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    原発問題 -The Truth is Out There-

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    東電福島原発事故の真実 放射能汚染の真実 食物汚染の真実 正しい情報を求めて

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    福島第一原発の吉田所長が語る「フクシマの真実」 

    歯に衣着せぬ物言いの最高幹部とは、明らかに吉田所長だと思います。

    そしてもう福島第一原発の事故は収拾不可能であることが伝わってきました。

    地下ダムを作って汚染を食い止めることを真っ先にやらねばならないのに未着手で、

    未だに水を注入していてはもう地下水脈からの超高濃度放射能汚染をくい止めることは

    不可能です。

    官邸、経産省、東電の罪は余りにも重過ぎます。



    福島第一原発の最高幹部が語る「フクシマの真実」
    週刊朝日2011年08月19日号配信

    毎時10シーベルト──直接浴びれば100%死に至る高線量が測定された。これは何を意味しているのか。これまで本誌は福島第一原発「最高幹部」の一人による独占告白を掲載してきた。今回の異常事態を受け、改めていま現場で起きている「真実」を聞いた。(本誌取材班)


     福島第一原発事故の発生からもうすぐ5カ月になろうとする8月1日、東京電力から衝撃の「事実」が発表された。1、2号機の原子炉建屋の間にある主排気筒付近で、毎時10シーベルト(1万ミリシーベルト)以上にも及ぶ高濃度の放射線量が測定されたというのだ。これまでの最高値が、6月に1号機の原子炉建屋内で測定された毎時4シーベルトだったのだから、まさに驚愕の数値である。

     しかも、東電の発表では、この「10シーベルト」はここだけではなく、そのすぐ近くにもう1カ所、さらには、この2カ所と同じ配管でつながる1号機の原子炉建屋内でも毎時5シーベルト以上の放射線量が測定されたという。それも「10シーベルト」「5シーベルト」というのは、それぞれ器具の測定上限だというから、実際の放射線量がいかほどかわかったものではない。

     またか、という思いだ。

     枝野幸男官房長官が原発事故当日から「大丈夫だ」「ただちに健康に影響はない」などと言い続けていたにもかかわらず、実際は、1~3号機が震災後、間もなくメルトダウン(炉心溶融)を起こしていた。このことを東電がようやく認めたのは、事故発生から実に2カ月後のことだ。

     それが再び、いまごろになって「10シーベルト」が測定されたという。つまりこれは、事故によって高濃度の放射性物質が、想定以上に広い範囲に散らばっていたことを示している。

     ということは、あえて核心をいえば、よもやメルトダウンした"燃料棒の破片"そのものが、爆発によって原発敷地内、いや、さらには周辺地域にまで飛び散っていた可能性があるのではないか──。

     放射線を7シーベルト浴びた人間は、100%が死亡するとされる。当初から「安全」だと言い続けてきた政府に、本気で人の命を守る気があったと言えるのか。これまで本誌で独占告白を掲載してきた福島第一原発の「最高幹部」が、「フクシマの真実」を語り始めた。

    ◇   ◇

     フクイチ(福島第一原発)で「毎時10シーベルト」が測定されたと大きく報じられていますが、現場としては「やはりな」という言葉しか出てきません。正直、「10」くらいは、いつか出るだろうと思っていた。作業の邪魔になるので、原発内の瓦礫がかなり撤去され、いままで埋もれていた場所があらわになりましたから。

     たとえば建屋内でも、ホコリなどで埋もれた場所から高い線量が計測されたことがありました。しかし、そうした場所を改めてきちんと計測したわけではないので、いわば"死角"になっていたのです。

     テレビ映像などでは、なかなか感覚がつかめないと思いますが、原発の敷地内、そして建屋内はかなりの広さがあります。正直、すべての場所で細かく線量を計測するのは難しい。

     さらに、同じ場所でも、その日の天候、風向きなどで線量が大きく変化することがあります。今回、1号機の原子炉建屋2階の空調機室でも「5シーベルト超」が測定されましたが、これも同様です。

     原子炉建屋の地下には汚染水が大量にあります。皮肉なことに、水は放射能を遮断する効果があるので、この汚染水のおかげで建屋内ではある程度、放射線量が抑えられているところもある。それも、日々の状況によって線量は変わってきます。実は、原発内にはそんな場所がたくさんあります。

