福島第一原発4号機で爆発、燃料プール温度上昇、15日の東京電力 2011年03月16日
2011.04.02 Sat 01:57 -edit-
福島第一原発4号機で爆発、燃料プール温度上昇、15日の東京電力
2011年03月16日(約2700字)asahi.com
東京電力福島第一原子力発電所で前代未聞の異常な事態が収まることなく続いている。3月15日、原発の危機に東京電力はどう対処したのか。東京都千代田区内幸町の東京電力本店から報告する。
▽筆者:奥山俊宏
■昼前
15日午前11時2分、福島第一原発4号機の異状に関する記者会見が始まった。
「午前6時ごろの大きな音の後、建屋5階屋根付近に損傷を確認」
「午前9時38分ごろ、4階北西部付近に出火を確認」
「建屋5階南側の使用済燃料プールの温度を確認できない」
同じ4号機に異状事態が相次ぎ発生している。それぞれがどう連関するのか、会見した広報部の吉田薫マネージャーや原子力設備管理部の黒田光課長らにも分からず、答えられない。250メートルほど離れている2号機でやはり午前6時過ぎに報告された「異音」とどう関連するのか、黒田課長らは「思い当たらない」としか答えられない。
記者会見での説明によると、4号機は昨年11月29日深夜から定期検査に入っており、炉心の核燃料はその後まもなく使用済燃料プールに移され、炉心の覆い(シュラウド)を取り換える工事をしていた。使用済燃料プールは、建屋の中央にある格納容器の南脇にあり、ふだんは冷却用の水で満たされている。燃料はそこに沈められており、その上端は水深7~8メートルの位置にある。現在、4号機のプールには783体の燃料があり、1号機の292体、2号機の587体、3号機の514体に比べると、多い。また、炉心やその北側にある別のプールとの間には仕切りが入っており、そのため水量も比較的少なかった。核燃料は放っておくと、少しずつ崩壊熱を発して、温度が上昇していく。5号機、6号機はなんとか冷却機能が生きているが、1号機、2号機、3号機、4号機は地震の影響で冷却できない状態にある。このため、通常は40度以下の水温で管理されているが、4号機のプールは14日午前4時18分の段階で、85度まで上がっていた。15日の温度データはない。100度に達して沸騰する可能性もあり、場合によっては、燃料が水面上に露出し、燃料の一部が損傷する恐れも否定できないという。
火災は、使用済燃料プールがある最上階5階より一つ下のフロアである4階で、午前9時38分ごろに確認された。そこには、再循環ポンプを制御するための電源装置などがあるが、燃えるものはあまりないという。自衛隊と米軍に消火を依頼しており、ヘリコプターからつり下げたバケツで海水を汲んで、山火事の際のような要領で上から建屋に水をかけるのかとの質問に対して、東電側は「その方法を検討している」と答えた。
会見が始まって50分ほど、東電社員が1枚紙を吉田マネージャーらに差し入れた。「火は消えているという情報が来ています」。それを発表する東電社員にも、ほっとした表情はなく、むしろ、いぶかしげに見えた。間もなく、別の社員が会見場の後ろに現れて「米軍が消火に入っているというのは確認がとれてます」と声を張り上げた。
正午前、これまでとは桁違いに高い放射線量が測定されたと枝野官房長官が発表したとの情報が記者からもたらされたが、「私どもに分かっている情報では……」。答えられない。「早急に確認します」
午後零時1分、会見は終了した。
■夜
福島第一原発で不安定な状態に陥っている6つのプラントのうち、どれがもっとも危険なのか――。
記者会見する東京電力の社員ら=3月15日午後8時48分、東京都千代田区内幸町で
15日午後8時23分に東京電力本店で始まった記者会見で、「現時点で1、2、3、4号機のうち、どれに優先的に対応しなければならないのか?」との質問が記者から飛んだ。原子力設備管理部の黒田光課長は考え込むようにしながらその質問に答えた。
「順番を言うのはなかなか難しいんですが、炉のほうは1号、2号、3号に関しては安定はしている。ただし、水没していない。入っていく水が蒸気になって出ていってしまうのか、水が少し漏れているのか、どっちかだと思うが、水位は燃料頂部に達していないけど安定している。圧力も安定している」
