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    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    IWJ特報第156号「秘密保護法の不当性と安全保障のこれから〜モートン・ハルペリン氏インタビュー(その2)」 

    第156号
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                 岩上安身のIWJ特報!
        元米NSC高官が語る、秘密保護法の不当性と安全保障のこれから
              モートン・ハルペリン氏インタビュー
                    (その2)
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    (IWJより転載許可済み)

    (その1の続き)

    ===================================
    ◆日本政府自身が望んだ秘密保護法◆
    ===================================


     講演終了後、ハルペリン氏は岩上安身の単独インタビューに応じた。以下、
    その模様である。

    岩上安身「ジャーナリストの岩上安身です。私は今、衆議院第一議員会館に来
    ております。本日(2014年5月8日)12時から、院内でモートン・ハルペリンさ
    んをお招きして超党派の集会がありました(※1)。

     IWJはその模様を12時から中継していましたが、これからは私が、モート
    ン・ハルペリンさんに単独インタビューを行います。1時間と時間が限られて
    いますので、集会での内容を踏まえて、なるべく重ならないように、そこに追
    加の質問を加えるような形で、進めていきたいと思っています。

     そして今日、通訳を務めていただきますレイバーネットTVの松元千枝さんで
    す。よろしくお願いします。ということで、モートン・ハルペリンさん。Nice
    to meet you.

     さっそくお話に入りたいと思います。今日のスピーチは、大変驚きました。
    ハルペリンさんは、ツワネ原則(※2)作成に関わったキーパーソンの一人で
    ある一方、米国で長い間、安全保障の分野でキャリアを積んでこられた方でも
    あります。

     安全保障、軍事ということに関して大変お詳しい方が、日本の秘密保護法は、
    中身が民主的でない、制定のプロセスも非民主的である、と批判され、さらに
    は日本政府がなぜこのようなものを急いで作ったかというところに、米国の圧
    力があったであろうと発言されました。

     ところが、米国政府の内情を知っているハルペリンさんとしては、『こんな
    非民主的なものを作ってくれと頼んだ覚えはない』と、こういうふうにおっし
    ゃるわけですね。

     ではいったい誰が? この非民主的な法律を作り、しかも制定プロセスを急
    いだのでしょうか。つまりは、日本政府なんでしょうか?」

    モートン・ハルペリン氏(以下、敬称略)「米国政府の中に、日本に厳しい法
    律を作ってほしいと思う人がいることは確かです。こういう人たちは、米国に
    も厳しい法律を作りたいと思っています。ですが、何人かの人が、大統領や高
    官に対して、日本に要求してほしいと言っているもっとも重要な5から10の事
    項がありますが、秘密保護法はその中に含まれていません。

     日本に秘密保護法がなくて、日本と共有できていなかったような情報を要求
    する人がいたり、それを共有するよう求めていたりしたのかと言えば、答えは
    ノーです。秘密情報として保護が必要なのは、非常に狭い特定の種類のもので
    す。
     
     広範囲の情報を秘密とするこの法律によって、より多くの情報を共有できる
    ということはありません。ですから、日本政府はこの法律を成立させたかった
    のは、日本政府自身の理由によるものだと思います」


    岩上「なるほど。それでは日本政府がなぜ、こんな非民主的で、厳しい法律を
    『制定する理由がある』と考えたのだと思われますか? 今、日本は中国の台
    頭という現象に対して、たいへん身構えております。そうしたことと関係があ
    るとお思いでしょうか?」

    ハルペリン「あらゆる政府が、いろいろなことを秘密にしたいと思っています。
    報道を規制したいと思っています。

     現在の米国政府、オバマ政権は、これまでの政権よりも、多くの政府高官や
    役人をこの対象にしています。あらゆる政府が、国家安全保障のためにできる
    だけ多くの事柄を秘密にしようとしますが、それは当然のことだと思います」


    岩上「ということは、日本の特定秘密保護法は、米国の未来を先取りしている
    ということなのでしょうか?

     これまで米国は、民主的な社会、そして情報の公開を非常に尊重した社会を
    作ってきました。ペンタゴン・ペーパーズのような事件(※3)も、これは認
    められるんだと許容してきたわけですが、アメリカもそうしたことが認められ
    ない社会になりつつあって、そういう傾向を日本が先取りしたと考えられるで
    しょうか?」

    ハルペリン「確かに、オバマ政権は今までよりも機密を強化しています」

    岩上「これは避けようのないトレンドですか? それとも、米国の中では、よ
    り民主的な方向へ舵を切る動きが出てきて、また変化が現れるとお考えです
    か?」

    ハルペリン「アメリカでは反動があります。どの国でもそうですが、行ったり
    来たりがありますね。これからもこの行ったり来たりは続くでしょうね」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※1)2014/05/08 元NSC高官が秘密保護法を痛烈批判「ツワネ原則から逸脱
    するのであれば日本政府は説明を」(【URL】 http://bit.ly/1oB5v6y )この
    集会でハルペリン氏は、「これまで日米間の安全保障に関する協力が長年進め
    られてきたが、秘密保護法がなくても障害はなかった」と述べた。

