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    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    IWJ特報第127号「原発と核兵器技術の保有はコインの裏表~小出裕章氏インタビュー(その1)」 

    第127号
    ───────────────────────────────────
               岩上安身のIWJ特報
           原発と核兵器技術の保有はコインの裏表
        京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏インタビュー(その1)
    ───────────────────────────────────
    (IWJより転載許可済み)


     2月9日(日)に投開票が行われた東京都知事選挙では、元首相の細川護熙氏
    が立候補したことによって、数ある争点の中から「脱原発」が最大の争点とし
    てクローズアップされた。

    ※2014/01/22 【東京都知事選】細川護熙氏が立候補を正式表明 ~脱原発、新
    しい経済・生活の形態を訴える
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/120962

     一方、細川元首相の立候補によって「脱原発」を支持する有権者は、票を投
    じる先に迷うことになった。同じく「脱原発」を掲げる宇都宮健児元日弁連会
    長が、先行して立候補していたからである。一部の「勝手連」からは、「一本
    化」を求める声があがったが、両候補にその意志はなく(宇都宮候補は航海で
    話し合うと回答。細川候補は話し合いを拒否)、「一本化」は実現しなかった。

    ※2014/01/28 【東京都知事選】細川護熙氏が外国特派員協会で会見 宇都宮健
    児氏との一本化の意志を改めて否定
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/122348

     原発といえば、エネルギー需給の側面から語られることがほとんどである。
    「脱原発」のシングル・イシューで今回の選挙を闘った細川候補は、再生可能
    エネルギーの活用によって「原発ゼロ」を達成すると繰り返し主張してきた。


     しかし、原発は、エネルギーの観点からのみ語られる問題ではない。原発は、
    軍事と安全保障の問題と密接に関わっているのである。

     日本政府は、原発で出た使用済み核燃料を「再処理」してプルトニウムを抽
    出し、それを再び原発で燃料として使用する「核燃料サイクル」をエネルギー
    政策の柱として採用している。この「核燃料サイクル」は、原子力に関する技
    術を日本側が包括的に運用することを認めた、1988年の日米原子力協定によっ
    て可能となったものである。現在、高速増殖炉「もんじゅ」の運転停止により、
    この「核燃料サイクル」の実現見通しは立っていない。

     「核燃料サイクル」によって生み出されるプルトニウムは、核兵器の原料と
    して転用可能なものである。日本には現在、既に44トンのプルトニウムが蓄積
    されており、長崎型原爆4000発分を製造することが可能であると言われる。
    「核燃料サイクル」技術を維持し、「兵器級プルトニウム」を蓄積することは、
    核兵器を潜在的に保有することに、ほぼ等しい。

     こうした日本の原子力/核政策を規定しているのが、日米間で締結されてい
    る日米原子力協定である。

     1955年、米国から日本へ濃縮ウランを貸与する目的で、日米原子力協定が締
    結された。これにより日本は、「原子力の平和利用」の名の下、核に関する技
    術を運用することが可能となり、原発を稼働させることができるようになった。

     しかし、この日米原子力協定は当初、日本側の核運用に関する細かい「箸の
    上げ下ろし」まで、米国側の許諾を得なければならないものであった。そこで、
    「核燃料サイクル」を構築して「兵器級プルトニウム」を蓄積し、独自の「核
    技術抑止力」を保有することを求めた日本側は、米国に対し、核の「包括的な
    運用」を求めることになる。それを認めたのが、1988年に改定された日米原子
    力協定だったのである。これは日本に30年間にわたり、「フリーハンド」を認
    めるものだった。

     この、日本に潜在的な核保有を許している日米原子力協定が、2018年に期限
    を迎える。この期限を見越してのことか、都知事選たけなわの1月27日、非常
    に重要だと思われるニュースが飛び込んできた。

     共同通信が伝えるところによると、冷戦時代に米国が研究用として日本に提
    供し、東海村にある日本原子力開発機構が保管してきたプルトニウム331キロ
    について、米国側が日本政府に対して返還を要求している、というのである。

    ※米、プルトニウム返還を要求 オバマ政権が日本に 300キロ、核兵器50発分
    / 背景に核テロ阻止戦略(共同通信、2014年1月27日
    【URL】http://bit.ly/1j5GRIn)

     そして都知事選が終わり、新都知事となった舛添要一氏が、大雪害をよそに
    出かけたソチ五輪も閉幕したあとの2月25日、プルトニウム返還の方向で日本
    政府が最終調整に入ったとの続報がひっそりと流された。

    ※政府、米にプルトニウム返還へ
    (ロイター、2014年2月25日【URL】http://bit.ly/1dxCYF5)

     日本は戦後、「原子力の平和利用」の名の下、原発を導入した。しかしそれ
    は、岸信介元総理や佐藤栄作元総理などの発言からも分かるように、「平和利
    用」という大義名分を盾に、原発から出るプルトニウムによって核技術抑止能
    力を持つための手段であった。戦後の日本は、「原子力の平和利用」「非核三
    原則」を顕教、核技術抑止を密教とし、そのどちらが日本の本音なのかを明ら
    かにはしないという「あいまい路線」、すなわち「中庸」を取ってきたのであ
    る。

     しかし、靖国神社への参拝や集団的自衛権の行使容認といった安倍政権の暴
    走に眉をひそめる米国は、2018年に迎える日米原子力協定の期限切れを前にし
    て、日本に対して、従来の「中庸」路線をそう易々とは認めないのではないか。
    今回のプルトニウム返還要求は、中国との間で政治的緊張を高める日本に対し
    て、強い警告を発する米国からの政治的メッセージとも受けとれる。

     今回の東京都知事選で最大の争点となった「脱原発」は、このような軍事と
    安全保障の観点から捉える必要がある。

     仮に「中庸路線」が不可能となったとき、日本が取るべきなのは、都知事選に
    おいて61万票を獲得した田母神俊雄氏の主張する、国際的な孤立を強いられて
    でも核武装に踏み切る、「核武装独立路線」なのか、核保有の技術も、プルト
    ニウムの貯蔵もすっぱりとあきらめる「絶対平和主義」なのか。2011年3月11
    日の福島第一原発事故直後から、「原発とは、核を抱えている社会の問題だ」
    と主張してきた京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏に、話を聞いた。

    ===================================
    ◆原発は電気のためではなく核兵器を作るために導入された◆
    ===================================

    岩上安身「私は今、京都大学の原子炉実験所に来ています。小出裕章先生にこ
    れからお話をうかがいたいと思います。小出先生、よろしくお願いいたしま
    す」

    小出裕章氏(以下小出、敬称略)「よろしくお願いします」

    岩上「今、都知事選のまっただなかです(※インタビューの収録は2月3日)。
    そういう状況で発言をすることは少し控えたいと言っていらしたところに押し
    かけまして、本当に申し訳ありません。どうしてもこのタイミングで、小出先
    生のお話をうかがいたいと思いました。