午後3時半時点で1号機の炉心水位はマイナス1800ミリ。午後4時の時点で2号機の水位はマイナス1800ミリ、3号機の水位はマイナス2300ミリ。いずれも燃料棒の上部は水面から出て露出した状態となっている。しかし、燃料棒の全体が露出するようなことはなく、また、大きな変動もみられない。
「まずはこの状態を崩さない。しっかり継続する。そして、電源系統からしっかり(電気を引いて)もう少し大きなポンプを使えるようにするか、圧を抜いて(圧力を減らすためにあけて)いるバルブがしっかりあくようなものにしていくとかいうことを裏で鋭意検討してございます。そういったことが回り出しましたら燃料が水没できるものと思っております」
どこから電源を引いてくるのかという質問に対しては「電源車とか、外部電源からしっかりもらうとか」と答えた。
福島県は東北電力のサービス地域にあり、「外部電源」というのは東北電力の通常の電気を意味する。福島第一原発は、福島第二原発と異なり、今も停電状態が続いている。
4号機の使用済燃料プールはどうなのか。黒田課長は「今は4号機が温度的に一番厳しいだろうと思っているので、4号を優先的にやってます」と答えた。「燃料プールに水を入れる。自衛隊と米軍の両方にお願いしている。それが手っ取り早いと思って検討している」
3号機の建屋の西側で午前10時に測定された毎時400ミリシーベルトの放射線について、「4号機のがれき」が原因との見方も明らかにした。
この記者会見ではまた、定期検査中だった5号機、6号機の使用済燃料プールの水温も上昇傾向にあることも明らかにした。この日の午後4時の時点で、5号機は57.3度、6号機が56.0度。通常の40度程度に比べると、かなり高くなっている。5号機、6号機については、燃料プールの冷却系統が動いているものの、海水との間で熱を交換するためのポンプが停止しており、冷えが鈍いのが実情だという。
■深夜
ホワイトボードに福島第一原発4号機の5階フロアの平面図を書いて説明する東京電力社員ら=3月16日午前零時39分、東京都千代田区内幸町で
午後11時35分、原子力設備管理部の課長たちの記者会見が再開された。
早朝の爆発について、4号機の使用済燃料プールの水温上昇に起因する水素か水蒸気が原因だった可能性があることが明らかにされた。
▽15日午後8時23分に始まった記者会見に関する記述に18日午前1時35分に加筆しました。
原発 放射能 水道
2011年03月16日(約2700字)asahi.com
東京電力福島第一原子力発電所で前代未聞の異常な事態が収まることなく続いている。3月15日、原発の危機に東京電力はどう対処したのか。東京都千代田区内幸町の東京電力本店から報告する。
▽筆者:奥山俊宏
■昼前
15日午前11時2分、福島第一原発4号機の異状に関する記者会見が始まった。
「午前6時ごろの大きな音の後、建屋5階屋根付近に損傷を確認」
「午前9時38分ごろ、4階北西部付近に出火を確認」
「建屋5階南側の使用済燃料プールの温度を確認できない」
同じ4号機に異状事態が相次ぎ発生している。それぞれがどう連関するのか、会見した広報部の吉田薫マネージャーや原子力設備管理部の黒田光課長らにも分からず、答えられない。250メートルほど離れている2号機でやはり午前6時過ぎに報告された「異音」とどう関連するのか、黒田課長らは「思い当たらない」としか答えられない。
記者会見での説明によると、4号機は昨年11月29日深夜から定期検査に入っており、炉心の核燃料はその後まもなく使用済燃料プールに移され、炉心の覆い(シュラウド)を取り換える工事をしていた。使用済燃料プールは、建屋の中央にある格納容器の南脇にあり、ふだんは冷却用の水で満たされている。燃料はそこに沈められており、その上端は水深7~8メートルの位置にある。現在、4号機のプールには783体の燃料があり、1号機の292体、2号機の587体、3号機の514体に比べると、多い。また、炉心やその北側にある別のプールとの間には仕切りが入っており、そのため水量も比較的少なかった。核燃料は放っておくと、少しずつ崩壊熱を発して、温度が上昇していく。5号機、6号機はなんとか冷却機能が生きているが、1号機、2号機、3号機、4号機は地震の影響で冷却できない状態にある。このため、通常は40度以下の水温で管理されているが、4号機のプールは14日午前4時18分の段階で、85度まで上がっていた。15日の温度データはない。100度に達して沸騰する可能性もあり、場合によっては、燃料が水面上に露出し、燃料の一部が損傷する恐れも否定できないという。
