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    原発問題 -The Truth is Out There-

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    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    IWJ特報第125号「自衛隊が米軍の下請けになる日〜山口大学副学長・纐纈厚氏インタビュー(その3)」 

    第125号
    ───────────────────────────────────
                岩上安身のIWJ特報!
            自衛隊が米軍の「下請け」になる日
        特定秘密保護法と集団的自衛権行使容認の先にあるものとは何か
           山口大学副学長・纐纈厚氏インタビュー(その3)
    ───────────────────────────────────
    (IWJより転載許可済み)

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    ◆憲法と法律の関係が逆転する◆
    ================================

    岩上「私は、梓澤和幸先生と澤藤統一郎先生という弁護士さんと、自民党の憲法改正草案についての鼎談を続けてきました(※42)。『もし特定秘密法案が現実になって、逮捕されたときには、両先生、よろしくお願いします』と言ったら、『当時は弁護士も弾圧されたんだ』と言われました。今後も同じようなことになると思いますか?」

    纐纈「ええ、横浜事件(※43)がいい例です。本来あるべき人権擁護という観点から見ても、人権が十分に担保されない社会になっていく可能性が非常に強いです。これは人権破壊法でもあるんだという側面から見ておく必要があると思います」

    岩上「これは違憲ですよね」

    纐纈「完全に違憲です。日本国憲法が認めるところではありません。今も、親法である日本国憲法を食っていくような法律群がいっぱいあります。日米安保だって、憲法を食っているわけです。今回の特定秘密保護法も完全に食っています。

     一連の有事法制、軍事法制も、確実に親法である日本国憲法を食っちゃっているわけですね。もう、親法である憲法と子供の法律の関係が完全に逆転してしまっています。いつの間に、子供のほうが偉くなっちゃっています。これは、やはり、本来あるべき状態ではないと思います」


    岩上「憲法改正を正面から論議することなく、実質的に憲法が変えられていこうとしています」

    纐纈「そういうことです」

    ---------------------------------------------------------------------
    (※42)2012年12月~2013年6月にかけて、岩上安身と澤藤統一郎弁護士、梓澤和幸弁護士が、自民党の憲法改正案がはらむ問題点について、日本国憲法と対比しつつ、検証を行った。この鼎談の内容は、『前夜~日本国憲法と自民党改憲案を読み解く』(現代書館、2013.12.12)にまとめられて出版された。(IWJ特集:自民党の憲法改正草案の正体【URL】http://bit.ly/1fxP5Vv)

    (※43)横浜事件:1942年から45年にかけて、中央公論や改造社、朝日新聞などの言論関係者ら60人以上が治安維持法違反容疑で逮捕された事件。1942年に雑誌「改造」の論文に対し大本営報道部長谷萩少将が共産主義の宣伝であると非難し、同雑誌を発禁処分にし、著者の細川嘉六が検挙された。その際日本共産党再結成の謀議を行っていると被疑され、1943年から1945年にかけて関係者約60人が次々に治安維持法違反容疑で検挙された。拷問のために4人が死亡、30人が有罪判決を受けた。戦後、無実を訴える元被告人やその家族・支援者が再審請求を続け、2005年に再審が開始したものの、裁判所は、有罪・無罪の判断を行わない免訴判決として、裁判打ち切りとなった。
    (世界大百科事典第2版、朝日新聞掲載「キーワード」の解説より【URL】http://bit.ly/1dLIi6D) なお、2014年1月22日に横浜事件国賠訴訟原告の木村まき氏の講演が行われた(IWJ記事「2014/01/22 横浜事件の国賠訴訟原告・木村まき氏が講演 ~第59回 日本の司法を正す会」【URL】http://bit.ly/1nf0lup)

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    ◆集団的自衛権の行使の目的とは◆
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    纐纈「もう一つ言えば、秘密保護法だけの問題ではなくて、現在進行中の日本版NSC(※44)の問題があります。これは間違いなく、日本版CIA、中央情報局になります。

     日米ガイドラインの再改定があり、防衛大綱も変わります。そういうものがワンセットになっています。それから、集団的自衛権の問題があります。北岡先生は、大変優れた歴史学者ですが、集団的自衛権論については、私とはまったく考えが一致しません。

     北岡先生は、集団的自衛権の行使を容認することによって、日本は軍事力をそれほど必要としなくなるだろうと言っています。本来、日本が守るべきところを、アメリカも一緒に守るのだから、そのほうがいいんだと言います。

     しかし、それは違います。先ほど紹介したアメリカの戦略では、日本が攻め、アメリカが守るという役割分担に明確に変わっていっています。その中での行使される集団的自衛権だったら、当然、日本が突っ込み、アメリカが後ろから、あるいは側面からガードするという位置関係になってしまいます。そういうときの集団的自衛権というのはいかに恐ろしいものかということを、やはりきちっと議論してほしいと思います」


    岩上「集団的自衛権の話は、本来は個別的自衛権で可能であるものを、集団的自衛権でしかできないというトリックを使って説明しています。例えば、米国の艦船が攻撃されたときに、これを護衛したり応戦したりできなくてどうするか、と言うのです。

     日本近海であれば、個別的自衛権の枠内で十分可能であるということを、例えば、元内閣法制局長官の阪田雅裕さんがはっきりおっしゃっています(※45)。それなのに、なぜ集団的自衛権が必要なのか。それは、日本の有事ではなく、中東や南米まで日本が来て、戦争しろということですよね」


    纐纈「はい。先ほどの周辺事態法に込められた自衛隊およびアメリカの戦略は、集団的自衛権という形で生かされようとしているわけです」

    ------------------------------------------------------------------
    (※44)日本版NSC(国家安全保障会議 National Security Council):2013年11月27日、国家安全保障会議を創設するための関連法案(安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案)が成立し、12月4日に国家安全保障会議(日本版NSC)が発足した。外交・安全保障に関する迅速な情報収集や重要な政策決定が行われる。(内閣官房HP【URL】http://bit.ly/1d6vE22)

    (※45)元内閣法制局長官の阪田雅裕氏は岩上安身のインタビューに応え、次のように述べている。

     「安全保障環境が変わったとよく言われています。例えば尖閣の問題などです。しかし、日本の国は現行憲法のもとで、これまでもずっと守れてきましたし、これからも守れるのです。仮に尖閣に外国が不法上陸したり占領したりすることがあれば、当然、自衛権の行使ができます。日本が自衛権を行使するとき、日米安保条約がありますので、米軍が共同対処します。そのように日米安保条約にもとづいて米軍が日本を助ける枠組みというのは、今までもこれからも変わりありません」