     多くの人が、今回の都知事選の喧騒に飲み込まれてしまって、非常に重要な
    ニュースを見逃しているのではないかと思います。その件について、ぜひ先生
    のご見解をお聞きしたいと思っています。

     その重大なニュースとはいうのは、アメリカがプルトニウムの返還要求をし
    てきている、というものです。1月27日に共同通信が一報を流しまして、各紙
    がそれを載せました(※1)。我々は、これは大変なニュースなのではないか
    と思いまして、外務省に連絡したんですね(※2)。外務省の担当課は、否定
    はしませんでした。曖昧な言い方でしたが、否定はできないということは、そ
    れが事実なのだろうと思います。

     文芸評論家で早稲田大学の教授の加藤典洋さんが、3.11以降に『3.11~死神
    に突き飛ばされる』という本を書かれて、その中に、「国策と祈念」という論
    文を書いていらっしゃいます(※3)。日本の原発の平和利用において、それ
    とワンセットで、核の技術的抑止というものが目指されてきたのだということ
    を指摘されています。

     ところが、もしこのプルトニウムを返還しろということを言われたのであれ
    ば、日本の核開発の目的というのは、水泡に帰してしまいます。これは、実は
    大きな選択を迫られるという話なんですね。

     核技術抑止論と言ったり、潜在的核保有論と言ったり、いろいろな言い方は
    あると思いますが、こういうことを近年、石破さんとか、あるいは安倍さんも、
    発言をされている(※4)。

     しかしこうなると、周辺諸国、とりわけ中国との関係において牽制するとい
    うことはできなくなります。曖昧な戦略ができなくなる、ということです。そ
    うなると、もう核兵器を持ってしまうか。それともまったく諦めるかという選
    択を迫られるのではないか。このように分析しているんですね。

     こんなに脱原発の議論が都知事選がらみで盛り上がっているにも関わらず、
    この話題が全然議論の遡上にあがらないのです。

     そこで、小出先生にお話をうかがいたいなというふうに思っております。日
    本の原発の平和利用と言っても、裏側に核燃サイクルと抱き合わせで、このよ
    うな核兵器保有のための準備をし続けてきたというのは事実であり、そして、
    このプルトニウム返還要求が、そうしたものの断念を迫られる可能性があると
    いう点について、どのようにお考えでしょうか?」

    小出「日本という国は、原子力の平和利用というような言葉を作って、あたか
    も日本でやっている原子力利用は平和的だとずっと装ってきました。しかし、
    もちろんそんなことはありません。

     ずいぶん前でしたけれども、野坂昭如さんが、技術というのは、平和利用だ、
    軍事利用だと分けることが出来るはずがないとおっしゃっていました。そんな
    ものはない、と。もしあるとすれば、平時利用と戦時利用だということでした。

     平時に使っている技術でも、戦時になればいつでもまたそれが使える、とい
    うことです。日本が原子力をそもそもやり始めたという動機も、先程から岩上
    さんがおっしゃってくださっているように、核兵器を作る潜在的な能力、技術
    力を持ちたいということから始まっていました」

    岩上「そもそも核保有が出発点であり、電気のためではなかった、と」

    小出「もちろん、そんなのは違います。核兵器を作る力を持ちたかったという
    ことで、日本の原子力開発が始まっているわけですし、単に技術力だけではな
    く、平和利用と言いながら、原爆材料であるプルトニウムを懐に入れるという
    ことです。

     そしてもうひとつは、ミサイルに転用できるロケット技術を開発しておかな
    ければいけない、ということです。両方を視野に入れながら、科学技術庁(※
    5)というものを作ったわけですね。今はなくなりましたけれども。

     科学技術庁は、原子力と宇宙開発をやるわけですけれども、まさに原爆を作
    るためのものです」

    岩上「なるほど。ひとつの役所が、まるごとそのために生まれたようなものだ
    と」

    小出「そうです。日本人は、日本は平和国家と思っているかもしれませんけれ
    ども、国家のほうでは、戦略的な目標を立てて、原子力をやってプルトニウム
    を懐に入れて、H2ロケットやイプシロンなど、ミサイルに転用できるロケット
    技術を開発してきたんですね。

     しかし、日本のマスコミは、例えば、朝鮮民主主義人民共和国が人工衛星を
    打ち上げると、ミサイルに転用できる、実質的なミサイルであるロケットを打
    ち上げたという。しかし、自分のところが打ち上げるH2ロケット、イプシロン
    についてはバンバンザイという、そんな報道しかしないわけですね。

     もちろん北朝鮮だって、ミサイル開発と絡んでいると思いますけれども、同
    じように日本だって、軍事的な戦略を立てながらやってきたわけです。

    ただし、日本の思惑というものが貫徹できるかどうかということは、現状では、
    完全に米国が握っているんですね」

    岩上「これは、日米原子力協定というもので、拘束されている、と。これはど
    ういうものなのでしょうか」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※1)共同通信は1月27日付けで、「米、プルトニウム返還を要求 オバマ政
    権が日本に 300キロ、核兵器50発分/背景に核テロ阻止戦略」というニュース
    を報じた。記事によれば、「複数の日米両政府関係者」が明らかにした話とし
    て、茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構の高速炉臨界実験装置
    (FCA)で使用するプルトニウム331キロについて、米オバマ政権が日本政府に
    対し、返還を要求しているのだという。記事は米国による返還要求の背景とし
    て、「『核兵器転用可能な核物質をテロリストの手に渡してはならない』と訴
    えるオバマ大統領の安全保障戦略がある」と解説している。
    (【URL】http://bit.ly/1j5GRIn)

    (※2)1月27日、共同通信の報道について、IWJは外務省に事実関係を取材し
    た。取材に対して、外務省の軍縮不覚散・科学部、不拡散・科学原子力課の主
    席事務次官は「具体的な中身についてはノーコメント」としつつも、「日本と
    しても核物質のセキュリティ強化を重視しており、国際的な核セキュリティ強
    化への貢献という観点から、アメリカの取り組みに積極的に協力してきてい
    る」と回答するなど、共同通信の報道を否定はしなかった。
    (【URL】http://bit.ly/1dXRSDu)

