり明言したといいます。実は岸信介さんも1960年代に内閣委員会で日本は相当検討して、核を持つことはできるとおっしゃいました。

     それから、佐藤栄作さんも、72年に引退される間際に『俺は核武装論者だということを記者会見で言って辞めたい』とおっしゃいました。当時、首席秘書官だった楠田實氏に、『佐藤さん、それはやめときなさい』と言われて止められたといういきさつが、楠田實日記に書いてあります」

    岩上「全員、長州閥ですね」

    纐纈「長州閥です」

    岩上「ここ、山口県では、明治維新以来、岸、佐藤、それから今の安倍さんとか、たくさん総理を輩出していますね」

    纐纈「はい。8人います」

    岩上「これはやっぱり、郷土の英雄として、持ち上げる人が多いのですか?」

    纐纈「非常に多いですね。ただ、自民党政権が利益誘導型政治をやっていたとき、中央と直結しないとこのような県は発展しないというトラウマになっています。

     ひとりの政治家をとにかく育てるんですね。何回も何回も当選させないと大臣、あるいは首相のチャンスがないものですから。当選回数を増やし、首相にします。

    それから、近代化を成し遂げた発祥の地という歴史上のプライドがあります。自民党保守政権のもとをただせば、やっぱり明治政府とつながっている。伊藤博文、山県有朋、桂太郎がいます」

    岩上「全部長州ですね」

    纐纈「そうです。山口県が輩出して日本を作ったという思いが、若い人たちにも結構あるのです。それが誇りになっていますね」

    ================================
    ◆特定秘密保護法は自己検閲を生み出す◆
    ================================

    ※インタビューの最中、特定秘密保護法が参議院特別委員会で強行採決されたという報せが入った。

    岩上「本日(2013年12月5日)、たった今、特定秘密保護法が、委員会で強行採決されました。明日の本会議で、おそらく可決されるのではないかということです。たいへんなことになってきましたね」

    纐纈「これで、私たちがこういう岩上さんのインタビューを受けるような機会も、場合によっては、かなり規制がかかってしまうことになります。私は、この問題は、自己規制や自己検閲の時代に入ったのではないかと思います。

     岩上さんもいろいろ記事を書かれますし、私もいろいろな評論を書いています。ここまで書いたら、情報源が分かってしまう、あるいは情報提供者に迷惑かけることになる、だからやめておこうといって、非常に遠まわしな表現をしてしまうことになりえます。

     資料出典を明示しないと信憑性を担保できないというときに、やめとこうという意味での自己検閲です。自己規制、自己検閲が始まってしまいます。本日は、ジャーナリズムが死んだ日になるかもしれません

    岩上「アカデミズムも危ないですよ」

    纐纈「アカデミズムも全く同じです。だから一部の分かっている学者、アカデミシャンは反対声明を出しています(※40)。広がりとしてはまだまだ十分ではなく、ごく一部ですけれども。ジャーナリストにしても、アカデミシャンにしても、もちろん一般市民の方たちにしても、まったく同じことです。

     戦後、成熟した民主主義社会を目指して出発したのに、途中でどんどん腰砕けになって、換骨奪胎されて、挙げ句の果ては、自己検閲、自己規制をせざるをえない社会に来ています」

    岩上「しかも、攻撃的なことが書けません。批判的なことが書けないから、迎合していこうとする人もたくさん出てくると思います」

    纐纈「私は、今までどおり、なんら変えるつもりは毛頭ありません」

    岩上「ここは山口県ですし、安倍さんの批判は、これまでも相当な風当たりがあったのではないですか?」

    纐纈「今までは特にありませんでした」

    --------------------------------------------------------------------
    (※40)特定秘密保護法案が参議院の特別委員会で強行採決される直前の12月3日、「特定秘密保護法に反対する学者の会」が緊急の会見を開き、政府・与党の対応を厳しく批判する声明を発表した。この声明は、2006人の学者による賛同を得ている。(IWJ記事:参院での可決迫る秘密保護法 学者2006人が緊急の反対声明「戦前の政府を彷彿とさせる」【URL】http://bit.ly/1b3m8A1)

    ================================
    ◆歴史が消え行く日のはじまりの日◆
    ================================

    纐纈「僕は、きちっとした根拠資料を示し、風説や思いつきでは言わないということに徹しています。『いつでも反論してください、いつでもお答えしますよ』という用意がなければ、書けないですよね。それはもちろんジャーナリストでも同じだと思います」