    ◇   ◇

     これだけの高線量が検出された理由について、東電原子力・立地本部の松本純一本部長代理は、
    「事故直後にベントした際に、原子炉内で溶けた燃料から出た放射性物質が配管内を通り、配管の内部に付着した可能性がある」
     と説明している。

    「ベント」とは、原子炉格納容器内部の蒸気を外部へ放出して圧力を下げる作業のことだ。1号機では震災翌日の3月12日午後2時半にベントが実施されたとされるが、その直後の午後3時36分、水素爆発が起きて建屋が吹っ飛んだ。2号機では、翌13日と15日の2回にわたってベントを試みたが圧力が下がらず失敗、15日午前6時10分に圧力抑制プール付近で爆発があった。

     果たして、東電の言うとおり、これらのベントが本当に今回の高線量の原因だったのだろうか。

     私自身、本社の発表のとおり、今回の高濃度は「ベント」が原因だったと思ってはいますが、正直、そうだと言い切れないところもある。以前(本誌7月22日号~8月5日号)も申し上げましたが、1号機の爆発で、原子炉から核燃料それ自体が外部に飛び散った可能性も、まったく否定することはできない状況ですからね。燃料棒がいまどんな状況なのか、メルトダウン、さらにはメルトスルー(原子炉貫通)しているのか、飛び散っているのか、地中まで溶け落ちているのか、確認ができていない現状では、何とも言いようがない。想定外も考えられます。

     いずれにしても、1号機でベントをしたのは、震災・津波の翌3月12日のこと。あれから4カ月以上、150日近くたって、まだ「10シーベルト」の高い放射線量が残留していた。ということは、大気中にもこちらが想定しているより、かなりのモノが放出されていることになる。なにしろ、今回の「10シーベルト」も「5シーベルト」も正確な数値ではなく、計器の針が振り切れて測定不能になった、つまり、それ以上の数値が出ているわけですから。

     爆発のため、建屋のあちこちの空調の配管も傷んでいます。1号機建屋内の「5シーベルト」は、そこから漏れている可能性もあります。きちんと測れば、「5」や「10」くらいの場所は、まだいくらでもありますよ。

     実際、個々の瓦礫や配管、敷地内の土壌などを細かく調べたら、とんでもない数値になるかもしれない。現実問題として、すでに線量が高すぎることが予想され、計測機を入れることができない場所もあります。

     今回の本社の発表では、この「10シーベルト」を受けて、ほかの場所をあちこち測定することはしないとも言っていました。先にも言いましたが、原発内は広いので、測定と言ってもなかなかできない。しかし、ずっとしなくていいのか、しないのかとなると、ちょっと違う。

     これから、いちばん危険なのは「被爆」です。放射能は目に見えないので、安全管理を徹底してもミスはある。この暑さ、湿度などで作業員たちも体力的にキツくなっている。建屋は爆発でエレベーターが使えず、作業員は重い資材も手作業で2~3階へと担いでいくので、消耗度はかなりのものです。いつミスが起きてもおかしくない状態なのです。

     もしも、「作業員が被曝した」ということになれば、日本中が大騒ぎになります。すると作業はストップし、働く人もいなくなる。だから、いずれ測定はきちんとしなければなりません。

    ◇   ◇

     事実、7月の東電発表では、すでに100人以上の作業員が、今回の事故が起こる前の緊急作業時の上限だった総被曝線量100ミリシーベルトを超え、さらに、事故後に引き上げられた上限250ミリシーベルトも6人が超えている。

     しかし、その一方で、東電が目標とする原子炉の「冷温停止状態」のために欠かせない「循環注水冷却システム」はいまだ不安定で、稼働率は約74%(8月3日の東電発表)。前週の約58%、前々週の約54%からは改善されたが、このままでは工程表の「ステップ2」の期限となる年明けまでに、施設内にある全汚染水の処理を終えることもおぼつかないのが現状だ。大丈夫なのだろうか。

    ◇   ◇

     今後、作業員はますます線量を浴びて、人手が不足していくでしょう。熟練作業員が下手に高い線量を浴びて現場を去ってゆく、という事態は何としても避けたい。そのために、できる限り詳細に放射線管理をしないといけません。

     作業員の中には、今回の報道で怖がっている人もいます。協力会社からは、家族から問い合わせがあったり、怖いから辞めたいと言いだしたりする作業員がいるという報告がありました。

     いま、線量が高い場所にはコーンを立て、貼り紙をして近寄らないようにしていますが、もっと違う遮断対策も必要です。おなじみになった「白い防護服」ではなく、鉛の入った特殊なものが必要になるかもしれないですね。無人ロボットをもっと活用すればいいという声もあるかもしれませんが、これもなかなかうまくいかない。やはり最後は人の手です。