    (※2)ツワネ原則:「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」の通
    称。ハルペリン氏が所属する「オープン・ソサエティ・ジャスティス・イニシ
    アチブ」の呼びかけにより、国際連合、米州機構、欧州安全保障協力機構など、
    世界70カ国以上、500人を超える専門家により作成された。
    海渡雄一弁護士は
    2013年11月13日に行われた岩上安身によるインタビューの中で、「特定秘密保
    護法、さらには既存の国家公務員法や自衛隊法といった秘密保全法制全般を、
    ツワネ原則との比較から検討し、見直す必要がある」と語った。(【URL】
    http://bit.ly/LOJIXg )

    (※3)ペンタゴン・ペーパーズ:ベトナム戦争に関する極秘報告書で、アメ
    リカ政府がどのように政策決定を行ってきたかを第二次大戦直後からの歴史を
    たどって分析した国防総省の7000ページにわたる機密文書の俗称。1971年6月
    13日ニューヨーク・タイムズ紙がスクープした。ニクソン政権は出版差止め命
    令を出したがニューヨーク・タイムズ側は聞き入れず、ついに最高裁が政府の
    命令を違憲とする判定を下した。現在では機密指定は解除され、ウェブサイト
    等で読めるようになっている。
    (参照:Wikipedia【URL】 http://bit.ly/1o41R14 )

    ===================================
    ◆ツワネ原則は「ベスト・プラクティス」◆
    ===================================

    岩上「ツワネ原則についてお聞きします。このツワネ原則というのは、かくあ
    るべきだ、という理想をまとめたものなのでしょうか? それとも、もうすで
    に各国で実現している民主的な制度を要約したものなのでしょうか? そして、
    どれくらい権威があるものと考えられますか?」

    ハルペリン「ツワネ原則は、ヨーロッパやラテンアメリカの国々での裁判判決
    や、ある国の法律を組み合わせて作ったものです。また、現実に施行されてい
    る法律以上のことも、いくつか含まれています。ベスト・プラクティスと考え
    られるものを入れました。ですが、ほとんどは、いくつかの国で実際に施行さ
    れている法律にもとづいて作っています」


    岩上「日本では、このツワネ原則が広く知られていないというだけではなく、
    政府のトップが軽視した発言をしています。その影響が非常に大きいのではな
    いかと思われます。

     2013年、去年11月20日のことですけれども、参議院の国家安全保障特別委員
    会で、福島瑞穂議員が安倍総理にツワネ原則について質問しました(※4)。
    それに対する安倍総理の回答は『特定の民間団体が示したひとつの参考意見に
    過ぎない』とツワネ原則を一蹴するような、尊重しない発言をして、その後は
    いっさいこのツワネ原則について無視をするということを貫きました。こうし
    たことを聞いて、どのように思われますか?」

    ハルペリン「市民社会を軽視するような『民主的政府』は、何が『民主的政
    府』なのかを理解していません。

     日本政府が、ツワネ原則に従って法律を作る義務があるとは言いません。私
    たちは、日本が、ツワネ原則に従っている他の国々を見る義務があると言って
    いるのです。ツワネ原則は、さまざまな民主主義国で行われているベスト・プ
    ラクティスなのですから。

     その上で、ツワネ原則の中の、ある点は使える、ある点はこれこれの理由で
    使えない、ということを見ていかなければなりません。それが妥当な方法でし
    ょう。他の国々が国民の知る権利と秘密とのバランスを取るために行っている
    ことを、無視してはいけません。

     アメリカ政府の誰かが『日本には十分な秘密保護法がないから情報を共有で
    きない』と言った場合に、『イギリスやドイツやカナダの秘密保護法と日本に
    すでにある法律に違いはない。それらの国々と共有できる情報を、どうして日
    本とは共有できないのか』と言うことができます」

    岩上「今回のこの秘密保護法、ハルペリンさんは21世紀の民主国家が持ってい
    る秘密保護法制の中で、最悪のものだというふうに批判していらっしゃいます。
    どこがそれほどひどいのでしょうか?」

    ハルペリン「まず、政府の役人や政治家ではない一般市民に対して刑罰が科せ
    られること。それから、内部告発者に対する保護がないこと。一般市民の公益
    を守ろうとしていないこと。それから、一般市民が信頼できる第三者機関がな
    いこと。情報が機密とされる基準が曖昧すぎること。それが主な理由です」


    岩上「もし、これが一般市民の利益、公益にとって公開することが重要だと考
    えたときには、政府がプロテクトしている情報を暴くということがあってもそ
    れは許される。これは非常に重要な原則ではないかと思います。

     だから、そのために公益通報者が保護されたり、ジャーナリストが保護され
    なくてはならないということですね。ペンタゴン・ペーパーズのようなことが
    米国では認められたと。

     ところが日本では、有名な事件があります。元毎日新聞の西山太吉さんとい
    う記者が、この沖縄の密約問題を暴いた時に、裁判になって、一審では無罪に
    なったのですが、二審で有罪になりました(※5)。この事件をご存知でしょ
    うか?」

