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    原発問題 -The Truth is Out There-

      : 

    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    IWJ特報 第138号 日米原子力協定に迫る 元外務省審議官 遠藤哲也氏インタビュー(その5) 

    第138号
    ──────────────────
    岩上安身のIWJ特報!
    日米原子力協定、その交渉の舞台裏に迫る
    元外務省科学審議官・遠藤哲也氏インタビュー(その5)
    ──────────────────
    (IWJより転載許可済み)

    ---------------------------------------------------------------------
    ◆付録2

    エネルギー政策研究, Vol. 5, No.1 (2007.7)

    日本核武装論の問題点─日本にとって現実的な政策オプションたりうるのか
    遠藤哲也

    1.はじめに

     日本の核武装論は昨秋の北朝鮮の核実験(2006年10月9日)に触発されて、
    国の内外で盛んに議論されるようになった。だが、日本核武装論は古くから存
    在する、いわば古くて新しい問題であり、北朝鮮の核実験によって一見現実味
    を帯びてきたということであろう。

     この論文の目的は次の三項目である。まず内外における核武装論を紹介する。
    次に日本核武装論における視点の整理と解説であり、国内的観点と国際的観点
    からの問題点を考えてみたい。国内的観点には、技術的な観点、法律的、制度
    的な観点また、国内政治的な観点などがあろう。他方、国際的な観点からは、
    二国間協定、多国間の枠組みといった法律的な観点と国際政治的な観点があろ
    う。第三番目に、核実験に示された北朝鮮からの核の脅威に日本として如何に
    対応していくか、日本の核武装がそのための現実的な政策たりうるのか、もし
    なり得ないとすれば他にどのような政策が考えられるのかについて考えてみた
    い。

    2.海外における日本核武装論

     日本核武装論は、これまで海外から発信されるものが多かった。甚だしいの
    は、日本は既に核兵器を保有しているといった論さえある。そのような核武装
    論の論点を整理するとおおよそ次のようにまとめられる。

     その一つは、日本の国情に対する無知に基づくものであり、各国の世論調査
    などからみる限り、決して少なくない。

     二つ目は、日本たたき(ジャパンバッシング)の一つの手段としてで意図し
    て“日本は核武装を目指している”といった論を流布する場合がある。これは
    いうなれば為にする議論である。

     三つ目は、経済大国たる日本が政治大国を目指すのは至極当然で、現在の世
    界では政治大国は軍事大国にならざるを得ない。軍事大国として核保有は欠く
    べからざる手段であるという議論で、いわゆる決定論的、宿命論的な見方であ
    り、海外の著名な国際政治学者の中にも少なからず存在する。

     四番目は日本が国策として進めている核燃料サイクル、特にプルサーマルは
    資源の点からも経済コストの観点からも合理的でなく、日本は表向きはエネル
    ギー安全保障のためというが、本当のねらいはプルトニウムを蓄える為ではな
    いか、核兵器開発の潜在能力を備えるためではないかというものである。

     五つ目は、これは最近取上げられるようになった論点であり、北朝鮮の核実
    験以降特にそうであるが、日米同盟の下での米国の核の傘は現在、将来にわた
    って本当に信頼できるものなのか。日本は自国の究極の安全保障を独自に考え
    ざるを得なくなり、ひいては核武装に向かうというシナリオである。

    3.日本国内における核武装論

     まず、日本の国会で核武装問題がどのように取上げられたかをみてみよう。
    この問題は頻繁にとりあげられている。その頻度は別表のとおりだが、これま
    でに日米安保条約改訂(1960)の前後、中国が初めて核実験を行った頃
    (1964)、NPTの署名(1970)、批准(1976)の頃に核武装が盛んに議論にの
    ぼっている。そして北朝鮮が核実験を行った2006年に回数がぐんと増えている。
    取上げられた委員会等では外務、外交安全保障委員会、予算委員会、本会議内
    閣委員会、科学技術関係委員会の順となっている。しかしその取上げ方は非核
    三原則堅持、日本は核武装をすべきではないとの議論が多く、発言者の意見と
    して「日本は核武装すべき」というのは皆無である。

