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    原発問題 -The Truth is Out There-

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    資源エネ庁長官が漏らした 国民より銀行、株主という本音  

    「銀行は東電の債権放棄を」枝野発言に 資源エネ庁長官が「オフレコ」で漏らした 国民より銀行、株主という本音
    2011年05月14日(土) 長谷川 幸洋  現代ビジネス

    東京電力・福島第一原発事故の賠償問題で菅直人政権が賠償枠組み案を決めた。報じられているとおり、政府が新たに原発賠償機構(仮称)をつくり、そこに交付国債を発行、東電は必要に応じて交付国債を現金化して、賠償金を被災者に支払うというスキームである。

     東電の賠償負担には上限がないとされているが、勝俣恒久会長が会見で当初から「すべて東電が負担するとなったら、まったく足りない」と認めているように、東電の純資産は約2.5兆円にすぎず、東電は10兆円ともいわれる賠償金の支払能力がない。

     つまり実質的に東電は債務超過であり、破綻している。

     本来、破綻会社であれば、まず役員と従業員、株主、金融機関が損をかぶって負担するのが「株式会社と資本市場の基本ルール」だ。ところが、今回の賠償スキームでは、株主は株式が紙くずになる100%減資を免れ、銀行も融資や保有社債の債権カットを免れた。

     勝俣会長ら代表権のある役員は報酬を全額返上するというが、社員は年収の二割カットにとどまり、高額とうわさされる年金カットも盛り込まれていない。そのつけは結局、電気料金の値上げとなって、国民が払わされるのである。

    国民よりも東電、株主、銀行のための苦労

     こうした賠償スキームに対して高まった批判を意識してか、枝野幸男官房長官は13日の会見で「銀行の債権放棄がなくても国民の理解が得られると思うか」という質問に対して「得られることはないだろう」と答えた。当然である。

     枝野発言の真意について興味をそそられるが、その前に、興味深いエピソードを披露しよう。

    私は13日午後、資源エネルギー庁が開いた論説委員懇談会に出席した。そこで「枝野発言をどう受け止めるか」という質問に対して、細野哲弘長官は「これはオフレコですが」と前置きして、次のように答えたのである。

    「そのような官房長官発言があったことは報道で知っているが、はっきり言って『いまさら、そんなことを言うなら、これまでの私たちの苦労はいったい、なんだったのか。なんのためにこれを作ったのか』という気分ですね」

     この発言にすべてが凝縮されている。つまり、資源エネ庁としては「銀行が損をしないですむように、さんざん苦労して今回のスキームを練り上げたのに、いまさら官房長官が銀行に『債権放棄しろ』などと言うなら、なんのためのスキームなのか」という気分なのである。

     細野は正直な官僚だと思う。経済産業省・資源エネルギー庁は国民負担を最小化するためではなく、初めから「東電と株主、融資した銀行の利益を守るために苦労してきたのだ」と語っている。

     経産省はこれまで長きにわたって電力会社と癒着し、何人も高級官僚を東電に天下りで送り込んできた。経産省が東電サイドに立っているのは、とっくに分かっているから、実は発言にたいして驚きもしなかった。「正直な人だな」と思っただけだ。

    被災者に補償し、銀行や株主に負担を求める法制度をつくればいい

     私がもっと驚いたのは、細野の隣りに座った官僚の次の発言である。

    「株式を100%減資して東電を法的整理すべきではないか、という議論があるのは承知している。ところが、もしも被害の全容がはっきりしていない現段階で、法的整理してしまうと、その時点で債権債務が確定してしまい、その後、新たに被災者は賠償債権を請求できなくなってしまうという問題がある。だから法的整理はとらないのです」

     あまりに馬鹿げた発言なので、私は質問する意欲もなくなってしまった。

     いったい、なんのために特別立法しようとしているのか。

    本来であれば、電力の安定供給を続ける一方、被災者には納得出来る補償をし、かつ国民負担を最小化するためだ。ところが、既存の法律の枠組みの中で法的整理すると賠償請求できなくなるから、法的整理はしない、という。