     循環システムについて言えば、ようやく安定してきてはいます。しかし、処理量は6割、7割程度でまだまだ。状態が芳しくない中でかろうじて安定している、という感じです。

     7月19日に更新された工程表では、来年初めまでに「汚染水処理の完了」となっています。厳しいスケジュールですが、なんとか実現させたい。ただし、たとえ順調に処理が進んで汚染水がなくなったとしても、浸っていた場所はひどく汚染されています。今回の「5」や「10」というレベルではないでしょう。いわば燃料棒に直接、触れていたわけですから。さらに汚染水から取り除いた放射性物質は、凝縮されて高濃度の廃棄物となって残ります。

     これから台風シーズンの怖さもあります。今回の「10」を計測した配管は屋外です。当然、そこに降りつける雨水もある程度は汚染され、地中にしみこむ。

     さらに、爆発で倒壊の危険があった4号機の燃料プールは、無事に補強工事が完了しましたが、そもそも建物自体がボロボロの状態。いまでもコンクリート片がポロポロと落ちてくるのです。そんな状況で、強い雨や高潮のときに何か起きれば、汚染がますます広がってしまうかもしれない。気が抜けません。

    菅直人首相は7月13日夕、首相官邸で開いた会見で、今後の国のエネルギー政策について「脱原発依存」を進める考えを示し、力を込めてこう語った。

    「この大きな事故を踏まえて原子力政策の見直しを提起するのは、その時代の総理の責務だ」

     いまこそ日本は原発に頼った社会構造を改め、自然エネルギーをはじめとする"安全"な代替エネルギーにシフトすべきだ--そう主張する方向性そのものに異論は少ないだろう。しかし、あまりにもいまさらである。

     時事通信の世論調査(7月7~10日に実施)では、菅政権の支持率は、前月から9・4ポイント急落して12・5%。これは2009年9月に民主党政権が誕生して以来、最低の数字であり、あの森喜朗政権末期(01年4月)の支持率10・8%に迫る勢いだ。

     菅首相から人心が離れていく、その理由は簡単だ。就任以来、繰り返されてきた"思いつき"と"自己都合"の言葉の軽さに辟易としているのが、この数字から読み取れるではないか。その首相の口から発せられる「脱原発」路線に対し、かえって反発が生まれているとしたら、まったく皮肉な話だ。

     福島第一原発の事故収束に向け、政府は7月19日、「新工程表」を発表する。

     東京電力が4月17日に発表した"旧"工程表では、最初の3カ月程度が、確実に原子炉を冷却し、放射性物質の放出を減少に向かわせる第1段階(ステップ1)、そしてさらに3~6カ月かけて、原子炉を100度未満の安定状態に保つ「冷温停止」にし、放射性物質の漏出を大幅に抑える第2段階(ステップ2)に至る、としている。

     いま、ちょうどステップ1の目標期限を迎えたところだ。しかし、政府と東電が掲げるこの工程表は、果たして信用に値するものなのだろうか。実は、現場の意識とは大きな乖離があるという。これまで継続的に本誌の取材に応じてきた福島第一原発の「最高幹部」が、こう語るのだ。

         ◇   ◇

     この"旧"工程表については、4月の本社発表に先立って、実はフクイチ(福島第一原発)の現場からは「(収束までに)約1年半」というスケジュールを想定したものを出しました。これでも、熟練の作業員をフル動員することを前提にして、ようやく達成できるレベルです。

     ところが本社からは、
     「こんなのでは遅すぎる。菅総理が納得しない。(5月下旬の)サミットでどう説明するんだ」
     と言われました。結局、本社がいろいろと継ぎはぎして「9カ月」の工程を作ったのです。


     工程表では3カ月+3~6カ月の「2ステップ」などと謳(うた)っています。ステップ1は何とかなるかもしれないが、問題はステップ2。このスケジュールどおりなんて到底、無理な話ですよ。放射線量の限度を超え、どんどん熟練作業員の人数が減っていく中で、どうすればできるのですか。

     無人ロボットが導入されましたが、あんなのが何台あっても最後の最後は「人手」が必要です。その「人手」の作業を阻むのが、建屋の地下にたまった汚染水なのです。

         ◇   ◇

     実際、工程表を進めれば進めるほど、その見通しが甘かったことが明らかになっている。すでに東電は5月17日、「新しい工程表」を発表した。4月の発表から、わずか1カ月での「修正」である。