     「今回の集団的自衛権の行使の問題は、日本以外のところでの有事に対して日本がどう対応するかという問題なのです。ですから、安全保障環境が変わったという議論とは直接的にはつながりはありません」

     「日本海で自衛隊の護衛艦と米国の第7艦隊の艦船が海域を分担で配備しています。日本に危険がせまっている状況のなかで、米艦船が襲われるというようなことがありえないわけではない。そうした場合は、米艦船に対する攻撃であっても、我が国に対する武力攻撃の着手だと認定できる場合があると政府は言っています」(メルマガ「IWJ特報!“解釈改憲はありえない” 安倍政権がつき進む集団的自衛権行使容認を批判~元内閣法制局長官・阪田雅裕氏インタビュー【URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/112572)

    ================================
    ◆中国、北朝鮮には日本と闘う意志はない◆
    ================================

    纐纈「それからもう一つ。よくこういう議論をすると、攻められたらどうするのかという疑問を持たれますよね。はっきり申し上げますと、中国には日本に対する侵略の意図も能力もありません。それから、もちろん、朝鮮人民民主主義共和国、北朝鮮にも、その能力も意図もありません。意図があったとしても、その能力はありません」

    岩上「ここは、多くの人が『ええ?』と思っていると思います。例えば、意図については、これは最終的には主観的な話だから分からないと言われるかもしれません。あるいは、威嚇的なことを言っているけど、腹の中では向こうが実はビビってるんだよとか、いろんな解釈が成り立ちます。

     能力は客観的に測れると言う人もいるでしょう。北朝鮮は核開発もしているしミサイルもある。いわんや中国は、核ミサイルを持っているし、さらに加えて空母まで作っている。あるいは、今回、防空識別圏を新たに設定して、尖閣の上空を支配している。中国に能力がないと言うのはどういうことですか?」


    纐纈「中国の遼寧という空母ができました。私は何回も大連に行っていますので、大連のドッグに入っているのを遠くで見ました。

     6万5千トン級の、比較的中型の空母ですが、世代としては非常に古い空母ですね。ロシアから買ってきたものでしょうか。いま、実は上海でも第二番艦を作っていますが、これは実戦配備するのには、ちょっと時間がかかります。

     中国は空母機動隊を作りたい。これは分かりますよね。これは、あくまで防衛空母だと言うんですが、もちろんそれは使い方次第です。問題はアメリカと中国が戦争をするというシミュレートをした場合、戦力的にも、アメリカのほうが何十倍も戦力を持っていますから、とても戦えないということになります。

     それから、宇宙空間はアメリカのほうが圧倒的に強いものを持っていますから、言ってみれば、すべてお見通しです。だから、監視能力という点でも、中国は完全に負けていますので、もう動きようがないということです。

     それから、確かに日本本土を攻めるだけの長距離爆撃機を持っていますが、アメリカまで飛ばして爆撃することは考えられないですね。

     それから、百歩譲って能力を持ったとしても、中国が日本を攻めるメリットは何でしょうか。中国が1億2千万の日本国民に対し、本当に銃剣を突きつけて、中国のいいなりにすることが可能かどうか。普通に考えたらそれは不可能です。

     アメリカとの戦争は、たとえ能力があったとしても、できないでしょう。人民解放軍の一番大きな目的は、人民解放軍としての権力をきちっと作っていきたいということです。

     それは北朝鮮人民軍も同じことです。いま非常に権力を高めているようですけれども。軍というのは、やはり、国内での権力組織体として、軍備を拡大すればするほど発言権が強まります。つまり、軍人階級の軍人連中の国内におけるステータスがどんどん上がっていきます。


     だから、それは、戦争するためにではなくて、国内における権力、国内におけるステータスを強化していくという意味で、軍備強化が行われるのだと思います。

     かつての日本は小国でしたし、それから、大陸から資源が欲しかったので、大陸国家、それから自給自足国家にするために中国を制圧するという、それなりの目的があったわけです。

     ところがいま、技術とか資本というのは戦争では奪えません。よほど完璧に占領化して、完璧に植民地化しない限り、それは到底できません。それから中国は、いまの濃密な経済関係を解体してまで、それほどリスクを冒すということはまったく考えられないですね」

    ================================
    ◆尖閣列島周辺を非武装地帯にしてはどうか◆
    ================================

    岩上「この場合、きっとこういう反論がでてくると思います。まず、資源について、尖閣には、潜在的な海洋資源が眠っているらしいと。

     これは、そもそも70年代の頭に、中国がここは我々の領土であると言い出したのは、石油が採れる、海洋資源があると気づいたからだということ。だから、ここを巡って争奪戦になるだろうという話があると、こういう反論が来ると思いますが、どうですか?」


    纐纈「はい。先だっても2回ほど中国に行って、いろんな中国の人たちと話し合った時に、私はあえて共同管理論、共同開発論、そして海のDMZ化という提案をしました」

    岩上「DMZとは何でしょうか?」

    纐纈「Demilitarized zone、非武装地帯です。南北朝鮮38度線には幅が1キロ前後のDMZが走っています。そういう非武装地帯というものを海にシフトすることはどうか、ということです。つまり、尖閣列島周辺を全部非武装地帯にして、そこには軍艦や飛行機等々いっさいシャットアウトして、そして共同開発のための作業船や観光の場にしたらどうかと提案しました。

     それから、やっぱりこれは、共同管理しかないだろうと思います。入会地のように、つまり、日本と中国が、あるいは台湾も含めて、近隣諸国が共有する土地を持つということ。将来のことを考えたときに、お互いが自由に出入りできる空間をお互いに共有するということは、非常に大きな意味があるのではないか。このような、やや遠大な、やや理想的な話をしたら、多くの中国人の知識人は、それはグッドアイディアだと言いました。

     こんなちっぽけな島を巡って、中国と日本が争うということは、もうデメリットのほうが圧倒的に大きい。ただ、中国政府としては、中国国内のナショナリズムというものが必要だし、それから強い中国共産党ということを見せなければいけないので、非常に強がっている。