     それなら被災者に十分な補償をしながら、かつ株主や銀行にはしっかり負担をしてもらう新しい法的枠組みをつくればいいのだ。そういう枠組みをつくるために、国会と国会議員がいる。国会はオールマイティである。

    「いまの法律の中で整理すると、不利益が生じる」というなら「不利益が生じないような新しい法律」をつくればいい。そういう法的準備をするために、官僚がいるのではないか。こういう屁理屈にもならない理屈を唱える官僚がいるのには本当に驚いた。

     もしも、官僚が目の前にいた論説委員たちをだまくらかすために、こういうトンデモ論を吐いたのだとしたら、それは「論説委員たちが馬鹿にされた」という話である。

     そうではなく、もしも本当に心の底から屁理屈が正しい理屈だと思っていたのだとしたら、それは官僚の基本的能力や発想、心構えが文字通り、とんでもなく劣化したという話である。

     どちらにせよ、新聞やテレビの論説委員を集めた懇談会でこんな話が大真面目に語られているのである。普通の世間から見たら、あまりに馬鹿馬鹿しいので、あきれてしまうだろう。

    官房長官が首相と距離をおきはじめた

     さて、枝野発言である。

     枝野はもちろん最初から、このスキームが株主と銀行の負担をなくし、国民に負担させる狙いで作られたのは十分、承知していたはずだ。万が一、そうでないとしたら、枝野の政治家としての能力は話にならない。

     分かっていたが、あえて「銀行は債権放棄を」と訴えてみせた真意はなにか。はっきり言って、パフォーマンスである。国民の間に広がる「これは国民負担じゃないか」という批判に対して「菅政権は銀行もたたきますよ」というポーズを示してみせた。それが一つ。

     もう一つは、菅政権の弱体化を見越して「オレはいま官房長官をやっているが、本当は良識派だよ」と世間に訴えてみせた。あえて自分のポジションを政権から距離を置いておくという政局的思惑である。私はこちらが本当であるとにらんでいる。

     これまでも当コラムで指摘してきたように、菅政権はいまや内部崩壊しつつある。本当の側近と呼べる人間はごく数人しかいない。官房長官の枝野でさえも、重要な局面にさしかかると、菅から微妙に間合いをとっているのである。

    細野をはじめ資源エネルギー庁は、政権にいいように使われただけかもしれない。それが証拠に今回のスキームは「関係閣僚会合決定」にすぎず、内閣提出法案を決める前段階になる「閣議決定」ではない。

     言ってみれば、単に「こういう感じで対処しますよ」という程度の話なのだ。実際、中身はスカスカで、法案にできるほど細部は詰まっていない。細野自身が懇談会で「これは政治的デクラレーション(宣言)のようなもの」と認めている。

     細野は「もちろん近く閣議決定し、いまの国会に法案を提出します」と胸を張ってみせた。だが、仮に法案提出にこぎつけたところで、関連法案は早くも「次期国会に先送り」と言われ、実際にスキームを動かすところにこぎつけられるかどうか不透明だ。

     その前に、そもそも与党内でさえ枠組み自体に異論が強く、今国会で可決成立できる見通しが立っていない。経産省上層部でも「これは単なるスケルトン(骨組み)。法案にこぎつけられるかどうか、分からない」という声が出ている。

     むりやり採決に持ち込もうとすれば、造反者が出て政権自体が揺らぎかねない情勢なのだ。本当の正念場はこれからである。

     最後に「オフレコ話を書いて大丈夫か」という読者に一言。官僚はよく自分の都合に合わせて「これはオフレコ」などというが、私は私自身が明示的に同意した場合を除いて、そういう条件は一切、無視することにしている。

     今回は細野が勝手にそう言っただけで、私はなにも同意していないし、同意を求められてもいない。したがって、今回はオフレコでもなんでもない。相手が勝手にそう思い込んだだけの話である。

    講談社

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