    ハルペリン「はい」

    岩上「ハルペリンさんは、その密約の交渉にも携わった方です。日本の社会は、
    このような厳しい秘密保護法制定以前の段階でも、西山さんの行為を許しませ
    んでした。より厳しく、厳格に秘密を守ろうとするときに、日本のジャーナリ
    ズムは死に絶える。日本の民主主義は死んでしまうかもしれないという懸念を
    私は強く持っています。

     ハルペリンさんは、秘密を守りながら交渉した当事者でしたけれども、他方
    では、いま民主的な社会の実現を訴えています。ぜひ、この西山さんの事件と
    合わせて、日本は何をなすべきか、お話ください」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※4)2014年11月20 参議院国家安全保障に関する特別委員会 福島みずほ
    議員(【動画URL】http://bit.ly/1hid7IQ )

    (※5)西山事件:毎日新聞社政治部の西山太吉記者らが、1971年の沖縄返還
    協定にからみ、取材上知り得た機密情報を国会議員に漏洩した、国家公務員法
    違反で有罪となった事件。(別名、沖縄密約事件、外務省機密漏洩事件)1974
    年の一審判決では無罪判決、1976年に控訴審で有罪判決が下り、上告するも
    1978年に棄却され確定。
    (参照:Wikipedia【URL】 http://bit.ly/1jKDntK )

    ===================================
    ◆秘密保護法よりも先に日本政府がやるべきこと◆
    ===================================

    ハルペリン「何よりも言っておきたいのは、新しい秘密保護法は必要ないとい
    うことです。なぜなら、すでにある法律で、西山さんのようなジャーナリスト
    が罰せられているわけですから。

     ですが、このケースが示しているのは、何らかの情報を機密にするときに、
    その理由が必要だということです。正確に言うと、それが公にされると、どう
    いう害があるのかということです。

     米国政府は日本からの支払いを秘密にしたかったわけではありません。米国
    議会でそのことを発表するとしたら、その費用は日本政府が払うのだと言うだ
    けですから。

     なぜ日本の政府がそれを秘密にしたかったのか。その理由は、国家の安全を
    守るためではなく、政府を国民の批判から守るためです。しかし、それは、民
    主主義国家において、情報を機密にするための適切な理由ではありませんね」


    岩上「日本は、この沖縄の密約に関して非常に不可思議な態度を取りました。
    日本政府とアメリカ政府で秘密にしましょうという交渉が成り立った。それか
    ら何年も経って、アメリカ政府がもう公開している情報。ところがその情報を
    日本政府は国内でぜんぜん認めなかったんですね。

     自民党から民主党に政権交代をして、岡田外相のイニシアチブのもと、初め
    て密約を認めたわけです。政権交代が行われなければ、一方の当事者が秘密を
    もう明らかにしているのに、いやいや、それは秘密です、と言って頑なに認め
    ないという、こういう態度は続くのではないかと思います。

     一方で、先ほどからおっしゃっているように、日本政府は、米国のせいでい
    ま我々は秘密にしなければならないんだ、という言い訳を多用しているような
    気もします。実は日本政府自身が、秘密をより厳格にキープしたいと考えてい
    る。この点に、非常に疑念があるわけですけど、いかがでしょうか?」

    ハルペリン「日本の政府がこの秘密保護法を必要でないと思っていたのであれ
    ば、この法律を成立させないわけですよね。米国政府は、この法律よりも重要
    と思われる事項を日本に要求していますが、それに対して日本は抵抗していま
    す。日本政府は、自身の決定に自身で責任を持たなければなりません」


    岩上「日本政府の責任であるということですね。

     今回の秘密保護法の制定というのは、日本版NSCというものを作るというこ
    と、それから解釈改憲による集団的自衛権行使容認ということとセットになっ
    ています。

     ハルペリンさんは、日本が米国を真似して作ろうとしているNSC、本場の米
    国のNSCのメンバーでもあったとお聞きしています。もちろん米国は集団的自
    衛権の行使を認めて、行使している国ですよね。

     そういう国が、NSCを持つために、かくまでハードな秘密保護法制を持つ必
    要があるでしょうか? 当事者として、体験者としてお話願いたいと思いま
    す」

    ハルペリン「日本の政府よりも米国政府の方が、国家機密であるべき事柄が多
    いのです。ですが、どちらの国も、何らかの情報を秘密にするのと同様、国民
    の知る権利を反映した法律が必要です」


    岩上「ハルペリンさんは、日本の秘密保護法制というものに懸念を抱かれてい
    るわけですけれども、このように考えている方は、米国の安全保障の専門家と
    か、外交の専門家の方々には、どれくらいいらっしゃるんでしょうか?