     日本では国民の間に広く核アレルギーがあり、公開の場で堂々と核武装論を
    唱えることがはばかられるのか、最近は事情がやや変ってきているやに思われ
    るが、前述の国会を始め核武装論が正面切って主張されることはほとんどない。
    もってまわった表現のし方。例えば「核武装を推進するわけではなく、そのよ
    うなオプションを残すことが政治的に有利である」とか「いつまでも非核三原
    則をタブー視するのはおかしい」とか「核武装の是非について堂々と議論すべ
    きである」、「(1957年以降)政府は政策として核兵器を保有しないが憲法は
    核兵器所有をすべて禁止していない」などとある意味でひねった形で議論がな
    されている。「幻の核武装論」とでも言うべきであろうか。

     ところが世論調査などでは、「核武装は不必要だ」「核武装は望ましくな
    い」との答えが圧倒的に多いが、「核武装は必要だ」「核武装は望ましい」と
    考える層も少なくない。このように、日本核武装論に対する国内の反応は非常
    に微妙であり、本音と建前の乖離が見られるところがある。

     このように、日本核武装論は国会の場で少なくとも正面切って直裁に取り上
    げられることはほとんどないが、一部の学者、評論家の間ではこれまでも論ぜ
    られており、中国の核実験以降特に北朝鮮の核実験以降その傾向が強くなって
    いる。北朝鮮の核弾頭の小型化、弾道ミサイルテポドンIIの距離が伸びて米本
    土を直撃するようになると、「米国は自国の死活的利益に直接につながらない
    友好国の防衛の為に自国をかい滅の危険にさらすであろうか」との議論である。
    簡単に言えば例えば米国はロスアンゼルスを犠牲にして東京を守ってくれるで
    あろうかとの疑念である。これは、かつてドゴール大統領時代、仏のピエー
    ル・ガロア将軍がフランスの独立の核武装を進める為の理由としてかかげたガ
    ロア理論の日本への適用であって、日本の核武装論者のポイントはこの点にあ
    る。

    4.日本の核武装は現実的な政策オプションか

     内外における日本核武装論はともかく、そもそも日本にとって核武装は可能
    なのか、又可能であるとしても現実的な選択肢なのだろうか。

    1.国内的観点

    (技術的観点から)

     結論を先に言えば、技術的には可能といえるが、莫大な金と相当な時問を要
    し、右から左へというわけにはいかない。

     一つは、核弾頭の材料であるプルトニウムと高濃縮ウランの問題である。確
    かに日本は相当に大量のプルトニウムを持っている。英、仏に約40トン、国内
    に6トン弱である。近く六ヶ所村の再処理工場が稼動を始めれば年問数トンの
    プルトニウムが出て来る。これらプルトニウムはIAEAの厳重な保障措置の下に
    置かれていることは後述するとして、これらのプルトニウムはPu239が60-70%
    と純度の低いいわゆる「原子炉級プルトニウム」である。IAEAは規制上「原子
    炉級プルトニウム」と「兵器級プルトニウム」(純度90%以上)を区別してお
    らず、ただ、米露余剰プルトニウム処分協定では兵器級プルトニウムを定義し
    ているが、一般的かつ国際的な定義はない。いずれにせよ、いわゆる「原子炉
    級プルトニウム」が核爆発に用いられる可能性は否定出来ないものの、実際に
    実戦配備される核兵器には使われたことはない。従って一般的に言って日本が
    保有するプルトニウムは軍事目的には必ずしも適しておらず、「兵器級プルト
    ニウム」を作るためには専用原子炉を作るとか、発電用原子炉を非常に特殊な
    方法で運転する必要がある。(原子炉級プルトニウムは軍事用には最適でない
    が、日本のように高度の技術力を持つ国であれば、十分信頼しうる核兵器開発
    が可能であるとの見方もある。)

     又、日本にも例えば高速増殖実験炉の常陽には若干の純度の高いプルトニウ
    ムが存在するし、原型炉もんじゅが稼動すれば同様の兵器級プルトニウムを生
    産することができる。しかし、これらプルトニウムには厳しい保障措置、厳重
    な核物質防護措置がかかっている他、直ちに使えるような形ではない。