     最大の修正は、原子炉の冷却方法だった。もともとは、1~3号機の格納容器を水で満たして核燃料を原子炉圧力容器ごと冷やす「格納容器冠水」方式を予定していたが、これを断念。というのも、格納容器に穴が開いているようで、注水しても一向に水がたまらないことがわかったためだ。

     そこで新たな方策として打ち出されたのが、いまようやく動き始めた「循環注水冷却システム」だった。

    ◆1~4号機はどれも危ない◆

     この「冠水」方式にしても、現場は当初から「メルトダウン(炉心溶融)で格納容器に穴が開いている可能性があるので難しい」と指摘していた。しかし、「実際に穴が開いているのを見たのか」という変な話になり、この方式が政府に上がってしまった。

     一方の「循環注水」方式は早い段階から候補に挙がっていたが、装置を準備するのに時間がかかるからと却下された。それが、いきなり復活したのです。


     工程表には、細かい工事内容も書かれていますが、実際には予定されていたよりも1・5~2倍の時間がかかっている。「循環システム」設置だって、予定の1・5倍の時間がかかりました。本社の作った工程表は、あくまでも理想で、現実性は乏しい。

     さらに今後、この暑さの中で作業は困難になります。作業員たちの健康のため、いま工事は朝6時ごろから始め、午後2時ごろには終わらせている。こんな環境の中で、工程表どおりに実現させるのは難しい。それに、1~4号機はそれぞれ状況が違うので、予想できない事態もあり得ます。

     19日に発表される新工程表でも、期日の修正はあまりないようです。というのも、期日については政府の意向が強く、政治的な責任問題が発生するとかで、なかなかいじれないらしい。結局、理想論を前提に、結論ありきでスケジュールをはめ込んでいるだけ。現場としては、国民に本当のことを知らせるべきだと思っています。

         ◇   ◇

     驚愕の証言である。いま発表されている工程表は、まったくの"デタラメ"だというのだ。

     実際、現場は事故収束に向けて着々と工事を進めつつも、決して事態を楽観していない。作業を妨げるいちばんの要因は、やはり「汚染水」だった。

         ◇   ◇

     ずっと「水」に苦しめられてきました。原子炉を冷やせば冷やすほど汚染水が増え、それが建屋の地下、トレンチ(タービン建屋外にある地下の作業用トンネル)に大量に流入していくという悪循環です。大雨が降ると敷地内に流れ出す可能性もあり、作業員が近寄れなくなる。海に流れ込む恐れもある。いま、ようやく「循環注水冷却システム」が動き始めましたが、まだ安定したとはいえない。

     しかも、もしも核燃料がメルトスルー(原子炉貫通)しているならば、たまった汚染水は非常に高濃度になっている。チェルノブイリ事故の際は、すぐに地下水対策をしましたが、それは日本の技術だった。地下にトンネルを通し、セメント、ベントナイト(粘土鉱物)などを注入して固めてしまう方式です。これをフクイチでも実施すべきではないかと思う。国土交通省はこうしたプランを数多く持っていますが、所管の経産省との連携がうまくいっていないのか、適切と思われる対応策が講じられていないのが現状です。現場からも本社にプランを上げているんですが、何の動きもない。

     また、4号機が危ない、1号機がダメらしい--などといろいろ言われますが、私から言わせれば、どれも危ない。工程表では汚染水の流出源についても、詳しく触れられていません。

     たとえば、1号機は格納容器から漏れているようです。しかし、その場所が特定できない。穴の大きさもわからない。つまり、何もできない。安易にどれくらいで収束すると断言できないのです。

     3号機では、1、2号機に続いて水素爆発を防ぐための窒素注入がようやく始まった。しかし、地下に大量の汚染水がたまって苦しい状況には変わりない。建屋内に入ることはできましたが、内部は飛散した瓦礫で埋もれていて、燃料プールの確認も大変な状況です。


     3号機、4号機に共通していえるのは、建屋の強度に不安があることです。かなり崩れていて、作業中に上からコンクリート片が落ちてくることもあり、作業員も怖がっている。

     特に4号機の燃料プールは、早急に手だてを講じないと危ない。4月の最大余震の際は「倒壊を覚悟した」と言う作業員もいたほど。すでに建屋の補強工事に着手し、作業は順調に進んでいますが、本格的な台風の季節の前に何とか対応したいところです。