    (※3)『3.11~死神に突き飛ばされる』の著者である加藤典洋氏は、米国か
    らのプルトニウム返還要求について、自身のTwitterに分析を投稿した(加藤
    典洋氏の「プルトニウム返還要求の意味」まとめ
    【URL】http://togetter.com/li/621667)。
     加藤氏は2月4日、岩上安身のインタビューに応じ、次のように語った。
    「『非核の選択』を書かれた杉田弘毅さんに直接お聞きしましたが、核の技術
    抑止政策というのは、いつでも核武装ができる最高度の技術だと。日本はそれ
    を持ってしまった。非核三原則が盾となって、核の技術抑止が可能になった、
    という面があるのです。日本の政策は、非核三原則と核の技術抑止をセットに
    する、というものでした。それが今回、安倍政権の暴走で、このセットが破綻
    することになったのではないか。米国からプルトニウムの返還がなされたのに
    は、このような背景があるのではないでしょうか」
    (【URL】http://bit.ly/1jOQ59e)

    (※4)自民党の石破茂幹事長は2011年10月の雑誌「SAPIO」のインタビューで、
    「原発を維持するということは、核兵器を作ろうと思えば一定期間のうちに作
    れるという『核の潜在的抑止力』になっていると思っています」「私自身は、
    安全保障の面から、日本が核兵器を持てることを否定すべきではないと思う」
    「日本は、核の平和利用を原子力発電の技術によって営々と積み重ねてきた。
    なればこそ、テクノロジー面においても、マネジメント面においても、世界で
    一番安全な原発を作っていかなければいけない。これは、世界に対する日本の
    責務だと私は思う。だから、私は日本の原発が世界に果たすべき役割からも、
    核の潜在的抑止力を持ち続けるためにも、原発をやめるべきとは思いません」
    と述べ、「核技術抑止」の観点から、原発を維持すべきだと主張している
    (【URL】http://bit.ly/1f5D0JB)。
     2002年5月13日、安倍総理(当時は官房副長官)も、早稲田大学の大隈講堂で
    行われた講演会で、「自衛のための必要最小限度を超えない限り、核兵器であ
    ると、通常兵器であるとを問わず、これを保有することは、憲法の禁ずるとこ
    ろではない」「核兵器は用いることができる、できないという解釈は憲法の解
    釈としては適当ではない」と述べている(【URL】http://bit.ly/1j3VJ7I)。

    (※5)1956年に総理府の外局として設置。2001年の中央省庁再編の一環とし
    て廃止され、その業務は内閣府と文部科学省に引き継がれた。原子力安全・保
    安院の前身である原子力安全局や航空技術研究所などを抱え、主に原子力技術
    と宇宙開発技術を担った。初代長官は、読売新聞社主で「原子力の平和利用」
    キャンペーンを行って原発の導入を推進した正力松太郎である。(科学技術庁
    Wikipedia【URL】http://bit.ly/N2zGTv)

    ===================================
    ◆米国の属国だからこそ可能だった日本の原子力政策◆
    ===================================

    小出「日米原子力協定では、米国の同意がなければ、核燃料をどう扱うかとい
    うことすら決められないというようになっています。米国がどう考えるかとい
    うことで、日本の原子力開発の動向が左右されているわけですね。日本は米国
    の完璧な属国ですよね。そうであるかぎりにおいて、米国は日本に一定程度の
    自由を許してやる、ということになっているわけです。

     原爆を作るための技術というのは、核分裂性のウランを濃縮するというウラ
    ン濃縮という技術。それからプルトニウムを生み出すための原子炉。さらに、
    生み出されたプルトニウムを取り出すための再処理という三つの技術がありま
    す。

     その三つが原爆を作るための技術です。そして、現在の国連常任理事国であ
    る米国、ロシア、イギリス、フランス、中国の五カ国は、その三つの技術を持
    っているのですね。

     三つの技術を持っていて、核兵器を持っているから、常任理事国として、世
    界を支配できるということになっている。その5カ国は、自分たちだけはその
    技術を持ってもいいけれども、他の国には、絶対持たせないということで、
    IAEAを作って、国際的な監視をするということにしたんですね。

     ずっとそういう体制が続いてきたのですが、その核兵器保有国5カ国の他に、
    例えばインドとかパキスタン(※6)とか、あるいはイスラエル(※7)。朝鮮
    民主主義人民共和国については、私はまだ首を傾げていますけれども。まあ、
    実質的に核兵器を作ったとしても、例えば、インドは原子炉と再処理技術は持
    っていますけれども、ウラン濃縮技術は持っていません。パキスタンは、ウラ
    ン濃縮技術は持っているけども、原子炉も再処理も持っていないんですね。イ
    スラエルは、もう米国が容認してしまっています」

    岩上「黙認という形ですね」

    小出「そうですね。原子炉も持っているし、再処理も持っているわけですね。
    朝鮮民主主義人民共和国は、どこまで持っているのか私は分からないけれども、
    どの国も原爆製造三技術は持ってないのです。

     ただし、核兵器保有国5カ国のほかに、世界で1カ国だけ、この三技術を持っ
    ている国がある。それが、日本なんですね」

    岩上「なるほど。これは核燃料サイクルと深く結びついているわけですね」

    小出「もちろんです。ですから、日本は核燃料サイクルを実現し、原子力を意
    味のあるエネルギー源にするということを言ってきているわけですが、実はそ
    れは、原爆を作るための技術を持ちたいという欲望に基いていたわけです。

     日本だけがこの三技術を持つことができたのは、それも日本が米国の属国で
    あり、米国がかろうじて、『ウン』と言ったからです。

     しかし、現在のように、安倍さんのような、私から見ると『この人、病気だ
    な』と思うような人が出てきてしまって、世界情勢を見ることもできないわけ
    です。そうなると、米国から見ても、やはり不安になるでしょう。これまでは
    属国として許してやってきたけれども、『このまま野放しにするのは危ないか
    な』と思い始めるかもしれません。

     これまでのような形で日本にフリーハンドを与えないで締め付けを厳しくす
    るということは、たぶん世界の政治のレベルでは、ありうるだろうなと、私は
    思います」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※6)1974年5月18日、インドが初めての核実験に成功。その24年後の1998年
    5月、インドが計5回の核実験を実施し、それに対抗するかたちで、隣国のパキ
    スタンも計6回の核実験を行った。パキスタンは1971年の第3次印パ戦争で破れ
    て以降、インドに対抗するかたちで核実験を進めてきたとされる。インド、パ
    キスタン両国とも、NPT(核拡散防止条約)とCTBT(包括的核実験禁止条約)
    に加盟していない。
    (印パ核実験 コトバンク【URL】http://bit.ly/1cgHBGe)

    (※7)イスラエル政府は、公式には核兵器と他の大量破壊兵器の保有につい
    て、否定も肯定もしない立場を取っている。しかし、NPT(核拡散防止条約)
    に加盟していないことから、事実上、核兵器を保有していると考えられている。
    (イスラエルの大量破壊兵器 Wikipedia【URL】http://bit.ly/1bEOAuP)

    ===================================
    ◆「安倍おろし」の可能性◆
    ===================================