     今一つの核弾頭の材料であるウランについては、濃縮度90%以上の高濃縮ウ
    ランが必要だが、そのためには遠心分離機のカスケードを大幅に増やすとかカ
    スケードの組み替えが必要で、厳しい国際査察がかかっているので秘密裏に開
    発することになるが、透明度の高い日本でそんなことができるかどうか。仮に
    出来たとしてもそれにはおそらく新しい施設が必要となり、金と時問がかかる。
     二番目の問題は実験場所である。核弾頭を作っても果たして爆発するかどう
    か不確実では兵器とは言えない。特にプルトニウム型爆弾については爆発のた
    めの爆縮(implosion)が技術的に難しいので、核実験が必要になる。コンピ
    ューターのシミュレーションでできないかとの説もあるが、入力可能な信頼で
    きるデータの蓄積があってこそで、そのためにはやはり核実験が必要となる。
    ちなみに、世界中の核兵器保有国はイスラエルを除きすべて公然と核実験を行
    っている。(イスラエルについては、自ら実験を行ったとの証拠はない)だが、
    日本の場合、国土が狭く、人口過密で実験場所がない。爆発の直接的な影響を
    逃れるためには、少なくとも爆心地から半径10キロメートルぐらいは人を排除
    した状況にしなければならない。縦穴式(ボーリング)であれ横穴式(坑道方
    式)であれ日本には地下核実験に使えるような山岳や砂漠や無人島、環礁が存
    在しない。

     三番目の問題は、核兵器の運搬手段である。運搬手段には爆撃機、核搭載
    (原子力)潜水艦、地上発射ミサイルの三種類(Triad)があるが、現在の日
    本には航続距離の長い爆撃機もなく、又核ミサイル搭載の原子力潜水艦もない。
    ミサイルについては、人工衛星打ち上げの優れたロケット技術(慣性誘導や大
    気圏再突入などの技術も含む)を持っているので技術面では問題はない。いず
    れにせよ、核運搬手段の開発と、その維持には莫大な金がかかる。

     以上述べたように、日本の核弾頭および運搬手段の開発は技術的には不可能
    ではないが、相当な時間がかかり、一発や二発の核弾頭でなく「意味のある核
    武装」をするには莫大な金がかかる。技術能力があることと実際に核兵器を作
    れることとの間には乖離がある。

    (法律的、制度的観点から)

    (1)まず日本国の最高法規である憲法が、核武装をどう規定しているかをみ
    てみよう。関連条項としては第九条だが、第九条は核については全く触れてお
    らず、その解釈として次のような政府見解が示されている。

     その初めは、1957年の国会での岸信介総理の答弁である。岸総理は政策とし
    て核兵器は持たないが、憲法は核兵器の保有を禁止しているものではないとの
    趣旨を繰返し述べ、当時の林修三法制局長官も岸総理の憲法解釈を確認してい
    る。この解釈は以後しばしば表明されて来ている。そのいくつかをあげれば、
    例えば「……憲法全体の思想といたしましては、私は憲法九条だと思うのです。
    第九条によって、わが国は専守防衛的意味における核兵器はこれを持てる。た
    だ、別の法理によりましてはまた別の政策になりましてそういうふうになって
    おらぬというだけのことである」(1978年3月11日福田赳夫総理。参議院予算
    委員会)また、最近では「自衛のための最小限度を超えない限り核兵器である
    と通常兵器であるとを問わず、これを保有することは、憲法の禁ずるところで
    はない」「核兵器は用いることができる、できないという解釈は憲法の解釈と
    しては適当でない」(2002年5月13日安倍晋三官房副長官。早稲田大学での講
    演)、「……法理論的には持てる。持ってはいけないとの理屈にはならない」
    (2002年5月31日福田康夫内閣官房長官。記者団への発言)

     憲法上は法理的には日本の核武装は禁じられていないというのが、一貫した
    日本政府の解釈である。すなわち、日本は専守防衛のための最小限の自衛力保
    持は認められており、自衛力はその目的に沿う限り兵器の種類が限定されてい
    ないのだから、核兵器の保有は可能であるとの解釈である。しかしながら、ど
    のような核兵器とその使用が専守防衛に該当するのかは明らかにされていない。

    (2)憲法上は以上のとおりだが、法律のレベルになると核武装は厳しく禁止
    されている。その要は原子力基本法(1955)である。原子力基本法は第二条で
    次のように規定している。「原子力の研究、開発および利用は平和の目的に限
    り、安全の確保を旨として民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、
    その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする」(傍線は筆者)原子
    力基本法に従ってわが国の原子力活動は厳に平和利用に限定されそれ以外の研
    究、開発は禁止されていて、当然のことながら核武装は禁止対象となっている。