火災は、使用済燃料プールがある最上階5階より一つ下のフロアである4階で、午前9時38分ごろに確認された。そこには、再循環ポンプを制御するための電源装置などがあるが、燃えるものはあまりないという。自衛隊と米軍に消火を依頼しており、ヘリコプターからつり下げたバケツで海水を汲んで、山火事の際のような要領で上から建屋に水をかけるのかとの質問に対して、東電側は「その方法を検討している」と答えた。
会見が始まって50分ほど、東電社員が1枚紙を吉田マネージャーらに差し入れた。「火は消えているという情報が来ています」。それを発表する東電社員にも、ほっとした表情はなく、むしろ、いぶかしげに見えた。間もなく、別の社員が会見場の後ろに現れて「米軍が消火に入っているというのは確認がとれてます」と声を張り上げた。
正午前、これまでとは桁違いに高い放射線量が測定されたと枝野官房長官が発表したとの情報が記者からもたらされたが、「私どもに分かっている情報では……」。答えられない。「早急に確認します」
午後零時1分、会見は終了した。
■夜
福島第一原発で不安定な状態に陥っている6つのプラントのうち、どれがもっとも危険なのか――。
記者会見する東京電力の社員ら=3月15日午後8時48分、東京都千代田区内幸町で
15日午後8時23分に東京電力本店で始まった記者会見で、「現時点で1、2、3、4号機のうち、どれに優先的に対応しなければならないのか?」との質問が記者から飛んだ。原子力設備管理部の黒田光課長は考え込むようにしながらその質問に答えた。
「順番を言うのはなかなか難しいんですが、炉のほうは1号、2号、3号に関しては安定はしている。ただし、水没していない。入っていく水が蒸気になって出ていってしまうのか、水が少し漏れているのか、どっちかだと思うが、水位は燃料頂部に達していないけど安定している。圧力も安定している」
午後3時半時点で1号機の炉心水位はマイナス1800ミリ。午後4時の時点で2号機の水位はマイナス1800ミリ、3号機の水位はマイナス2300ミリ。いずれも燃料棒の上部は水面から出て露出した状態となっている。しかし、燃料棒の全体が露出するようなことはなく、また、大きな変動もみられない。
「まずはこの状態を崩さない。しっかり継続する。そして、電源系統からしっかり(電気を引いて)もう少し大きなポンプを使えるようにするか、圧を抜いて(圧力を減らすためにあけて)いるバルブがしっかりあくようなものにしていくとかいうことを裏で鋭意検討してございます。そういったことが回り出しましたら燃料が水没できるものと思っております」
どこから電源を引いてくるのかという質問に対しては「電源車とか、外部電源からしっかりもらうとか」と答えた。
福島県は東北電力のサービス地域にあり、「外部電源」というのは東北電力の通常の電気を意味する。福島第一原発は、福島第二原発と異なり、今も停電状態が続いている。
4号機の使用済燃料プールはどうなのか。黒田課長は「今は4号機が温度的に一番厳しいだろうと思っているので、4号を優先的にやってます」と答えた。「燃料プールに水を入れる。自衛隊と米軍の両方にお願いしている。それが手っ取り早いと思って検討している」
3号機の建屋の西側で午前10時に測定された毎時400ミリシーベルトの放射線について、「4号機のがれき」が原因との見方も明らかにした。
この記者会見ではまた、定期検査中だった5号機、6号機の使用済燃料プールの水温も上昇傾向にあることも明らかにした。この日の午後4時の時点で、5号機は57.3度、6号機が56.0度。通常の40度程度に比べると、かなり高くなっている。5号機、6号機については、燃料プールの冷却系統が動いているものの、海水との間で熱を交換するためのポンプが停止しており、冷えが鈍いのが実情だという。
■深夜
ホワイトボードに福島第一原発4号機の5階フロアの平面図を書いて説明する東京電力社員ら=3月16日午前零時39分、東京都千代田区内幸町で
午後11時35分、原子力設備管理部の課長たちの記者会見が再開された。
早朝の爆発について、4号機の使用済燃料プールの水温上昇に起因する水素か水蒸気が原因だった可能性があることが明らかにされた。
▽15日午後8時23分に始まった記者会見に関する記述に18日午前1時35分に加筆しました。
原発 放射能 水道
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