    岩上「日米原子力協定が結ばれた経緯、出発点は、日本が核兵器をいつか保有
    したいという欲望からスタートしている、ということでした。

     他方、アメリカは冷戦体制下で、日本だけではなく、自分が傘下に納めてい
    る国々が、まかり間違ってアメリカ側からソ連側のほうにいくことは避けたい。
    できるだけ自分たちの陣営を固めておきたいし、日本はとりわけ東アジアにお
    ける『反共の砦』というような形にしておきたい。

     それで、日本に再軍備をさせ、あるいはA級戦犯の容疑者だった岸信介(※
    8)を釈放して、再利用するというようなことが行われたりしてきました。

     そのプロセスのなかで、ビキニ岩礁での水爆実験で第五福竜丸(※9)が被
    爆し、大変な反核運動が盛り上がった。その結果としての核アレルギーを鎮め
    るためにも、日本に飴玉を提供するということで、原発を提供したという経緯
    があると言われています。

     ここには、さらにいろいろ思惑もあるのだろうと思います。日本が独自に核
    技術を持つくらいだったら、アメリカのパテントで全部最初から与えてしまい、
    コア技術は開発させないで、アメリカが握り続ける。そういう計算もあったの
    だろうと思います。

     先生のおっしゃるように、日本の原子力政策は、アメリカにずっとコント
    ロールされ、『箸の上げ下ろし』のようなことまでうるさく言われるものであ
    った、と。ところが、日米原子力協定の包括協定というのが、1988年に結ばれ
    ました。アメリカからすれば、日本はなんでも言うことを聞くんだな、という
    ことが分かってきたので、少し信頼できるようになり、細かいことは言わない
    というようなことになってきた、と。しかし、その包括協定が、2018年に期限
    が切れるのですね」

    小出「そうです」

    岩上「そこで、今回、プルトニウム返還要求が起きているということの意味な
    のですが、安倍政権の成立を見据えて、『これは危険だ』と米国が思い始めた
    ということでしょうか。包括協定の30年間の期限が切れるタイミングと、安倍
    政権の成立のタイミングに合わせて、米国が言って来たという意図はどういう
    ことなんでしょうか。先生は、日米関係はこれからどうなるとお考えでしょう
    か?」

    小出「それは、私にはよく分かりません。そして、安倍さんのような首相が、
    いつまで政権の座にいることができるのかも、私にはよく分かりません。

     しかし、安倍さんのような人がいる限りは、やはり米国としては、コント
    ロールを強めようと思うでしょう。日米原子力協定の期限が2018年に切れます
    ので、これまで以上に、タガをはめてくるということはあるでしょう。原子力
    関係者からみれば、それをされると困るので、安倍さんを降ろすという動きも、
    ひょっとしたら出てくるかもしれません」

    岩上「安倍総理は衆議院選挙、参議院選挙で大勝し、いま大変強い権力を持っ
    ています。今回の都知事選候補を見渡してみると、田母神さんのような方を石
    原さんがかついでいる。これは方向性としては、安倍さんと同じですよね」

    小出「そうです」

    岩上「田母神さんは、安倍さんが一生懸命我慢している本音をあらわにしてい
    るような人だということも言えると思います。田母神さんは、はっきり安倍さ
    んを支持しているとおっしゃっているくらいですから、安倍さんの別働隊、よ
    り本音をあらわしているのではないかなと思うんですね(※10)。

     自民党内部で、安倍さんのやっていることに公然と反旗を翻す政治勢力は、
    いまのところ見当たらないように見えます」

    小出「そうですね」

    岩上「そこに小泉さん、そして細川さんが現れた。小泉さんは、総理を辞めて
    いるけれども、自民党を辞めたわけじゃないので、隠然たる影響力のある、人
    気のある方です。

     そういう方が現れて、脱原発を唱えられた。この動きについて、どのように
    お考えでしょうか。今おっしゃられたように、安倍さんのような動きだとアメ
    リカに警戒されるから、受け皿を用意しておこうか、というふうにみなすこと
    もできると思います。それとも、何かまた別の動きだというふうにお考えです
    か?」

    小出「それは、政治に詳しい人に聞いてください。私は、政治のことはよく分
    からない。ただし、いま、岩上さんがまとめてくださったような政治の力学と
    いうのは、私はありうると思います」

    岩上「安倍さんでは危険すぎて、アメリカから警戒されてしまうので、安倍さ
    んを下ろして、また今までどおりの、中庸で曖昧な戦略に戻せるような政権を
    作り出そうという動きが、小泉・細川連合以外に、小出先生は見当たると思い
    ますか?」

    小出「それが、私には見当たらないのです。ですから、私はそれが一番困った
    ことだと思っています。安倍さんの暴走を止める勢力が、自民党のなかにいな
    い。国民のほうにも、選挙をすれば安倍さんが勝ってしまうというような、そ
    ういう流れが、かなりできてしまっています。安倍さんの暴走をどうやれば止
    められるか。私は大変心配しています。

     ただし、今日、岩上さんが話題を持ってきてくださったような、原子力をめ
    ぐる動きについては、世界的な動きがあり、日本の原子力産業、あるいは、軍
    事的な興味を持っている人たちのなかでも、米国との関係というのは、たいへ
    ん重要なわけです。その関係を悪化させるようなことは、たぶん望んでいない
    でしょう。自民党という政権の内部でも、望んでいる人は多くないと思います
    し、そのための修復の動きというのは、いつか出るのではないかなと私は思い
    ます。

     今はまったく見えませんけれども、まあ安倍さんは、もうダメだと、ポッと
    政権を放り投げた過去のある人ですから、なにか動きが出て、風向きが変わっ
    たら、安倍さんがまた、はい、もう辞めましたということだってありうるかな
    と思います」

    岩上「わかりました。ただ、安倍さん個人が、小出先生の表現で言うと、病的
    なキャラクターであるということだとしても、彼さえ取り除けば、自民党の右
    傾化、この国の右傾化、この社会の右傾化が止められるのでしょうか。そして、
    その右傾化のなかに、核というものをどう扱うかというテーマが、密かに内包
    されていると思います。

     さっきも言ったように、タカ派の政治家の中には、より本音の部分として、
    核武装独立をしようという『秘められた意志』があります。安倍さんや石破さ
    んだと、核技術抑止論の段階に一応とどまっているけれども、田母神さんや石
    原さんは、核武装独立ということを公言するわけですね。

     核武装独立ということを言う人が一定程度の支持を得ているとしたならば、
    安倍さんひとりがいなくなっても、こういう衝動、こういう考え方を支持する
    人たちの流れというものは、止められないかもしれません」

    小出「いま、日本のなかで、田母神さんや石原さんのように、核兵器を持って
    しまえ、という意見は、私は大きくはないと思います。自民党の中でさえ、そ
    ういう意見は大きくないと思います。