    (3)それでは日本核武装論は政策的にどのように扱われているのだろうか、
    「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」とのいわゆる非核三原則は、1967
    年12月佐藤栄作総理か衆議院予算委員会で言明し、翌1968年1月の施政方針演
    説に関連した本会議での答弁で言及して以来、歴代総理が発言を繰返し、国会
    で確認して来た。佐藤総理は何故この時期に非核三原則を打出したのか。1964
    年には隣国中国が核実験を行い、佐藤総理は日本としても核兵器をもつことは
    考えたのではなかろうか。そして米国政府の高官にもその旨を述べている。し
    かし、佐藤総理の個人的な核武装志向はあったものの現実にはそうはいかない。
    日本国内には反核感情が非常に根強く、米国は核不拡散政策を進める姿勢を鮮
    明にしており、日本の核武装に反対であった。従って、現実的には日米安保条
    約のもとで「米国の核抑止力に依存する」との政策を踏襲する以外途がなかっ
    た。そしてその核の傘の前提の下で、小笠原諸島返還(1968)とそれに続く沖
    縄返還(1972)という歴史的事業(しかも核抜き本土並み)の実現のために非
    核三原則を打出したのである。他方、国会(衆院および参院それぞれの決議)
    でもこの非核三原則は全会一致で決議され、国是ともなっている。しかしなが
    ら非核三原則は法令化されたものではなく政府の方針なり国会の決議であって
    法的拘束力を持つものではない。

    (4)以上みて来たように日本の核武装は法律で禁ぜられ、政策上も政府によ
    ってまた国会によって否定されているのだが、これらはいずれも国内の問題で
    あって国民がその気になれば変えられるものである。特に日本国民の移り気か
    つ付和雷同的な国民性を考える時、何かのきっかけがあり宣伝が巧みであると
    現在の強い反核感情は変るおそれがないわけではない。又、先にも触れたよう
    に日本国民の一部には常に核武装を受け入れる世論が存在することなどを考え
    ると、このような懸念は杞憂ではないかもしれない。少なくともこのような懸
    念が海外で抱かれていることだけは念頭に入れておいたほうが良いであろう。

    2.国際的観点

     日本の核武装に対する制約は国内的なものよりは、むしろ対外面にある。極
    言すれば日本の原子力活動は対外面でがんじがらめになっているといえるので、
    これらの制約をはねのけて核武装に着手するには非常に大きな決断と大きなリ
    スクを覚悟しなければならない。

    (1)日本の原子力利用を巡る多数国間(マルチ)の枠組み

     核拡散防止条約(NPT)は世界の核不拡散体制の中核である。加盟国は188ヶ
    国と世界のほとんどすべての国を網羅し、加盟していないのはインド、パキス
    タン、イスラエルと脱退を宣言した北朝鮮くらいである。しかし、昨今NPTを
    中心とする核不拡散体制は、NPTの内外から、又テロリストグループなど非国
    家主体からの挑戦を受けてゆらいでいる。

     日本が核武装を始めるには、憲法第98条2項によりNPTからの脱退が必要だが、
    日本の脱退はNPTを崩壊の危機におとし入れることとなりかねない。そもそも
    NPTができたのはドイツと日本が大きな理由の一つであった。経済大国、特に
    原子力大国日本の脱退は世界にドミノ現象を起しかねず、ただでさえ動揺して
    いる体制に深刻な打撃を与えることとなろう。

     核兵器開発には核実験が不可欠なことは先に述べたが、日本は既に率先締結
    している包括的核実験禁止条約(CTBT)から脱退しなければならず、発効に苦
    慮しているCTBTの前途は絶望的になるであろう。(日本がすでに批准、締結し
    ているCTBTからCTBTの発効以前に脱退するという事が何を意味するかは法的に
    問題である。もし法的には脱退できなくなっているとすれば、日本の核実験は
    CTBT違反)行為となる。いずれにせよ、このような日本の行為はCTBTの発効に
    決定的な打撃を与えかねない)

     又、日本はNPTに従ってIAEAとの間で保障措置協定を締結し、IAEAの厳格な
    査察を受け自他共に優等生であるが、NPTからの脱退、核武装の着手によって
    IAEAとの保障措置協定はその規定に従い自動的に失効することになる。