     2号機も、ひどい状況です。作業の間、汚染水があふれたり、漏れたりしないかとヒヤヒヤの連続でした。ただ、少なくとも配管などは爆発でやられていないので、1号機、3号機とはちょっと状況が違いますね。とりあえずは最悪の危機は脱出したと考えています。

     最近でも、1~4号機の映像を中継している「ふくいちライブカメラ」を見て、「白い煙」が出ているとの指摘がありますが、あれは燃料プールの使用済み燃料が熱を持っているため、湯気みたいなものが出てそう見えるのです。プールから水が漏れているので十分に冷やせず、熱が下がらない。それで水蒸気が出る。もっとも、その「湯気」には放射性物質も含まれています。

         ◇   ◇

     現場は事故から4カ月たったいまでも、本社の"事なかれ主義"、そして官邸のパフォーマンスじみた言動に振り回され続けている。その矢面に立たされてきたのが、現場で陣頭指揮を執る吉田昌郎所長だ。

     震災翌日の3月12日早朝に、菅首相が断行した「現地視察」も、現場にとっては大きな"弊害"だった。

     11日、原発事故の状況が刻一刻と深刻化する中、深夜になって菅首相は突然、第一原発の現場を視察すると言いだす。格納容器内の圧力が上限を大きく超え、一刻も早くベント(排気)の必要があるとされていたころだ。菅首相は「一向にベントをしない現場に活を入れるためだった」などと説明しているが、この視察が結果的に、現場を混乱させることになったという。

         ◇   ◇

     12日早朝(午前7時すぎ)に菅さんがこちら(フクイチ)に乗り込んできたときは、本当に驚きました。確かに事前に「総理が来る」との連絡はありました。しかし、そんな急に、本当に来るとは思いもしなかった。しかも、ヘリコプターで来て免震棟で会うなり、
    「何をやっている。ベントはどうなっている。早くするんだ!」
     などと怒鳴り散らすのです。総理にそこまで言われると、さすがに皆、引いてましたね。吉田所長は、
    「とにかく、どんなことをしてでもやります。決死の作業で、命かけてでも絶対に何とかします」
     と答えてました。

     1号機が水素爆発を起こしたのは、ベントが遅れたせいだと指摘されていますが、現場としては、近隣住民のことが気になっていました。ベントをすれば放射能がまき散らされる。近隣住民の避難状況はどうなのか、放出される範囲は広範囲にわたるので、現場としては、かなり深刻に考えていました。

     それに、自動でベントを開閉する装置がダメになっていたため、手動で動かさなくてはならない状況だった。当時、1号機のリアクター(原子炉)建屋はかなりの放射線量が予想されていました。そんな危険な場所に誰を行かせるのか。本当に決死の作業なのです。

    ◆もうフクイチで死んでゆくのか◆

     この「早朝視察」について、吉田所長は周囲に、無念そうにこう言ったという。

    「言い訳になるかもしれないけど、菅総理がフクイチの現場に来たことで、そちらにばかり目がいってしまい、2時間ほど『ベント』などの指示が出せなかった。当時は、すべて私が指示して動いていた。それが止まったことで、周りも動けなくなってしまった」

     東電が6月に公表した報告書によると、吉田所長がベントの準備を指示したのが12日午前0時6分のこと。そして東電が、ベント実施を菅首相、海江田万里経産相、そして原子力安全・保安院に申し入れ、了承される。ところが、午前2時24分には、現場の放射線量から作業可能時間は17分と報告され、午前4時半ごろには、余震による津波の可能性から現場操作の禁止が指示された。ベントに向けた状況が、いかに困難だったかがわかる。

     さらに、午前8時27分になって、原発立地町である大熊町の一部住民が、まだ避難できていないとの情報が入る。避難終了を待って、ようやく作業員が現場に向かったのが午前9時4分。格納容器圧力の低下を確認できたのは午後2時半になってからのことだった。

     そして午後3時36分、1号機で水素爆発が起きた--。

         ◇   ◇

     1号機が水素爆発を起こしたときは、もう目の前が真っ暗でした。ベントをしたのに、いきなりの爆発でしょう。最悪の事態です。免震棟内もパニック状態で、「帰らせてくれ」と言う作業員、社員も出てきました。私たちには、それをとめることはできません。とにかく残った人間でやるしかない。もうフクイチで被曝(ひばく)して死んでゆくのか、これまで原発で過ごしてきた何年もの日々が一瞬、頭をよぎりました。