     と言いますのは、この日本の急激な軍事国家化、これは日米同盟の強化とい
    う名前で呼ばれながら、その実、さきほども申し上げましたように、対中国を
    念頭に置いたものです。それを強力に推し進めている安倍政権は、戦後レジー
    ムからの脱却ということも言っています。これは、日本が米国にくっついてい
    くということと、その一方で米国から軍事的に独立した国家になっていくとい
    うことの2つのニュアンスを含んでいると思います。

     そして、オバマ政権は安倍政権に、例えば靖国神社の問題や、歴史認識の問
    題に関して、大変強い警告を発してきました(※6)。日本が再び、あの1930
    年代から40年代のファシズム国家に戻るのではないかという懸念を、同盟国で
    ある米国も強く抱いているのではないかと思います。

     日本よ、民主国家であってください、というふうに警告する真の日本の友人、
    あなたのような方は、米国にはどのくらいいるんでしょう?」

    ハルペリン「米政府の人々を含めた非常に多くの人たちが、第二次世界大戦の
    責任を否認しようとする日本の動きについて、非常に懸念しています。そして、
    日本のナショナリズムの勃興を心配しています。

     もし日本の政府がアメリカとの関係を改善したいのであれば、秘密保護法よ
    りやるべきことがあります」


    ----------------------------------------------------------------------
    (※6)米国政府は2013年12月26日、安倍総理が靖国神社を参拝したことに対
    し、「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったこと
    に失望している」とのコメントを米大使館を通じて発表した(ロイター、2013
    年12月26日【URL】http://bit.ly/1nJkVDI)。また、ケリー国務長官とヘーゲ
    ル国防長官が2013年10月3日に千鳥ヶ淵戦没者墓苑で献花を行ったことについ
    て、軍事ジャーナリストの前田哲男氏は、「靖国は認めないという米国のはっ
    きりとしたメッセージだと思う」と語った。
    (【URL】 http://bit.ly/SjksvX )

    ===================================
    ◆秘密保護法と歴史認識◆
    ===================================

    岩上「かつての戦争の問題。その歴史認識の問題と、今回の秘密保護法の問題
    は、深く結びついていて、同時に議論しなければいけないテーマだと思います。

     日本は、様々な秘密の戦争犯罪を行ないました。捕虜の虐待もそうですし、
    市民に対する虐殺もそうです。慰安婦の問題もそうですけれども。こうした問
    題について、敗戦がほぼ決定的となったときに、日本政府は軍部を含めて、徹
    底的に書類を焼却しました。情報を公開せず、その情報を今度は隠滅をはかっ
    たわけです。

     もちろん、責任追及から逃れるためです。その挙句、今日になって、例えば、
    慰安婦の問題について、これは、それを証拠だてる文書がないなどと言って、
    責任を回避しようとしたりしています。文書を燃やしたのは自分たちであるに
    も関わらず、です(※7)。

     戦前、戦中の日本政府と、今日の日本政府は革命が起こっていないので、そ
    こには断絶がありません。継続しています。責任が継続しているわけですね。
    したがって我々は、日本は秘密保護法のようなものを作るのではなく、より情
    報を公開し、そして情報をきちんと保存し、記録していく法制度が必要なはず
    です。

     こうした過去の犯罪と現在とがリンケージする議論が、日本だけでなく、米
    国でも起きてほしいと願っているんですけれども、いかがでしょうか?」

    ハルペリン「ツワネ原則の重要なポイントのひとつですが、政府はある種類の
    情報については公開しなければなりません。戦争犯罪、拷問、違法な行為は秘
    密にしてはいけません。誰かが要求したら公開するというのではなく、政府は
    自らこういった情報を公開しなければなりません。

     日本の拷問行為はずっと前の話ですが、米政府の拷問行為はつい最近のこと
    です。どちらの政府も、ツワネ原則で言っている義務だけではなく、拷問に関
    する国際協定で言っている義務に従っていませんでした。どちらの政府もその
    責任を果たしていないのです。まず、そういった情報を公開することから始め
    なければならないでしょう」


    岩上「両政府に公開させるために、どんなアクションが一般の市民にできるで
    しょうか? 可能でしょうか?」

    ハルペリン「運動を起こしたり、それについて書いたりして、経験を共有しな
    ければなりません。また、ツワネ原則のような法的義務を明確にしている原則
    があることを共有していかなければなりません」


    岩上「先ほどから何回か申し上げていますが、日本の政府は中国の脅威に対抗
    するために、この秘密保護法を制定しなければならないし、そして集団的自衛
    権行使容認をしなくてはいけない、ということをしきりに国民に吹き込んでい
    ます。

     法的根拠のない私的な懇談会『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会
    (安保法制懇)』があります。その懇談会がレポートを出します。そのレポー
    トを尊重して、集団的自衛権行使容認に対して、憲法解釈をするのに首相が判
    断を下すということを今言っています。日本の目前の課題です。

     この座長代理を務めている北岡伸一さんという東大教授がいるんですけども、
    簡単に言いますと、集団的自衛権、つまり米国とくっついて戦争をする国にな
    らないと日本を守れない。そのとき、日本は核武装大国になるしかない。こう
    いうふうに言っています(※8)。

     つまり、秘密保護法制を議論すると、日本が核武装するか否かというところ
    まで、今、話が行ってしまっているんですね。これは、大変な飛躍のようにも
    思えますが、現実的な話です。