     このように、核武装によって日本は原子力利用に関する多数国間の枠組みか
    ら脱退することになり(あるいは脱退せざるを得なくなり)IAEAでの非難、国
    連安保理での非難、制裁を受けることになろう。日本は、国際社会から孤立す
    ることになりかねず、1930年代に始まった国際連盟からの脱退を含む国際社会
    からの孤立がどのような結果を招いたかは外交史を紐解けば一目瞭然である。

    (2)日本の原子力利用を巡る二国間(バイ)の枠組み 日本は米、英、仏、
    加、豪、中およびユーラトムと間で二国間の原子力協力協定を結んでいるが、
    原子力平和利用協力協定というその正式のタイトルが示すようにその目的は平
    和利用に限定されている。すなわち、日本はウラン原料、濃縮ウラン、原子力
    技術など提供された核物質等を平和目的以外に利用しないことを協定で約束し
    ている。原子力協定の主目的は平和利用の担保である。従って、日本がNPTを
    脱退するなどして核武装に踏出すと、二国間協定の違反となりそれ以降は核物
    質などの提供がストップされ、場合によっては協定自体が廃棄され、日本はこ
    れまで提供されたウランやプルトニウムを返還せざるを得なくなる。このよう
    なことになると、日本の原子力活動は発電から核燃料サイクルまで、すべての
    原子力活動が停止に追込まれる。発電の約三分の一を原子力に頼っている日本
    として、これを代替するエネルギー源もないので経済的に大変な影響をうける。
    原子力産業の崩壊を招きかねず、原子力利用の最大の敵は核保有であるとさえ
    言える。

    (3)国際政治面での影響

    (日米関係)

     日本の安全保障の根幹は日米安保条約に基づく日米同盟で、これは日本に対
    する「核の傘」を含んでいる。日本の核武装論を惹起する要因にはこの「核の
    傘」の有効性に疑念がある、すなわち日米同盟が有事の際に実効的に機能する
    事に全幅の信頼がおけないということである。そうなると相互信用として米国
    の日本に対する信頼も失われることになり、日米同盟関係は大きく変質する。

     すでに述べたように、「核の傘」なるものは幻想になりつつある、すなわち
    米国は自らを犠牲にしてまで日本に対する核の恫喝や核攻撃に対して、米国の
    核によって日本を守ってくれるであろうか、との仏のガロワ理論的な不信感で
    ある。これは、日本は自ら核武装すべしとの考え方につながる。しかし、米国
    は日本独自の核保有を認めるであろうか、あるいは米国の傘の下で日本が自前
    の核を持つという“二重の傘”の状態を認めるであろうか。たしかに、米国の
    一部特に保守派の一部には日本核武装の容認論がある。例えば、日本は米国に
    とって非常に信頼できる同盟国になっているので日本の核保有は容認できる。
    むしろ日本の「核カード」は中朝の増長を押える有効な手段でもある。日本が
    核武装への関心を示せば中国は、北朝鮮の核武装を止めさせるため北朝鮮に対
    して本格的な圧力をかけるようになるのではないかというものである。だが、
    この容認論は学界、言論界のごく一部であって、米国主流は日本にひものつか
    ない、そして最悪の場合には米本土に飛来する可能性のある独自の核の保有を
    許すとは思えない。なお、米国のこのような厳しい態度は、筆者の直接の体験
    からもこれまでの日米原子力交渉の過程において、日本の民生用のプルトニウ
    ムや高濃縮ウランの取扱いにさえ示されている。

    (近隣諸国との関係)

     日本とアジア諸国との関係は戦後半世紀を超えても相変わらず微妙である。
    隣国の中国、朝鮮半島(韓国、北朝鮮)との関係は言うに及ばず東南アジアと
    の関係も多かれ少なかれそうであり、歴史認識の差が棘となって残っている。
    加害者側は忘れやすいが、被害者側の記憶はいつまでも残る。日本の核武装は
    その悪夢をよびおこしかねず、核のドミノ現象を引き起こすおそれもある。と
    りわけ韓国、台湾などにそのおそれありといわれている。いずれにせよ、日本
    の核武装はアジア諸国、ロシア、豪州、ニュージーランドなどアジア太平洋諸
    国の不安を招き、この地域の情勢を不安定化する。日本は国際的に孤立化し、
    日本の平和と安全、繁栄は深刻な影響をうける。