     ですが、多くの中国の人民は、少なくとも知識人レベルでは、あんな小さな島(尖閣諸島)を巡って、『政冷経熱』なんていう状態をいつまで続けるんだという言い方をします。これは、やっぱり、中国の共通の本旨になってくるだろうと思います。韓国の独島、竹島も同じですね」


    ================================
    ◆国内の不満を逸らすための戦争はありえるのか◆
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    岩上「中国が軍備強化を行うのは、国内の権力の強化のためであって、侵略の意図があるからではないと先ほどおっしゃいました。

     しかし、日本も、幕末維新のあと、やはり国内の旧士族に不平不満がたまり、征韓論(※46)が出てきたり、朝鮮半島に打って出ようとしたりしました。つまり、国内で軍部が台頭し、戦をやってこそ軍人ということで、外に出ていこうとしたわけです。だから、そうした国内の動きが、そのまま海外での非合理な戦争に結びつくわけです。たくさんのものを失うかもしれないけれど、それでも戦争するという愚かなことをやらないという保証があるのでしょうか」

    纐纈「なるほど。おっしゃるとおり、1873(明治6)年に、不平士族の不満を外に逸らすために、西郷隆盛が征韓論を唱えました。これは大久保利通らの反対によって止められるのですが、のちに形を変えて、日本による朝鮮侵略につながっていきます」

    岩上「時期が変わっただけですね」

    纐纈「もう一つ、例があります。1970年代後半に、アルゼンチン軍人大統領の時に、非常に大きな国内矛盾と不満とが溜まって、マルビナス島(イギリス名フォークランド)に軍隊を送って、フォークランド紛争(※47)になり、イギリスとアルゼンチンが大戦争しました。そういう形で戦争が起きる原因の多くに、領土問題、宗教問題、そして、国内の不満を外に逸らすということがありますね。

     現在の中国では、実際、政府に対する不満がものすごく溜まっています。知識人も非常に不満だらけです。一部の共産党員が好きなようにやっているからです。不正はかなり厳しくチェックされるようになっていますが、それでも、非常に不満を持っています。

    しかし、その不満を中国の人民の犠牲の引き換えに解消したいという愚かしい判断をする人たちは、ゼロではないにしても、ひとつの勢力にすらならないと思います」

    岩上「対外的には、非常に強行な態度が目立つように見えます」

    纐纈「計算された体外強硬路線です」

    ------------------------------------------------------------
    (※46)征韓論:幕末や明治初期に論じられた朝鮮侵略論。1873年(明治6年)に、西郷隆盛・板垣退助らが朝鮮の排日的鎖国主義を名目として,朝鮮を討つことを主張した。(デジタル大辞泉より【URL】http://bit.ly/1aFHGFf)

    (※47)フォークランド紛争:フォークランド諸島(アルゼンチン名:マルビナス諸島)の領有を巡り、1982年3月からイギリスとアルゼンチン間で3ヶ月にわたって行われた紛争。英国が勝利した。(デジタル大辞泉より【URL】http://bit.ly/1bwoHHz)

    ================================
    ◆中国の防空識別圏の設定は合理的と元自衛官が発言◆
    ================================

    纐纈「防空識別圏の問題も、非常に盛り上がっていますね。

     私は上海の風憚大学に行ったときに、東京財団の小原凡司(※48)さんという方に話をうかがいました。小原さんは自衛隊を30年間務められ、将校だった方です。中国語も非常に堪能な方です。

     その彼が、『中国の防空識別圏の問題は非常に合理的な判断だ』と言っていました。理由を聞くと、『不測の事態を回避することができるからだ』と言いました。つまり、きちっと識別ができるのだったら、攻撃しようと思って入ってくる飛行機なのかそうではないかが分かる。その選択がきちっとできるので、空の秩序を安定化するためには、極めて合理的なものだと言い切ったのです」

    岩上「最近そうおっしゃっていたのですか」

    纐纈「この間会ったのは、11月の24、25日です。その時にはもう、問題になっていましたから。シンポジウムで報告されました。NHKのインタビューでも、同じように答えていらっしゃいました。

     防空識別圏は、純軍事的に言ったら、当然あるべきものです。日本もアメリカも防空識別圏を設定しているわけですから、中国が設定してどこがおかしいのか。場合によっては、スクランブルを掛け合うかもしれないけれども、そういう一触即発の危機を回避するためには、必要な判断だと、小原さんがおっしゃったのです。僕はそれは正しいと思います」

    -------------------------------------------------------------------
    (※48)小原凡司(おはら ぼんじ):1985年3月防衛大学校卒(29期)。98年3月筑波大学大学院修士課程修了、修士論文「中国の独立自主外交」。98年8月海上自衛隊第101飛行隊長(回転翼)2001年9月防衛研究所一般課程(49期)。
    03年3月~06年4月駐中国防衛駐在(海軍武官)。06年8月防衛省海上幕僚監部情報班長。08年8月海上自衛隊第21航空隊副長~司令(回転翼)。10年2月防衛研究所研究部。11年3月IHS Jane’s入社。アナリスト兼ビジネス・デベロップメント・マネージャー。13年1月から東京財団研究員。(東京財団ホームページ【URL】http://bit.ly/1igtMZU)

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    ◆冷静に、長いスパンで物事を考えていく習慣が必要◆
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    岩上「中国はなぜ防空識別圏の設定をしたのですか? 日本では、まさに特定秘密保護法制定が進められている時期です。このタイミングだったので、『やっぱり中国は攻撃的だ』と言われ、特定秘密保護法制定の口実に使われることになりました」

    纐纈「タイミングの議論はありますよね。主観的には、特定秘密保護法にぶつかるようにやったと考えることもできます。ですが、防空識別圏の設定のためには、コンピューターを使い非常に膨大で細密な作業が要ります。ですので、今、やっと間に合ったと考えるのが妥当だと思います。

     わざわざ特定秘密保護法制定にタイミング合わせて、政治的な効果を狙ったというのは、そうかもしれませんよ。百歩譲ってそうだとしても、どこが問題ですかと言いたいですね」

    岩上「仮に、中国の防空識別圏設定が政治的な効果を狙ったものだとしたら、何を狙ったのでしょうか。日本にとって、秘密保護法を促進し、軍国化を進めるという効果しか考えられません。