     もちろん、底流としてはずーっとあったわけだし、初めに聞いて頂いたよう
    に、いつでも核武装できるような技術的な能力は持っておかなければならない
    ということで、日本の原子力開発が始まっているわけですから、考え方として
    は、いつ転んで核武装をするというほうに行ってもおかしくはないですけれど
    も、現在の状況を見る限り、すぐにそうなるとは私は考えていません。

     もしそうなってしまうと、米国との関係だって大変難しいものになるでしょ
    うし、経済界もたぶん困る。自民党がもしそちらに暴走しようとするなら、な
    にがしかの抵抗もまた起きるだろうと思います」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※8)安倍総理の祖父である岸信介は、満州国国務院実業部総務司長として、
    「産業開発5カ年計画」を実施するなど満州国の経営を指揮。東条英機内閣で
    は商工大臣として入閣した。戦後、A級戦犯被疑者として逮捕され、巣鴨プリ
    ズンに収監された。公職追放解除後は政界に復帰し、1957年に第56代内閣総理
    大臣に就任した。(Wikipedia 【URL】http://bit.ly/1gmC2GC)

    (※9)1954年3月1日、マーシャル諸島近海で操業中だった日本のマグロ漁
    船・第五福竜丸が、ビキニ環礁で行われた米国の水爆実験(キャッスル作戦・
    ブラボー)に遭遇し、船員が被爆した。無線長の久保山愛吉はこの半年後に死
    亡している。この「第五福竜丸」事件を機に、いまだ広島・長崎への原爆投下
    の記憶が生々しかった日本国内では、反核運動が盛り上がりを見せた。
    (Wikipedia 【URL】http://bit.ly/1h0jOu6)

    (※10)【岩上安身のニュースのトリセツ】「田母神俊雄氏、61万票獲得の衝
    撃 その核武装論を徹底検証する(「IWJウィークリー38号」より)」を参照の
    こと。(【URL】http://bit.ly/1fdgjBF)

    ===================================
    ◆都知事選の「脱原発」論議を検証する◆
    ===================================

    岩上「今、原発をめぐって議論をするということが再び盛んになっています。
    この都知事選に合わせてですけれども、脱原発の問題が、もう一度多くの人の
    意識にのぼるようになりました。

     もちろん、3.11以降、多くの人たちが、原発を続けるべきなのか、それとも
    原発をやめるべきなのか、考えたり議論したりしてきました。

     小出先生には、3.11の直後にお話をうかがいました(※11)けど、その時か
    ら、核の危険性、放射能の危険性ということと合わせて、こういうものを抱き
    かかえている社会の仕組みの危険性、安全保障との関わり、米国との関わりに
    ついて、指摘されてきました。

     ところが、こういうことをまったく切り離す方もいるわけですね。原発だけ
    を論じろ、と。そして、安全保障の話や核兵器の話は関係ない、電力の供給シ
    ステムとしての原発を論じればいいんだ、と。そういう方がたくさんいらっし
    ゃるんですね。

     今回の都知事選に関しても、飛び交っているご意見の中には、若干首をかし
    げるものもあります。都知事選ですから、都政に関わる様々な問題は話さなく
    ちゃいけないんですけれども、脱原発だけを話そう、と。

     さらには、脱原発を話すのなら、安全保障とか、日米関係とか、それから隣
    国との関係とか、靖国の参拝の問題であるとか、それらを全部切り離して、た
    だ『原発ゼロ』と言ってしまう。

     アメリカは、民主党政権が一回原発ゼロと言ったときに、『原発ゼロという
    ことは、核燃サイクルをやめるってことは、プルトニウムをどう使うんだ?』
    というふうに言ったわけですね(※12)。核燃サイクルはプルトニウムを処理
    するための手段でもあるわけで、そうすると、ただプルトニウムを貯めこんじ
    ゃうから危ないじゃないかという話と結びついていると思います。

     だから、単純に『原発ゼロ』という議論に対する警戒も、アメリカのなかに
    はあるのだと思います。この『原発ゼロ』ということだけを論じてしまう論の
    建て方の危うさということについては、どのようにお考えですか?」

    小出「当たり前のことだと思います。この世界のことは、すべてつながってい
    る。原子力と日本で呼んでいるもの、私は核そのものだと言っているわけです
    けれども、単に機械が壊れるか壊れないかとか、放射能が怖いとか怖くないと
    か、そんなことだけではなくて、核兵器の問題だってあるわけだし、それこそ
    米国との関係、安全保障の問題、沖縄の問題、ぜんぶ絡んであるわけですか
    ら」

    岩上「対中国の問題もそうですね」

    小出「そうです。ですから、全体を見て、やはりものごとは考えなければいけ
    ないし、議論もしなければいけないと思います。ですから、今、岩上さんが都
    知事選挙のことを話題に出されて、私はもう都知事選挙について、ものを言い
    たくないのですけれども、でも本当であれば、きちっと議論をしなければ、全
    体について議論をしなければいけないと私は思います。

     今、『原発ゼロ』だけでいいかということを聞かれたので、ちょっとだけお
    伝えしたいと思います。アメリカが『プルトニウムを返せ』と言っているその
    プルトニウムは、日本原子力研究所、今では日本原子力研究開発機構ですけれ
    ども、そこにFCAという実験装置があります。日本語で言うと高速炉臨界集合
    体。そういう実験装置があって、それはたしか1967年から動いたのだと思いま
    すが、それを動かすための燃料として、プルトニウムをアメリカが提供したん
    ですね。

     ただし提供したけど、ほとんど燃えているわけではありません。要するに、
    実験装置というのは小さなものなので、出力が2キロワットぐらいでしたかね。
    まあ、本当に小さなもので、プルトニウムはほとんど燃えてないんですよ。

     ですから、今回の返還要求というのは、アメリカが提供したけれども、結局、
    燃えてないんだから返せという、そういう要求なのです。まあ、日本としては
    返したくないでしょうね。でも、300キロですよ、いま米国が返せと言ってい
    るのは。

     日本はすでに原子力発電所を長年動かしてきて、その使用済み燃料をイギリ
    スとフランスに送って、再処理をしてもらって、日の丸のついたプルトニウム
    を、すでに44トン持っています」

    岩上「44トン!」

    小出「はい。ですから、300キロぐらい返したところで、なんてこともない。
    本当のことを言えば。米国としては、じゃあその44トンをどうするのかという
    ことは、たぶんその先を睨んでいると思いますし、日本の原子力、いわゆる核
    開発を担ってきた人たちも、どこで防衛線を引くかということは、たぶん考え
    ているだろうと思いますが、日本の原子力発電所で生み出されたプルトニウム
    を『返せ』という要求はたぶんできない。米国としても。たぶんできないだろ
    うと」