     ハルペリンさんは安全保障の専門家です。安全保障の専門家から、果たして
    日本は集団的自衛権行使容認をしなければ、核武装しなければならない。そう
    しないと中国から我が身を守ることができないと。このようにお考えでしょう
    か?」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※7)日本政府は、旧日本軍による従軍慰安婦への関与を認めた1993年の河
    野洋平官房長官談話の検証を開始した。菅義偉官房長官のもとで検証チームを
    結成し、6月末までに報告書をまとめる予定だという。
    (【URL】http://s.nikkei.com/1ksMKPK )

    (※8)安保法制懇・座長代理の北岡伸一氏は、5月7日にロイターのインタビ
    ューに応じ、「日本が個別的自衛権だけで自国を守ろうとするなら、核大国に
    なる必要がある」と発言した。(【URL】 http://bit.ly/SX419k )

    ===================================
    ◆集団的自衛権行使容認の3条件◆
    ===================================

    ハルペリン「日本が集団的自衛権を行使して米国と組むという議論は、最近非
    常に強くなってきています。米国にこういう考えを支持する人々もいます。米
    国が日本を防衛するのに日本はアメリカを防衛しないというのは、米国人にと
    っては理解し難いことです。

     もし、日本がそういう方向に動くのだとすれば、日本がしなければいけない
    ことが3つあります。まず、日本は、改憲の考えを捨てなければいけません。2
    つ目は、第二次世界大戦の前と戦中に日本が行ったことの責任を認めること。
    3つ目が、核兵器の開発をしないという誓約を再度断言すること。日本や朝鮮
    半島を含む地域を非核兵器地帯にするということです」


    岩上「それは日米同盟を強化するために必要な3つの条件という意味です
    ね?」

    ハルペリン「日米関係を強化することもひとつですが、もし、日本が集団的自
    衛権を容認するというのであれば、日本と近隣諸国の関係に影響を与えないた
    め、そして、中国を含めた近隣諸国との関係を維持するために、この3つの条
    件が必要です」

    岩上「これはたいへん驚きで、日本で宣伝されていることは、中国と対決する
    ために、集団的自衛権、米国との集団的自衛権が必要なんだという話です。も
    っぱらそういうふうに理解されています。 ところが、今の話だと、アジアと
    の友好、平和が必要だということですね。ベクトルが全く逆ですね」

    ハルペリン「いや、私が言っているのは、集団的自衛権の容認が必要であるな
    らば、日本が戦前や戦中の日本に戻るという懸念の声を上げさせないような方
    法でやらなければいけないということです」


    岩上「なるほど。安倍政権は、戦後レジームからの脱却ということを言ってい
    ます。これは戦後からの体制から抜け出て、戦前に戻ることを意味しているの
    ではないかという疑惑がずっとつきまとっています。ハルペリンさんはどうお
    考えになるでしょうか?」

    ハルペリン「まず、日本がすべきことは、ドイツを見習うことです。ドイツは
    戦後の時期を乗り越えましたが、それは歴史を塗り替えるのではなく、歴史的
    な事実を受け入ることによってです。そうして前進したのです。日本もそうし
    なければなりません」


    岩上「なるほど。いみじくも、この間、安倍総理はヨーロッパを訪問して、現
    地において『日本はドイツのように謝りはしない』ということをわざわざ言明
    しました。非常に残念な態度だと思います。米国ではこういう安倍総理の態度
    をどのように見ているんでしょうか?」

    ハルペリン「米国の人たちは、政府の人たちも含めて、安倍総理がしているこ
    とに対して、非常に懸念していて、ナーバスになっています」


    岩上「なるほど。わかりました。もっともっとお話をうかがいたかったんです
    けれども。厳しい質問にお答えいただきまして、ありがとうございます。答え
    にくかったと思います。ありがとうございます。

     モートン・ハルペリンさんにお話をうかがいました。今日、このインタビ
    ューだけ見てる人は、ちょっと全体が分からなかったかもしれませんが、ぜひ
    この前に我々が中継した講演ともセットでご覧になっていただければと思いま
    す。

     ということで、どうもありがとうございました。Thank you very much.」

    ハルペリン「どうもありがとう」


    ----------------------------------------------------------------------

    ・「IWJウィークリー」52号掲載「岩上安身のニュースのトリセツ」より

     5月8日、来日した米国防総省元高官のモートン・ハルペリン氏のインタビ
    ュー後、ツワネ原則を熱心に紹介した日弁連前事務総長の海渡雄一弁護士、福
    島瑞穂議員、通訳をつとめてくれたレイバーネットTVの松元ちえさんたちと、
    ハルペリン氏を囲んでの食事会の場をもった。

     ハルペリン氏は、国防総省で日本や東アジアの地域担当になったことはない。
    しかし、ご本人曰く、「日本びいき」。東京オリンピック前年の1963年に初来
    日して以来、訪日回数は30回くらいになるという。息子が3人いてそのうちの1
    人は日本語を勉強したという。1人は政治の道に進み、もう1人はヨガのイン
    ストラクターになった。

     佐藤栄作政権の時代から日本の中枢と深い関わりがあり、沖縄返還と密約交
    渉にも関わった。日米外交と米国の安保政策の裏表を知る存在だ。理想論を唱
    えているだけの知識人ではない。そんなリアリストが、「日本の秘密保護法は、
    21世紀最悪の秘密保護法だ」と断言する。傾聴せずにはいられない。