     中国としては、日本の軍国化をより煽り立て、より緊張が高まる方向が望ましいということになるのでしょうか」

    纐纈「その点については、中国の要人に直接うかがったことがないので分かりません。ただ、私たちに必要なことは、冷静沈着に状況を把握することだと思います。ネガティブに捉えようと思ったら、なんでもネガティブに捉えられますから。

     逆に、ポジティブに捉えようとするあまり、楽観論に陥ってもいけない。ですから、ポジティブにもネガティブにもならないで、中間的なところで冷静に、長いスパンで物事を考えていく習慣が必要です。そうでないと、かえって非常に簡単に煽られてしまうということがあります。

     政治家というのは、うまく有権者を煽る中で一定の政治政策を進めていこうとします。それに便乗してはならないと思います。特に、今はそういう時代ではないでしょうか」

    ================================
    ◆中国とアメリカの結びつき◆
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    岩上「防空識別圏について、もう一つ質問があります。これに対するアメリカの応答の仕方です。日本の軍国化を推し進めているのは、実はアメリカであるという話があり、その一方でそのアメリカは中国と手を結び合っています。複雑な三角関係のゲームです。そういう中で、中国の防空識別圏の設定に対して、アメリカはどういう行動をとったか。

     アメリカはまず、B52航空機を2機飛ばして、中国が識別圏として設定した空を悠々と通過しました。これに対して、中国は何も言わなかった。このことについて、アメリカが中国に対して威圧をかけ、中国はそれに少し恐れをなしたというような解説がされました。

     日本は民間航空機の事前通告はしないと、かたくなに拒否しています。ところが米国はあっさり、今後は中国に対して通告すると言っている。これはどうとらえればいいのでしょうか。しかも、習近平国家主席とアメリカのバイデン副大統領が直に交渉をはじめます」


    纐纈「中国とアメリカの米中経済同盟が、我々が想像する以上に非常に実質化しているということです。習近平さんとのバイデンさんとの会談時間は5時間、6時間に及びました。安倍総理とは1時間もないです。習近平さんが、オバマさんをカリフォルニアに訪ねたときには、2日、3日ですよね。この長さの持っている実質的な意味と、それから国際社会に与えるインパクトは計り知れないものがありますね。ですから、米中経済同盟は、実質化しています」

    岩上「つまり、防空識別圏に関しても、民間航空機は経済に関わるからこれはOKということですね」

    纐纈「そうです」

    岩上「米国は許容するという意味ですね」

    纐纈「ええ、ただ、政治的・軍事的には一定の歯止めをかけるということです」

    岩上「それで、B52を2機飛ばしたのですか?」

    纐纈「そうです。アメリカはその使い分けを自在にやっています。そういう自在な使い分けに対して、中国もOKを出しているということです」

    岩上「中国はOKを出しているのですか?」

    纐纈「はい、もちろんそうです。軍事的には中国も、アメリカの軍事力を偵察し、一生懸命情報収集をやっています。在米中国人の中には、どれだけの中国人のスパイがいるか。もちろん在中アメリカ人にもどれだけスパイがいるか。お互いにやりあっています。

     逆に言うと、お互いの情報を取り合うことによって、ここまで手を突っ込んだら危険だけれども、ここまでなら大丈夫だという尺度を、お互いに情報として持ち合うことが、不測の事態を回避することができる合理的な判断だと考えているわけです。

     非常に高度で洗練された考え方のもとに、アメリカも中国も同じ土俵の中にいるということです。その土俵の下で、ただただ呆然と見上げているのが日本なのです。韓国は俵に足を掛けています」


    岩上「俵に足を掛けているとは、どういう意味ですか?」

    纐纈「韓国も中国との関係が非常に太いです。韓中同盟とまでは言いませんが、韓中準同盟ですね」

    岩上「準同盟の状態になっているということですね」

    ================================
    ◆アジアバージョンのEUである「AU」の構想◆
    ================================

    纐纈「この前、11月初旬に北京フォーラムという、約300人が会する大きな学会があり、私も行きました。韓国の高等教育財団のSK財団が1億円の資金をぽんと出した学会です。北京大学が主催して、中国の迎賓館を会場にし、各国大使や学者を呼んでオープンな議論をするものです」

    岩上「どういうテーマで話し合われたのですか?」

    纐纈「外交問題です。尖閣の問題もやりました。私は日本の自民党保守政治と、日米安保の問題を報告しました。

     そこに集まったのは、アメリカ、イギリス、ドイツです。あるセクションをのぞいてみたら、EUのいろいろな問題をどうクリアしていったらいいのか、EUをさらに発展し、強固にするためにはどうしたらいいかという議論をやっていました。

    それを参考にして、アジアバーションのEU、すなわち『AU』というものをどうやって作ることができるのか、想定されるハードルやバリアは何かということを討論していました。そこまでやっているのです。そのような学会に対して、韓国が1億円の資金をポンと出すんですよ」

    岩上「EUのスタート点を考えると、フランスとドイツの和解です。フランスとドイツが特にエネルギーで手を結び合い、ヨーロッパを安定させようとしたのです。こうしたものであるEUの役割をアジアになぞらえると、フランスの立場は中国、ドイツの立場は日本だと思います。

     日本が中国と手を結び、韓国・北朝鮮を落着させ、日米韓の東アジアを安定させる。東アジアが安定すれば、東南アジアは今も安定している状態にあるわけですから、アジア全域が安定するわけですよね。要するに、日中韓が最大の問題だと思います。

     AUという構想を、日本を阻害したままできるのか疑問です。阻害したまま作る場合は、日本外しのアジア同盟を作るということなのか。この意図はどこにあるのでしょうか? また、ヨーロッパの学者たちは、全部が全部、中国側というわけでもないでしょうから、これを安定させるには、日本と中国の関係次第だという意見も出たのではないかと思いますが」

    ================================
    ◆日本の歴史認識に影響するアメリカの思惑◆
    ================================

    纐纈「ドイツは戦前、ヨーロッパを全部ドイツにしてしまおうとしました。『ヨーロッパのドイツ化』です。戦後、ドイツはいち早く戦争責任者を処断しました。日本の場合は公職追放をしても、公職追放解除(※49)というものがありましたが、ドイツはいっさい解除はないです」

    岩上「ナチスは許さないということですね」

    纐纈「そうです。いまでも、ドイツの憲法の中ではナチスやヒットラーやゲーリングやゲッペルズを称揚することは御法度です。そのくらい厳しい対応です。それによって戦後ドイツは、『ドイツのヨーロッパ化』ということに成功していくわけです。