    岩上「なるほど。これは最初にアメリカが提供したものだから、『返せ』とい
    うことになっていると。でも、この『返せ』と言っている要求は、いろんな政
    治的な意味やメッセージを含んでいるわけで、その次が当然ある。全然関係の
    ない話ではないと。そういうことですね」

    小出「そういうことです」

    岩上「つまり、それをちゃんと理解して、このメッセージに対する対応を日本
    側がしないと、ことによると、いろんな方法があるよってことになってくると。
    次の展開がありうると」

    小出「そうです。ですから、2018年に日米原子力協定が改定されますけれども、
    そのときにどういう交渉になるかということをたぶん日本の原子力関係者は、
    もう今から苦悩しながら見ているだろうと思いますし、安倍さんの動きに関し
    ても、かなり神経質になっているんではないかなと私は思います」

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    (※11)2011/04/01 「政府はパニックを恐れて『SPEEDI』の情報を隠してい
    る」 ~岩上安身による小出裕章助教(京大原子炉実験所)インタビュー
    (【URL】http://bit.ly/1j7Mgfv)

    (※12)当時の民主党・野田政権は、2012年9月14日のエネルギー環境会議で
    決定した「2030年代に原発ゼロを可能とする」との政府方針について、わずか
    5日後の9月19日での閣議決定を見送った。これについて2012年9月22日付けの
    東京新聞は、「原発ゼロ『変更余地残せ』閣議決定回避 米が要求」との見出
    しで、日本政府が「原発ゼロ」の閣議決定を見送るよう、米国側から圧力があ
    ったと報じている。(【URL】http://bit.ly/1hrNCV5)

    ===================================
    ◆細川・小泉連合はプルトニウムをどう考えているのか◆
    ===================================

    岩上「なるほど。この加藤さんがいろいろ参考にされているのは、遠藤哲也さ
    ん(※13)という原子力の世界では中核を担ってきている外務省の方です。

     実は、ここに、こんなまあ単行本一冊分ぐらいの分量があるような論文のPDF
    があります(※14)。これ、PDFをダウンロードしてきたものなんですけど、
    遠藤さんが、ネット上で見られるように明らかにしているんですが、ご自身が
    ずっと担ってきた核交渉についての内幕の記録なんですよ。だから、これは時
    代の証言として大変貴重なものではないかなと思います。

     最近になって、急に今までのことを話し始めています。かつての政治家、例
    えば、岸信介さんとか、佐藤栄作さんとか、こうした総理大臣経験者たちも、
    核保有をしたいんだということは言っていました。アメリカとの間で日米安保
    が改定され、核技術も燃料も提供してもらえるとなって、核技術や核開発の欲
    望というのは水面下に沈むようになった。

     できるだけ、国民には理解させないように、国会にあげないように、政治的
    な議論の場にあがらないように、核技術抑止を水面下で続けてきた。でも、こ
    れでもし包括協定をストップさせられて、アメリカ側が、これまでのように、
    日本にフリーハンドを認めなくなると、日本の核技術のこれまでの維持とか、
    燃料の保有とか、そうしたものが水泡に帰すだろうとおっしゃられているんで
    すね。

     今、44トンもあると。44トンって、どのぐらいの量の核兵器が作れるのかわ
    かりませんけれども」

    小出「長崎原爆を4000発作れます」

    岩上「長崎原爆4000発! ものすごい量ですよね」

    小出「そうです」

    岩上「これに関しては、アメリカは返還要求をできないだろうと言われますが、
    確かに、返す必要はないと突っ張る右の人たちも出てくるかもしれません。今
    後、どのような展開がありうると思いますか?」

    小出「返せとは言わない代わりに、日本に対して、不要なプルトニウムは持つ
    なと言うでしょう。使用目的のないプルトニウムは持ってはならないというこ
    とで、要求があったわけで、日本としては、使い道のないプルトニウムは持ち
    ませんと、国際公約をすでにさせられているわけですね。

     じゃあ、日本はどうしようとしたかといえば、もともとはもんじゅという高
    速増殖炉の燃料にするんだということがうたい文句だったわけですけれども、
    もんじゅなんかぜんぜん動かない。豆電球一つも灯せないという、そんな原子
    炉なわけですから、どうしようもないと。じゃあどうするかといって追い込ま
    れたのが、プルサーマルという普通の原子力発電所でプルトニウムを燃やすと
    いうところに追い込まれてしまった」

    岩上「追い込まれた?」

    小出「そうです」

    岩上「追い込まれて、ああいうものが生まれたんですね」

    小出「そうです。ですから、安全性は犠牲になるし、やればやるだけ経済的に
    損をすると。だからもうどうしようもないんです。電力会社だってやりたくな
    いに決まっているわけですけれども、でももうしょうがない。プルトニウムが
    貯まっちゃっているから、やるしかないということになっているわけですね。

     だから、小泉さんや細川さんが即刻原発をやめるというのであれば、じゃあ
    そのプルトニウムはどうするのかということについても、ものを言わなければ
    いけないですね。

     私はもちろん、原発を即刻やめろと言っていますし、プルトニウムを米国な
    んかに引き渡すことには私は反対ですし、日本の手でプルトニウムを兵器に転
    用できない形にして、捨てることは、地面に埋めることはできないけれども、
    私たちの目の届くところで、保管を続けるというぐらいがせめてできることか
    なと思います」

    岩上「これ以上、増やさないようにすると」

    小出「もちろんです」

    岩上「厳重に保管し、核兵器の原料として利用されないように、国際的にも国
    内的にも責任をもって管理し続ける。ものすごく長いスパンで、それが必要だ
    と。

     となると、使用済み核燃料の最終処分場とか以前に、兵器級のプルトニウム
    をどうするのかということを論じ合わなくちゃいけませんね」

    小出「もちろんです」

    岩上「それはまったく議論されてないですよね」

    小出「日本の人たちは、国際社会という言葉が大好きで、日本が国際社会から
    信頼されていると思っているようなのですけれども、なんとも私から見るとお
    めでたい人たちだと思えるし、いわゆる世界の各国は、日本が平和国家だなん
    て思っているはずがないのであって、その国が長崎原爆4000発分もの材料を持
    っていることは、到底許せないわけですね。

     だから、日本になんとかしろと言って、日本としては使用目的のないプルト
    ニウムは持たないという国際公約までさせられているわけです。ですから、大
    変重要な問題であって、それをどうするのか。もし原子力をやめるというなら、
    じゃあプルトニウムをどうするのか、ということも含めて考えなければいけな
    い」

    岩上「民主党の野田政権のときにも、『原発ゼロ』を掲げて、アメリカから、
    何を無責任なことを言っているんだと言われたら、すぐ引っ込めた。それから
    以後も散発的に『脱原発』の話が上がっても本格化しないというのは、根底の
    ところで、この議論を避けているからということになりますね」