     食事会は、インタビューの場ではない。だいぶお疲れのご様子でもあり、前
    半は肩の凝らない話題が中心だったが、後半になるとやはり本気の話になる。
    以下、食事会でハルペリン氏が語った内容の詳細をお伝えする。

    ◆日本は「オープン・ガバメント・パートナーシップ」に未加盟◆

     2013年12月、ハルペリン氏が上級顧問を務める「オープン・ソサイエティ財
    団」は、日本の特定秘密保護法について、「21世紀に民主的政府によって検討
    された秘密保護法の中で最悪なものだ」と痛烈に批判した。

     ハルペリン氏は、オバマ大統領が提唱した「オープン・ガバメント・パート
    ナーシップ」の重要性を強調している。「オープン・ガバメント」とは、「透
    明・参加・協業」の三原則を掲げ、政府が情報公開を積極的に進め、国民に対
    して説明責任をはたすというものだ。加盟資格があるのは、各国の政府。現在
    60カ国が加盟しているが、日本政府は未加盟である。

     ハルペリン氏は、この「オープン・ガバメント」の必要性について、食事会
    に同席した社民党の福島みずほ議員が質問すると、次のように語った──。

    ハルペリン氏「2年前くらいにオバマ大統領がスピーチをしたとき、最小限の
    条件があって、それを満たした国がオープン・ガバメントのメンバーになれる
    と提唱しました。ひとつは、情報公開制、つまり知る権利ですね。あとは覚え
    ていませんが、いくつかあります」

    岩上「秘密保護法まで利用して国民の『知る権利』をないがしろにしている日
    本は、入れないんじゃないですか」

    ハルペリン氏「日本は加盟していません」

    岩上「加盟というか、資格がないでしょう」

    ハルペリン氏「いくつかのアクション・プランに従ってやっていけば良いだけ
    です。各国で、それぞれのアクション・プランを立てるんですけれども、それ
    に従っているのか、それを満たしているかどうかは、独立の機関があるので、
    そこが検討します。半官・半民のメンバーで、ちゃんとなされているのかどう
    か検討するのです」

    福島みずほ議員「どのくらいの国が加盟しているのですか?」

    ハルペリン氏「37ヶ国です。あのフランスも入っています。韓国は、すでに加
    盟しています」

     ハルペリン氏が話している間に、iPhoneで検索すると、すでに60カ国が加盟
    と出てきた。ハルペリン氏の記憶の更新に追いつかないほど、加盟国数の増加
    が早い、ということらしい。

    岩上「今、ネットで検索したら、もう60カ国以上加盟しているのですね。日本
    は、数少ない非参加国です」

    ハルペリン氏「日本政府にプッシュしなくてはなりません。この、オープン・
    ガバメント・パートナーシップに日本が加盟するまで、私は帰れないのです
    (笑)」

    ◆集団的自衛権行使容認の前提となる3つの条件◆

     安倍総理が突き進む、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認。5月15日に
    安倍総理は、私的諮問機関「安保法制懇」(安全保障の法的基盤の再構築に関
    する懇談会)から、集団的自衛権の行使容認を提言する報告書を受け取り、記
    者会見で国民にその正当性について訴えた。

     ハルペリン氏は、集団的自衛権の行使容認の前提として、三つの条件を提示
    する。一つ目は、明文の改憲をしないこと。二つ目は、戦前、戦中に日本がし
    たことを謝罪し、歴史認識の書き換えをやめること。そして三つ目が、核保有
    をしないことである。(※注)

    ハルペリン氏「集団的自衛権の行使容認には、3つの条件があります。一つ目
    は、明文改憲をしないこと。2つ目は、戦前・戦中の日本のしたことについて
    の責任を取ること。3つ目は、核不拡散三原則をもう一度更新することです」


     ハルペリン氏は、2つ目の条件に、日本の歴史認識の問題をあげた。日本が
    戦争責任を取るためには、具体的にはいったい何が必要なのだろうか。

    ハルペリン氏「簡単なことです。首相が謝罪と反省を表明すればいいのです。
    そして、靖国神社に行かないことです。それから、過去の歴史を修正するので
    はなく。そのまま受け入れることです」


    岩上「しかし、日本は謝らないというわけですよね」

    ハルペリン氏「以前は、その考え方が変わった時があったんですね。しかし、
    今は戦後を知らない世代ですから」

    ----------------------------------------------------------------------
    (※注)ハルペリン氏は、講演会の通訳のために作成した英文のレジュメでも、
    解釈改憲による集団的自衛権行使容認の前提として、3つの条件をあげている。
    IWJは、英文のレジュメを独自に翻訳した。

    集団防衛に対する権利
    モートン・ハルペリン

     日本は、集団的自衛権を持つ能力を再定義することを検討するにあたって、
    慎重になり時間をかける必要がある。同盟国や近隣諸国と最大限相談しながら、
    市民社会の中で、透明性を持って進められなければならない。