     日本は、戦前は大東亜共栄圏を唱え、アジアを全部大和にしてしまおうとしました。大東亜共栄圏、八紘一宇(※50)です。天皇の股座(またぐら)に全部集め、一つの宇宙を作る「八紘一宇」です。戦後、日本は、ドイツのように考えれば、日本のアジア化となるはずでした

    纐纈「ところが日本は、アメリカ化を選択しました。『ジャパメリカ』なんですね。戦前、福沢諭吉が『脱亜入欧』と言いました。本来なら日本は、『脱亜』をやめて、『入亜』しなきゃいけなかったのに、それによって『脱亜入米』してしまった。その理由は歴史認識にあります。日本にとっての第二次世界大戦はアメリカと日本との戦争で、日本はアメリカに負けたという認識です。

     あの戦争は実は中国をはじめとするアジアとの戦争だったと思います。日本とアジアの戦争、あるいは日中戦争だったと思います。最盛時、日本の兵力は中国戦線に197万人も投入していました。それに比して、アメリカを主敵とする西太平洋戦線には160万程度です。30万以上中国戦線に投入した戦力のほうが大きかったのです」


    岩上「しかも、長期にわたっていますから、累計だったら全然違うんですよね」

    纐纈「そうです。日本は中国との戦争に長期戦を強いられ、国力を消耗し、そして、原子爆弾が炸裂し、日本は敗北しました。戦後、多くの国民は、日本はアメリカの物量に負けたという総括をし、戦後アメリカのような大量生産、大量消費、大量放棄、高度消費国家になれば、二度と敗北しないと思ってしまいました。

     それに加えて、この戦争を、大東亜戦争ではなくて太平洋戦争という呼び方で全国民に浸透させていきます」


    岩上「『敗戦』と言うと負ける戦争をやり始めた人間の戦争責任を問われかねないので『終戦』とごまかしたように、アジアへの侵略戦争をアメリカとの戦争に置き換えるために『太平洋戦争』にしたという日本の支配層の思惑があったのですよね。GHQがそれを主導したのでしょうか?」

    纐纈「GHQの主体はアメリカです。アメリカが日本に対して、太平洋戦争という歴史認識を押しつけたのです。

     アメリカは日本に対して、日米安保を押しつけただけではなく、歴史認識も押しつけてきました。それによって、戦後、アメリカは日本の事実上の支配を円滑に進めた。そして多くの日本人がアメリカのような国になりたい、アメリカの生活様式を取り入れたい、アメリカのような競争社会を構築したいと思ってきました。

     だから、アメリカに追いつき追い越せということが、高度経済成長の大きなスローガンになりました。そういう意味でいうと、アメリカとの間で、アメリカにとっても好都合な歴史認識同盟を結んだのだと思います。

     そういうものから日本は解除されないまま、アジアに対する戦争責任に十分に応えきれてないわけです。応えようともしていません。村山談話(※51)、いろいろありましたけれども、それが徹底してない最大の理由は、やっぱりアメリカとの『歴史認識同盟』という呪縛から解放されてないからだと思います」


    岩上「日本の歴史認識において反省が足りないのは、戦前戦中の右翼体質を引きずっているからだという説明がありますが、それに加えて、アメリカの思惑だったという面もあるのですね。日本をアメリカに引きつけておいて、アジアとの間で本当の意味での和解をもたらさないようにしておくという、アメリカの政略的な思惑があるということですね」

    纐纈「アメリカはその政略的な思惑を有効に使いたいと思っていると思います。つまり、米中経済同盟、そして将来的にはひょっとすると、米中軍事同盟に発展するかもしれないというときに、日本と中国がいつまでも尖閣などで揉めていたほうがアメリカの国益にとってはプラスなのです。

     アメリカは、安倍さんの歴史認識に不信感を持っていることは事実ですが、やはり、中国と日本が和解をして、AUのようなものができ、アメリカを無視するような形になってしまうことを、アメリカとしては非常に怖れています。だから、日本と中国は歴史認識において、今のような軋轢(あつれき)、齟齬(そご)があった方が、アメリカにとって都合がいい。尖閣で日本と中国が争うこともアメリカにとってはベターです。アメリカは、思惑を持って、中国とも日本とも一定の距離間を保ちつつアメリカの欲するところに自らの国を据え置こうとしているわけです」


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    (※49)第二次世界大戦後の1946年に、戦争犯罪人や職業軍人などが公職に就くことを禁止する「公職に関する就職禁止、退職等に関する勅令」が発効された。しかし、1951年には「第一次追放解除」が出され、7万人が追放解除された。(参照【URL】http://bit.ly/1jHxgr8)

    (※50)八紘一宇:大東亜共栄圏建設の理念として用いられた言葉。第2次近衛文麿内閣が決定した基本国策要綱の中の〈八紘ヲ一宇トスル肇国ノ大精神〉に由来する。日本書紀の〈八紘(あめのした)を掩(おお)ひて宇(いえ)にせむ〉を全世界を一軒の家のような状態にすると解釈したもの。(百科事典マイペディアより【URL】http://bit.ly/L71yEO)

    (※51)村山談話(村山内閣総理大臣談話「戦後50周年の終戦記念日にあたって」):50回目の終戦記念日にあたる1995年8月15日に閣議決定した当時の村山富市首相による談話。日本が第二次大戦中にアジア諸国で侵略や植民地支配を行ったことを認め、公式に謝罪したもの。「植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」と公式に植民地支配を認め、「痛切な反省の意」と「心からのおわびの気持ち」を表明した。日本の公式見解として歴代内閣に引き継がれている。第1次安倍内閣でも安倍晋三首相が国会答弁で踏襲する考えを示している。(デジタル大辞泉、朝日新聞掲載「キーワード」の解説より【URL】http://bit.ly/1f9FF0O)

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    ◆中国や韓国の日本に対する感情◆
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    岩上「アメリカとしては、日本と中国を『分断して統治せよ』というようなことなのでしょうか?」

    纐纈「分断して統治せよという論議に近いかもしれません。アメリカが一番怖がっているシナリオは、日中同盟です。経済的には非常に太い関係を持っていても、政治的には政冷経熱という状態が都合がいいのです。