     当時は知らなかったのですが、政府は震災当日の11日午後9時23分に、原発から「半径3キロ圏内」の住民に避難指示を出し、その後、翌12日午前5時44分に「10キロ圏内」、午後6時25分に「20キロ圏内」--と次第に範囲を拡大していった。

     でも、現場ではもっと広い範囲、少なくとも半径50キロは避難していると思った。なんといっても、あれだけの爆発だったんですから。結局、避難範囲が半径3キロ圏内と聞いたときも、「大丈夫か?」と思ったのが正直な印象ですね。

     米政府は当時、半径50マイル(約80キロ)圏内の自国民に対して避難勧告を出しました。チェルノブイリ事故では、国際原子力機関(IAEA)の報告によると、旧ソ連の汚染地域は約14万5千平方キロメートルで、約300キロ離れた地域でも高いレベルの汚染があったことがわかっている。爆発が相次ぐ中、当時は私自身、半径30キロどころか、青森から関東まで住めなくなるのではないかと思ったほどです。

     本社と政府の話し合いで決まったんだろうけど、余震の危険性などを考えれば、最低でも半径50キロ、できれば半径70キロ、万全を期すならば半径100キロでも不思議はなかった。最初は広範囲にして、それから「SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)」の予測などをもとに狭めていけばよかったのではないでしょうか。


     いま原発は何とか安定していますが、放射性物質がかなり飛散しているのが実態です。避難地域の見直しが必要だと思います。実際、もう半径20キロ圏内は戻れないと、そろそろ発表してもいいんじゃないか。子どもたちが学校に通うのは無理です。最初からもっと広範囲で避難させていればと悔やまれます。

         ◇   ◇

     菅政権は6月27日、首相補佐官だった細野豪志・衆院議員を新設の「原発担当大臣」に据えた。原発事故対応に特化した新ポストだが、海江田経産相との役割分担ははっきりしない。果たして今後、事故収束に向けて政府・経産省・東電の歯車は、うまく回っていくのだろうか。

    ◆「私の立場はどうなるんだ」◆

     細野さんが原発担当大臣になって歓迎ムードがあるようですが、現場としては、うーんという感じ。期待はしていたんですが、正直いって彼は経産官僚と変わりない。現場が望むのは、意思決定のスピードとリーダーシップ。でも、細野さんと話しても、どちらも兼ね備えていない。経産官僚が言っていたことを、数日後に細野さんの口から聞くという感じです。経産官僚の言うがままの「操り人形」と我々は呼んでいます。

     政府の原発に関する決定は本当に遅い。菅総理は「細野に任せてある」と言うのに、細野さんは「決めるのは総理」と言うばかり。菅さんが責任を細野さんに押しつけているのは誰の目にも明らかで、細野さんは、それには乗らないと牽制(けんせい)しているんです。堂々巡りで、一向に前に進みません。

     東電本社も経産省の言うがままで、こんなにノンビリでいいのかと思うほど意思決定が遅い。この状況を喜んでいるのは、経産省をはじめとする官僚たちです。

     現場と本社には、明らかに認識のズレがあります。フクイチから本社には毎日、膨大な量の情報が上がりますが、いま国民に公表されているのはその10%、いや1%くらいかもしれません。実際、現場は当初から「メルトダウン、メルトスルーの可能性がある」と報告していますが、本社は発表しませんでした。

     一連の発表を見ていると、派閥や上司との人間関係など、社内でしか理解できない力学が働いているように思えます。

     というのも、うち(東電)は、とにかく風通しが悪い組織なんですよ。いろんな人間が口を出してくる。

     現場と本社は、衝突ばかりです。ある本社幹部は、情報公開を巡ってこんなことを言っていました。

     「そんな情報が保安院や政府にわかると、大変なことになる。(問題が)ますます拡大するじゃないか」

     そして最後には、
     「私の立場や出世はどうなるんだ。キミはわかってるのか!」
     と言うんだから呆(あき)れてしまいます。的確な情報が適切なタイミングで届かないから、トップが最終決断しなければならないときに、十分な情報がないということが起こるのです。本当に、どこを見て仕事しているんでしょうかね。


     今回の事故は我々の責任が重大で、おわびするしかありません。いま、フクイチには日本、いや世界の存亡がかかっている--私たち現場の人間はそういう覚悟でやっています。でも、残念ながらこれが、いまの本社の状況なのです。

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