     正しく行われるのであれば、日本が貢献の範囲を広げることは、東アジアだ
    けではなく、日本が国連の平和維持における役割を増やすのであればグローバ
    ルに、平和と安全に寄与するものになりうる。

     日本は、この動きが日本の憎悪に満ちた右翼ナショナリズムの再来なのでは
    ないかという恐れに対処しなければならない。

     これをグローバル秩序と平和に対する真の貢献にするため、そして、近隣諸
    国の不安を取り除くために、日本がやるべきことが二つある。

     第一に、日本は、第二次世界大戦前や大戦中の行為について、「慰安婦」や
    戦争犯罪の責任に関するものを含め、世界に理解されるよう、責任を率直に認
    めなければならない。

     第二に、日本の役割の拡大が、核兵器を開発するという決定に結びつかない
    ということを明確にしなければならない。ひとつめのステップは、日本が現在
    の核の方針を再確認し、核開発がこの見直しの一部として再考されることはな
    いと明確にすることだ。次のステップは、兵器級核物質の生産と保有を最小限
    にするために、民間の核プログラムに変更を加えることである。

     最後に、日本は北東アジアの非核兵器地帯の創設を提案し、それに完全に加
    わるつもりであると表明しなければならない。非核兵器地帯には日本や朝鮮半
    島やその他の国々が含まれるだろう。

     こうすれば、日本は、地域的にもグローバルにも、集団防衛における適切な
    役割についての思慮に富んだ議論を導くことができるだろう。

    ◆日本の核武装を警戒する米国◆

     集団的自衛権の行使を容認するための条件のうち、3つ目の核不拡散につい
    て、ハルペリン氏は、「日本は核燃サイクルをやめるべきだ」と言い切った。

     それは、日本の潜在的な核兵器保有可能性を断念せよ、ということか、と確
    かめると、はっきりと「その通りだ」と言った。ということは、先日のオバマ
    のプルトニウム返還要求とは、核兵器保有を断念せよというメッセージだった
    のか、という問いにも、ハルペリン氏は、「その通りだ」と即座に言い切った
    のである。

     要するに米国は、日本の極右勢力が核保有を狙っていることを真剣に危惧し
    ており、同時に、靖国参拝や歴史認識の書き換えを安倍政権が図っていること
    も懸念し、だからこそ秘密保護法に警鐘を鳴らしているのである。

    岩上「再処理をやめるべきだというのは、つまりは日本の核兵器の保有の可能
    性を断つということですね? ということは、この間、オバマ大統領が日本に
    貸与していたプルトニウムを返せ、と言ったことは、これは再処理を止めて、
    核兵器保有の可能性をなくせ、というメッセージが含まれていたということで
    すね?」

    ハルペリン氏「そうです。兵器を作れるぐらいの量のプルトニウムがある限
    り・・・」

    岩上「日本の右派は、『保有する』『そっちへ向かう』と言い続けています
    よ」

    ハルペリン氏「だからこそ、日本が原発やプルトニウムなどを保有しているこ
    とについて、米国は非常にナーバスになっていますね」

    岩上「安倍さんも、『持てる』とは発言しているし(※1)、なにより北岡伸
    一氏も、もし集団的自衛権の行使が認められないならば、核武装を、という発
    言をしています(※2)。石原慎太郎氏は、『日本は核大国になるしかない』
    と言いました(※3)。

     アメリカは、日本へ『核武装するな』というメッセージを送る。一方で『原
    発を続けろ』というメッセージも送るわけですよね。これがすごく不可解です。
    どうせなら『原発もやめなさい、核もやめなさい』と言ってくれればシンプル
    なのですが」

    (※1)2002年5月13日、安倍総理(当時は官房副長官)は、早稲田大学の大隈
    講堂で行われた講演会で、「自衛のための必要最小限度を超えない限り、核兵
    器であると、通常兵器であるとを問わず、これを保有することは、憲法の禁ず
    るところではない」「核兵器は用いることができる、できないという解釈は憲
    法の解釈としては適当ではない」と述べている。
    (【URL】 http://bit.ly/1j3VJ7I)

    (※2)北岡伸一氏は5月7日付けのロイターのインタビューで、「日本が個別
    的自衛権だけで自国を守ろうとするなら、核大国になる必要がある。集団的自
    衛権、信頼できるパートナーに頼るのは、軍事大国になるより良い選択肢だ」
    と述べている。
    (【URL】 http://bit.ly/1oDDAT2 )

    (※3)石原慎太郎氏は2012年11月20日の日本外国特派員協会での会見で、
    「日本は核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいい。これが一つの
    (核)抑止力になるだろう。(核を)持つ、持たないは先の話だ」「世界で核
    (兵器)を保有していない国の発言力は外交的に圧倒的に弱いじゃないか。北
    朝鮮は核を保有するから存在感がある」と述べた。
    (【URL】 http://bit.ly/1sGZpyI )

    ハルペリン氏「米国はまた、日米安保で『もっと日本の防衛力を強化しろ』と
    も言っています。核や原子力に関して言えば、アメリカ政府はこれまで、結果
    を考えずにそういう風に言ってきました。だから、何が起こるか分かりませ
    ん」