     日中が政治的に非常に良い関係になり、経済的にも非常に分厚い関係になると、アメリカにとっては足場をすくわれるかもしれない。なので、そういうアメリカの思惑を横目に見ながら、私たちが中国の知識人と日中平和共同体を作りましょうと言うと、中国の日本通の方や親日的な方々は、そうしようと言うわけです。

     ひとつエピソードを紹介します。西安交通大学で講演したとき、日中平和共同体を作ろうという提案しました。そのときに、ある先生が立ち上がってこう質問しました。『大賛成です。でも、一つ質問があります。EUの中心国は敗戦国ドイツでした。では、AUの中心国はどこになるでしょうか?』と。彼の言わんとしているところは、日本ではなく、当然、中国でしょうね、ということなのです。

     中国は大国だから、中国に先導役、旗振り役をやらせてほしいというプライドがあります。それから、日本はドイツのように戦争に対する責任というものをきちっと果たしてないということに対する批判があります。

     EUの中心国となったドイツは、歴史認識をきちっと保ち、いろいろな政策をやってきました。ところが日本は実質的に何もやっていません。そういう国にAUの旗振り役は任せられないという、非常に辛辣な、しかし意味のある質問でした。

     それから、韓国でも同じような話をしました。『これからは、日本、中国、韓国、3つの国がまず中心となって、いい関係を作りましょう』と言いました。ある学生が質問しました。

     『とても良いことだと思います。私は今の北朝鮮を怖いと思っていますから、北朝鮮も含めることはちょっと心配ですが、同じ民族で、しかも距離的にも近いので、時間の問題だと思います。そして、朝鮮国、高羅連邦、いろんな名前で取り沙汰されているように、統一はいずれはやってきます。時間はかかるかもしれませんが。でも、中長期的に見て、非常に心配をしている国があります。先生、それは誠に申し訳ありませんが、イリョン、日本です』と言うのです。

     理由を聞いたら、彼は開口一番こう言いました。『憲法を変えようとしている』。憲法は、日本がかつて迷惑をかけた侵略国や非植民地国の気持ちを和らげる唯一と言っていいぐらいの役割を持っています。憲法に9条があります。その9条に、今、手をかけようとしている。だから、『一体何を日本を信頼する拠り所にしていいのか』という危惧の念なんですね」


    岩上「なるほど。韓国での話と中国での話でも、欠けている観点はアメリカの存在ですよね。つまり、日本が油断ならないとしても、米国が歯止めをかけることになるので、そうである限り、日本を信用しましょうという話が、中国からも韓国からも出てくる可能性があるのではないかと思います。これはアメリカにとって都合のいい話でしょう」

    纐纈「誠に都合がいいですね」

    岩上「改憲しようとするような日本は、中国や韓国に信用されない。だからこそ、抑えておく役割として米国が出てくる。こういう構造になっているような気がします」

    纐纈「おっしゃるとおりです。アメリカにとっては、安倍さんは信用ならない政治家だと思っています。それは間違いありません。しかしながら、もう一方では、安倍さんがゆえに、中国と日本の関係は改善しないということがあります。韓国と日本の関係も改善しません。そこに仲介役として、アメリカの存在感が浮きたってくるという構図ですよね。アメリカはそういう政策をあえて取っていると思いますね」

    岩上「計算づくでしょうか?」

    纐纈「計算づくです。ガイドラインが再改定されますけれども、そこに、対中国海洋戦略という新しい戦略が打ち出されるはずです。それも、日本を押して中国に向かわせ、中国に対抗され、日本の憎悪をしっかり作ることによって、日本と中国の関係改善の可能性を削いでいくという戦略です。

     ビンの蓋論(※52)とずっと言われ続けてきました。だから、中国も韓国も日米安保は一定程度は認めるということになってきた。アメリカの韓国駐留も日本駐留もOKだということです」

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    (※52)在日米軍は日本の再軍備・軍国主義化を防ぐための「蓋」であるという理論(「政治学用語」参照【URL】http://bit.ly/19ZJiZA)

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    ◆安倍政権の展望のない戦略◆
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    岩上「日本の右派の中には、真の自立を求めているというよりは、対米従属に非常に傾斜している右派がいます。

     直近で言えば、例えば、鳩山政権が、米国依存からやや距離を置こうとしたら猛烈に叩かれました。アメリカの圧力があり、国内のメディアも官僚も、叩いて潰したわけです。潰したあとに出てきたのは、同じ民主党だけれども、極めて対米従属的な菅政権であったり、野田政権でした。TPP参加容認の政権です。

     そしてそれを批判するような形で現れたはずの安倍政権は、実は全く同じことを踏襲しているわけです。アメリカから、これやれ、あれやれと言われて、経済植民地みたいなことをやっているわけです。そして、他方で軍事属国化するということに猛烈に傾斜し、アジアに対してはものすごい右派のような振る舞いをしているのです。おかしなことです。

     だけれど、アメリカの利益にこれ以上叶う政権はないということです。アジアでは嫌われ者の役をやり、そして孤立することによって米国へさらに依存しながら、軍事属国化をますます深めていく。

     安倍さんは、おじいさんの岸信介を尊敬する人と言っています。本当は核武装独立を狙っているのではないかという話もあります。この軍事属国化の果てに秘密保護法まで制定して、軍事情報から国民の重要情報まで全部提供するような国になってしまう。そのあとに、自立と言い、アジアに打って出る。それは、岸が考えたようなことです。自給自足圏、アウタルキー(※53)を作るという考えです。安倍さんやそれを支えている官僚、財界人たちは、そんなことが本当に可能だと思っているのでしょうか」

    纐纈「まず、岸信介さんがやった自立国家論は、戦略性のある国家論だったと思います。一定の方向性を向いたもので、非常にクリアな議論です。けれども、安倍さんの国家論、戦略論は、ほとんど戦略とは言えません。つまり、戦略なき国家論です。そこが岸さんと安倍さんの決定的に違うところです。

     安倍さんは非常に場当たり的で、長期的な戦略がないですね。自己撞着、己矛盾に陥ってしまうような、非常に危なっかしい内容だと思います。それに安倍さんが気づいているかどうかは分かりません。分かった上でやっているのか、分からなくてやっているのか。そこが、実は、私には、まだ十分には分かりません。

     ただ、ひとつ言えることは、安倍さんの戦略論は、この国、国民にとっては、あるいはアジア全体から見ても、展望がないものだということです。つまり、平和の創造、平和地域社会への国際貢献という点においても、展望がない。非
    常に場当たり的であると思います」