    岩上「そうですね。ただ、その事実や根拠や文書が特定秘密保護法によって秘密指定された場合、それに触れたということで、懲役10年になります。『何が秘密なの?』『どこまでが秘密なの?』と、取材したり、調査したりしていく過程で、知り得たり、あるいは知ろうとしただけで、未遂などで引っかかっていく可能性があるわけです。先生はどうやって防ぎますか?」

    纐纈「信頼している弁護士さんに相談するしかないですね。ただし、その裁判のやり方も、何をもって立証するのかという根拠資料や根拠情報までもが秘密とされてしまったら、自分が一体何で裁かれているのかも分かりません。秘密なので開示できないと言われたら、動けません

    岩上「逮捕の理由も秘密というのは、おかしいですよね」

    纐纈「戦前の事例にそういうケースがありますが、秘密裁判が行われています。情報開示や情報公開は、もちろんありません。それと同じようになるでしょうね」

    岩上「41年にすでに149件も摘発されていた!? これは改正軍機保護法ですか、それともこの国防保安法ですか?」

    纐纈「両方だと思います。その件数は、もっと多いのではないかと思いますが、調べきれていません。『特高弾圧史』(※41)という本に書かれています。

     例えば実際100人が検挙されたとしても、100人という数字はおそらく出てこないですよね。そのうちの半分か、感覚的に言うと、3割、4割でしょうね」


    岩上「では、そういう弾圧を受けたという事実があっても、その弾圧の事実さえ闇に埋もれている人たちのケースがあるのですね?」

    纐纈「もちろんありますね。その人が、検挙されても話さない。あるいは、ぶち込まれたことも話さない。話さないことを条件にして出されたら、その方はおそらく墓場まで持っていったでしょうね。本当に些細なことでも、しょっぴかれるというケースが頻発するんですよね。

     我々がそういうことの危険さをきちっと立証するための数字さえ、入手できなくなります。すでに、できなかったという歴史があるわけですね。歴史研究者としては、もうやっていけないという状況になりますよね」


    岩上「しかも、今回の特定機密保護法案では、文書を廃棄するということを言っているわけです。文書を廃棄してしまったら、終わりです。歴史がなくなってしまうわけです」

    纐纈「今日は、歴史が消え行く日の始まりの日かもしれません」

    岩上「これはたいへんなことです。私はソ連の終わり頃から民主ロシアが誕生したと1989年から94年まで、約6年間、現地で取材を重ねていました。それを、本にまとめています(『あらかじめ裏切られた革命』 講談社、1996.06)。そのときのスクープ記事の一つが、レーニンの秘密書簡でした。

     ソ連崩壊後に規律が緩んできたので、文書が出てきたのです。その内容は大変ショッキングなものでした。革命を起こしている間、どこそこの村で抵抗している連中を震え上がらせるために、聖職者や村人100人を殺せというような残酷な指令を、レーニン自身が直筆のサインで書いているものです。

     ソ連はそうした手書きのメモの指令まで、全部アーカイブに保存していました。レーニンのカリスマとしての道徳的正当性が失墜するような証拠文書ですが、全部保存していたのです。

     文書を廃棄してしまえ、というようなことをやるこれからの日本は、あのソ連以下ということになってしまうと思いますね。これは、右翼の愛国者と言っている人たちにとっても恥ずべきことだと思います。

    歴史の文書が残されないということは、我々がどんな国にいて、どんなことが起きて、なぜこうなっているのかが、まったく自分たち自身でも理解できなくなるということですよね」


    纐纈「歴史が終わった日です。歴史学研究というものが、非常にいびつな形でしかできなくなった可能性が非常に高いです。我々は、歴史からあるべき未来社会を構想、創造していくわけです。歴史から教訓、過ちを学び取る。そして少しでも間違いのない、瑕疵のない、過ちのない社会を作ろうとする。それが歴史家、あるいは歴史というものの役割です。

     その役割を十分に果たし得ないということになりますと、歴史を知らない国家、歴史を知らない日本人という話にもなりかねない。そうなると、私たちは今後、過ちを犯してしまうやもしれない。その怖さというものがものすごく強く出てくると思います。そういうことが議論されなければならないのですが、なかなかされていないですよね」


    ------------------------------------------------------------------
    (※41)『昭和特高弾圧史 全8巻』明石博隆/松浦総三編、太平出版社、1975年。知識人にたいする弾圧、宗教人に対する弾圧、庶民に対する弾圧、朝鮮人に対する弾圧が記録されている。

    (その3へ続く)

    原発 放射能 食品汚染 TPP 沖縄戦 
    関連記事
    スポンサーサイト

    テーマ: 許されない出来事

    ジャンル: ニュース

    真実の追求  /  tb: --  /  cm: --  /  △top
    原発 放射能 食品汚染 by freeseo1
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。