    (その他)

     日本は戦後一貫して、唯一の被爆国としての立場から核廃絶を主張し、核実
    験の禁止など核軍縮外交を外交の柱の一つとして展開してきた。又、自らの非
    核政策とともに世界の核拡散防止にも積極的に協力してきた。ところが、一転
    して核武装に向かうことは、外交の一貫性を害い、外交の道義性を傷つけるこ
    とになる。これは日本外交に対する世界からの信頼を失い国益にもマイナスに
    なるであろう。

    5.北朝鮮の核の脅威(中・長期的にはるかに深刻なのは中国の核である)に
    如何に対応するか

     これまで累々述べて来たとおり、日本の核武装は国内的にみれば技術的にも
    法制度的にもこれを改正すれば不可能ではない。しかしそのためには莫大なヒ
    ト、モノ、カネが必要であるし、国民の根強い反核感情を変える必要があるし
    容易なことではない。更に、国際的な反響は大きく、国際的な孤立に追込まれ
    る。いずれにしても極めて大きなリスクを覚悟せねばならず、核武装は日本の
    国益に沿うものとは思われない。核武装はわが国にとって現実的な政策オプシ
    ョンとは考えられない。

     それでは、北朝鮮の核の脅威(脅威とは能力と意思からなる)にどのように
    対処していくべきだろうか。筆者は、次の三方法を同時平行で推し進めていく
    べきであると思う。

     第一は、日米同盟の強化であり、「核の傘」の信頼性を高めることである。
    日本が米国にとってかけがえのない同盟国だと米国に思わせるよう努力してい
    くことで、日本側としては日米関係を全般にわたって強化していくことが大切
    である。米国が困っている時に友人として手を差しのべることが是非とも必要
    である。日米同盟は米英の特殊関係とは違いこれを維持していくには双方の不
    断の努力が必要である。「核の傘」が信頼性に欠けるといっても仏のように自
    主核武装は困難であるから、それより関係を強化して信頼性を高めるよう努力
    するのがわれわれのとるべき途ではなかろうか。

     第二は、日本のミサイル防衛システムの向上だ。北朝鮮のノドンミサイルは
    すでに日本全土を射程に入れており命中精度も高く、北朝鮮の目下の目標は核
    弾頭の小型化である。他方、ミサイル防衛(MD)システムの開発と配備はまだ
    途上にあり(早期警戒レーダー網の整備と迎撃体制の強化)、両者の間の時間
    の競争である。ミサイル防衛システムの開発と配備には時問と金がかかるが、
    ソフトとハードの両面で日米共同で一層の努力を行うべきである。

     第三は外交である。今般の6力国協議からもわかるとおり、いったん手に入
    れた核を放棄させることは至難の業である。だらだらと協議を引き伸ばすこと
    は、北朝鮮を利することになりかねない。少しくらいのアメを与えたからとい
    って虎の子を手放すものでない。強力なムチ、つまり、核を放棄しなければど
    うしようもないという絶体絶命の窮地に追い込むことが必要だろう。これをな
    しうるのは米国と中国だけで、米国の軍事オプションはさておき、米国の厳し
    い制裁と中国を日米がバックアップして北朝鮮に一層強力な圧力をかけさせる
    ことが必要であり、このことが中国にとっても国益に沿うとの認識を持たせる
    ことである。

    6.おわりに

     冒頭述べたように、北朝鮮の核実験を契機に日本核武装論が盛んにとりあげ
    られるようになったが、相も変らず「幻の核武装論」と言われるようにもって
    まわったような議論が多く、又政治論、安全保障論からだけのアプローチで技
    術論などに触れたものが少ない。他方反対論の方は情緒的なものが多く、両者
    が全くかみ合っていない。

     日本にとって極めて重要なこの核武装の問題は広い角度から総合的に、かつ
    堂々と議論されるべきで(議論を封印するべきではない)その結果核武装が現
    実的な政策オプションでないとすれば、中国、北朝鮮の核の脅威にどのように
    して対処すべきかを検討すべきであろう。この論文は舌足らずの点も少なくな
    いと思うが、核武装是非の議論の一つの参考になる事を望んでいる。

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