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    (※53)アウタルキー(Autarkie)とは自給自足経済。(デジタル大辞泉より
    【URL】http://bit.ly/1mTIypy)

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    ◆今の日本は1930年代と似た状況にある◆
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    岩上「いま安倍さんを熱狂的に支持しているのは、若い層です」

    纐纈「有名な話ですが、日本が非常に閉塞した社会になっているときに、ある青年に『君にとって希望はなんですか?』と問うたら、『希望は戦争です』っていう言い方をしましたね(※54)」

    纐纈「もちろん、戦争を求めているというよりは、彼らの真意は、おそらくは、就職もなかなか難しく、自分の能力を発揮できるようなチャンスがなかなか訪れないという非常に閉塞した社会のなかで、いっぺん閉塞した社会をシャッフルすることを求めているという意味の発言だったのだと思います。いっぺんぶち壊したら、浮かぶ可能性もあるだろうということ。つまり、いまの若い人たちは将来に対する明るい展望を抱けなくなってしまっている。

     長期的な展望がない中で社会をダイナミックに変転させる好機が現れないかということで、比喩として戦争ということを言ったと思います。戦争という言葉は、解体とか『シャッフル』とか、再編という言葉に置き換えていいと思い
    ます」

    岩上「創造的破壊(※55)ということですね」

    纐纈「それだけ鬱積し、閉塞した社会に青年がいる。そのような青年が、ちょうど1930年代にヒットラーを生み出してしまった。当時のドイツに非常に似ていますね。1930年代のドイツは非常に失業率が高かった。そのとき、ヒットらーが、労働者階級に向かって、自分が政権につけば公共土木事業を展開すると言って、実際にアウトバーンまで作ってみせたわけですね。それから、高度な福祉社会をやってみせると言い、たしかにそうしました」

    岩上「ヒットラーは社会保障はやったのですよね」

    纐纈「非常に優れた社会保障制度を実際に実現しました。ヒットラーは、それを戦争で可能にしたわけです。戦争による莫大な利益によってアウトバーンもでき、高度な福祉社会も作ってみせたわけです。そういうこともあるものですから、実はドイツも経済がよくないときに、スキンヘッドの親ナチの人たちが非合法化のもとでうようよしているという状況があります。

     だから、『過去に盲目になる者は』というヴァイツゼッカーの議論(※56)が出てくるわけですね。彼は親ナチの青年が出てきたことを非常に深刻に受け止めて、過去に盲目になってはいけないと警鐘を乱打したのです。

    日本の1930年代もそういう状況でした。そのときのはけ口は満蒙です。満蒙、中国、蒙古を取ることによってそこに新天地を開拓し、そしてそこに満州国という国家をつくろうとする。あそこは天国だと言って、若い日本人含めて惹きつける。最終的には100万の日本人が移住しました。

     現在も、翻ってみれば、経済的にたいへん厳しい。アベノミクスで部分的にいいことがあるかもしれないけど、全体状況としてはほとんど変わっていません。給与カットも続いているという状況です」

    岩上「だいたい再分配が十分ではないですからね」

    纐纈「ええ。一部のパワーエリートをさらにパワーアップするだけの話です」

    岩上「それで、搾取はもっともっと苛烈を極めつつあるというような状態ですよね」

    纐纈「そういう状況のなかで、閉塞した社会と受け止めた彼らは、ダイナミックな政治展開、あるいはヒーロー待望論が自ずと出てしまうわけです。そういう意味では、いま非常に1930年代的な状況下にあると言えます。逆に言うと、安倍さんがこのタイミングで出てきたのは、今の時代状況が安倍さん的な人間を押し上げたからだと思います。

     自民党のなかでいろいろな選択肢があるなかで、なぜ安倍さんだろうかと考えたときに、やっぱり今の時代状況を反映した政治家として、安倍さんが出てきたと思うんですよね。言ってみれば、時代が生んだ落し子みたいなものです。ですので、逆に言うと、非常に危険です。それでは、問題は、改善していくためにはどうしたらいいのかということですよね。そこになってくると思います」

    岩上「安倍さんは、アメリカに追従せず日本の自立を求めるような国粋主義者ではないというところが、非常に皮肉だと思います」

    纐纈「右翼の人たちは、今のように対米従属で、売国法まで強行採決してしまうような政権を評価するとは思えません」

    岩上「中国やアジアに対して、非常に右翼的な姿勢を取ることで、人気を得て右翼的な心情を吸い上げる一方で、売国法を通してアメリカへの追従を深めるという構図になっているわけですよね」

    纐纈「その一つの理由は、保守政権の延命策だと思います。自民党の圧倒的な勝利とは言うけれども、よく選挙分析したら、自民党の支持自体は、総体では減っています。選挙制度のおかげで得票数以上の議席数を獲得してしまう。あの選挙の制度のからくりがあります。

     だけれども、明らかに保守派は、長期的には低落傾向にあります。その歯止めをかけたいという思いがあって、危険な人物であっても、少しでも議席票が取れる人物を押し上げて、保守の延命、保守政治の延長を図ろうという戦略だと思います。

     おそらく、そういう意味で、安倍さんは使える政治家だということで選出されたのでしょう。ですが、ご存知のように、自民党員の選挙では安倍さんではない人が今の幹事長さんが通りましたね。ところが国会選挙で安倍さんが逆転勝利をしました。そのことは、今のことを如実に示していると思うんですよね」

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    (※54)赤木智弘氏が、『論座』2007年1月号に『「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争』という論文を掲載した。「戦争が起きれば社会は流動化する」、「戦争という手段を用いなければならないのは、非常に残念なことではあるが、そうした手段を望まなければならないほどに、社会の格差は大きく、かつ揺るぎないものになっているのだ」、「戦争は悲惨だ。しかし、その悲惨さは『持つ者が何かを失う』から悲惨なのであって、『何も持っていない』私からすれば、戦争は悲惨でも何でもなく、むしろチャンスとなる」と論じた。(全文【URL】http://bit.ly/1e5cBLE)

     これに対し、4月号で7人の論者が「応答」し、「ギャンブルに負けるのはあなただ」「戦争待望の妄言だけは許せない」といった厳しい批判を展開した。さらにその応答に対して赤木は6月号に反論を掲載している。(『けっきょく「自己責任」ですか 続「『丸山眞男』を ひっぱたきたい」「応答」を読んで』【URL】http://bit.ly/1f9o22I)