    岩上「何が起きるか分からないまま言っている米国、本当に困りますね。なぜ、
    米国は『原発を続けろ』なのでしょうか。『シェールガス買え』のほうがまだ
    分かる。米国のエネルギー産業の利益になることの他に、何かあるのでしょう
    か?」

    ハルペリン氏「Because it’s mindless」

    岩上「考えなし、ですか」

    ハルペリン氏「原子力政策に関して言えば、日本が原発を放棄してしまえば、
    米国の人たちに対して、安全であると説得するのがなかなか難しくなります。
    だからこそ、そのままにしておいているわけです」


     このハルペリン氏の言葉には驚いた。3.11のすぐあとに、政府はなぜあそこ
    まで頑なに原発の維持推進を掲げたのだろうか? という素朴な疑問を、外務
    省元国際情報局長の孫崎享氏にたずねたことがある。その時、「米国は日本で
    ドイツと同じく脱原発が示され、米国に波及するのを嫌がっている」と孫崎氏
    は答えられたのだが、ハルペリン氏はまったく同じ認識を示したのだ。

    岩上「米国はシェールガスが出ますよね。原子力が必要ですか?」

    ハルペリン氏「長い目で見れば当然、脱原発をすると思います。ガスは新しい
    もので、それを行いたいと考えています」

     長期的に見れば、当然、米国も脱原発に傾くだろう。しかし、もう少し時間
    がかかる。それまでの間、米国内の原子力関連産業にとって、売り上げが下が
    るようなことは避けたい。日本の脱原発は、彼らにとって望ましくない。それ
    だけの理由で、米国は日本に「圧力」をかけ、「原発ゼロ」から「重要なベー
    スロード電源」へと方向転換させている。

     地震国日本で再びの事故が起こったら、という懸念は、眼中にはない。

     ハルペリン氏と話していて、クリアに見えてきたことがいくつかある。第一
    に、彼もまた、米国の国益を第一に考える保守派であり、国防総省の元高官な
    のであり、リアリストの一人であるということ。

     ハルペリン氏は、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認を認めている。米
    国が世界各地で行う武力行使に、日本はその「手下」として、手伝え、という
    のが、米国の外交・安全保障関係者の大方の総意なのだろう。その「総意」に
    日本国民が従わなければならない道理はないのだが。

     だが、その一方で、憲法の明文改正はするな、ともいう。ハルペリン氏はく
    わしく語らなかったが、自民党の改憲案がまるごと通ることにでもなれば、日
    本は立憲主義をかなぐり捨て、基本的人権も成約し、天皇制ファシズムの復活
    の道をひた走るのではないかと警戒しているのだろう。

     ハルペリン氏のような、「タカ派の中のハト派」が求めているのが、日本の
    「戦後レジーム」の基本は大きく変えず、米国の望む範囲内で従順に軍事行動
    の「パシリ」になるような日本を望んでいるのだ。

     もちろん、日本が中国と喧嘩を始めたり、独自に東アジアで地域覇権国を目
    指すような動きは歓迎していない。安倍政権の慰安婦問題や南京虐殺問題など、
    歴史の書きかえをはかる姿勢や、ナショナリズムの強調、靖国参拝などは決し
    て認めていない。「戦後レジームの脱却」を目指した安倍政権は、再びそのレ
    ジームの壺の中に閉じ込められようとしている。


     日本国内では、政府と主要メディアとのオーケストラのような情報操作の
    ハーモニーがよくきいていて、ほとんどの国民は、原発推進派が原発だけでな
    く核燃サイクルを維持しようとしているのは、エネルギー自給のためであろう
    と、賛否は別として、そう素朴に信じ込んでいる。将来の核兵器の保有のため
    だとは、ほとんどの人は疑ってもいない。

     しかし、国内ではごまかしがきいても、「宗主国」の戦略家たちの目はごま
    かせない。日本には核保有の憂国があること、核燃サイクルはそのために行っ
    ているものであること、そして解釈改憲による集団的自衛権の行使容認、すな
    わち事実上の9条改正で武力行使が可能となる日本には、核保有への野心があ
    ることをしっかり見抜いている。その上で、原発は続けよ、しかし核燃サイク
    ルはやめよ、と矛盾するように聞こえるメッセージを投げかけているのである。


     そして最後にもう一点。温厚そうで、しかしやはり「タカ派」のリアリスト
    であるハルペリン氏がそれでも許せなかったほどひどいのが、日本の「秘密保
    護法」である、ということだ。「21世紀の民主国家で最悪の秘密保護法」とい
    う彼の批判は、額面通り受けとっていいメッセージであろうと思う。

     原発を抱えたまま、核燃サイクルもあきらめず(つまりは核保有の野心は捨
    てず)、世界最悪の秘密保護法で国内の目と耳と口をふさいで、米国のパシリ
    となって、「どこでも派兵ドア」から飛び出し、他国の人々を殺し、恨みを買
    い、あげく国力を消耗させてゆく──。

     安倍政権が開こうとする扉の向こう側に、明るい未来が待ち受けているとは
    到底思えない。

    (了)

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