    小出「戦略がないんですよね。原子力全体に関する戦略がない。だから、言っ
    てみてもまたダメになったりして右往左往してしまうわけですね。私は原子力
    に関する戦略というなら、即刻ゼロというのが私の戦略です」

    岩上「それは原発ゼロだけではなくて、核兵器保有の潜在可能性をゼロにする
    ということですか」

    小出「もちろんです。ですから、エネルギー源としての原発を即刻ゼロにする。
    核兵器を保有するということに関しても、許さない。核燃料サイクルも許さな
    い。全体的な戦略というのを、やはり作らなきゃいけないと思います。

     まあ、小泉さんや細川さんがどう思っているのか知りませんが、そういう議
    論はやはりやらなければいけないと思います」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※13)原子力委員会委員長代理、IAEA(国際原子力機関)理事会議長、外務
    省科学審議官などを歴任。日本の原子力行政の中心を担ってきた。1988年の日
    米原子力協定(包括協定)では、日本側の担当者として米国側との交渉の実務
    を担当した。2月12日、岩上安身は遠藤氏に単独インタビュー。遠藤氏からは、
    日米交渉の生々しい舞台裏が語られた。(2014/02/12 核燃料サイクルと「核
    技術抑止」政策のこれから 日米原子力協定の交渉担当者・遠藤哲也氏に岩上
    安身が聞く【URL】http://bit.ly/1e3SB6g)

    (※14)遠藤哲也著「日米原子力協定(1988年)の成立経緯と今後の問題点」
    (【URL】http://bit.ly/M9bkGV)

    ===================================
    ◆「あいまい戦略」の帰趨◆
    ===================================

    岩上「簡単に言えば、核兵器を保有するんだというグループと、それから核兵
    器の保有も、核兵器を将来保有できる可能性も含めて、その技術も燃料も全部
    やめて、日本は平和国家というデザインをするというグループ。この両極があ
    って、これまでは、そのまんなかに、いわゆる『あいまい戦略』というものが
    ありました。この三つですよね。多くの日本人は自覚的か無自覚的か分からな
    いんですけど、この『あいまい戦略』のなかに含まれている方が多いだろうと
    思います。

     今、対中国関係がたいへん緊張してきています。これは、自然現象ではなく
    て、あえて緊張をさせた部分もあると思うんです。石原さんがヘリテージ財団
    でああいう発言をし(※15)、安倍さんも挑発をやめず、こうしたことが続い
    ていけば、それは緊張が高まるでしょう。

     もちろん、そう言うと、反発する人もいると思うんですね。中国側だってあ
    んなに軍拡しているじゃないか。中国側だって尖閣を狙っているじゃないかと
    言う人もいる。お互い様だと思うんですね。中国だって、みんなお行儀のいい
    人たちじゃありませんから、どんどんお互いにエスカレートしている状況。

     そして、ダボス会議で、安倍さんはとうとう、日中関係は? と海外のプレ
    スに聞かれて、第一次世界大戦前の英独関係と同じだということを言ってしまっ
    ているわけですね(※16)。

     安倍さん個人のキャラクターの問題は置いておいて、この日本全体のなかに、
    いざとなったら核兵器は持ってもいいと思っている人間がいるのは確かだと思
    います。そういう人たちの数が集まって押しやられていけば、たとえ指導者の
    首が代わったとしても、核兵器の保有という方向に流れていく可能性は、ゼロ
    とはいえないのではないでしょうか。

     そのような中で、この『あいまい戦略』は今後も続けられるのでしょうか?
     さきほど、自民党のなかに、安倍さんに代わるもっと幅のある人が出てくれ
    ばいいのになとおっしゃったのは、この『あいまい戦略』を続けられるのに、
    という意味にも聞こえるのですが」

    小出「いま、岩上さんが『あいまい戦略』があり、その一方で核武装でもなん
    でもするという極端な動きがあって、その反対側に原発も核兵器も全部なくす
    という方向性があるとおっしゃいました。

     安倍さんはまあ、限りなく核武装の動きに近くて、その先に田母神さんや石
    原さんがいるわけですね。私はこの動きはあまりにも馬鹿げていると思います。
    おそらく、ほとんどの日本の政治家、自民党をこれまで動かしてきた人たち、
    そして経済界を動かしてきた人たちは、『あいまい戦略』のなかで、自分たち
    の立場を確保し、やりたいことを出来るような形でやってきたんだと思うんで
    すね。

     ですから、これからもたぶん、そういう勢力が一番日本のなかで強いだろう
    と私は思います。仮に安倍さんが本当に核武装の方向に動き出すならば、安倍
    さんの首のすげかえを行われるということになると、私は思います。

     ただし、私がこの『あいまい戦略』というものを認めているかといえば、そ
    うではないのです。日本は、平和国家で核武装なんかしませんと嘘をついて、
    本当は核武装の道をずっとやってきたという、そういうことなのですから、私
    自身はそれを認めたいとは思いません。

    岩上「アメリカから返還要求があったということは、じゃあアメリカは安倍さ
    んのような人たちの動きにストップをかければ、『日本は今まで通りでいい
    よ』というふうになると思いますか? 米中関係が、これだけ固く結びついて
    いって、日本の扱いがどんどん低下していくなかで、今までは日本を重要な同
    盟国として引きつけておきたいと思っていたアメリカも、その必要性がだんだ
    ん薄れていくのではないでしょうか?」

    小出「当然そうでしょうね。それは米国としては、日本よりはるかに中国のほ
    うが大切なわけですから、ある時点で日本が切り捨てられるということはある
    だろうと思います。

     じゃあそのときに、日本はどう生き延びるかということですけれども、私は
    もう、徹底的に平和主義に徹するしか、日本は生き延びられないと思います。
    私はこっちの極端だと言いましたけれども、軍備も何もしないと。私は日本国
    憲法を守るべきだと思っていますし、もちろん陸海空軍その他の戦力は、これ
    を保持しない、というのが正しいと思いますので、そちらの方向に、この日本
    という国を持っていく。米国の属国でもない」

    岩上「独立しているけど、平和国家の姿で、ということですか」

    小出「はい」

    岩上「絶対的平和主義、平和国家であり続ける、ということに不安を感じてい
    る人も多いのではないかと思います。平和は皆好で、平和の理念にも賛成して
    いるんですけれども、平和主義をそのままストレートに実現しようとすると、
    不安だという人は多いのではないかと思います」

    小出「そうですよね。大変難しいことなわけですよね」

    岩上「どうやったら可能だと思いますか? 今日ではちょっとした武力紛争も
    エスカレーションしていけば、最終的には、答えは核の有無ということになる
    わけですよね」