    (※55)創造的破壊とはオーストリアの経済学者シュンペーターによって唱えられた考え方。非効率な古いものは効率的な新しいものによって駆逐されていくことで経済発展するという考えである。(【URL】http://bit.ly/1nfedon)


    (※56)リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー:ドイツの政治家。西ベルリン市長(在任:1981年‐1984年)、第6代連邦大統領(在任:1984年-1994年)を歴任。演説のなかで「過去に眼を閉ざす者は、未来に対してもやはり盲目となる」と述べた(『新版 荒れ野の40年 ヴァイツゼッカー大統領ドイツ終戦40周年記念演説』岩波書店、2009年)。(参照:ヴァイツゼッカー大統領演説集【URL】http://bit.ly/L72Sr7)

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    ◆石破茂氏、麻生太郎氏はどういう人か◆
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    岩上「石破茂さんのことは、どう評価しますか?」

    纐纈「石破さんとは、直接お話したことがあります。軍事オタクと言われていますね。私は、防衛庁の参事官制度が廃止されたことをきっかけとして、『文民統制』(※57)という本を書きました。そのときに石破さんにお会いしました」

    石破さんは安保族で、親自衛隊感情がたいへん強く、参事官制度の見直しに賛成をした人物です。『文民統制』は、そのことを批判した本なのです。たまたま、国際安全保障学会のパーティーで、石破さんと会い、自衛軍構想の話をしていました。自衛軍にしたいという話でした。

     どうして自衛軍にしたいのか聞くと、自衛隊を愛される軍隊にしたいからと言いました。山口の長州の農民軍、奇兵隊のように、国民が自ら望んで入るような軍隊にしたいという思いを語られました。私は、『石破さん、それは市民革命でもないと無理ですよ』と言ってその本を進呈してきました。

     安倍さんと比べたら、確かに大局的な視点でものを言う方です。今回はああいう本当にひどい発言をしましたが(※58)、よく言われるように、口はそんなに滑る人ではありません。口が硬く慎重な方です。だから、ゆっくり話されるでしょう。あれは性格というよりも、間違えたら困るという配慮があるからですね。話しているときでも、一つ一つ言葉を選ばれる方です」

    岩上「でも、発言ではなくブログに書いたのですから、見直す時間もあったでしょう。そんな慎重な方があのように書いたということは、やっぱり本音が見えたということでしょうか」

    纐纈「本音が見えたのでしょうね。やっぱり、袖から衣の下の鎧が見えたという感じでしょうね」

    岩上「つまり、お上に逆らう者は、今後は、抗議行動もテロ行為とみなすということですよね」

    纐纈「あれは脅し効果は十分にあったと思います。それを狙っていたという可能性もあります。

    先ほど申し上げたように、安倍さんが官房副長官時代に小型核兵器を持つという発言をされたときに、週刊新潮がその記事を載せたのですけども、新潮の記者から『どういう意味があるんでしょうか?』と聞かれて、僕は『アドバルーンをおあげになった』と答えました。つまり、いずれリークされて漏れるだろうと考え、核兵器も小型兵器なら持ってもいいという安倍さんの発言に対して、国民がどう反応するんだろうかということを知りたかったのです」

    岩上「小型か大型かは、あまり意味がないと思うのですが」

    纐纈「意味はありません。小型という意味は、大型のは中国だけれど、日本は小型もできるという、日本の技術の水準の高さを言ったのです」

    岩上「なるほど。弾頭に載せるために小型化しなければいけないですからね」


    纐纈「はい、小型のものをいくつか載せる多核弾頭を日本は作れるということでしょう。いずれにしても、核兵器を持つということに、国民がどういう反応をするかと、試したということです。

     政治家は時々やりますが、アドバルーンを上げてみて、あえて後から引っ込め、反応を見る。これはひとつのテクニックですね。そこまで考えて石破さんが今回あのような発言をされたかどうかは、それは本人に聞いてみないと分かりませんけれども」

    岩上「麻生太郎さんのことは、どう思いますか」

    纐纈「麻生さんは、自民党右翼ですね。私は買っていません。政策通だとも思いません」

    岩上「麻生さんは『ナチスに学んでワイマール憲法を死なせよう』と言いました(※59)。憲法改正を、96条改正で成し遂げようとしていた流れがありましたが、それが、いつの間にか、麻生発言をきっかけに、解釈改憲でいこうという流れに変わりましたね。

     だから、あの人の言っていることは、時々とんちんかんに聞こえるんですけど、一応はやっぱり政局を睨んで、こういう方法でいこうと言ったことがそれなりに浸透したのではないかと思います」

    纐纈「麻生さんの発言は、ある程度の戦略性をもって言われたのかどうかは分かりません。それも石破さんと同じで、本音が出たと思いますけれども。その発言によって解釈改憲へと切り替わったわけですから、一定の役割を果たしたと評価する人もいますよね」

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    (※57)纐纈厚『文民統制 自衛隊はどこへ行くのか』岩波書店、2005年。紹介文「旧軍部の暴走を教訓として成立し,自衛隊のあり方を厳しく規定してきた日本の文民統制.しかし自衛官や政治家からの見直し論が相次ぐいま,文民統制が根底から問われている.自衛隊の合憲・違憲の議論に隠れてあまり議論されることのなかった文民統制の仕組みと歴史を辿りながら,自衛隊を真に私たちの統制下におくための方途を探る」【URL】http://bit.ly/1fuf27g)

    (※58)2013年11月29日のブログで石破氏は以下のように書いた。「今も議員会館の外では『特定機密保護法絶対阻止!』を叫ぶ大音量が鳴り響いています。いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう。
     主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない本来あるべき民主主義の手法とは異なるように思います」

    (※59)2013年7月29日に麻生氏は「いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていったんですよ。誰も気づかないで変わった。あの手口、学んだらどうかね」と発言した。(IWJブログ「「静かにやろうや」ナチスの手口から学ぼうとしたこと~「法の番人」内閣法制局長官の首すげ替えと裏口からの解釈改憲」参照【URL】http://bit.ly/1b5DDwg)

    (その4へ続く)

    原発 放射能 食品汚染 TPP 沖縄戦 

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