    小出「そうです。そのような方向で世界を作ってはいけないということが、先
    の大戦の結論であり、日本国憲法ができた根底的な理由だと思います。

     軍事で国を守るのではなくて、諸国民の公正と信義に信頼して、我が国の安
    全を守ろうと決意したと日本国憲法にあるわけです(※17)。これから軍備で
    守ろうという考えはやはり捨てなければいけない。諸国民の公正と信義に信頼
    しなければいけないのであって、米国だけを信頼して、中国は敵であるとか、
    そういうような考え方はできないのです。

     そんな甘っちょろい事を言うなと言われるかもしれませんけれども、でもそ
    れこそ厳しいことなんです。そういう立場をきっちりと守っていくことで、日
    本という国の安全を守る。あるいは、諸国の安全を守るという方向で、むしろ
    日本が積極的にリーダーシップを取れるようにならなければいけないんだと私
    は思います」

    岩上「米国には、一方で日本に集団的自衛権行使容認を求め、米国の軍隊の下
    請けみたいに自衛隊を使おうという動きがありますね。実際に、そういう要求
    をしてきています(※18)。

     ところが、アメリカは同時に矛盾したメッセージも送ってきて、日本が中国
    と敵対する、あるいはアジアのなかで緊張を呼ぶような振る舞いに関しては、
    いちいち釘を差して来るわけですね」

    小出「そうですね」

    岩上「靖国参拝なんかも厳しく批判していますし、あの参拝前に、何度となく
    参拝しないでくれと要請していたことも明らかになってきています(※19)。

     そして、安倍総理の参拝に対して、「失望した」と表明した(※20)。日本
    では、これは軽くスルーしようとなっていますけど、それでは終わらない空気
    が生まれています。今回のプルトニウム返還もそのメッセージだろうというふ
    うに思われます。

     こういう、矛盾した二つのメッセージ。つまり、アメリカは中国と日本は仲
    良くしろよというふうにも言ってきているんですね。他方で、しかし集団的自
    衛権行使容認という、日本の防衛と何の関係もないことをやろうとしている。
    日本の防衛なら個別自衛権でできるわけです。ところが、日本の防衛とは関係
    ないことをやらせようとしている。地球の裏側で、米軍に従って武力行使につ
    き進むということを言ってきている。この矛盾したメッセージに、みんな当惑
    していると思うんですけれども、小出さんはどういうふうに解釈しています
    か?」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※15)2012年4月16日、当時東京都知事だった石原慎太郎氏は、ワシントン
    にある保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」における講演で、東京都による
    尖閣諸島の購入を突如として宣言した。この発言後、尖閣諸島の領有権を巡っ
    て日中関係は急速に悪化。野田政権は2012年9月10日に尖閣諸島の国有化を断
    行したが、その直後には中国27都市で大規模な反日デモが行われ、多くの日系
    企業がデモ隊に襲われた。なお、「ヘリテージ財団」の上席研究員であるブ
    ルース・クリングナー氏は2012年11月14日、「安倍氏の外交姿勢が保守的であ
    り、日本国民のあいだに中国への懸念が広がりつつあるという状況は、米国政
    府にとって、日米同盟の健全性維持のために死活的に重要な数項目の政策目標
    を達成する絶好の機会である」と記したレポートを発表している(詳細はメル
    マガ「IWJ特報~接近する米中と"鉄砲玉"にされる日本」を参照
    【URL】http://bit.ly/1msuJn0)

    (※16)安倍総理は1月23日、スイスで行われた世界経済フォーラム「ダボス
    会議」での外国メディア関係者との意見交換で、英「フィナンシャル・タイム
    ス」の記者から「日本と中国の関係が戦争に発展する可能性があるのではない
    か」と問われ、「今年は第1次大戦から100年を迎える年。当時、英独は大き
    な経済関係にあったにもかかわらず第1次大戦に至った歴史的経緯があった」
    と説明した。(産経新聞、2014年1月23日【URL】http://on-msn.com/
    1feASvk)

    (※17)日本国憲法前文には次のようにある。「日本国民は、恒久の平和を念
    願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和
    を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと
    決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠
    に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
    われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生
    存する権利を有することを確認する」(【URL】http://bit.ly/1oYRVbh)

    (※18)リチャード・アーミテージ氏(前国務副長官)とジョセフ・ナイ氏
    (ハーバード大学教授)が共同で執筆した「第3次アーミテージレポート」
    (2012年8月10日)は、次のように日本の集団的自衛権行使容認を求めている。
    「日本の集団的防衛の禁止に関する改変は、その矛盾をはっきりと示すことに
    なるだろう。政策の変更は、統一した指揮ではなく、軍事的により積極的な日
    本を、もしくは平和憲法の改正を求めるべきである。集団的自衛の禁止は同盟
    の障害である。3.11は、我々2つの軍が必要な時にいかに軍事力を最大限に活
    用できるかを証明した。平和時、緊張、危機、及び戦争時の防衛範囲を通して
    完全な協力で対応することを我々の軍に許可することは責任ある権限行動であ
    ろう」(【IWJブログ】「第3次アーミテージレポート」全文翻訳掲載
    【URL】http://bit.ly/1f0TvRb)
     また、ワシントンの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」が2012年11月14
    日に出したレポートでも、「米国政府の行動指針」として、以下のように日本
    側に集団的自衛権行使容認を求めるよう提言している。「日本が緊急時におい
    て同盟国を防衛することができるよう、集団的自衛権の解釈を緩和することを
    勧告すること。日本の自衛隊海外派遣隊が同盟国の資源をいたずらに消費する
    のではなく、効果的な貢献を行うことができるよう、日本政府は海外派遣につ
    いてもより現実的な法規を採択するべきである」(【IWJブログ】ヘリテージ
    財団「クリングナー論文」全文翻訳掲載 【URL】http://bit.ly/19wOTqp)

    (※19)米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官は外務・防衛担当閣僚によ
    る安全保障協議委員会(2プラス2)のため来日した際、東京都千代田区の千鳥
    ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花した。米国の要人が千鳥ヶ淵戦没者墓苑で献花す
    るのは初めてのこと。(AFP、2013年10月3日 米国務長官らが千鳥ヶ淵墓苑で
    献花 【URL】http://bit.ly/1d8zQnm)

    (※20)安倍総理が2013年12月26日に靖国神社に参拝したことに対し、在日米
    国大使館は同日、"the United States is disappointed"(米国政府は失望し
    ている)との声明を発表した(【URL】http://1.usa.gov/19i040p)。これに
    ついて自民党の衛藤晟一首相補佐官は2月16日、You Tube上で「むしろわれわ
    れの方が失望だ。米国は同盟関係の日本をなぜ大事にしないのか」と米国側は
    批判した。衛藤氏は19日に発言を撤回し、動画を削除した。

    (その2に続く)

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